外国人労働者の労災隠し:公共事業の丸投げも労災隠しの一因/京都
2006年5月下旬に京都府内の土木工事作業中に指骨折の災害に被災したにも関わらず、労災隠し状態に置かれていた韓国籍の労働者Kさんは、所轄の労働基準監督署に対して10月に労災保険給付を請求を行った。
Kさんは8年前に観光ビザで来日、いくつかの職を経験した後、2006年はじめから大阪市内の親方のもとで土木作業に従事していた。5月に京都府内の現場で作業の準備作業中、他の作業者がKさんに気づかず機械を操作したため左環指を骨折したもの。急遽地元の病院で治療を受け、以降、大阪市内の病院で継続して療養していたが、親方と工事会社は労災保険の扱いをせず、わずかなお金を手渡すことで解決しようとしていた。しかしKさんの症状は、指の骨折が原因となったRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)を引き起こし、療養が長引いたことから、何の補償もないまま放置されることとなった。
つてをたどって9月に関西労働者安全センターに相談、労働基準監督署に労災請求をすることになったのである。工事現場と地元の病院では別の日本名を名乗り、大阪市内の病院には親方の名前で国民健康保険を使い、それでも自己負担分をまかないきれず、相談した当時は通院もままならない状態になっていた。当初、自ら労災保険扱いにするよう説得された親方は応じることなく、元請会社から労災手続を進めるよう指示を受けると、Kさんを叱責するという対応を行っていた。また、直接の事業主である地元の土木会社は、工事自体を大阪市内の会社に丸投げしていたことから、労災扱いを渋る経過などもあり、労災保険の請求までに予想外の時間がかかった経過もある。地元の中小業者に工事を請け負わせ、事実上丸投げを促進しているような公共事業のあり方も労災隠しの一因になっていることが分かる一例でもある。
Kさんはその後、入国管理局に出頭し仮放免が認められ、療養が一段落して以降に帰国することになる。
安全センター情報2007年4月号