電子産業の清掃労働者の職業性がん、初の労災認定を歓迎する/韓国・パノリムが声明・・2022年1月11日 韓国の労災・安全衛生

電子産業清掃労働者の乳がんに労災認定

サムソンディスプレーの峨山キャンパスのOLEDラインで働いていて、乳がんに罹った清掃労働者の「ファン○○さん」が2021年12月20日、勤労福祉公団ソウル業務上疾病判定委員会から、業務上の災害であることが認められた。

「ファン○○さん」はミシン師(20年)、タクシー運転手(1年)、療養保護士(1年半)、ディスプレー清掃労働者(10年)と、長い間働いてきた。ディスプレイの清掃労働者として勤務していた被害者は、2020年に定年を迎えて仕事を辞めたが、その直後の2021年4月に乳がんと診断された。

既にパノリムは、ファン○○さんの同僚の清掃労働者であるソン○○さんの乳がんについて労災申請を進めていた。ソン○○さんは同僚のファン○○さんが同じ病気に罹ったという話を聞いて、ファン○○さんに労災申請について教えてあげた。このような過程を経て、ファン○○さんはパノリムと共に2021年6月に勤労福祉公団に労災申請をした。

2021年12月20日、勤労福祉公団ソウル業務上疾病判定委員会は、以下のような理由から、ファン○○さんの乳がんを業務上疾病と判断した。これに伴い、勤労福祉公団天安支社は2021年12月22日、ファン○○さんの労災申請を承認した。

ミシン会社として働いていた期間に、不規則で間歇的な夜間と徹夜作業を行った可能性が高く、その他の事業場でも隔日制、変形または三交代勤務をしているため、夜間勤務の履歴は約20年以上と見られること、ディスプレイ生産工程において、スモークルームの掃除の時にクリーンルームの状況と同じではなくても、様々な有害化学物質に曝されている可能性もあることなどを総合的に判断すると、申請の疾病と業務との因果関係が認められるというのが、出席した委員らの一致した意見だ。

パノリムは、勤労福祉公団のファン○○さんに対する労災承認判定を歓迎する。ファン○○さんの労災承認は、①夜間勤務履歴を広く認めた点、②ライン出入の準備空間(スモークルーム)での有害物質への曝露を認めた点、③半導体/ディスプレイ清掃労働者初の労災認定事例である点で、意味が大きい。

① 夜間勤務の履歴を広く認める

乳がんの場合、夜間勤務が主要な有害要因として知られている。勤労福祉公団の「職業性がん災害調査及び判断要領」によると、月4回の夜間作業基準で、夜間作業に25年以上従事した場合は業務関連性があり、この基準を満たさなくても他の発がん要因に同時に曝露した場合は、複合影響を考慮して判断しなければならない。

ファン○○さんの場合、30年以上の勤務歴の間に夜間勤務を多くしてきた。ミシン工の時期、週1~2回徹夜で作業し、タクシー運転手として24時間の隔日勤務、療養保護士として三交代勤務、ディスプレイ清掃労働者としても、三交代勤務をした。このような点を勘案すれば、ファン○○さんの乳がんは十分に業務上の疾病として認められる。

しかし、韓国社会は夜間勤務が一般化され過ぎている。産業災害を認める過程では、夜間勤務に対して厳しすぎる基準が適用されることもある。勤労福祉公団の業務関連性に関する専門調査の必要性の有無に関する諮問結果では、ミシン会社の週に1~2回の徹夜作業は夜間勤務とは認めず、ディスプレイ掃除労働者の時期は、交代勤務は夜間勤務回数が一般の三交代勤務より少ないという理由で、危険性を低くした。

このような厳格な物差しは、夜間作業「25年以上」という文言だけに拘泥し、その基準が「月四回の夜間作業」であることを忘れているという点で不当である。幸い、ソウル業務上疾病判定委員会は、ファンさんの勤務履歴全般を夜間勤務として認めた。この判定のように、勤労福祉公団は、頻度が比較的低い夜間勤務についても夜間勤務期間と認めなければならない。

