日毎に拡大する建築物解体市場・・・崩壊事故の反復、どう防ぐか 2021年9月1日 韓国の労災・安全衛生

光州の再開発区域で、撤去中だった5階の建物が崩壊してバスを襲った。消防隊員が崩れた建築物に埋ったバスから乗客の救助作業を行ったが、この事故で9人が亡くなり8人が負傷した。/ニューシス

国内の建築物の50%以上が潜在的な解体対象建築物と推定され、今後、建物解体工事市場の規模が持続的に拡大すると予想される。光州の再開発現場での崩壊事故のような災害が繰り返されないように、制度的な不備を補完すべきだという報告書が出た。

安全保健公団中央事故調査団が『建築物解体工事の問題点と事故予防方案』などを扱う『重大事故イシューリポート』を発行した。

この報告書によれば、2020年12月現在、全国の建築物の内、竣工から20年以上経った老朽建築物は58.8%で、潜在的な解体対象と推定される。特に、最近の解体工事の主要な市場を形成している35年以上の老朽建築物は、31.4%にもなるという。

問題は、最近の解体工事の対象になる建築物は、かつての再開発の時とは規模が違うという点だ。過去の解体工事の対象のほとんどは、一般の掘削機で容易に解体が可能な1~2階の建物だったが、最近の解体しなければならない建築物は、5階以上の高層鉄筋コンクリートの建物だ。これに伴い、作業の難易度と危険性が同時に高まる傾向だ。

市場規模が大きくなって、解体工事中の崩壊事故も繰り返し発生している。

2017年1月7日、ソウルの楽園洞で建物解体中の崩壊事故で二人が亡くなり、二人が怪我をした。2019年7月4日、ソウルの蚕院洞でも建物を解体中に崩壊事故が発生して、一人が亡くなり、三人が重症を負った。今年は、4月30日にソウルの長位洞の再開発現場で崩壊事故が発生して一人が亡くなり、6月9日の光州の鶴洞再開発現場で発生した崩壊事故では、九人が亡くなり八人が重症を負った。

公団中央事故調査団は繰り返される事故の原因として、△安全より実益を優先視する事業構造、△危険予防のための現場監視機能と指揮・監督体系の不備、△解体計画書の作成者と実行者の間の乖離、などを指摘した。

報告書で調査団は、「作業日程の短縮と、利潤追求だけに重点を置いた事業の進行が蔓延し、裏面契約と多段階不法再下請け等による工事費の削減などが、解体工事の事故の危険を大きくしている」と分析した。特に、「裏面契約と再下請けの慣行は、意志決定体系と工事責任の関係が混濁していて、工事の過程で問題が発生しても直ちに対応することを難しくするなど、危険管理の不確実性を高めている」と指摘した。

また、事業参加者などが『解体計画書』を許認可の手段とだけ認識し、第三者に代行して作成させることで形式的な計画が樹立されている点、工事の力量が足りない零細業者が解体計画と異なる危険な作業を強行しても、元請けがこれを黙認・ほう助する状況が頻繁に発生している点、解体計画履行の有無を確認すべき監理者・許可権者の管理・監督のずさんさによって現場の危険が摘発されない実情、などを指摘した。

実際、光州の崩壊事故の場合、施工者であるHDC現代産業開発が、撤去工事をハンソル企業に発注したのに、実際の工事は光州のペクソル建設が行っていたことが明らかになった。また、石綿の除去工事は、住宅組合がタウォンENCと契約したが、バクソル建設がまた別の下請け業者の免許を借りて施工したことが明らかになり、管理・監督機関である東区庁と労働庁に対して捜査機関の押収捜索も行われている。

調査団は繰り返される事故を防ぐために、△構造安全専門家の現場参加の拡大、△発注者と元請けが主導する指揮・監督体系の整備、△解体工事参加者の資格基準の制限と施工安全力量の強化、△危険要因の事前監視機能の強化、などが必要だとした。

調査団は「解体建築物の事前調査に、構造の専門家を含む各種の専門家が一緒に参加するようにし、現場の実情に合った解体計画を樹立して履行されるようにすべきだ」と強調した。また「元請けが先頭で、総体的な安全管理責任を全うできるように、工事指揮・監督体系を整備して、事故予防に万全を期すべきで、工事の危険度によって解体工事の事業場を等級化し、工事を施工できる建設業者の資格基準も細分化して制限する必要がある」とした。

安全保健公団が隔月で発行するウェブ用雑誌『重大事故イシューリポート』は、今年3月に創刊して今回が四回目の発刊だ。最近争点になった重大事故の内、政策と制度的な示唆点のある事案を中心に製作されている。

安全保健公団のキム・ナムド団長は「重大事故の精密な企画調査によって原因を明らかにすることが、事故予防の第一歩」とし、「事故原因の調査とイシュー・リポートの発刊等で、再発防止対策が現場で具現化され、死亡事故の縮小に寄与できるように最善を尽くす」とした。

2021年9月1日 民衆の声 イ・スンフン記者

https://www.vop.co.kr/A00001594869.html