労働安全衛生法及び大気汚染防止法に基づく石綿(アスベスト)規制の概要-規制内容の比較

[出典]改正石綿則の周知・広報事業ポータルサイト「石綿総合情報ポータルサイト」掲載の比較表を編集
[凡例]
【安衛法令】:労働安全衛生法関係法令の規制内容
【大防法令】:大気汚染防止法関係法令の規制内容
蛍光マーカー表示:規制内容が異なる部分

  1. 事前調査の対象
    1.1 対象物
    1.1.1
    【安衛法令】 建築物
    【大防法令】 同じ
    1.1.2
    【安衛法令】 工作物
    【大防法令】 同じ
    1.1.3
    【安衛法令】 鋼製の船舶
    【大防法令】 規定なし

    1.2 対象作業
    【安衛法令】 解体又は改修の作業工事
    【大防法令】 同じ
    1.2.1 適用除外
    1.2.1.1
    【安衛法令】 除去する材料に石綿が含まれていないことが明らかなもので、除去時に周囲の材料を損傷させるおそれのない作業
    【大防法令】 同じ
    1.2.1.2
    【安衛法令】 材料に極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業
    【大防法令】 同じ
    1.2.1.3
    【安衛法令】 現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業
    【大防法令】 同じ
    1.2.1.4
    【安衛法令】 石綿が使用されていないことが確認された特定の工作物
    【大防法令】 同じ
    1.2.1.5
    【安衛法令】 石綿が使用されていないことが確認された特定の船舶
    【大防法令】 規定なし
  2. 事前調査に関する規制
    2.1 調査方法
    【安衛法令】 設計図書等の文書及び目視による確認目視困難な場合は、目視が可能となった時点で調査
    【大防法令】 同じ
    2.1.1 例外
    2.1.1.1
    【安衛法令】 既に事前調査が行われている場合はその結果の記録の確認
    【大防法令】 同じ
    2.1.1.2
    【安衛法令】 インベントリがある船舶はインベントリの確認
    【大防法令】 規定なし

    2.1.1.3
    【安衛法令】 平成18年9月以降に新築された建築物又は工作物は、着工年月日の確認
    【大防法令】 同じ
    2.1.1.4
    【安衛法令】 平成18年9月以降に製造された船舶は、着工年月日の確認
    【大防法令】 規定なし

    2.1.1.5
    【安衛法令】 禁止が猶予されていたガスケット又はグランドパッキンを禁止日以降に設置した工作物は、設置日の確認
    【大防法令】 同じ
    2.1.1.6
    【安衛法令】 禁止が猶予されていたガスケット又はグランドパッキンを禁止日以降に設置した潜水艦は、設置日の確認
    【大防法令】 規定なし

    2.2 調査者要件
    【安衛法令】 建築物の事前調査は、以下のいずれかの者が実施する義務(③は一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部の調査に限る)
     ①特定建築物石綿含有建材調査者
     ②一般建築物石綿含有建材調査者
     ③一戸建て等石綿含有建材調査者
     ④日本アスベスト調査診断協会登録者令和5年9月30日までに登録され、調査時点でも登録されている者に限る
    【大防法令】 同じ
    2.3 分析調査
    【安衛法令】 事前調査を行っても石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは分析調査を実施する義務(ただし石綿等が使用されているものとみなして措置を講じるときは分析調査は不要)
    【大防法令】 同じ
    2.4 分析調査者要件
    【安衛法令】 分析調査は、厚生労働大臣が定める講習を受講し修了考査に合格した者又は同等以上の知識、技能を有すると認められる者が実施する義務
    【大防法令】 規定なし

    2.5 調査結果の保存
    【安衛法令】 事前調査又は分析調査の結果に基づき作業場所、調査終了日、建築物等の着工日、建築物等の構造、事前調査方法、石綿等の使用の有無などについて記録を作成し、調査終了日から3年間保存する義務
    【大防法令】 起算日が異なるが、他は同じ。石綿則は、調査終了日 大防法は、工事終了日
    2.6 調査結果の掲示
    【安衛法令】 解体等作業の作業場の見やすい箇所に、事前調査又は分析調査の終了日及び調査結果(石綿等の使用の有無)の概要を掲示する義務
    【大防法令】 解体等工事の現場において公衆に見やすいよう、事前調査結果等(石綿等の使用の有無、調査終了日等)を掲示する義務
    2.7 調査結果の説明等
    【安衛法令】 規定なし
    【大防法令】 元請業者から発注者へ、調査結果等及び解体等工事が特定工事に該当する場合は特定粉じん排出作業等について説明する義務

