国連人権理事会決議等に対するA-BAN等による声明-2021年10月15日 アジア・アスベスト禁止ネットワーク(A-BAN)他

先週、国際機関がとった行動は、気候変動の緊急事態に照らして従来どおりのビジネスはもはや持続可能な選択肢ではないという意識の高まりを示したものである。国連人権理事会-国連の主要な人権機関-と国際労働機関-世界的な労働者の保護を任務とした機関-は、21世紀における人生のあり方を根本的に見直すことを求めた。

2021年10月8日、賛成40票・棄権4票の投票により国連人権理事会は、環境ハザーズなしに生活を送る権利を認めるとともに、「突発的及び緩慢に発生する災害を含む気候変動の悪影響が、いかに人権の完全かつ効果的な享受に影響を与えているか」を監視するための特別報告者を任命する決議を採択した。

アジア・アスベスト禁止ネットワーク(A-BAN)コーディネーターの古谷杉郎によれば、この決議は、アジアのアスベスト使用中止を求める活動家にとって「大きな利益」になるだろう。

「きれいな空気を吸い、新鮮な水を飲む人権が世界的に認められることは、クラス1の発がん物質であるアスベストの使用禁止を各国政府に求める声を強化する。この決議に対する4か国の棄権のうち3つが、ロシア、インド、中国というアスベストに利害関係をもつ国であったことは驚くべきことではない。恥ずかしながら4番目の棄権国は日本で、日本は地球を守るための国際的な努力を裏切ったことについていまだ十分な説明をしていない。

2021年9月に開催されたA-BANオンライン会議で参加者から報告された情報は、気候変動による異常気象の増加を経験しているアジア諸国におけるアスベスト使用の深刻な影響を示している。深刻化するあらしのなか、建築環境への物理的ダメージによるアスベスト汚染のため、クリーンアップ作業はますます複雑化している」。

国連人権理事会が致死的な有害物質にさらされない生活を送る権利を認めた同じ日に、国際労働機関(ILO)は、6千万人以上が働く産業部門[繊維・衣料・皮革・履物産業]における安全衛生に関する実施規範を採択した。ILOの発表文書によれば、新しい規範は「すべての主要なハザーズとリスクを根絶、低減及び管理する方法について、包括的かつ実践的なアドバイスを提供する」ものである。これには、建物や火災安全はもちろん、化学物質や人間工学的・物理的ハザーズ、工具、機械、設備が含まれる。

この進展について、[オーストラリア]労働組合海外支援機関-APHEDAのケート・リーは次のように語る。

「このニュースは、安全かつ安心な条件のもとで生計を立てる普遍的か権利を確保するためにキャンペーンを展開している労働組合や労働団体に追い風となる。パンデミックや気候変動の破壊的影響によって暴露された職場の不公正さは、よりグリーンな製品、よりクリーンな労働慣行と持続可能な技術によって対処されなければならない。アスベストの使用の継続は、新たなガイドラインの倫理にも規定にも合致しない」。

労働安全衛生は、結社の自由、団体交渉、差別・強制労働・児童労働からの保護と並んで、ILOによって基本的権利の地位を与えられなければならない。これは、2022年6月のILO総会で実現するものと期待されている。ソリダー・スイス[スイスの労働組合・社会民主党による海外支援機関]のベルンハルト・エロルドは次のように言う。

「労働安全衛生をILOの基本的権利にすることは、クリソタイルを含むすべてのアスベストの使用を世界的に中止するために、政府と使用者の責任を高めることにもつながる。それは、アスベストを使用し続けることが人権侵害になるということを意味するだろう」。

あと2週間でCOP26-第26回国連気候変動会議-が、1世紀以上にわたってアスベストの産業利用を開拓し、発展させてきた国、イギリスを議長国にしてグラスゴーで開催される。その結果、イギリスは、世界でもっともアスベストがんである中皮腫の発生率が高い国となり、毎年5千人以上の人々が勝て、職場、学校でのアスベスト曝露によって亡くなっている。

「気候変動の緊急事態に対処すると同時に、『よりよく、よりグリーンに再生する』というイギリスの指導者たちが表明した願望は、われわれすべてが共有するものである」と、アスベスト禁止国際書記局(IBAS)コーディネーターのローリー・カザンアレンは言う。「アスベストの使用を禁止し、国のインフラからアスベスト危険性を取り除くことは、このシナリオの基本的構成要素である。アスベストのない未来を!」。

※ブラジル・アスベスト曝露者協会(ABREA)もこの声明に名を連ねている。

http://ibasecretariat.org/presss_release_asb_tech_unsustainable_unacceptable_oct_15_2021.pdf

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