令和6年度化学物質管理に係る専門家検討会報告書【2025(令和7)年3月18日】厚生労働省労働基準局安全衛生部(抄)

Ⅰ 検討の趣旨及び経緯等

1 検討の趣旨

今般、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く。)のうち、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)等の特別則の規制の対象となっていない物質を起因とするものが多数を占めている。これらを踏まえ、従来、特別則による規制の対象となっていない物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の制定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充を前提として、事業者が、危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入することとしたところである。
この制度を円滑に運用するために、学識経験者からなる検討会を開催し、2に掲げる事項を検討する。

2 検討会の検討事項

(1) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質のばく露の濃度の基準及びその測定方法
(2) 労働者への健康障害リスクが高いと認められる化学物質の特定並びにそれら物質の作業環境中の濃度の測定及び評価の基準
(3) 労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質に係るばく露防止措置

3 検討の経緯[省略]

4 構成員名簿[省略]

Ⅱ 濃度基準値及び測定方法

第1 令和6年度の濃度基準値及び測定方法の検討結果

1 令和6年度の濃度基準値設定候補物質

令和6年度の濃度基準値設定候補物質は別表1-1[前年度までの積み残し57物質]及び1-2[令和6年度濃度基準値設定候補167物質]のとおりである。

2  令和6年度の濃度基準値及びその測定方法の検討結果

物質ごとの濃度基準値の案及び測定方法、留意事項は別表2のとおりである。なお、発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値は設定しなかった物質についても別表2に掲載している。検討された物質の文献調査結果は別紙1のとおりである。[濃度基準値の案と測定方法を設定した物質は87物質]
測定方法については、標準的な手法として示しているものであり、同等以上の精度が確保できる場合は、その他の方法で行っても差し支えない。
なお、令和5年度に濃度基準値を設定した物質の個別具体の測定法は別紙2のとおりである。

3 濃度基準値を設定しなかった物質とその理由

発がん性が明確であるため、長期的な健康影響が生じない安全な閾値としての濃度基準値を設定しなかった物質は別表3-1のとおりである(再掲)[2物質]。その他の理由で濃度基準値を設定しなかった物質は別表3-2のとおりである。検討された物質の文献調査結果は別紙1のとおりである[9物質]。

4 令和7年度以降に再度検討する物質とその理由

令和4年度から令和6年度に検討対象であった物質のうち、令和7年度以降に再度検討することとなった物質とその理由は別表4のとおりである[128物質]。検討された物質の文献調査結果は別紙1のとおりである。

第2 令和7年度以降の濃度基準値の検討対象物質

令和7年度以降の濃度基準値の検討対象物質は、令和4年度の報告書に基づき、リスクアセスメント対象物(令和7年度以降に施行されるものを含む)のうち、リスク評価対象物質(特定化学物質障害予防規則などへの物質追加を念頭に、国が行ってきた化学物質のリスク評価の対象物質。令和4年度に検討済み)以外の物質であって、吸入に関する職業性ばく露限界値があり、かつ、測定・分析方法がない約350物質を対象とする。令和7~8年度の濃度基準値設定候補物質は、別表1-3のとおりである。令和7年度、8年度それぞれでどの物質を対象とするかは令和7年度検討会で早期に検討する。

(参考)濃度基準値の適用等(令和4年度に整理した事項)※詳細は、「令和4年度化学物質管理に係る専門家検討会報告書(令和5年2月10日)」[2023年1・2月号]参照。[1~4の記載省略]

Ⅲ 危険有害性情報の通知関係

※詳細については「令和6年度化学物質管理に係る専門家検討会中間とりまとめ(令和6年8月30日)」[2024年5月号]参照。

本検討会では、化学物質の危険有害性情報の通知制度における成分名等の通知等についての検討を行った。検討結果は次のとおり。

第1 現行の危険有害性情報の通知制度の運用改善について

1 通知事項の改善について

(1) 「成分及びその含有量」その他事項について

ア 成分及びその含有量(安衛法第57条の2第1項第2号)
CAS登録番号等、成分名を特定できる一般的な番号をSDS等で通知することを義務付けるべきである。ただし、CAS登録番号などが割り当てられていない物質はこの限りではない。

