インド化学工場ガス漏洩事故で国連特別報告者「人権の強化」求める
化学産業はボパールのような災害の再発を防止するために人権を強化しなければならないー国連・特別報告者バスク・トゥンジャク
国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)DisplayNews
ジュネーブ(2020年5月14日)-先週のインドの化学工場における致死的なガス漏えい時は、産業界にとって人権を尊重する責任を認識し、果たすことを求める厳しい警報である、と特別報告者バスク・トゥンジャクは今日語った。
「この最新の災害はまさに、別の多国籍企業、アメリカのユニオンカーバイドが関係した、1984年インド・ボパールでの何千もの人々を殺した有毒ガス漏えい思い起こさせた」と、有害物質と廃棄物に関する特別報告者であるトゥンジャクは述べた。「それはまた、プラスチックの過剰な消費・生産によってもたらされた人権侵害の広がりも示している」。
5月7日、インド南部アーンドラ・プラデーシュ州のある化学工場が、がん、神経障害や生殖障害、曝露後何年間もみえないかもしれない影響を引き起こす可能性のある、プラスチック製造のために使用される物質であるスチレンを漏えいしたことによって、12人が亡くなり、千人を超す人々が健康を損なった。ヴィシャーカパトナム市近くにあるこの工場は、韓国企業LG化学によって所有及び運営されている。
特別報告者は、殺人罪の可能性を含めた、調査の開始を歓迎すると述べた。昨年のボパール災害35周年に、産業界に人権デューデリジェンスの実施を求めた彼の呼びかけを繰り返して、関係当局に対しても、完全な透明性をたもつとともに、責任のある者たちが責任をとることを確保するよう求めた。
「今後の人生のなかで病気や障害が生じる曝露の被害者が効果的な救済を提供されることを確保することに関心がある」と、トゥンジャクは言う。「インドと韓国の当局、及び関係企業に対して、今日でもなお苦しんでいるボパール災害の被害者に対する正義を踏みにじってきた、同じ過ちと訴訟手続きの悪用を繰り返さないよう求める」。
「この最新のガス漏えいの被害者に対して心からお悔やみを申し上げる。インドの罪のない労働者と地域社会に恐るべき被害をもたらした、化学産業におけるもうひとつの回避することのできた災害であり、世界中でミニ・ボパール化学災害が衝撃的な規則性をもって拡がり続けていることを思い起こさせるものでもある」と、 トゥンジャクは言う。
化学産業の「レスポンシブル・ケア」イニシアティブは、化学製造業者による人権侵害の再発を予防する努力のなか、ボパール災害の後1984年に採用された。「この産業界のイニシアティブの原則には人権が含まれておらず、また、ビジネスと人権に関する国連指導原則のもとで求められているように、産業界が実際に人権を尊重することを求めてもいない」と、 トゥンジャクは語った。
バスク・トゥンジャク(トルコ)は、2014年に国連人権理事会によって、有害な物質及び廃棄物の環境上適切な管理及び廃棄の人権に対する影響に関する特別報告者に指名された。
トゥンジャクのアピールは、人権と多国籍企業その他企業の問題に関するワーキンググループ、人権と環境に関する特別報告者及び身体的・精神的健康への権利に関する特別報告者によって支持されている。
(翻訳:古谷杉郎)
[訳注]バスク・トゥンジャク氏は昨年「人権と有毒物質からの労働者の保護に関する原則」と題した報告書をまとめ、これに基づいて2019年9月23日に国連人権理解決議42/21「人権と有毒物質からの労働者の保護に関する原則」が採択された(安全センター情報2020年1・2月号)
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