② ライン出入の準備空間(スモークルーム)での有害物質曝露を認定

ファン○○さんが主にディスプレイ工場で掃除をしていた空間は、「スモークルーム」である。「スモークルーム(smock room)」とは、クリーンルームになっているディスプレー工場のラインに入るための準備空間が必要なため、ディスプレー工場の作業員は、スモークルームで服(普段着→防塵服)を着替えてラインに入ったり、ラインから出て来て服を着替える。

電子産業の職業病で、これまで主に注目を集めてきたところは生産設備のあるクリーンルームだった。ファン○○さんの作業空間であるスモークルームなど、周辺空間の危険性については十分に確認されなかった。しかし、周辺空間でも有害物質の曝露が疑われ、被害者が発生している。

「ファン○○さんと一緒にスモークルーム(半導体)を掃除していた乳がん被害者のソン□□さん(ソン○○さんとは別の人)は、「スモークルームの場合、ラインから出た作業者らが服や靴、手袋などに化学物質を着けてくる」と話した。作業員たちが使った服を整理する時に、その服から臭いがしたという。実際、産業安全保健研究院の「半導体製造事業場で働いている労働者の作業環境および有害要因曝露特性研究」でも、スモークルームから、ライン内の化学物質が検出されていると指摘している。

ただ、これまでにスモークルームの危険性が公式に認められたことはない。労災申請は、ファン○○さんが初めてで、支援補償(会社の補償)は労災より敷居が低く設計されているが、スモークルームでの被害者は認めていなかった。ところが、ソン□□さん、ファン○○さんのようにスモークルームでの被害者が現れ、幸いにもスモークルームの危険性が認められている。サムソン支援補償委員会も、スモークルームの作業者を支援補償対象に含め、勤労福祉公団もスモークルームの作業者を初めて労災と認定した。今回の判定におけるスモークルームのように、様々なクリーンルームの周辺空間も徐々に危険性が確認され、認められなければならない。

③半導体・ディスプレー清掃労働者が初めて労災認定された事例

半導体ディスプレイ工場の労働者としては、オペレーターやエンジニアがよく知られているが、実はその他にも様々な労働者が働いている。それらの場合、存在も社会的に未だはっきりしていない状況なので、曝露可能な危険が何か、被害がどれほど存在するのかなどは、ベールに包まれている。

パノリムにはこれまで14人の清掃労働者の被害通報があった。電子産業清掃労働者の職業病が未だ社会的によく知られていないにもかかわらず、自ら職業病を疑って相談する人がこれ程度いるということは、驚くべきことだ。具体的なパノリムへの清掃労働者の被害通報の現状は以下の通りである。

  • ソン○○(乳がん) - OLED清掃労働者 * 労災公団不承認後、訴訟進行中
  • ジン○○(乳がん) - 半導体清掃労働者 * 労災不承認
  • ファン○○(乳がん) - OLED清掃労働者 * 労災承認
  • ○○○(乳がん) - 半導体清掃労働者
  • ソン□□(乳がん) - 半導体清掃労働者
  • ○○(乳がん) - OLED清掃労働者
  • パク○○(白血病) - その他クリ-ンル-ム清掃労働者
  • パク○○(リンパ腫) - 半導体清掃労働者
  • ○○○(脳腫瘍) - OLED清掃労働者
  • イ○○(すい臓がん) - 半導体清掃労働者 * 労災進行中
  • パク○○(皮膚癌) - LCD掃除労働者
  • キム○○(胃がん) - LCD清掃労働者
  • イ○○(不詳の腫瘍) - 半導体清掃労働者
  • クォン○○(ル-プス) - 半導体清掃労働者 * 労災不承認

ファンさんは電子産業清掃労働者の職業性がんで初の労災認定者である。以前は、清掃労働者の場合、曝露が一般作業者より低いと見られて労災と認められなかった。しかし、被害者たちの供述を聞くと、化学物質と推定される物質を綿布で拭いた後、その綿布を取り除くとか、漏れた化学物質があればリトマス試験紙を入れてその色を見て措置するなど、かなり危険だと推測されることが多かった。今回の判定をきっかけに、電子産業の清掃労働者の被害事例が多く知られるべきであり、清掃労働者の陳述について、韓国社会がもっと注目しなければならない。

2022年1月5日 半導体労働者の健康と人権を(パノリム)