イ 想定される用途及び当該用途における使用上の注意(安衛則第34条の2の4第4号)
使用上の制限を重点として通知することが望ましいとすべきである。通知すべき事項としては、次の事項がある。
(ア)物理的危険性を有する物質については、爆発限界や引火点
(イ) 急性毒性に区分される物質等、急性の健康影響を有する物質については、換気等のばく露低減措置や作業内容に応じた保護具の使用が必要であるという注記

ウ 適用される法令(安衛則第34条の2の4第5号)
特別規則適用物質や危険物に加え、リスクアセスメント対象物質、皮膚等障害化学物質等、がん原性物質及び濃度基準値設定物質については、含有される成分ごとに、法令による規制が適用される旨を通知することを義務付けるべきである。労働基準法(昭和22年法律第49号)の規定に基づき制定された女性労働基準規則(昭和61年労働省令第3号)第2条第1項第18号の妊娠中の女性を就かせてはならない業務の対象物質についても、法令による規制が適用される旨を通知することを義務付けるべきである。
労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第35条及び別表1の2で定める業務上の疾病の対象物質については、適用される法令ではなく、人体に及ぼす作用(危険有害性情報)として通知することが望ましい。

エ 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置(安衛法第57条の2第1項第6号)
急性毒性など、生命に関わるような有害性を有する物質については、有害性の内容や症状、ばく露時の応急措置等、救急隊員が到着する前に行うべき応急措置を通知事項とすることが望ましい。
医師が治療方針を決定する際の問い合わせ先として、日本中毒情報センターの連絡先を通知事項とすることが望ましい。

(2) 「貯蔵又は取扱い上の注意」の記載内容における保護手袋について

ア 取り扱う物質が混合物の場合、保護手袋選定マニュアルを活用して保護手袋を選択することは可能であるが、ユーザーが選ぶことは負担が大きいことから、必要最小限の事項の通知を義務付けるとともに、通知することが望ましい事項を明確にすべきである。

イ 含有される皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質については、適当でない保護手袋の材料(ネガティブリスト)の通知を義務付けるべきである。ただし、厚生労働省HPで公表している皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質の耐透過性能一覧表のURLを示すなど、当該通知事項をインターネットの利用その他の方法により周知した場合は、この限りではないとすべきである。

ウ 最終的に消費される段階の製品(そのまま使用する製品、取扱説明書等に基づき混合する製品などで、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品)については、推奨する保護手袋の材料(ポジティブリスト)の通知が望ましいとすべきである。ポジティブリストを示す場合は、次に掲げる事項に留意すべきである。
(ア)耐透過性クラス(JIS T8116)が最も高い材料(多層フィルム等)のみを明示することなく、作業内容に応じて使用可能な選択肢(耐透過性クラス1以上)を幅広く示すこと。
(イ) 示されたポジティブリスト以外の材料でも事業者が選ぶことができることを明示すること。

エ 保護手袋の「厚さ」について、次のいずれかの事項を通知することが望ましいとすべきである。
(ア)事業者が作業内容や作業時間によって必要な耐透過性クラスを決定し、厚さ(及び材料)を選択することを明示する(保護具選定マニュアル等の活用を明示する)こと。
(イ) 取扱説明書で指定する標準的な使用方法に基づいて必要な耐透過性クラスが特定できる場合は、当該耐透過性クラスを通知するとともに、保護手袋の厚さ及び材料を明示する(製品名の明示でもよい)こと。

