ベビーパウダー(タルク)訴訟:上訴裁判所がジョンソン・エンド・ジョンソンに20億ドルの損害賠償命じる、卵巣がん女性に-2020年6月23日付けニューヨークタイムズ記事

ミズーリの上訴裁判所は、ジョンソン・エンド・ジョンソンはそのベビーパウダーにアスベストが入っていることを知っていたと言って、同社に対する損害賠償訴訟で20億ドル以上を支持した。

ミズーリ上訴裁判所は火曜日[2020年6月22日]、卵巣がんの原因が同社の象徴的なベビーパウダーを含めたタルク製品にあるとする女性たちの損害賠償訴訟で、ジョンソン・エンド・ジョンソンと一子会社に21億ドル支払うことを命じた。

この決定は、2018年7月になされた、女性たちに対する補償及び懲罰損害として46.9億ドルという記録賠償額を半分以上減額したものだった。

ジョンソン・エンド・ジョンソンはなお、そのタルク製品がアスベストに汚染されていてがんを引き起こしたと主張する消費者による数千件の訴訟に直面している。同社は先月、北米ではタルクからつくられたベビーパウダーの販売を中止するが、世界の他の部分では同製品の販売を継続すると発表した。

同社の広報は、ジョンソン・エンド・ジョンソンはミズーリ最高裁判所による決定の見直しを追求し、そのタルク製品を安全なものとして守り続けるだろうと話した。

「われわれは、事実の不完全な提示に基づく、これは根本的に欠陥のある裁判だと信じ続けている」と広報のキム・モンタニは言う。「われわれはのタルクは安全でアスベストフリーであり、がんを引き起こさないと確信し続けている」。

原告側代理人のマーク・ラニアーは消費者に、家庭に持っているベビーパウダーを廃棄するよう促した。この裁判の6人の原告は裁判がはじまる前に亡くなり、5人は陪審裁判が2018年に終了して以降に亡くなった、と彼は言う。

これは民事訴訟であることから、「あなたにできることは彼らに賠償を課すことであり、業界が目を覚まし、注目するのに十分な補償を課す必要がある」とライナーは付け加えた。

決定のなかで上訴裁判所は、1960年代にまでさかのぼる同社の内部メモは、そのタルク製品-「金の卵」「会社の信頼マーク」「聖なる牛」と呼ばれていた-がアスベストを含有し、その鉱物は危険でありうることを示していたと指摘した。

「すべての証拠から導き出される合理的な推論は、利益に突き動かされ、被告は、彼らの製品中のタルクが卵巣がんを引き起こすことを知っていたにもかかわらず、消費者の安全を無視したということである」と裁判所はした。

原告らは、「悪意のある動機や無謀な無関心のために、被告らがとんでもない行動をとったという明確かつ納得のいく証拠を示した」と裁判所はした。

同裁判所は、何人かの原告の主張を却下して、補償的損害として5.5億ドル及び懲罰損害として41.4億ドルのもともとの裁定額を減額し、実質的損害として5億ドル及び懲罰損害として16.2億ドルを裁定した。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、その製品中にアスベストを検出したのは欠陥のある検査方法と見掛け倒しの科学のせいであると主張した。しかし、何千もの人々-ほとんどが卵巣がんの女性-は、潜在的リスクについて警告されたことは一度もないと言って、提訴している。

ベビーパウダーと数多くの他の入浴パウダーの主要成分は、その柔らかさで知られる天然鉱物、タルクであった。タルクはまた、ベビーパウダーに独特の香りを添えるのにも役立ち、世界でもっとも有名なもののひとつと言われた。

1980年代、消費者活動家らが、悪名高い発がん物質であるアスベストの痕跡をタルクが含んでいるという懸念を提起した後、同社はコーンスターチからつくられる代替製品を開発した。

タルクパウダーは赤ちゃんに十分なやわらかくやさしいものとして宣伝され、店では他の赤ちゃん用製品と一緒に売られたものの、長い間主要な購入者は、陰部に使用して、足の間がすれるのを防いだ、成人女性だった。

同社に対する初期の訴訟は、科学的証拠は決定的ではなかったものの、卵巣がんの原因としてタルクを指摘した。後の訴訟では、原告側弁護士は、アスベストは微量だったとしてもがんを引き起こすとして、原因としてアスベスト汚染に焦点を絞った。

タルクは、リップスティック、マスカラ、アイシャドー、ブラッシやファウンデーションなど、数多くの化粧品に使用されている。昨年、食品医薬品局は、10代の少女たちに人気の小売業者であるクレアーズで販売されるアイシャドーを含め、メーキャップ製品にアスベストが検出されたことを警告する何回かの警告通知を出した。

タルクとアスベストは天然鉱物であり、その地下鉱脈は同じ地質学的条件のもとで成長する。結果的に、アスベストの鉱脈が鉱山のタルク鉱脈と交差する可能性がある。

まさに、訴訟のなかであかるみに出された内部メモは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが少なくとも50年以上、そのタルク中のアスベスト汚染の可能性について隠してきたことを暴露した。アスベストは1958年に初めて卵巣がんと関連付けられ、国際がん研究機関は2011年の報告書でそれががんの原因であることを確認した。
3月時点でジョンソン・エンド・ジョンソンは、タルクベビーパウダーに関連した19,000件以上の訴訟に直面していた。これまで、いくつかの訴訟では同社が優勢であったり、他では敗訴したりと、訴訟の結果は入り混じっていた。同社は、敗訴したすべての訴訟を上訴している。

昨年後半、食品医薬品局の調査者が、オンライン業者から購入したボトルからアスベストを検出したとしたの後、ジョンソン・エンド・ジョンソンは33,000ボトルのベビーパウダーをリコールした。しかし、同社はその後、独自の検査の結果が製品の容疑を晴らしたと言っている。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、もっとも顕著にはオピオイドに関連するものを含め、他の前線では訴訟を回避しつつある。2019年8月、オクラホマの裁判官は、同社はリスクを軽視する一方で、薬の利益を過大評価した判定して、ジョンソン・エンド・ジョンソンに損害賠償として5.72億ドルの支払いを命じた。

10月には、抗精神病薬リスペリドンに関わる別の訴訟で、フィラデルフィアの陪審が同社に対して、その薬の使用によって危害を受けたと主張するメリーランドの1人の男性に80億ドル支払うよう命じた。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、コロナウイルスを防ぐワクチンの開発を競っている数社のひとつである。同社は最近、人体での安全性試験の開始日を7月末に繰り上げると発表した。ジョンソン・エンド・ジョンソンはすでに、安全かつ効果があることが確認されたら、数十億ダース以上のワクチンをつくるのに十分な製造能力を生み出すという取り決めを連邦政府と結んでいる。

「いくつかの点で、集団訴訟がもたらしている評判にかかわる疑問があり、彼らは心配する必要がある」と、バージニアのリッチモンド大学で製造物責任について教えている法学教授カール・トビアスは述べた。

「彼らのその評判全体を家族にやさしい製品の製造者であるということのうえに打ち立ててきた」と、トビアスは言う。「その古典的な例がタルクであり、女性たちが苦しんでいる傷害は深刻である」。

https://www.nytimes.com/2020/06/23/health/baby-powder-cancer.html?fbclid=IwAR1Uiy1kF-1k79W-qk0c6DWPlzwOgVGFUC8FCfbNAAORVXbYJgWZNN5NhgU

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