屋根修理会社・東海技研の労災隠し、違法解雇事件/大阪 1998年3月~12月

ユニオンひごろ関西労働者安全センター

事業主証明、労災加入、行政指導全部拒否
あきれ果てた屋根修理会社

関西労災職業病1998年4月号

「現場で怪我をした会社が労災にしてくれない。労基署で用紙をもらったが書き方もわからないので教えてくれ。」1998年3月半ばのある日、関西労働者安全センターにかかった電話は典型的な労災隠しの相談だった。

Sさんの勤務先は名古屋に本社にある東海技研(株)なる屋根修理会社で、その茨木支店で働きはじめてしばらくして瓦をサンダーで切断中にサンダーを落とし、右足親指の付け根を深く切る事故に被災した。Sさんは労災保険の適用を会社に申し出たが、会社は「うちは労災はない」と言ってこれを拒否、まじめに要求するSさんに対して嫌がらせをはじめ、ついには労働基準法19条も無視して解雇を通告、仕事を取り上げて、宿舎も無理矢理追い出すという暴挙に出たのだった。

この間、ユニオンひごろは労災請求への協力などを求めて団交要求をおこなったが未だに会社は全く応じようとしていない。また、組合と本人は明白な法違反を茨木労基署に申告し、労基署からも再三再四解雇の無効・撤回および労災請求への協力を指導したがそのことごとくを会社は無視してきている。夜の8時頃に指導「こきた監督官の話を聞き、監督官が帰るとその足で本人のところに宿舎追い出しに来たこともあった。

一連の過程で判明したのは、この東海技研なる会社が本社ぐるみで労災保険(すなわち労働保険)未加入事業であることであった。
茨木労基署の「すぐに加入手続きをするように」という指導に対して直接の当事者である茨木支店長は、労災保険加入のしおりのたぐいすら受け取らない対応だったというのであるから驚きである。

全社員数百人、派手な新聞折り込みをうち、各地に支店をもつ会社が、ずっと未加入事業場として放置されてきていることは大問題であり、放置してきた労働行政の責任も大きい。本人と労働組合は、不当解雇の強行、団交拒否という不法行為をつづける東海技研を徹底的に追及していくとともに、違法会社への断固とした指導と処分を労働行政にもとめていくことにしている。

労災未加入で労働者もち傷害保険
寮追い出し、本社・支店を局が強制捜査

関西労災職業病1998年7月号

会社側、地労委審問に突如出現

屋根工事会社東海技研の社員Sさんが労災請求を理由に違法解雇された問題で、ユニオンひごろは、不当解雇、団交拒否などに関する不当労働行為の救済を大阪地方労働委員会に求め、6月2日の地労委による調査を経て第1回審問が7月3日に行われた。

これまで会社は、組合の団交要求はもちろん地労委の出頭要請などの一切を無視してきていたが、この日突然、茨木支店長とその上司格にあたるとみられる岐阜支店長を名乗る男性の2名が姿を現した。

そのため審問の予定が、地労委の会社側に対する説明に1時間が費やされたあと、双方に対する調査に切り替わった。しかし、会社側は何の反省も謝罪もなく、「組合の主張の80%は間違っている」「働いてもらってもいいが、大阪ではなく名古屋かどこかで」などと述べたため和解どころの話ではなく、組合は正式の審問をもとめ、これが7月30日に行われることとなった。
その後、最近になって会社から地労委に対して答弁書が提出された。答弁書においても同様の主張がなされているが、これまでの団交拒否は「どのように対処すればよい良いかわからず困惑状態に陥ったため」で、不当労働行為もないし、謝罪の必要もない、というのだから大したもんである。

会社がSさんの労災適用の申し出を拒否し、労災請求の取り下げをあくまで強要をしたのは、労働保険加入を長年サボタージュして、その肩代わりを労働者から強制徴収した月5000円の「共済」で行ってきたこと、その違法行為を継続しようとしたためであることは明らか。
茨木労基署は、そのことの是正指導ならびに労働基準法19条解雇制限違反の是正指導を再三おこなったが、これを徹底して無視してきた事実が残っているので、いまさらどんな言い訳も通用しない。組合は当然にして、あくまで徹底して闘う方針だ。そして、ことの本質をふまえた早期救済命令を出すのが地労委の使命といえよう。