     また、当該説明の書面の写しを当該解体等工事が終了した日から3年間保存する義務
  3. 作業計画及び届出
    3.1 作業計画
    【安衛法令】 解体等作業の方法・順序、石綿等の粉じんの発散防止抑制措置、ばく露防止方法を含む作業計画を定める義務
    【大防法令】 作業計画の内容が一部異なる(特定粉じん排出作業に係る作業に限定、ばく露防止方法は不要等)
    3.2 計画の届出
    【安衛法令】 吹付石綿等及び石綿含有保温材等の除去、囲い込み、封じ込めを行う場合は、作業計画等を届出する義務(※事業者が労働基準監督署に届け出)
    【大防法令】 同じ(※発注者又は自主施工者が都道府県等に届け出)
    3.3 事前調査結果等の報告
    【安衛法令】 以下のいずれかに該当する工事は事前調査結果、石綿等の粉じんの発散防止抑制措置、ばく露防止方法等を電子システムで報告する義務(※届出先は労働基準監督署)
     ①床面積80m2以上の建築物の解体工事
     ②請負代金100万円以上の建築物の改修工事
     ③請負代金100万円以上の特定の工作物の解体工事又は改修工事
    【大防法令】 届出事項が一部異なる(石綿等の粉じんの発散防止抑制措置、ばく露防止方法は不要)(※届出先は都道府県等)
  4. 作業場所の負圧隔離が必要な作業
    4.1 措置対象
    【安衛法令】 吹付石綿、石綿含有保温材等の除去、封じ込め又は囲い込みの作業
    【大防法令】 同じ
    4.2 措置内容
    【安衛法令】 以下の措置を講じる義務
     ①作業場所を隔離すること
     ②作業場所に集じん・排気装置を設置し排気すること
     ③作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること
     ④作業場所及び前室を負圧に維持すること
     ⑤作業開始後速やかに及び集じん・排気装置に変更を加えたときに、集じん・排気装置の排気口からの石綿等の粉じんの漏えいの有無を点検すること
     ⑥作業開始前及び中断時の負圧を点検すること
     ⑦⑤及び⑥の点検で異常を認めたときは作業を中止し、必要な措置を実施すること
     ⑧石綿等を常時湿潤な状態のものとすること
     ⑨隔離解除前に石綿等の粉じんの処理、除去部分の湿潤化、事前調査者又は石綿作業主任者による除去完了の確認を実施すること
    【大防法令】 隔離解除前の確認が一部異なる(封じ込め又は囲い込みについても、隔離解除前にそれらの作業が完了したことを事前調査者又は石綿作業主任者が確認することが義務)
  5. 作業場所の隔離(負圧は不要)が必要な作業
    5.1 措置対象
    【安衛法令】
     ①石綿含有仕上げ塗材を電動工具ディスクグラインダー又はディスクサンダーに限るを用いて除去する作業
     ②けい酸カルシウム板第1種を切断等の方法により除去する作業
    【大防法令】 同じ
    5.2 措置内容
    【安衛法令】 以下の措置を講じる義務
     ①作業場所をビニルシート等で隔離すること
     ②常時湿潤な状態に保つこと
    【大防法令】 同じ
  6. その他の石綿等に係る作業
    6.1 措置対象
    【安衛法令】 負圧隔離又は隔離が必要な作業以外の石綿等に係る作業
    【大防法令】 同じ
    6.2 措置内容
    【安衛法令】 以下の措置を講じる義務
     ①石綿等を湿潤なものとすること
     ②石綿含有成形板を除去するときは切断等以外の方法によること(技術的に困難な場合は①の措置を講じる)
     (※切断等以外の方法とは原形のまま建築物等から取り外すこと)
    【大防法令】 同じ
  7. 吹付石綿等がある建築物等に関する措置
    7.1 措置対象
    【安衛法令】吹付石綿又は石綿含有保温材等がある建築物、船舶又は工作物に労働者を就業させる場合
    【大防法令】 規定なし
    7.2 措置内容
    【安衛法令】以下の措置を講じる義務

