韓国親会社・LG化学にバイザッグ災害に対し全面的な責任をとるよう要求-住民・公益擁護活動家ら 2020年5月15日/ANROEV

記者会見

労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(ANROEV)は、2020年5月15日(日本時間午後1時、インド時間午前9時半)から、影響を受けた地元住民とインド・韓国等の公益擁護活動家らによる、「LGポリマーズガス漏えい事故」に関する記者会見を行った。
主な発言者は以下のとおり。

  1. バイザッグの被害者/避難中の人
  2. ヴィシャーカパトナムの医師
  3. 韓国代表・白道明(ペク・トミョン)ソウル国立大学公衆衛生学部教授
  4. ボパール・サムバブナトラスト代表(ラチャナ・ディングラ)
  5. 労災・公害被害者の権利のためのアジア・ネットワーク(ANROEV)/インド労働環境衛生ネットワーク(OEHNI)代表(ジャグディシュ・パテル、ネット接続不良のためスリーダーが代理)

記者会見後ただちに以下の声明を発表した。

ANROEV声明:影響を受けた住民と公益擁護活動家らがLG化学にバイザッグ災害に対し全面的な責任をとることを要求する

2020年5月15日

インド・バイザッグ)バイザッグ・ガス漏洩災害の影響を受けた住民とインド・韓国の公益擁護活動家らは、12人を殺し、数百人の住民の健康を損なった、5月7日未明の有害なスチレンガス漏えいに対して、LGポリマーズの韓国親企業LG化学に全面的な責任をとるよう要求した。

この惨事は、インド南部アーンドラ・プラデーシュ州ヴィシャーカパトナムのバイザッグで起きた。LGポリマーズは違法に操業していたもので、政府の法医学研究所はスチレンガス漏えいは同社のミスのために生じたものと結論を下した。国家環境裁判所[ナショナル・グリーン・トリビューナル]はLGポリマーズに対して、5億ルピー(約660万米ドル)の供託を命じるとともに、惨事を調査するための委員会を設置した。

住民、地元の医師、ANROEVネットワークに参加するインドの労働・環境安全活動からは、ガス漏えいによって地域社会の人々が直面している問題点について議論した。彼らは、LGポリマーズ工場周辺地域の人々がいかに恐怖と不安のいりまじったものを経験しており、また、有害ガスの漏えいにより影響を受けたすべての者に対する支援を要求しているか説明した。

彼らはまた、数千人が殺され、50万人をこす人々がイソシアン酸メチル(MIN)ガスに曝露した、1984年のボパール・ガス惨事の後に生じたことが繰り返されることを心配していることを指摘した。

国連の有害物質に関する特別報告者バスク・トゥンジャクは、バイザッグLG惨事とボパール惨事の類似性を指摘して、インド・韓国当局と関連する企業に対して、「今日でもなお苦しんでいるボパール災害の被害者に対する正義を踏みにじってきた、同じ過ちと訴訟手続きの悪用を繰り返さないよう」求めた。

住民と公益擁護活動家らは、LGと関係政府機関に対して、以下の行動をとるよう要求した。

  • 被害者の家族と傷害を負った者たちにただちに救済と支援を提供すること
  • 被害者及び曝露した人々に対する長期的健康支援を提供すること
  • ガス漏えいの原因を徹底的かつ公正に調査すること
  • 市民団体や被害者の代表を調査に参加させること
  • LG化学とガス漏えいに責任のある者たちに責任を負わせること
  • 影響を受けたすべての者に健康サーベイランスを提供するために3年間のバイオモニタリング体制を確立すること
  • COVID-19ロックダウンから職場を再開する前にデューデリジェンスを実施させること
  • 規制と職場安全制度を強化すること

LG化学は韓国において環境・安全衛生を侵害してきた歴史をもっている。

2019年:環境大臣が汚染物質放出データの改ざん・捏造したことに対してLG化学を逮捕
2018年:LG化学のポリカーボネート工場がホスゲンガスを漏えいして、5人の労働者が傷害を負った。
2015年:LG化学に塩化水素の漏えいと産業安全衛生法違反について600万ウォンの罰金
2013年:2012年の清州OLED製造工場における爆発事故についてLG化学幹部らに懲役刑
2013年:政府の労災事故レビューにおいてLG化学の清州工場が、8人の労働者を殺した2012年の爆発事故を含めて多数の死亡災害を生じさせた職場のひとつとして指摘