6日後、本社、支店に家宅捜索

大阪、愛知労働基準局は7月9日、労働基準法19条「解雇制限」違反、労働安全衛生法100条ならびに労働安全衛生規則97条「労働者死傷病報告提出義務」違反などの容疑で東海技研の名古屋本社と吹田市にある大阪支店を家宅捜索した。
労基局による記者会見が行われたため、捜索当日は新聞、テレビでも報道された。

労災保険請求するなら辞めろ
「東海技研」を強制捜査
大阪・愛知労働基準局 労基法違反の疑い
屋根瓦を補修工事中に2週間のけがを負った社員の労災を報告しなかったうえ、労災保険を請求しようとしたその社員を解雇したとして、大阪と愛知の両労働基準局は9日、中堅の屋根瓦工事業「東海技研」(本社・名古屋市、池原一社長)と同社大阪支店(大阪府吹田市)を労働基準法と労働安全衛生法違反の疑いで強制捜査した。容疑が固まり次第、大阪地検に書類送検する。同社は労災保険にも加入していなかった。
大阪労基局の調べでは、今年2月28日、大阪支店勤務の男性社員(46)が大阪府高槻市の民家の屋根瓦を電動カッターで切断中に左足の親指を切った。社員が労災保険を請求しようとしたところ、同社は「保険請求するなら辞めてまえ」などと圧力をかけ、応じなかった同社員を、負傷休業明けから30日間は解雇できないと定めた解雇制限期間中に解雇した疑い。(佐藤千矢子)

毎日新聞 1998年7月9日

労基法19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後の30日間並びに産前産後の女子が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」と規定、罰則は「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」。労働安全衛生規則97条は「事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署に提出しなければならない」と規定、罰則は「50万円以下の罰金」。

組合結成通知後、労基署に乗り込む

当初Sさんが会社に労災適用を申し出ても、会社はこれを拒否。Sさんが労基署に申告すると「首にするぞ」と脅しながら賃金の60%を支払うから請求を取り下げろと迫ってきた。会社はこの時点ですでに労基署から、労基法19条違反となることと労災保険加入手続きをしなければいけないことの指導を受けていて、会社にとって最良の策は、本人を抱き込むかつぶすことだと決めて、Sさんに屈辱的な取引を強要したのだった。

Sさんは「取引」を拒否、お金は立て替え払いとして受け取るも労災請求は取り下げなかった。一方で、Sさんはユニオンひごろに加入し、4月上旬、JR吹田駅近くの大阪支店に組合役員といっしょに組合結成通知と団交要求をもっていった。実は、この朝にもまた解雇通告と退寮強要をされており、急を要する状況だった。こちらの申し入れにもこの時も支店長は全く反省の色はなかった。

この時点までにも茨木労基署に対して何度も会社への監督指導を求めたが、全く効果を上げていなかった。そこで会社に申し入れをしたあとすぐにJR茨木駅に近い茨木労基署に向かった。
担当監督官などに対して生ぬるい監督指導を強く抗議するとともに、「きちんと何かするまでは労基署から帰らない」と宣言して、即刻労基法違反で検挙するなどの法的措置をとるよう申し入れた。会社は労災保険への加入指導に対して、加入のしおりさえ持って帰らないなど極めて悪質で、少なくとも正式な是正勧告が早急におこなわれてしかるべきであるにもかかわらず、それさえおこなっていなかったのだった。

そして、この日の正午頃やっと是正勧告書をもって監督官が東海技研茨木支店に赴いたのだった。Sさんへの長時間の聞き取りなどもおこなわれたのでこの日はまる1日を労基署で過ごした。
帰署した監督官によれば支店長に直接手交できなかったとのことだったので、再度、直接指導するよう要請した。その日の夜に再度監督官が支店に出向いて直接指導が行われたとのことだった。