     ①吹付石綿等が損傷、劣化している場合は除去、封じ込め又は囲い込みをすること
     ②労働者を臨時に就業させるときであって、吹付石綿等が損傷、劣化している場合は、呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させること
    【大防法令】 規定なし
  8. 全ての石綿等に係る作業に共通して求められる事項
    8.1 措置対象
    【安衛法令】石綿等の取扱い作業
    【大防法令】 規定なし
    8.1.1 作業主任者
    【安衛法令】石綿作業主任者を選任し、作業方法の決定、労働者の指揮、保護具の使用状況の監視等を行わせること
    【大防法令】 規定なし
    8.1.2 特別教育
    【安衛法令】作業従事者に石綿の有害性、発散抑制措置、保護具の使用方法等に関する教育を行うこと
    【大防法令】 規定なし
    8.1.3 保護具の使用
    【安衛法令】作業従事者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させること
    【大防法令】 規定なし
    8.1.4 立入禁止、掲示
    【安衛法令】関係者以外の立入禁止、石綿取扱い作業場所である旨及び石綿の有害性等に関する掲示義務
    【大防法令】 規定なし
    8.1.5 喫煙禁止
    【安衛法令】石綿取扱い作業場所の喫煙・飲食禁止及びその旨の表示義務
    【大防法令】 規定なし
    8.1.6 休憩室の設置
    【安衛法令】作業場所以外の場所に休憩室の設置義務
    【大防法令】 規定なし
    8.1.7 洗浄設備の設置
    【安衛法令】洗顔、洗身又はうがいの設備、更衣設備及び選択のための設備の設置義務
    【大防法令】 規定なし
    8.1.8 容器等
    【安衛法令】石綿等の運搬、貯蔵時の堅固な容器の使用又は確実な包装及び当該容器等への表示等する義務
    【大防法令】 規定なし
    8.1.9 健康診断の実施
    【安衛法令】常時石綿等の取扱い作業に従事する労働者に対する健康診断の実施する義務
    【大防法令】 規定なし
  9. 作業の記録
    9.1 労働者ごとの記録
    【安衛法令】石綿等の取扱い作業に従事した労働者について、1月ごとに、氏名、作業概要、作業従事期間等を記録し、40年間保存する義務
    【大防法令】 規定なし

    9.2 作業ごとの記録
    【安衛法令】石綿使用建築物等解体等作業ごとに、作業の実施状況等について写真等による記録を作成し、3年間保存する義務
    【大防法令】 同じ
    9.3 発注者への作業結果の報告等
    【安衛法令】規定なし
    【大防法令】 元請業者から発注者へ特定粉じん排出等作業の実施状況の概要等について報告する義務また、当該説明の書面の写しを当該特定工事が終了した日から3年間保存する義務
  10. 発注者に求められる措
    10.1 発注者の責務
    【安衛法令】発注者は、請負人に対し石綿等の使用状況等を通知するよう努めるとともに、事前調査等及び写真等による作業の実施状況の記録が適切に行われるよう配慮する義務
    【大防法令】 発注者は、元請業者が行う調査に要する費用を適正に負担する等必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力する義務
    10.2 発注条件
    【安衛法令】注文者は、事前調査等の結果を踏まえた作業方法、費用、工期等について法令遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮する義務
    【大防法令】 発注者は、元請業者に対し、施工方法、工期、工事費その他当該特定工事の請負契約に関する事項について、作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮する義務

〇解体工事等石綿対策一定強化/事前調査結果等の電子報告も-改正石綿障害予防規則等10月以降施行
〇2020年9月改正「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」
〇石綿障害予防規則等改正案と全国連の意見/大防法改正案成立と附帯決議
〇[石綿則・大防法による石綿対策の見直し]作業完了検査義務付け、濃度測定義務は見送り-事前調査実施者要件、大防法罰則強化も(安全センター情報2020年3月号)