(3) 「貯蔵又は取扱い上の注意」の記載事項における呼吸用保護具について

ア 最終的に消費される段階の製品については、呼吸用保護具を使用する場合に選択すべき呼吸用保護具の種類の通知を義務付けるべきである。

イ 防毒用の場合、最終的に消費される段階の製品については、成分に応じ使用すべき吸収缶の種類を通知することを義務付けるべきである。

ウ 最終的に消費される製品の取扱説明書等において、スプレー塗装作業等、ガス・蒸気とミスト状の液体等の粒子状物質が混在する作業を行うことが想定される場合は、防じん機能及び防毒機能を有するろ過式呼吸用保護具又は給気式呼吸用保護具を使用する必要があることを通知することが望ましい。

2 通知方法の改善について

(1) 譲渡・提供前のSDS等の提供

ア 譲渡・提供する以前の段階で、一律にSDS等の開示を義務付けることは困難である。

イ 一方で、リスクアセスメントの結果に基づく措置として代替物を検討するため、購入前にSDSの閲覧ができることが望ましい。このため、譲渡・提供を受けることを検討している者からの求めがあった場合、製品に含有する成分に係る適用法令の一覧だけでも開示することが望ましい。

(2) SDS等により通知した事項に変更が生じたときの通知の迅速化

ア 危険有害性情報、非常時対応や適用法令について、SDS等で通知した事項を変更した場合、速やかに変更された事項の通知を行えるよう、SDS等による通知の電子化及び標準化を推進すべきである(当面の間、電子化・標準化を法令上の義務とはしない)。

イ SDS等による危険有害性情報の通知を電子化し、その電子データの配列を標準化することにより、川上企業、川中企業、川下企業、ユーザー企業それぞれの電子システムに直接入力可能とする。これにより、変更された事項を手入力する手間を省き、通知に要する時間の短縮を図るべきである。

ウ その上で、通知事項の変更時にエンドユーザーにまでその情報を適切に伝えるため、電子的に通知事項を変更し、変更された事項を電子メールで通知する、インターネットに掲載してQRコードを配付する等の方法により、速やかに譲渡・提供先に伝達することを推奨すべきである。

エ アからウを踏まえ、現在、努力義務となっている、通知事項の変更時の譲渡・提供先への速やかな通知を義務化すべきである。

3 履行確保のための施策等

(1) 履行確保の方法

ア 1及び2に記載した事項について、化学物質の譲渡・提供者の履行確保のため、次のとおり法令で規定すべきである。
(ア)SDSの交付等による危険有害性情報の通知の義務(法第57条の2第1項)に罰則を設ける。
(イ) SDS等により通知した事項を変更した場合は、変更後の通知事項を速やかに譲渡・提供先に通知する努力義務(法第57条の2第2項)を義務規定とする(罰則は設けない)。

イ SDS等による危険有害性の通知事項のうち、必須となる事項について、厚生労働省令で定める(罰則は設けない)。これら以外で通知が望ましい事項については、通知等で示す。

ウ これら規定については、施行まで5年程度の周知期間をおき、その間、通知の電子化・標準化等の推進のため、国が一定の支援を行うべきである。

(2) SDS等の作成者に対する支援

ア 国がモデルSDSにおける有害性の区分や濃度基準値などを変更した場合、国は、速やかに情報をメーカー団体に提供するべきである。また、中小事業場に対して、SDS作成支援ツールを周知すべきである。

イ SDS等の作成については、事業者団体が連携し、改正法令の公布から施行までの5年間を目途に、中小事業者に対する支援を行うべきである。

ウ 危険有害性情報の通知の電子化及び標準化については、具体的な方法を引き続き検討し、改正法令の公布から5年後に中小事業者が電子化及び標準化に対応できるよう、国が一定の支援を行うべきである。