是正指導のその夜、寮追い出しに来た

Sさんはこれでひとまず安心であろうと寮に帰った。ところが夜中の12時ごろ支店長が寮に追い出しにきたというから驚きである。しかたなくSさんは警察に通報し、交番警官が来てとりなし支店長はなんとか引き上げたのだったが、翌早朝にはまた追い出しにきた。結局、寮も出ざるを得なかった。

まったくもって許し難い状況となった。その間、労基署に対しては何度も連絡したが有効な手だてはとられなかった。
それから2ヶ月。やっとこさ、それも家宅捜索だけがおこなわれたわけで、やりきれない思いでいっぱいだ。しかし、やるからにはとことんやってもらわないと困る。法違反を罰し、労働保険に加入させて保険料を徴収し、他にもあるだろう労災隠しの全貌を明らかにしてもらいたい。

新聞報道によると『社員から毎月5千円を徴収する共済会システムで、社員に事故があった場合に給付していたとの証言もあり、同局(労基局)は「保険に加入せず、社員の金で補償の代わりにしていたとすれば問題だ」として実態を解明する』(読売)とのことである。

労災未加入の代わりに
本人負担傷害保険

先に述べた会社側の答弁書ではこの点、次のように書かれている。
「会社が労働保険に未加入であったことは認める。ただし、会社はその代わりとして、東京海上火災の保険に加入しており、その保険給付金を業務上の災害保証(ママ)に充てている」
おそらく傷害保険のたぐいが使われていたものと思われる。派遣業関係などでこうした仕組みで労災隠しが行われていることがあるので初耳ではないが、家宅捜索が行われたことでもあり、目の前につきつけられた労災隠しをどこまで暴き、被害者を救済していけるか、再発防止にどう取り組むのか、まさに労働行政の姿勢が問われているといえる。
何しろ「屋根工事会社」である。Sさんによると安全帯も何もなし、そんな会社が労災保険未加入ではわんさと労災隠しがあるに違いなかろう。

会社に鉄槌を!そして・・

地労委へのふざけた答弁書がだされたのが家宅捜索の後であることからみて、未だに会社は反省せず、どう難を逃れるかだけ思案しているようである。しかし、民間調査機関によれば東海技研は、名古屋本社の他に、大阪、京都、和歌山、伊勢、津、岐阜、浜松、静岡、神奈川、大宮、千葉に支店をもつ屋根工事を主体とする社員200名程度の中堅建築会社らしく、これが全社的に労災保険未加入、労災隠しを行っていたのであるから、Sさんだけ、東海技研だけに止まらない問題であることは言うまでもない。

極めて悪質な会社は社会的制裁を受けなければならないし、労災隠しが暴かれ、被災者、労働者が救済されなければならない。労災保険の代替としての傷害保険契約もあってはならないものだ。安全センターとして今後とも、ユニオンひごろの闘いを支援するとともに、労働行政の姿勢にも大いに注目していきたい。

片岡明彦(関西労働者安全センター)

大阪地検に書類送検
地労委は結審

関西労災職業病1998年11・12月号

愛知県名古屋に本社を置く屋根工事業の東海技研の組合員Sさんへの労災解雇に対して、ユニオンは5月大阪府地方労働委員会に団交拒否、不当解雇等で救済申し立てを行い、組含側証人は当該含め2人、会社側証人は3人で計4回審問が行われた。

はちゃめちゃな答弁書

地労委へ答弁書も出さず調査にも出席せず、で7月9日の強制捜査後態度を変えてきた会社は、弁護士も入れようやくあの、はちゃめちゃな答弁書を携え、審問にはいっていただいた。
会社答弁書は解雇については、Sさんは、日雇いであり休業後再雇用した(月給制やし、日雇いならクビにせんでもええ)、暴力をふるう(勤務時間外社外での個人的なこと)、けがは班長の指示を受けず勝手に瓦を切った(瓦の切り方までおしえてくれた)、災害補償はしている(傷害保険で?そういう問題ではない)、などなどあいた口がふさがらないしろもの。団交拒否については「不慣れであってどうすればよいか、時間的猶予がほしい…・」などと恥ずかしい弁明に終始。

