「労災を防ごう」変化した企業ー危険を知らせる安全線にCCTV設置 2021年12月27日 韓国の労災・安全衛生

2018年12月、泰安火力の非正規職労働者・金鎔均君の死亡事故の現場調査で、一人の労働者が、石炭を片付けるために狭い隙間から入ろうとする様子を再演している。金鎔均君の死後、落ちた石炭の除去作業には無人回収設備と水洗い装備が導入されるなど、一部の施設が改善された。/泰安火力市民対策委提供

今年4月、慶尚南道・密陽の金属製品熱処理企業「三興熱処理」工場の内部には、CCTVが5台、新たに設置された。同社の社員たちは、熱処理の後工程に使われる機械「ショットブラスト」の残余物を確認するために、高さ1.5mの機械を1日に20回ずつ上下しなければならず、墜落の危険に曝されていた。「重大災害処罰等に関する法律」(重大災害処罰法)の施行を前に、現場を巡回した代表理事は、「機械に乗らなくても内部を確認できるように」指示した。今年の8月は、フォークリフトと労働者が混在して働く作業場で、交通事故の危険性を減らすために、歩道と車道を区分する境界線も引いた。

慶尚南道・密陽の金属製品の熱処理企業「三興熱処理」は、フォークリフトと作業者との衝突を防止するため、歩道と車道を区分する境界線を引いた。/三興熱処理提供

今年の1月27日からの50人以上の事業所への重大災害処罰法の施行を前に、企業が忙しく動いている。重大災害処罰法は、事業場で死亡事故など重大災害が発生した場合、事業者や経営責任者に1年以上の懲役や10億ウォン以下の罰金などの責任を問う法だ。法の成立後に、一部メディアは「法が余りに包括的だ」として、「法の内容が曖昧で、何をすべきか分からない」という指摘と共に、「企業の代表を監獄に送る法」という批判を浴びせた。しかし一線では、多くの企業が同法の目的である産業災害を予防するために奔走している。

平澤のある製造会社は、2ヵ月前から週一回、労働組合の幹部や安全管理者などが現場を巡回しながら、作業者からの危険に関する意見を纏めている。安全業務関連の組職と予算を拡大・改編し、新規人材も二人採用した。同社の関係者は、「以前は見過ごしていた危険要因も、今は予防措置を執り、新入社員にも8時間の安全教育を終了してから現場に投入している。」「会長を大変な目に遭わせるわけにはいかないので」と話した。

労災死亡事故が多く、今年、雇用労働部から特別勤労監督を受けた企業もシステム改善に乗り出している。勤労監督で毎年安全予算が減額されているという点を指摘された大宇建設は、最近、最高経営者の直属の組織である品質安全室を「安全革新本部」に格上げし、担当人員も45人から52人に増やした。現代建設も「安全保健管理者が契約職である上に他部署への転出が多く、業務に責任感を持ちにくい」と指摘された後、安全保健管理者の一部を正規職に転換し、正規職の新入社員も新たに採用した。

慶尚南道・密陽の金属製品熱処理企業「三興熱処理」は、墜落事故の危険性を減らすためにショートブラスト機械にCCTVを設置した。以前は1.5mの機械の上に上がっていたが、今は画面を通して内部の残余物を確認できるようになった。写真はショートブラストを映すCCTVの画面/三興熱処理提供

一人代表理事体制を、最高経営責任者と最高安全管理責任者(CSO)の二人代表理事体制に変える案を検討している企業も目立つ。チョン・ジウォン常任顧問は、「規模が大きな事業場は、現実的に代表が一人で安全を守ることはできない。安全に専門性のある最高安全責任者を追加して選任し、二人が安全を分担する方法を検討していると聞いている」と話した。

零細企業も、これまでいい加減に運営してきた安全関連の内部指針を、法に則って補完している。パク・ソングン弁護士は、「売上高が年間200億ウォン水準の地域の靴下工場や下着工場も、50人以上の事業場であれば、重大災害処罰法の適用対象だ。こうした企業は、協力会社を選定する際に評価体系を作ったり、会社が立てた安全保健目標に、重大災害処罰法の施行義務を入れていないケースが多い」が、「こうした部分を終わらせるためのコンサルティングを行っている」と話した。パク弁護士は、「零細企業が参考にするような業種別の案内資料が必要だ」として、労働部は発刊を急げと催促した。労働部が業種別の特性を反映して作成した「安全保健管理体系自律点検表」は、倉庫と運輸業、廃棄物処理業など、一部の業種に限定されている状況だ。

安全強化措置の大半が費用を伴うため、資金事情が劣悪な中小企業は、法施行への準備に困難をきたしたりもしている。ある法人の弁護士は、「安全・保健管理を外注化する中小企業が多いが、専門の管理者をなるべく置くように助言している。専従の人材を選ぶ費用の支援も、政府が検討する必要がある。」「大企業も、協力会社の従事員に対して安全保健義務を負うため、協力会社の安全強化を積極的に支援すべきだ」と話した。

専門家たちは、重大災害処罰法は長期的に産業現場の事故発生率を下げるのに効果があると、口を揃える。ソン・イクチャン弁護士は「法施行の初期には、単純に刑事処罰を免れようとして安全を強化することもあるが、徐々に定着すれば、事業主が自ら危険を見付けて解決する経験が積もると思う。」「ただ、事業主が一方的に進めるよりも、安全保健専門家に諮問を受けたり、労働者と労働組合の参加が保障されれば、もっと充実した方向で、事故のリスクが減るだろう」と話した。

2021年12月27日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン、パク・テウ記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1024878.html