(3) より使い勝手の良い保護手袋の開発等に対する国の支援

次の事項について、国が一定の研究支援を行うべきである。

ア 保護手袋の作業性の向上等を促進するための保護手袋の作業性の性能評価方法の確立等

イ 保護手袋の使用可能時間を確認するための簡易な測定方法の評価方法の確立等

(4) 化学物質管理の向上を図るための官民の取組

令和7年2月を初回とする「化学物質管理強調月間」を活用し、官民一体となって化学物質管理の向上の取組を働きかけるべきである。

(5)危険有害性情報の通知事項に関するメーカーとユーザーの対話の充実

危険有害性情報の通知事項の適正化や、通知の電子化及び標準化にはメーカーとユーザーの対話を積み重ねることが重要であるため、事業者団体により、両者の対話の場を常設すべきである。

第2 危険有害性情報の通知制度における営業秘密の保持について

1 営業秘密の定義、非開示の対象

(1) 営業秘密の定義

営業秘密の定義としては、次の全てを満たすものとすべきである。

ア 情報が公開されていないこと

イ 譲渡・提供者が、情報が公開されないように合理的な手段をとっていること

ウ 開示によって譲渡・提供者に財産上の損失又は当該者の競合相手に財産上の利益を与えること

(2) 非開示の対象

ア 成分名は、重篤な健康障害を生ずる有害性クラスに該当する場合や、特定の有害性クラスであって区分1に該当する場合等を除き、営業秘密に該当する場合は非開示の対象とすべきである。
イ 含有量は、非開示の対象とはせず、上記の成分名の非開示対象の物質の含有量は、(安衛則第34条の2の6に規定された)10%刻みの表示を原則とすべきである。

2 リスクアセスメントの実施に支障のない範囲として、営業秘密として非開示にできる化学物質の有害性の範囲及び濃度

非開示にできる化学物質は、次の(1)及び(2)において、非開示の対象とすべきではないとしたものを除く化学物質とする。

(1) 一定の有害性を有する物質の成分名の非開示の範囲

ア 生殖細胞変異原性、発がん性又は生殖毒性の有害性を有するものは、有害性区分に関わらず、成分名の非開示の対象とすべきでない。

イ 呼吸器感作性、皮膚感作性又は誤えん有害性を有するものは、成分名の非開示の対象とすべきでない。

ウ 皮膚腐食性/刺激性、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性、特定標的臓器毒性(単回ばく露)又は特定標的臓器毒性(反復ばく露)を有するものは、区分1に該当する場合は成分名の非開示の対象とすべきでない。

エ 急性毒性を有するものについては、成分単体として区分1~3に該当する物質は、成分名の非開示の対象とすべきでない。

(2) 混合物の有害性区分に影響を与える濃度(濃度限界)に係る非開示の範囲、法令で規制されている物質の開示

ア 含有量がGHS(JIS)の濃度限界以上の場合は、混合物の有害性の区分に影響し、リスクアセスメントの実施に支障のない範囲とはいえないことから、成分名の非開示の対象とすべきでない。

イ 法令で個別の対応が義務付けられている、特化則等の特別規則の適用対象物質、皮膚等障害化学物質に該当する物質及び濃度基準値が設定されている物質については、成分名の非開示の対象とすべきでない。

