特集/世界疾病負荷推計(GBD2023)① 日本では職業性発がん物質、大気汚染等による負荷が増大~GBD2023-大分類リスク要因別の負荷

世界疾病負荷(GBD)研究は、現在まででもっとも包括的な世界的観察疫学研究である。ワシントン大学(米国シアトル)の健康指標評価研究所(IHME)が主導するGBD研究は、21世紀に世界中の人々が直面している健康上の課題の変化を理解するための強力なリソースを提供している。…
ランセット誌はIHMEと提携し、2010年から、GBD研究による世界的保健推計を発表している。2018年12月に世界保健機関とIHMEは、GBDの妥当性を強化するとともに、その政策との関連性・有用性を向上させるため、世界的保健推計の単一のセットを生み出すために協力する正式な提携関係を発表した。」
https://www.thelancet.com/gbd/about

GBD2023の発表

2025年10月18日発行のランセット誌406巻10513号は、以下の3つの論文(①~③)を掲載、その後も順次、関連論文が発表されている-GBD2023の発表である。
https://www.thelancet.com/gbd/collection
① 204か国・領域及び660の国内地方における292の死亡原因の世界負荷 1990~2023年:2023年世界疾病負荷研究のための系統的分析(死亡原因
② 660の国内地方を含む、204か国・領域における375の疾病・傷害の負荷、88のリスク要因についてのリスク帰属負荷、及び健康寿命 1990~2023年:2023年世界疾病負荷研究のための系統的分析(リスク要因等
③ 204か国・領域及び660の国内地方における世界年齢-性別全原因死亡率及び平均余命 1950~2023年:2023年世界疾病負荷研究のための人口統計学的分析(人口統計
合わせて、IHMEが運営する「GBD比較データーベース」も更新され、国別データも含めて、様々な推計データを抽出できるようになっている。
https://vizhub.healthdata.org/gbd-compare/
本誌は、2021年8月号に、シリーズ化されて以降のGBD2010からGBD2019までの、リスク要因による疾病負荷に関する各GBD論文の、以前の推計からの変更(付加価値)に関する説明を、また、2024年11月号に、GBD2023ついての同様の説明を紹介している。さらに、2024年11月号では、2022年10月にNature Medicine誌に発表された「30年間の世界疾病負荷研究」と題した論文の内容も簡単に紹介しているので、参考にしていただきたい。

本特集で紹介するデータ

本特集で紹介するのは、世界及び日本についての、主に職業リスク要因に焦点をあてたリスク要因別のGBD死亡推計及び障害調整生存年(DALY)推計であり、いずれも全年齢・男女合計の数(#)で示しているが、年齢階層別、男女別、(10万人当たりの)率または総死亡/総DALYに対する割合(%)も入手可能である。
また、1990~2023年の各年についてデータがあるが、GBD2023データを示した表では、紙幅の関係で、1990、2010、2023年の3年についてのデータのみを示している。いずれも、本誌が独自に「GBD比較データベース」から直接抽出したものである。
なお、GBD比較データベースは、GBDが更新されるたびに新たなデータセットに置き換えられてしまうが、本誌は、本特集に関連したデータについて、GBD2013以降については、当時のGBD比較データベースから抽出したデータも保持しており、GBD
2017以降は、1990年以降の各年のデータがある。一部しか紹介できないが、変遷の比較を示した表では、各GBDについて推計された最終年の推計(例えばGBD2013による2013年の推計)を示した。

