労災申請に報復した事業主に初の懲役刑 2021年12月29日 韓国の労災・安全衛生

資料写真チョン・ギフン記者

労働者が労災補償を申請したとして『報復行為』を行った事業主が懲役刑を宣告された。労災保険法111条の2違反で事業主が刑事処罰を受けた初めてのケースだ。労災保険法111条の2は、「事業主は、労働者が保険給付を申請したことを理由に、労働者を解雇したりその他労働者に不利益な処遇をしてはならない」と規定している。違反すれば、2年以下の懲役または2千万ウォン以下の罰金刑に処される。

大宇造船溶接工、骨折により保険給与申請

法曹界によると、昌原地法は22日、証拠偽造教唆・労災保険法違反で裁判に附された大宇造船海洋の下請会社の代表のA被告に、懲役1年、執行猶予2年の判決を言い渡した。一緒に起訴された下請け会社の生産部長は罰金400万ウォンを、搭載班の班長と現場所長は罰金200万ウォンを、それぞれ言い渡された。

下請け会社の溶接工のBさんは2019年10月頃、造船所で溶接作業をしていて骨折し、労災を申請して昨年3月まで療養した。ところが、A代表はBさんが労災を申請したという理由で、現場所長に指示して、昨年6月まで残業と特別勤務ができないようにした。

金属労組大宇造船支会は、代表に「Bさんに対する残業と特別勤務の制限を直ちに中止しなければ刑事告発する」と、是正を要求した。代表は生産部長に、残業と特別勤務を制限した理由について、「大量の品質不良事故」のように見せかけた品質問題損失報告書を作成するよう指示した。

その後、代表は警察の調査に「Bが溶接作業をする過程で大量の品質不良事故を起こしたため、懲戒レベルで残業と特別勤務を制限した」として、労災保険法違反の疑いを否認し、改ざんした品質問題損失報告書を提出した。

生産班長と搭載班長も品質不良に関する作業内訳を偽造し、品質不良を修正した作業時間を44時間から79時間に書き換えた。検察は、代表が生産部長に証拠を偽造するよう教唆し、現場の所長、生産部長、搭載班の班長は、他人の刑事事件に関する証拠を偽造したとみて起訴した。

「捜査権妨害は重犯罪、実刑判決が必要」

裁判所は「保険給付を申請したことを理由に、労働者に不利益な処遇をした」として、被告らをすべて有罪とした。裁判所は被告らが過ちを反省し、同種の前歴がないという点などを有利な情状として酌量した。

今回の判決は、労災申請の報復行為に警鐘を鳴らす契機になると想われる。クォン・ヨングク弁護士は「これまで労災申請による不利益は社内問題として捉えられ、労働者も不法行為と認識できないことが多かった」が、「今回の判決が、労災を申請したという理由で不当な待遇を受けた他の労働者の事件にも影響を与えるだろう」と意味付けした。

執行猶予の判決が軽すぎるという意見もある。ソン・イクチャン弁護士は「労災申請を理由に不利益を与えるのは、国が運営する労災保険制度への接近を妨害するもので、犯罪行為」とし、「このような犯罪を隠すために証拠を偽造したことは、捜査権の行使を妨害する重犯罪に該当するため、執行猶予ではなく実刑が宣告されるべきだ」と指摘した。

一方、労災保険法違反に対する政府の捜査の専門性も強化される見通しだ。国会は今月9日、「司法警察官吏の職務を遂行する者とその職務範囲に関する法律」(司法警察職務法)の改正案を議決した。これまで警察が行ってきた労災保険法違反事件の捜査を、勤労監督官に付与する内容だ。来年1月27日から施行される改正案には、勤労監督官の司法警察職務範囲に「重大災害処罰などに関する法律」(重大災害処罰法)に規定された『重大産業災害事業主と経営責任者などの処罰』、『重大産業災害両罰規定』と産業災害保険法に規定された『不利益処遇禁止違反』に関する犯罪が含まれている。

2021年12月29日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者

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