LGポリマーズは、インドで販売されるLG製品のために、スチレンを使ってポリスチレン・プラスチック化合物を製造していた。スチレンは、ヒトに発がん性の可能性があり、胎盤を通過し、様々な有害影響をもっている。スチレンは爆発性があり、低温で貯蔵されなければならない。しかし、LGは、VOCID-19によるロックダウンの間、20℃以下での貯蔵を維持することを怠り、有害な漏えいを引き起こした。

連絡先:ANROEVコーディネーター、ラム・チャリトラ・サウ、anroev@gmail.com
ビデオ映像や写真があります。

インド労働安全衛生ネットワーク(OEHNI)声明:スチレンガス漏えい-不適切な管理を糾弾し、被害者を哀悼する

OEHNIは12人の人々の死を哀悼するとともに、韓国企業LGポリマーズからの致死的なスチレンガス漏えいに曝露した数千人の一日も早い回復を祈っている。また、取り返しのつかない喪失を被った家族の皆さまに心からお悔やみ申し上げる。

われわれは、同社の冷淡な態度と反発を買収しようとする試みを糾弾する。事故後すぐに会社を擁護する発言を行って、地域社会に懸念と疑心を高めた州首相の無頓着な態度にショックを受けた。金銭的補償は高いかもしれないが、亡くなった者を連れ戻すことも、各家族が被った深い喪失を和らげることもできない。

同工場は、1961年にヒンドゥスタン・ポリマーズとして設立された長い歴史をもち、1970年代後半にUBグル-プに買収され、結果的に自由化後の1997年にLGによって買収された。同社は現在約600人を雇用し、2億米ドルを超す売上高をもっている。韓国企業は高い基準をもつことが1990年代に彼らが1990年代に高成長を遂げた理由のひとつであったろうし、彼らによる買収は環境管理と労働者の福利に国際基準をもたらした。

しかし、今回の不幸な事故が明らかにしたように、同社はその操業に気乗りしておらず、COVID-19パンデミックによるロックダウンから操業を再開させるために求められた基本的デューデリジェンスを行うことさえ怠った。インドの法律の順守に対する同社の無関心は、それが環境法令に基づくいかなる監視も受けずに20年間操業してきたことから明らかである。労働者の権利を労働衛生に対処する政府の独自の指示を踏まえれば、同社は労働者と労働安全の基本原則さえ見落としてきた。

今回の悲惨な事故もまた、既存のガイドラインを見逃してきた規制当局のあり方が、規範にケアレスで、人々のセーフガードなる憲法上の役割を完全に損なうものであることを明らかにした。われわれは、国家環境裁判所がこの事故に対応し、独自にこの問題を取り上げた迅速さを歓迎する。われわれは、これは予防原則を薄めることや、企業がおかした犯罪に対して償わなくてすむと思い込むようなことにつながってはならないと警告したい。

我々は政府に対して、住民や労働者に悪夢を与えることになる、刹那的な「ビジネスがしやすいこと」を愚かにも追い求めることを断念するよう要求する。われわれはまた、地方レベルで計画が立てられていると言ってきた災害管理体制が人工の災害のリスクをマップすることすらできずに、解決を地域社会まかせにしてきた完全な誤りを深い後悔とともに記録する。

われわれは、LGポリマーズ・インドと韓国LG化学の理事会に対して、法律をくぐり抜け、責任から抜け出そうとする会社のいかなる企みも、評判の損失とインドにおけるその白物商品の市場における深刻な下落にしかつながらないことを警告したい。

全国コーディネーター、ジャグディシュ・パテル

情報&行動のためのボパール・グループ の声明

われわれ、ボパールのユニオンカーバイド社ガス漏えい事故のサバイバーは、地球の生命や福利よりも個人の利益を上に置き続ける経済システムが不可避的に、別の罪のない疑うことも知らない都市に別のボパール災害をもたらすことを、長く恐れていた。

