遺族と合意したから重大災害処罰法の減刑? 「ダメ」/韓国の労災・安全衛生2025年12月16日

「重大災害処罰等に関する法律」(重大災害処罰法)の施行から4年が経過しているが、重大災害は有意に減少していない。立法効果が制限的だという指摘と、その理由としてきちんとした量刑基準がないためだという意見が出ている。
最高裁判所・量刑委員会は15日、最高裁で『重大災害処罰と量刑』シンポジウムを行い、量刑基準作りを議論した。専門家たちは、従来の量刑事例で減刑量刑の要素としてよく参酌された遺族ちの合意と被害者の過失、再発防止措置を批判し、厳格で新しい基準が準備されなければならないと口を揃えた。
「両型の中心軸は遺族合意ではなく、安全保健管理体系の改善」
光州地裁順天支部のボム・ソンユン部長判事の分析によると、2022年1月27日の法施行後、9月30日までに被告人70人に宣告された有罪判決の中で、懲役刑の実刑は6件(8.57%)に止まった。有罪判決の内の1件を除いた69件(98.6%)が、遺族と合意した事件だった。28件(38.6%)は被害者の過失、45件(64.3%)は、再発防止措置が被告人に有利な条件と認められ、情状酌量された。
専門家たちは遺族との合意は制限的に考慮することを提案した。重大災害発生時は、遺族は生計に打撃を負うことになるため、刑事合意に応じる誘引が大きくなり、企業は事後費用が安全保健確保義務の履行よりも廉いため、企業の安全投資が発生し難いという理由だ。このような量刑基準を持てば、安全管理システムの確保という立法趣旨は実現し難くく、企業は事後処理だけを気にするだろうという説明だ。
ボム・ソンユン部長判事は「立法趣旨が具現されるようにするためには、遺族との合意が参酌されるケースを、厳格な再発防止措置の履行と並行するケースと見なければならない」と提案した。延世大法学専門大学院のクォン・オソン教授も「量刑の中心軸は遺族との合意ではなく、安全保健管理体系の改善、危険性評価履歴、専門家の検証など、再発防止と安全システムの改善に変わらなければならない」と強調した。
被害者の過失量刑は「削除」、報告無視・縮小・隠蔽を「追加」
光州地裁順天支部は、「被害者の過失量刑は慎重に考慮する必要がある」と注文した。重大災害は、事業場自体や企業の構造的な危険性と、労働者の不注意な活動が複合的に作用して発生する。その内、法の立法趣旨は、安全管理システムの不備と安全文化の不在という制度・構造的原因を指摘することである以上、労働者の不注意行動を減刑量刑の要素として斟酌することには慎重であるべきだということだ。
具体的には、労働者が事故発生の危険性や施設の危険性を知っていたという事情を、量刑要件から除外すべきだという案が出てきた。討論者として参加した議政府地方裁判所・南揚州支院のチョン・ジウォン判事は「産業現場は、常に事故の危険が存在するので、労働者の過失があっても、重大災害を防げるシステムが必ず備わっていなければならない。」「従って、事業主と経営責任者が安全保健確保義務を履行しなかった場合、彼らに重い責任を問うべきだ」と強調した。
クォン・オソン教授は、経営責任者の安全保健確保義務の要素を提示した。クォン・オソン教授は「組織の報告体系、危険性評価、内部統制の実質的な作動の可否が、量刑で重要に考慮されなければならない。」「企業内での安全保健権限委任の適正性、報告体系の構成と活用、危険報告受信の可否、報告無視・縮小・隠蔽の可否が、量刑基準に明示的に反映される必要がある」と話した。
法を破ったが、再発防止対策の斟酌を制限すべき
すべての義務の履行、充実したリスク評価の前提が必要
再発防止対策もやはり、制限的に斟酌すべきだということに、は声が集まった。重大災害処罰法は、事業主と経営責任者などに従事者の安全保健上の有害または危険を防止するために、「災害発生時の再発防止対策の樹立とその履行に関する措置」をするとしている。これに違反して法違反になったが、事後の再発防止対策作りを減刑要素にすることには慎重でなければならないという意見だ。討論者たちは、再発防止対策が減刑要件になるためには、少なくとも重大災害処罰法で当然の義務と規定したものは、全て履行するレベルでなければならないと提示した。
有利な量刑要素として再発防止措置が挙げられるためには、充実した危険性の評価を要素に入れるべきだという提言も続いた。再発防止措置として考慮される程の改善事項は、現場の個別・具体的な安全保健措置よりも「問題になるほどの有害・危険要因を早期に捜し出し、改善・管理できる体系」であり、これはすなわち、危険性評価を意味するというのが理由だ。
キム・ドンヒョン弁護士(法務法人ユルチョン)は、雇用労働部の告示と判決例を考慮し、△労働者の参加、△複数の有害・危険要因の把握方法の並行、△危険性減少対策の優先順位の確立、△危険性減少対策の履行点検、という要素が全て入らなければ、充実した危険性評価と見ることはできないと主張した。労働者の参加がなく、事業場の巡回点検だけによって有害・危険要因を把握し、実際の履行点検がない危険性評価などは、再発防止措置とは見ることはできないという意味だ。危険性減少効果の優先順位を厳しくし、効果が小さい個人保護装具の提供や教育よりは、効果が大きい有害・危険要因の除去措置を執れば、充実した危険性評価をしたと評価できるとした。
他にも、経営責任者の処罰方式は重大災害の発生責任を完全に消すことは難しいという問題があるだけに、法人を処罰する必要があるという提案も出てきた。クォン・オソン教授は「代表理事が新しく選任された日に重大災害が発生した場合、現在の代表理事に罪を問うことは難しく、前の代表理事もやはり経営責任者ではないので処罰することは難しいだろう。」「長期的には、法人自体を行為者と見て法人の違法を量刑に考慮して、法人の解散や営業停止などで処罰する方式を模索しなければならない」と主張した。
2025年12月15日(月) 毎日労働ニュース イム・セウン 記者
https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=231774