GBD2023の変更内容

論文②による、GBD2023の以前の推計からの変更(付加価値)に関する説明は以下のとおりである。
「GBD2023は、375の疾病・傷害及び88の修正可能なリスク要因を分析して、1990年から2023年までの204か国・領域における有病率、発生率、障害生存年(YLD)、損失生存年(YLL)、障害調整生存年(DALY)、及びリスク帰属DALYの更新された推計を提供する。35,000以上の新たなソースを追加したことで、GBD2021から負荷の推計が向上した。とくに虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患、及び結核などの疾病の負荷の推計に用いたデータが顕著に増加した。分析は5つの新たな原因-潰瘍性大腸炎、クローン病、甲状腺疾患、その他の内分泌・代謝・血液・免疫疾患、及び感電死-に拡大した。『その他のパンデミック関連の結果』は、原因として除外された。さらに、疾病モデリングの主要ツールを疾病モデリング・メタ回帰バージョン2.1(DisMod-MR 2.1)から、データの時系列的傾向をより効果的に捕捉する、疾病モデリング年齢-時間(DisMod-AT)へ、有病率をモデル化するための主要ツールの移行を開始した。GBD2023では、とくに家庭内暴力、鉛曝露、高BMI、及び空腹時高血漿グルコースについて、85件の新規または更新された系統的レビューを実施することによって帰属負荷推計を強化するとともに、16,000以上の新たなソースから追加データを組み込み、過去のGBDサイクルからリスク要因分析を進化させた。新たなエビデンス若しくは結果または媒介因子の詳細化に基づき、粒子状物質汚染と認知症の関係など、50の新たなリスク-結果のペアが分析され、2つのペア(小児衰弱とマラリア、及び、高アルコール摂取と鼻咽頭がん)は包含基準不適合または他の結果との重複により除外された。合計で、GBD2023では676のリスク-結果のペアが分析された。特定のリスク要因について、とくに鉛曝露に帰属する負荷の推計及びトランス脂肪酸高摂取食の理論的最小リスク曝露レベルの改訂に関して、方法が更新された。」
職業リスク要因に特化した変更内容はない。

疾病・傷害(原因)のヒエラルキー

論文②のタイトルにあるように、GBD2023では375の疾病・障害(原因)が対象とされている。
「GBD2023は、非致死的結果を伴うもの371、致死的結果を伴うもの292、[合計]375の疾病及び傷害について、発生率、有病率、YLD、YLL、及びDALYを推計した。特定の疾病及び傷害は4つのレベルの原因階層内に分類される。最上位カテゴリー-レベル1-には、NCDs[非感染性疾患][A]、CMNN[伝染性、妊産婦、新生児、及び栄養関連疾患]疾患[B]、傷害[C]という3つの主要な原因グループが含まれる。レベル2のカテゴリーはさらに細分化され、心血管疾患または交通傷害などの特定のサブグループに分類される。レベル3の原因には具体的な原因(例えば、脳卒中、道路傷害)が含まれる。場合によってはレベル3の原因が分析のもっとも詳細なレベルとなるが、他の場合には原因がレベル4でさらに細分化される。レベル4の原因はもっとも具体的である(例えば、虚血性脳卒中、歩行者道路傷害)。GBD原因ヒエラルキーの詳細情報は付録1(表S3)に記載されている。」

リスク要因のヒエラルキー

論文②はまた、「GBDリスク要因のヒエラルキー」について、以下のように説明している。
「リスク要因分析は、健康結果に影響を与える階層的に組織化された修正可能なリスク要因の因果ウエブを前提とする、比較リスク評価フレームワークに基づいた(付録2セクション2、表S2)。リスク要因は4つのレベルのヒエラルキーに分類され、最上位レベル1には-環境・職業リスク、行動リスク、代謝リスクという-広範なカテゴリーが位置づけられた。レベル1カテゴリーはさらに細分化され、レベル2(例えば大気汚染)におけるリスクグループ、レベル3(例えば粒子状物質汚染)及びレベル4(例えば固形燃料による家庭内大気汚染)におけるより詳細なリスク要因の両方に焦点を当てた分析が可能となる。GBD2021及びGBD2023は、ヒエラルキーレベル全体で合計88のリスク要因を含めた(付録2表S1)。リスク要因の定義及びモデリングの詳細は付録2(セクション4)に記載されている。」

表2

全リスク要因による負荷

■死亡-世界・日本ともに増加傾向

まず、全原因(疾病・傷害)による総死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年4,794万から2023年6,004万へ25.2%増加(表1)。経年的にみると、2019年までも増加傾向ではあるが、COVID-19による2020年(6,015万)と2021年(6,593万)の急増の後、減少している(図1)。

表1
表2
図1
図2


GBD間の変遷は、世界では、図ではほとんど確認できないほど一致している。
GBD2023によると、日本では、1990年82万から2023年162万へと96.2%の増加(表1)。経年的にみると、ほぼ一環した増加傾向だが、2020年は微減している(図3)。
GBD間の変遷は、日本でも、図ではほとんど確認できないほど一致している。

