再三の指導にも労災手続せず:確信犯的な「労災隠し」/大阪

アフリカ出身の男性労働者Aさんは、今年4月にブレス事故で2本の指に大けがを負い2か月あまり休業を余儀なくされた。

幸いその後職場に復帰した。治療費の支払いを請求されることはなかったが、休業中の休業補償にっいて会社からは何も話がなく、困ったAさんは知人のガーナ人の紹介で、関西労働者安全センターに相談に訪れた。
早速、病院に電話をすると、治療は労災保険が適用されているが、休業補償請求に関する証明をした記録がないことがわかった。会社が休業補償請求の手続をサボっていたのである。とりあえず、社長に休業補償の手続を要求するようにアドバイスしたのだが、本人からそのことを言われた社長はまともに取り合おうとしなかった。

雇用の問題を考慮して、次の段階として、労働基準監督署に会社に対する指導を要請することにし、当該の労基署に連絡し、労基署から社長に対して、「休業補償と障害補償の手続はどうなっているか」の問い合わせをしてもらうことにした。

指を切断するような事故であるあるから、当然休業補償の請求があってしかるべきなのに、出てこないというのは不自然であるが、こうしたことをチェックするシステムが今の労基署にはないのである。

この点を労基局交渉でも指摘したのであるが、局の回答は、「そんなことをする余裕がない」というものだったが、やはり何らかのチェックが必要なのである。
確かめたわけではないが、社長は、休業補償請求をしないことでプレス事故の労働者死傷病報告を出すことを回避し、監督の目を逃れようとした「確信犯」の疑いもある。事故時に安全装置はなく、ほどなく安全装置が取り付けられたという話である。

労基署から一度ならず電話で指導を受けた社長であるが、いっこうに手続をしようとしなかったらしく、結局、労基署は直接出向いたということである。結局、労基署から渡された休業補償と障害補償の請求用紙が本人の手にわたり、請求行為が完了したのは9月も終わりのことであった。
10月半ばには休業補償と障害補償(10級)が支給されたが、早急に、無責任な会社に対して損害賠償請求をする方向で準備をしていくことになった。

関西労働者安全センター

安全センター情報1999年12月