第三者行為災害における真正な全部示談が成立している場合の介護(補償)等給付の支給調整について
令和5年10月3日付け厚生労働省労働基準局
補償課長補佐(業務担当)事務連絡
標記について、第三者行為災害に係る事務処理は「第三者行為災害事務取扱手引」(令和2年12月。以下「手引」という。)に基づいて行われているところ、今般、労働局からの疑義照会を受けて取扱いを明確にしたことから、今後は下記を踏まえて事務処理に遺漏なきを期されたい。
なお、本事務連絡は手引の運用を変更するものではないことを申し添える。
記
1 真正な全部示談が成立している場合の労災保険給付の取扱い
第一当事者等と第二当事者等の間で真正な全部示談が行われたと判断された場合には、当該全損害の填補日以降を給付の対象期間とするものについては、労災保険給付を行わないこととしている。ただし、年金給付については、災害発生から7年が経過するまでの間の分については支給停止することとなるが、7年経過後は年金給付を再開することとしているところである。
年金給付において7年経過後に支給を再開することとしている取扱いは、基本権が消滅しない限り支分権が発生し続ける年金制度の趣旨は「必要な期間にわたり必要な給付を行う」であり、年金の支給を無期限に停止することは、将来給付予定の年金が損害賠償の支払をもって一時金に置き換わることとなり、年金制度の趣旨が損なわれることとなるためである。
2 真正な全部示談が成立している場合の介護(補償)等給付の取扱い
介護(補償)等給付は傷病(補償)等年金や障害(補償)等年金の受給を要件としているところ、真正な全部示談が成立している場合の当該給付の取扱いについては手引等に明示されていないところである。
介護を受けることで支給事由の発生する介護(補償)等給付は、傷病(補償)等年金や障害(補償)等年金を受給していることを支給の要件のひとつとしているが、その他に現に介護を受けていること等の要件があり、月単位で請求を行うことから、年金のように基本権や支分権を有するものとは異なるものである。したがって、年金の支給をもって介護(補償)等給付が支給されるものではない。
以上のことから、介護(補償)等給付については、年金給付以外の他の労災保険給付と同様に全損害の填補日以降を給付の対象期間とするものについては給付を行わないこととなる。
安全センター情報2025年5月号