図3
図4

そのうち全リスク要因による死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年2,890万から2023年3,477万へ20.3%の増加で、総死亡の増加率よりは低く、2020年へ微減しているものの、ほぼ増加傾向がみられる。総死亡に対する割合は1990年60.3%から2023年57.9%へ減少している。それでも、すべてのリスク要因を取り除くことができれば、総死亡を半数以上減少させることができるということである。経年的にみると、2017年までの増加傾向の後、2020年まで減少、その後また増加している。
GBD間の変遷は、図ではわからないほど一致している。
GBD2023によると、日本では、1990年45万から2023年72万へ59.9%の増加で、やはりほぼ一貫した増加傾向がみられる。。総死亡に対する割合は1990年54.7%から2023年44.3%へ減少している。総死亡に対する全リスク要因による死亡の占める割合は、世界の場合よりも低い。経年的にみると、全原因による総死亡と傾向は同じであるが、増加率はそれよりも低い。
GBD間の変遷は、図ではわからないほど一致している。

■DALY-世界・日本ともに2021年以降は増加

全原因(傷病)による総DALYは、GBD2023によると、世界では、1990年27.4億から2023年28.0億へ2.1%の増加でほぼ変わっていないが(表2)、経年的にみると、総死亡の場合とは逆に2019年までゆるやかな減少傾向がみられ、2019年と2020年に急増した後減少という経過である(図2)。

GBD間の変遷では、総死亡の場合よりも変動があり、新しいGBDになるほどやや高くなっている。
GBD2023によると、日本では、1990年3,217万から2023年4,245万へと32.0%増加(表2)。全原因による総死亡よりは増加率は低いが、経年的な増加傾向は同様である(図3,4)。
GBD間の変遷では、世界の場合と同様、総死亡の場合よりも変動があり、新しいGBDになるほどやや高くなっている。変動の幅が、世界の場合よりも大きい。
そのうち全リスク要因によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年14.2億から2023年12.7億へ10.4%減少しているものの、2020年を底に2021年以降は増加という状況である。総死亡に対する割合は1990年51.8%から2023年45.4%へ減少している。GBD間の変遷では、総DALYの場合と同様の傾向であるが、変動幅は相対的に小さい。
GBD2023によると、日本では逆に、1990年1,365万から2023年1,617万へ18.5%増加で、ゆるやかな増加傾向のなかで、やはり2021年以降増加という状況である。ただし、総DALYに対する割合は1990年42.4%から2023年38.1%へ減少している。
GBD間の変遷では、GBD2023がもっとも高く、他はよく似ているものの、GBD2021がやや低い。

職業リスク要因による負荷

全リスク要因はレベル1で、環境/職業リスク行動リスク代謝リスクの3つに分類され、各々がさらに細かく分類される。環境/職業リスクで言えば、レベル2で、安全でない水・衛生・手洗い、大気汚染、非至適温度、その他の環境リスク、職業リスクの5つに分類される。各々のレベルごとのGBD2023推計データを抽出することができ、表1,2に示してあるが、同じく表に示してあるように、下位レベルの分類のリスク要因で抽出した死亡数を合計したものが上の分類で抽出した死亡数と、またレベル1の3分類で抽出した死亡数を合計したものが総死亡数と必ずしも一致しないことに留意されたい。
なお、COVID-19はいずれのリスク要因とも結び付けられておらず、今回紹介する表のいずれのリスク要因の項目にも含まれてはいない。

■死亡-世界は横ばい、日本は増加

職業リスク要因による死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年114万から2023年116万へとほとんど変化していない。経年的にみると、1999年119万が最高で、2020年107万への減少がみられた後、増加している(図5)。

図5
図6

GBD間の変遷では、GBD2023がもっとも低い一方で、GBD2021が他よりもかなり高くなっている。これは、後にみるように、職業性粒子状物質・ガス・ヒュームがGBD2021でもっとも高く、GBD2023で他よりかなり低くなっていること、職業性傷害がGBD2023でもっとも高いが、GBD2021でもかなり高くなっていることが原因のようだ。
GBD2023によると、日本では、1990年17,096から2023年30,972へと81.2%増加しているが(2017~20年はほぼ横ばい)、全原因による総死亡の増加率よりは低い(図8)。

図7
図8

GBD間の変遷では、やはりGBD2023がもっとも低いが、他のGBDはよく似た結果であり、世界の場合よりも変動の幅は小さい。
総死亡に対する職業リスク要因による死亡の割合は、世界・日本ともに2023年で1.9%という数字だが、世界では1990年の2.4%から、日本では1990年の2.1%から、やや減少している。