7月30日のSさん主尋問はこれら会社答弁のデタラメさをひとつひとつ明らかにした。
8月28日の反対尋問は会社弁護士が事実の食い違いに目を白黒させ短時間に終わり、団体交渉拒否については一切触れずであった。弁護士もあのはずかしい答弁書(この弁護士が書いたものではない)にはさわりたくないのね。

不自然がいっぱい

そして10月16日第3回審問は会社側主尋問で、Sさんの労災被災時の現場班長と、「暴力」を受けたという岐阜の工事主任、そして今回の件では大阪支店長に指示をしていたと思われる岐阜支店長の3名が証人となった。
尋問は瓦切断の指示せず、暴力ふるう、自身で労災申請をやめたなど、解雇の正当性を並べた。

あらら「労災保険は入ります」

そうしながらも、岐阜支店長は「他支店なら職場復帰してもらっていい」と述べた。解雇に正当性があるとしながらなんでや。
また、「労災保険は入ります」と胸はっておっしゃった。
11月27日は組合側反対尋問。ところが肝心のいさかいの相手の証人が出席を拒んで出てこず。尋問は岐阜支店長に集中。いやはやいろんなことしてくれる。
支店長はの証言は答弁書との食い違いをみせ、ここという場面で「私は労務にタッチしていない、労基法も知らない」と正直に答えてくれた。ほんで最後に解雇した社員を戻すことは解雇がまちがっていたということだと認めた。

解決に向かって

今回はまさに異例づくめの地労委だった。地労委は、労基法違反、労安法違反の刑事事件もにらんでの闘いだが、12月3日に茨木労働基準監督署は大阪支店長を労基法違反で、会社と社長を労安法違反で大阪地検に書類送検した。
次回は一旦調査が入れられるが、社会的制裁も含め本当の反省を示してもらうよう期待したい。
組合は何よりもこれまで不当不正をまっすぐ訴え続け、当たり前だけどなかなか声に出せない労働者に代わって立ち上がったS組合員の勇気に応えていきたい。

岡崎栄子 (ユニオンひごろ書記次長)

労災報告怠った容疑
東海技研を書類送検
茨木労基署
大阪の茨木労働基準監督署は三日、労災保険を請求しようとした社員を不当に解雇したとして、屋根工事業者の東海技研(本社・名古屋市中区)の大阪支店長(58)を労働基準法違反容疑で、労災事故の報告義務を怠ったとして同社と社長(38)を労働安全衛生法違反容疑で、それぞれ大阪地検に書類送検した。
調べによると、同社は労災保険に加入しておらず、大阪府高槻市で屋根補修中にけがをした大阪支店の男性社員(46)が4月に労災保険を申請しようとしたところ、支店長が、労災から復帰後30日間は解雇できないとする労働基準法の規定に反して解雇した疑い。同社はこの事故と別の労災事故1件についても所轄の労基署に届けなかった疑い。

朝日新聞 1998年12月8日

勝利和解かちとる

関西労災職業病1999年1月号

UNIONひごろは、愛知県名古屋市に本社を置く屋根工事業の東海技研で働いていて労災を被災したS組合員に対する不当解雇と、組合との団体交渉拒否で大阪府地方労働委員会に不当労働行為救済申立を行い、1998年12月28日、「東海技研は清水組合員の解雇を撤回し、未払賃金を支払う(要旨)」とした協定を会社と結び和解をした。

この会社は、S組合員が労災申請手続きを求めたことにより、労災保険を掛けずに労災隠しを確信犯的に行っていたことがわかった。会社の設立から8年もの間、関東・東海・中部・近畿にまたがって支店を持ち、200名近くの労働者を雇用し、堂々と労災隠しを行っていたのである。労災保険は強制加入でありながら、なぜこの会社が未加入で営業を続けられたのか。払ってこなかった保険料はン千万になる。会社は地労委で和解する前、やっと労災保険に加入した。

親睦会で労災隠し?!