冷淡、強欲と臆病が、世界私大の企業虐殺に対する民事的・刑事的責任を未解決のまま放置してきた。40年近くがたち、われわれ、この虐殺のサバイバーは、われわれの不可欠の権利を否定する破壊された司法システムと闘い続け、また、責任を回避するために法と真実の両方をすり抜け、ねじ曲げるダウ・ケミカル社とその擁護者たちと闘い続けている。これまでのところ、軌跡はボパールと類似している-ガスの漏えい、有害物質の組成も量もわかっていない、大量の有害物質の貯蔵、冷却システムが適切に維持されておらず、それがおそらく漏えいにつながったこと、現場の労働者に対する非難、インドの環境法の侵害。事故から数時間後にアーンドラ・プラデーシュ州首相はLGポリマーズを「よい会社」と呼んで、ヴィシャーカパトナム・ガス漏えい事故で犯罪について起訴されないだろうという明らかなシグナルを同社に与えた。

しかし、企業が、彼らに環境を破壊する自由を与え方針を立て、、政府を作りまた壊し、免責されながら操業する世界では、われわれのだれもが、企業の過失と不正行為の潜在的または現実の被害者である。このことが、われわれが「われわれは皆ボパールに生きている」と言い続けている理由である。これは、われわれの正義のための終わらない闘いのなかで、「ノーモア・ボパール」と叫ぶバナーを掲げ続けている理由である。

「人々が息を吸うのに苦しみ、道路に横たわるテレビの映像を見たとき」と、ボパール・サバイバーのラシダ・ビーは語る。「何かが私の内側を深く打った。もし私が彼らのように、動けずに横たわり、命を救ってくれるよう懇願し、息をするためにもがいているのだとしたら」。
バイザッグのサバイバーはボパールのサバイバーになってはいけない。影響を受けたすべての個人が尊厳と思いやりをもって扱われ、医療及び最低限としてふさわしく、また可能な最高の支援を受けなければならない。絶対責任の法的原則を責任のある者たちに負わせ、企業責任の国際的手続が確立されなければならない。

この回避可能だった災害を予防するには遅すぎるが、 バイザッグが別の永続的災害、別の開いた傷口になるのを防ぐのには遅すぎない。ボパールが繰り返されるべきではないとしたら、11人の脂肪を引き起こし、千人を超す者に重傷を負わせた犯罪行為が最初から明らかであるに違いない。犯罪行為は。何千もの人々の生活を危険にさらすやり方で有害物質を貯蔵していたことである。犯罪行為が特定されなければならない。適切な罰が明確にされ、その罰を裏付ける証拠が集められなければならない。ボパールではこのひとつも起こらず、25,000人を殺し、50万をこす人々に傷害を負わせたことが交通事故と同じことのように引き下げられてしまった。

曝露の結果、被害を被ったすべての者を確認すること。スチレンの胎児毒性及び次世代を含め遺伝的問題を生じさせる既知の影響の観点からのフォリーアップ。問題の物質(スチレン)が本質的に安全でないことから、民事責任を負わせるうえで完全責任が求められるべきである。
いかなる状況下であっても、(まさにボパールで起こったように)人々は自らの権利を政府に代表してもらうようあきらめてはならない。彼らは裏切る可能性がもっとも高いからである。ヴィシャーカパトナム惨事のサバイバーは、政府が彼らを代表してとると決定したすべての話し合いやステップに参加させられなければならない。これは必須である。
最低限LGポリマーズは

  1.  生き残った被害者と亡くなった者の家族の福利をすべての決定の主要な焦点にしなければならない
  2.  完全責任の原則のもとで、親会社LG化学に、医療、長期的健康監視、環境回復と補償に完全に責任を負わせ、また、その後のすべての犯罪調査に完全に協力させなければならない
  3. すべての将来の企業犯罪に対する持続的な抑止力として機能するのに十分強力な判例を確保しなければならない
  4. 企業過失・犯罪に対する責任と救済において、歴史的な危害に責任をもたせるのに十分幅広い前例をつくらなければならない

ラチナ・ディングラ
情報&行動のためのボパール・グループ rachnya@gmail.com

(翻訳:古谷杉郎)