■DALY-世界・日本ともに2020年まで減少傾向

職業リスク要因によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年8,002万から2023年7,751万へ3.1%減少。経年的にみると、2020年へとゆるやかな減少傾向がみられた後、増加している(図6)。
GBD間の変遷では、GBD2023と2021が似ていて高く、GBD2019と2017はそれよりかなり低い。
GBD2023によると、日本では、1990年146万から2023年123万へ15.4%減少。経年的にみると、世界と場合と同じく、2020年へと減少傾向がみられた(減少傾向は世界の場合よりも大きい)後、増加している(図8)。
GBD間の変遷では、GBD2023と2017が似ていて高く、GBD2021と2019はそれよりも低い。
総DALYに対する職業病リスクによるDALYの割合は、世界では、1990年の2.9%から2023年2.8%とほぼ横ばいであるが、日本では、1990年4.5%から2023年2.9%へ、経年的にも明らかな減少傾向がみられる。

図9
図10
図11
図12


図13

表1,2及び図9~13には、GBD2023による、主要(大区分)リスク要因による疾病負荷に関するデータも示したので、参照していただきたい。
世界では、死亡では、①行動リスクによる死亡がもっとも多く、②代謝リスクによる死亡が増加傾向でそれに次ぐようになり、③環境/職業リスクによる死亡はほぼ横ばい状態。
DALYでは、①行動リスクによるDALYがもっとも多いが減少傾向にあり、②代謝リスクによるDALYはやはり増加傾向でそれに次ぐようになり、③環境/職業リスクによるDALYは減少傾向にある。
日本では、死亡では、①代謝リスクによる死亡がもっとも多く増加傾向、②行動リスクによる死亡も増加傾向だが①よりは低く、③環境/職業リスクも増加傾向にある。
DALYでは、①代謝リスクによるDALYがもっとも多く増加傾向にあり、②行動リスクによるDALYは2020年まで減少傾向で①を下回ったものの、以降増加、③環境/職業リスクによるDALYもゆるやかな増加傾向にあるようだ。
職業リスク要因以外のリスク要因については、GBD間の変遷をすべてについてチェックしたわけではないが、日本の大気汚染による死亡推計が、GBD間の変動がかなり大きいようにみえたので、図13に変遷を示したので参照していただきたい。大気汚染の下位カテゴリーには、粒子状物質汚染(大気粒子状物質汚染、固形燃料による家庭大気汚染)、大気オゾン汚染、二酸化窒素汚染があり、様々な結果とペアになっているが、大気粒子状物質汚染による死亡が大部分を占めている。

職業リスク要因別の負荷

職業リスク要因はレベル3で、職業性発がん物質、職業性粒子状物質・ガス・ヒューム、職業性喘息原因物質、職業性傷害、職業性騒音、職業性人間工学要因の6つに分類される。このうち、職業性騒音と職業性人間工学要因については、死亡は推計されていないが、DALYは推計されている。
GBD2023による死亡・DALY推計を表3,6及び図14~17に示した。

