指先が剥がれ、太ももは爛れている/韓国の労災・安全衛生2025年10月22日

▲ 資料写真イメージトゥデイ、編集キム・ヒョジョン記者

昨年三月、二次電池用リチウム生産業者のポスコフィルバラリチウムソリューションから、水酸化リチウムの粉末が流出した。一瞬の間に労働者700人が待避し、181人が病院に運ばれた。肌が荒れ、呼吸困難を訴える労働者もいた。ところが、この事故の原因物質である水酸化リチウム(LiOH)は、現在までも産業安全保健法上で『有害・危険物質』」に指定されていない。一方、気候エネルギー環境部の化学物質安全院は、水酸化リチウムを『非常に有害な物質』に分類している。電気自動車バッテリーの核心素材だが、労働者の安全網からは外れているわけだ。

リチウム工場の労働者37人が肌を損傷
新入生ほど症状の頻度が高い

22日、産業安全保健研究院の研究チームとセブランス病院職業環境医学科のコ・ドンヒ専門医は、最近、大韓職業環境医学会誌に発表した論文で「正極活物質製造工場の労働者から強アルカリ性水酸化リチウムによる皮膚損傷が確認された」と明らかにした。

研究は2023年、国内の正極活物質製造業者の2ヶ所で、皮膚症状を示す労働者37人を調査して分析した。調査対象の工場は、2019年に設立され、2021年から正極活物質を本格的に生産している。リチウム・ニッケル・コバルトを原料に混合して、700~900度の高温で焼成した後、洗浄・乾燥・包装する工程を経る。

研究に参加した人の平均年齢は29歳で、83.8%が20代の男性だった。回答者の半分(48.6%)は一年に二回以上の皮膚症状を経験し、70%は「仕事をする時に悪化し、休めば好転する」と答えた。最も一般的な症状は、かゆみ(27.5%)、紅斑(20.3%)、化学火傷(15.9%)の順で、手・腕(67.6%)が最も多く損傷した。首・顔(32.4%)、太もも(27.0%)など、服で隠された肌にも症状が現れた。

研究陣は「作業服と手袋の間の隙間から金属の粉塵が浸透し、汗と反応しながら化学的な刺激が発生したと見られる。」「特に、太ももなどの非露出部位の病変は、作業服の繊維を通過した粉塵が、皮膚に付着してできたものと推定される」と説明した。

彼らの平均勤続期間は10.7ヶ月で、73%が入社一年未満の新入だった。ところが勤続期間が短い労働者であるほど症状の頻度が高いことが判った。研究陣によると、熟練労働者は洗浄剤の使用や保湿剤の塗布など、個人的な予防措置を行ったため、症状が減る傾向を示した。

強アルカリ性水酸化リチウム、肌バリア破壊

研究チームは、皮膚疾患の主な原因として水酸化リチウムを挙げた。水酸化リチウムは水分と出会うと強いアルカリ性を帯び、皮膚の障壁を破壊する。汗に濡れた肌にリチウムの粉末が触れる場合、脂肪成分が分解されて保護機能が崩れ、刺激と痛みが直ちに発生するということだ。

研究陣は「リチウム粉末が汗に触れる時、直ちに刺激と痛みが現れた。」「これは単純刺激性接触皮膚炎を越えて、化学火傷水準の損傷」だとした。皮膚が損傷した後には、ニッケル・コバルトイオンがその隙間を通じて浸透し、免疫反応とアレルギー性接触皮膚炎を誘発した。

このような複合的な露出環境は、既存の単一金属露出産業で報告された皮膚疾患とは異なる特徴だ。研究陣は「この複合損傷は、既存の金属性接触皮膚炎とは異なり、リチウムの化学的反応が一次的な原因として作用するという点で区別される」と説明した。

保護具が支給されたが、着用率が低く
「新産業の陰」リチウム、安全真空状態

これらの工場では陽圧式マスク、防塵服、静電気防止手袋、ゴム手袋などの保護具を支給した。しかし、実際の着用率は高くなかった。労働者たちは「高温環境で防塵服を着ると汗がたまって、却って症状がひどくなる。」「手袋が短くて手首が露出する」という不便を訴えた。労働者たちはタオルを巻いたり、任意に洗い流すやり方で対応した。

研究陣は「水酸化リチウムを扱う労働者の職業性皮膚疾患の危険性を示している。」「工程別オーダーメード型の個人保護装備の提供、作業環境の改善、新規労働者のための体系的な教育強化などの措置が必要だ」と強調した。国際労働機構(ILO)と世界保健機関(WHO)は、国際化学物質安全カード(ICSC)資料で、水酸化リチウムを皮膚腐食性物質に区分し、深刻な皮膚火傷と目の損傷を警告している。

2025年10月23日 毎日労働ニュース キム・ミヨン記者

https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=230807