『執拗に』『酷く』いじめられなければ精神疾患労災死亡認定しない?/韓国の労災・安全衛生2025年10月21日

▲ 資料写真 イメージトゥデイ

労働者が仕事のために精神疾患に罹って亡くなったのに、勤労福祉公団が『そうではない』と誤って判断し、公団の訴訟敗訴率が依然として下がっていない。災害を調査する時に使われる指針が保守的だ、という指摘されている。

昨年の業務上自殺10件中3件「公団敗訴」

<毎日労働ニュース>が20日、国会・気候エネルギー環境労働委員会のパク・ヘチョル「共に民主党」議員から受け取った資料によると、公団が精神疾患死亡に対する労災を不承認としたために提起された訴訟が、毎年増え続けている。2020年の29件から2021年の32件、2022年の48件に次第に増加してきたが、2023年には61件、昨年は75件と急増した。

特に、確定事件での公団の敗訴率が目立つ。2020年に8.3%を記録した後、2021年は18.2%、2022年は36.4%、2023年は17.6%、昨年は35.5%に増えた。

公団の『精神疾病業務関連性調査指針』を見ると、多少曖昧だったり、保守的だ。この指針には、労働者の死亡がどれくらい業務と関連性があるかを見る時、業務ストレス水準が高いと判断される例が含まれている。長期間入院を要したり、原職場への復帰が困難なレベルの疾病や負傷が発生した場合、他人に長期間入院を要したり、原職場復帰が困難なレベルの負傷をさせ、事後対応にも関連するようになった場合などだ。

また、公団は、倒産または大幅な業績悪化、信用失墜などに影響を与えかねないミスを犯し、事後対応にも関わるようになったケースも例として挙げた。ミスの程度が弱くても、事後対応で懲戒、降格、月給を越える賠償責任を追及されることになるなどの不利益を受け、職場内の人間関係が顕著に悪化してもストレスを受けると見ている。

いじめとの関連では、基準が更に厳しい。いじめ、仲間はずれ、または暴行で自殺すれば業務ストレスが高いと見たが、△部下の職員に対する上司の言動が業務指導の範囲を超えており、人格や人間性の冒涜を伴うといった言動が含まれ、これが執拗に行われた場合、△同僚などに複数人が結託して、人格や人間性を冒涜する言動を執拗に繰り返した場合、△治療を必要とする程度の暴行を受けた場合、が例として挙げられている。『執拗に』『酷く』等の表現が曖昧なだけでなく、業務と死亡との相関関係を判断する時の総合的な判断を誤らせるという指摘だ。

「業務関連性がある」公団の判断を覆した判例が積もる
朴海哲議員「裁判所の判例を反映すべきで、指針も再検討」

公団の判断基準が余りに枝葉的だったり保守的だという点は、実際の判例でも明らかになっている。公団は2022年に、職場の近くのマンション工事現場に入って、9階から飛び降りしたネットワーク管理労働者について、「業務と精神異常の間の関連性のある根拠が足りない」として、遺族給付と葬儀費を支給しなかった。

故人は発生前の二週間に続けて夜勤と超過勤務をし、週末にもデータセンター移転の模擬訓練を支援をするために、翌日の明け方か、または午前に退勤した。引継ぎが厳しく、同僚たちが故人の質問に答えられないケースが多かっただけでなく、以前の担当者も不在だった。家族との通話も長くできないほど忙しかった。このような点を考慮して、裁判所は「故人の業務が与える心理的負担、過労と延長勤務、休息不足が原因となり、退勤後に激しい焦燥状態に至り、自殺行動をした可能性が高い」として公団の判断を否定した。

業務との相関関係が密接なのに、故人の躁うつ病・うつ病と家族間の葛藤を理由に、遺族給付と葬儀費を支給しなかったケースもあった。小学校の保育士・教育実務士として働いた故人は、仕事量の過多と校長の悪口・暴言で苦痛を訴え、自宅のトイレで首を吊った。校長は故人に「仕事の処理をバカみたいにして、学校に泥を塗った」「どうして校長を問い詰めるのか」「あきれてひっくり返る」等の暴言を吐いた。

裁判所は「事情を総合してみれば、故人は業務によるストレスでうつ病障害を患うことになり、うつ病障害によって合理的判断ができず、自殺に至ったと判断される」と判示した。公団の処分が約二年後の2022年6月に覆された。

パク・ヘチョル議員は「公団が精神疾患による死亡に、余りにも慎重を期した結果、大切な家族を失った遺族たちが裁判所を訪ねて、再び判断を受けなければならないという残念なことが増えている。」「裁判所の判例を公団の判断に反映する作業が急がれるだけでなく、『執拗に』『ひどく』いじめられなければ業務ストレスが高くないという例を挙げた公団の内部指針も、原点から再検討すべきだ」と強調した。

公団は「年間に7千件程度の訴訟があるが、業務上自殺は30件にもならず、公団の敗訴率の有意味性を確認することは難しいが、業務上疾病の敗訴判例に関する政策研究を進行中であり、該当の研究結果を反映して制度改善を進める予定」で、「指針は災害調査担当者の調査方法に対するガイドラインであり、担当者が多様に、十分な資料を収集し、業務上疾病の有無を判定委員会で判断する」と説明した。

2025年10月21日 毎日労働ニュース カン・ハンニム記者

https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=230767