表3
表4
表5
表6
表7
表8
図14
図15
図16
図17


GBD2023による職業リスク要因別の順位は、以下のとおりである。
死亡推計でみると、世界では、①職業性傷害がもっとも多いがゆるやかな減少傾向であるに対し、②職業性発がん物質が増加傾向で差が縮まりつつあり、③職業性粒子状物質等、④職業性原因喘息原因物質が続いている。職業性発がん物質による死亡が職業リスク要因による死亡に占める割合は、1990年17.9%から2023年30.1%へ67.7%増加している。
日本では、①職業性発がん物質がもっとも多くかつ増加傾向であるのに対して、③職業性傷害は減少傾向で、②職業性粒子状物質等に抜かれ、④職業性原因喘息原因物質がもっとも少ない。職業性発がん物質による死亡が職業リスク要因による死亡に占める割合は、1990年50.2%から2023年88.4%へ75.9%増加している。
DALY推計でみると、世界では、①職業性傷害が減少傾向にあるものの他との差は依然大きく、②職業性人間工学要因、③職業性騒音、④職業性発がん物質、⑤職業性粒子状物質等、⑥職業性原因喘息原因物質という順位。職業性発がん物質によるDALYが職業リスク要因によるDALYに占める割合は、1990年6.2%から2023年9.8%へ58.9%増加している。
日本では、①職業性発がん物質が増加傾向で②③を抜き、②職業性傷害は減少傾向、③職業性人間工学要因はほぼ横ばいで、④職業性騒音、⑤職業性粒子状物質等、⑥職業性原因喘息原因物質という順位。職業性発がん物質によるDALYが職業リスク要因によるDALYに占める割合は、1990年12.0%から2023年33.4%へ2.8倍も増加している。
DALYでは、死亡では現われなかった人間工学要因と騒音による負荷も相当な割合を占めていることがわかる。結果的に発がん物質の占める割合も相対的に低くなる。経年的には、世界では傷害以外のすべてで増加傾向がみられるのに対して、日本では、喘息原因物質と人間工学要因でも減少している。
GBD2013~2023推計間の変遷を、表4,5,7,8に示した。
GBD2013~2016による世界の死亡推計で、職業性発がん物質による死亡の占める割合が、他よりも著しく大きいなどの特徴は、後述する、対象となった職業リスク要因-結果のペアが、GBD2013~2016では、GBD2017以降と異なっていることによる。

職業性発がん物質による負荷

職業性発がん物質による死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年204,779から2023年348,225へ70.0%増加、職業リスク要因による死亡に占める割合も1990年17.9%から2023年30.1%へ67.7%増加している(表3)。経年的に増加傾向がみられる(2018・19年は微減、図18)。
GBD間の変遷では、推計された最終時期については、おおむね似た結果であるが、新しいGBDほどやや低くなっている。

図18
図19


GBD2023によると、日本では、1990年8,590から2023年27,376へと3倍以上増加、職業リスクによる死亡に占める割合も1990年50.2%から2023年88.4%へと大幅に増加(表3)。経年的にほぼ一貫した増加傾向がみられる(図20)。

図20
図21

GBD間の変遷では、新しいGBDほど高くなっているが、GBD2023と2021はほぼ一致している。
職業性発がん物質によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年494万から2023年760万へ53.9%増加、職業リスク要因によるDALYに占める割合も1990年6.2%から2023年9.8%へ58.9%増加している(表6)。経年的な傾向は死亡の場合と同様である(図19)。
GBD間の変遷では、GBD2023と2021が似ており、GBD2019はそれよりも高く、GBD2017はそれよりも低くなっている。
GBD2023によると、日本では、1990年18万から2023年41万へ2倍以上%増加、職業リスク要因によるDALYに占める割合も1990年12.0%から2023年33.4%へ2.8倍増加している(表6)。経年的な傾向は死亡の場合と同様である(図21)。
GBD間の変遷では、GBD2023と2021が似ていてもっとも高く、次いでGBD2019、GBD2017はかなり低くなっている。
職業性発がん物質による疾病負荷は、世界・日本とも、死亡・DALYいずれも増加しており、とりわけ日本では増加率が著しく高いうえに、死亡では職業リスク要因による死亡の88.4%(2023年)を占め、DALYでも2013年以降首位に立って33.4%(同前)を占めている。

職業性粒子状物質等による負荷

職業性粒子状物質・ガス・ヒュームによる死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年141,431から2023年228,604へ61.6%増加(表3)。経年的にもおおむね増加傾向がみられる(2020年は減少、図18)。
GBD間の変遷でみると、GBD2017~2021は似ているものの、GBD2023だけ~著しく低くなっている。
GBD2023によると、日本では、1990年1,075から2023年1,883へ75.2%増加(表3)。経年的にもほぼ増加傾向がみられる(図20)。
GBD間の変遷でみると、新しいGBDほど低くなっており、GBD2023はとりわけ低い。
職業性粒子状物質・ガス・ヒュームによるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年335万から2023年505万へ50.7%増加(表6)。経年的にも、またGBD間の変遷でみても、死亡の場合と同様の傾向である(図19)。
GBD2023によると、日本では、1990年27から2023年39へ45.2%増加(表6)。経年的にも、またGBD間の変遷でみても、死亡の場合と同様の傾向である(図17)。

職業性傷害による負荷

職業性傷害による死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年335万から2023年505万へ50.7%増加(表3)。経年的におおむね減少傾向がみられるが、2021年は増加している(図22)。
GBD間の変遷でみると、新しいGBDほど高くなっており、そのなかでもGBD2017と2019、GBD2021と2023は似ている。