会社が確信犯的に労災隠しを行っていたことは、清水組合員が労災申請手続きを求めた時、大阪支店長が清水組合員に見せた「親睦会費」の存在からもわかる。労働者から集めた親睦会費を、労災被災者の治療費にあてていた。
また地労委の場で、労災保険の代替として民間の保険を掛けていると公言した。労災隠しの全貌をさらして言い逃れしようとしたり、労災保険加入を指導した労働基準監督署の目の前で、労災保険のパンフを「いらない」と突っ返したりと、いったいこの会社は何なんだ。

労働基準監督署もここまでされて腹たたんのかと思うが、腹たてるだけ無駄、こんな会社ごろごろしてる、いちいち指導してられるか、といったところでしょうか。もう労基署もこんな会社をへとも思わないし、会社も労基署なんかへともほとも思わないのだ。いったいその間でうごめく労働者が、どれだけストレスを感じているかわかってるのかと言いたい。

法律は「説明」でなく、「行使」でしょ

事実、このS闘争のエピソードのひとつに、関西労働者安全センターとUNIONひごろで会社に組合要求書を提出したその足で、労基署に申し入れた時のこと。
センターが「今すぐ指導して下さい。行くまで今日は帰りませんよ」「今すぐ逮捕して下さい」と申し入れても、署の方は目線を下に「……」状態。
UNIONはセンターの圧力にもびっくりしたが、労基署の煮え切らない態度にも閉口した。重い腰を上げその日に是正勧告はしたものの、支店長が署に出頭し、向き合うのにそうとう時間がかかった。出頭予定時間をすっぽかされもし、なめきられている。

こうして労基署の批判してばかりでは、この事件が「行政の怠慢」に終わってしまう。しかし、そもそもこの事件は、労働者を合理的理由なしに安易に解雇する使用者側の問題が大きい。もちろん労災休業後30日以内の解雇制限を示す労基法19条違反ではあるが、「もういらないんだ(大阪支店長が清水組合員を寮から追い出そうとしたときの発言)」と、労働者をまるでゴミでも捨てるような会社の態度が許されない。

正社員でもパートでも派遣でも、労働者を雇い入れたら使用者に厳しい雇用責任をもたせることだ。労働者を首切りするのはカンタンではないと、社会全体で思わせることだ。
また、労災に被災し、働けない労働者はいらないと補償手続きもしないでほうり出すなどの相談事例も多い。労働者の権利意識が問題だと言えるほど、そんな権利を知る機会に恵まれているならともかく、社会にその仕組みがなければ異議を申し立てるすべも知り得なくなる。使用者が法違反できない仕組みをもっとつくって欲しい。規制緩和はするわ、やりたい放題は残るわではたまったもんではない。

泣き寝入りしない決意

しかし東海技研の地労委はいろいろあった。会社の地労委調査すっぽかしにはじまり、連絡なしのいきなりの登場、会社証人の出廷拒否、と。結局和解したが、東海技研に労働組合はできないし、同じことを繰り返さないともいえない。
地労委審問で、Sをクビにせよ、と大阪支店長に指揮していたであろう岐阜の支店長が、自慢げに「労災保険に入ります」と言ったり、「私は労基法は知らない」と言ったり、ほんまになんでこの人が会社の長たる職務についてんねんと、嘆きたくなる。

UNIONの交渉でも、腹立つのと同時に情けない社長はおるが。まあ、こんなんやから、こうやねんと言ってしまうしかないのか。そんならそこで働く労働者を、もっと保護する法律ができてもいい。どこの職場も労働組合をつくることとか。
争議解決前には会社が書類送検された。使用者へのきびしい監視・指導強化は当然だが、労働者にはS組合員のような権利意識が持てれば、と願う。

岡崎栄子(ユニオンひごろ書記次長)

安全センター情報1999年3月号