図22
図23
図24
図25
図26
図27


GBD2023によると、日本では、1990年7,075から2023年1,683へ4分の1弱に激減(表3)。経年的に一貫した減少傾向がみられたが、近年は横ばい状態にある(図25)。
GBD間の変遷では、GBD2021と2023は似ていて、GBD2019はやや低く、GBD2017はやや高いが、変動の幅は大きくない。
職業性傷害によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年5,848万から2023年4,189万へ28.4%減少(表6)。経年的に減少傾向がみられたが、近年は横ばい状態(2021年の増加もない)(図23))。
GBD間の変遷では、死亡の場合と同様の傾向だが、GBD2023と2021の差も大きい。
GBD2023によると、日本では、1990年82万から2023年12万へ半減以下(表6)。経年的に減少傾向がみられたが、近年は横ばい状態にある(図26)。
GBD間の変遷でみると、GBD2017を除いて、新しいGBDほど高くなっている。

職業性喘息原因物質による負荷

職業性喘息原因物質による死亡は、GBD2023によると、世界では、1990年26,611から2023年31,116へ16.9%増加(表3)。経年的には、2020年に減少した後、増加している(図28)。

図28
図29
図30
図31
図32
図33

GBD間の変遷では、新しいGBDほど低くなっているが、GBD2023と2021は比較的似ている。
GBD2023によると、日本では、1990年356から2023年29へ10分の1未満に減少(表3)。経年的には、ほぼ一貫した減少傾向がみられた後、2021年以降横ばい状態(図31)。
GBD間の変遷では、ほとんど同じ結果である。
職業性喘息原因物質によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年161万から2023年227万へ40.8%増加(表6)。経年的には、やはり2020年に減少した後、増加している(図29)。
GBD間の変遷では、GBD2017から2021まで新しいGBDほど低くなっていたが、GBD2023はそれらよりも高くなっている。
GBD2023によると、日本では、1990年3.3万から2023年2.4万へ26.9%の減少(表6)。経年的には、ゆるやかな減少傾向がみられる(図32)。
GBD間の変遷では、世界の場合と同様、GBD2017から2021まで新しいGBDほど低くなっていたが、GBD2023はそれらよりも高くなっている。

職業性騒音による負荷

職業性騒音によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年468万から2023年960万へ2倍に増加(表6)。経年的には、一環した増加傾向がみられる(図24)。
GBD間の変遷では、新しいGBDほど高くなっているが、GBD2023は他のGBDよりもかなり高い。
GBD2023によると、日本では、1990年9.3万から2023年12.1万へ29.4%増加(表6)。最近15年くらいはほぼ横ばい状態のようだ(図27)。
GBD間の変遷では、新しいGBDほど高くなっているが、GBD2023は他のGBDよりもかなり高い。

職業性人間工学要因による負荷

職業性人間工学要因によるDALYは、GBD2023によると、世界では、1990年696万から2023年1,110万へ59.5%増加(表6)。経年的には、おおむね一環した増加傾向がみられたが、2023年は微減(図30)。
GBD間の変遷では、新しいGBDほど低くなっているが、GBD2023は他のGBDよりも著しく低い。
GBD2023によると、日本では、1990年31万から2023年30万へ微減(表6)。経年的に大きな変化はみられない(図33)。
GBD間の変遷では、GBD2023は2021と比較的似ているが、GBD2019、GBDよ2017よりもかなり低くなっている。

小分類職業リスク要因別の負荷

以上では、リスク要因分類のレベル3=大分類の職業リスク要因別までのGBD死亡・DALY推計についてみてきた。
職業性発がん物質はレベル4でさらに13の発がん物質への職業曝露に分類されるが(後述)、他の職業リスク要因は下位レベルの分類はない。
また、職業性喘息原因物質(喘息)、職業性騒音(年齢関連その他の難聴)、職業性人間工学要因(腰痛)は1疾病のみと「リスク要因-原因のペア」が組み合わされているが、職業性発がん物質、職業性粒子状物質・ガス・ヒューム、職業性傷害は複数の疾病・傷害と「リスク要因-原因のペア」が組み合わされている。
それらについては、別にみていきたい。

安全センター情報2026年3月号