3 営業秘密として非開示とした場合のSDS等による通知事項及び履行確保の方法

(1) 「営業秘密」に該当する旨の明示

営業秘密による非開示とする場合、「営業秘密」であることを通知することを義務付けるべきである。

(2) 代替名の通知及び代替名の設定方法

ア 成分名を非開示とする場合、それに代わる代替名その他情報を通知することを義務付けるべきである。

イ 厚生労働省は、代替名その他の情報の内容を決定するために必要な指針を公表すべきである。指針には、次に掲げる事項を定めるべきである。
(ア)代替名の決定は、名称の4要素のいずれか一つを置き換え又は削除することで行う。ただし、構造が比較的単純である等の理由で、1要素のみの置き換え又は削除では成分名が特定されるおそれがある場合は、2要素の置き換え又は削除を認める。
(イ) (ア)に関わらず、2要素の置き換え又は削除を行っても成分名が特定されるおそれがある場合は、当該成分の危険有害性区分等の危険有害性情報を通知することで、代替名の通知に代えることができる。
(ウ) 代替名の決定に当たっては、次の事項に留意する。
a 名称の4要素は、①母体化合物の構造、②対イオンの構造及び数、③光学異性体、④母体化合物又は他の置換基に結合している置換基の構造、数若しくは位置とする。
b 置換位置番号や母体化合物の置換基の位置番号については削除、その他の情報については一般名への置換とする。
c 代替名の決定に当たっては、代替名と有害性の関連性が分かるようにすることが望ましい。

(3) 含有量の通知

成分名が営業秘密による非開示の対象となる場合の含有量の表示は、安衛則第34条の2の6で規定される方法(原則10%刻みで記載し、譲渡・提供先から要望があった場合は、さらに詳細の情報の開示を行う方法)とするべきである。

(4) 履行確保の方法

次の事項を化学物質の譲渡・提供者に対する法令上の義務(罰則を設ける)として規定すべきである。

ア 2の(1)及び(2)の条件に従い、非開示が認められる物質のみについて、成分の通知義務が免除されること

イ この場合においては、代替名その他の情報を譲渡・提供先に通知しなければならないこと

ウ ア及びイにより成分名を非開示とし、代替名その他の情報を通知した場合、通知者は、非開示とした成分名及び通知した代替名その他の情報を記録し、当該通知から5年間保存しなければならないこと。

4 緊急事態等における情報開示

(1) 医療上の緊急事態における開示

ア 化学物質譲渡・提供者に対して、医師が、非開示対象物質にばく露したことによる健康障害が生じた又は生じるおそれがある場合であって、ばく露した者への診断及び治療のために必要であるとして、成分名の開示を求めた場合、営業秘密に当たる成分名を直ちに開示することを化学物質の譲渡・提供者に義務付けるべきである。

イ 医師による開示の請求は、口頭で足り、書面は不要とすべきである。

ウ 医師からの要請があった場合は、緊急対応要員を通じて成分名の開示を請求させることも認めるべきである。

エ 夜間等に災害が発生した場合に備え、非開示情報を含むSDSには、緊急時(夜間)問い合わせ先を記載することを求めるべきである。

(2) 非緊急事態(産業保健上の必要)における開示

ア 化学物質の譲渡・提供者に対して、産業医が、次に掲げる産業保健上の理由により、成分名の特定が必要であるとして、成分名の開示を書面で求めた場合、その目的に必要な範囲において、成分の含有量に係る秘密が保全されることを条件に、営業秘密に当たる成分名を、速やかに開示することを化学物質の譲渡・提供者に義務付けるべきである。

イ 対象となる産業保健上の理由は、次に掲げる場合であって、労働者の健康管理等のために非開示物質の成分名を特定する必要があるときとする。
(ア)非開示物質にばく露したおそれのある労働者に対する健康診断等により有所見や健康影響を把握した場合
(イ) 非開示物質を使用している他の事業場で健康障害が発生したことが明らかになった場合など、非開示物質にばく露する労働者に健康障害が生ずるおそれを把握した場合

(3) 情報の開示の秘密保持

ア 医療上の緊急事態
(ア)医療従事者については、秘密保持を情報開示の条件とせず、医療従事者としての守秘義務で対応するべきである。
(イ) 医療従事者以外の緊急対応要員については、事後的に秘密を保持する方策が必要である。

イ非緊急事態(産業保健上の必要)
情報開示の条件として、秘密を保持する方策が必要である。

(4) 履行確保の方法

医療上の緊急事態及び非緊急事態(産業保健上の理由)における成分名の開示については、化学物質の譲渡・提供者に対する法令上の義務(罰則は設けない)として規定すべきである。

5 行政機関に対する非開示情報の開示等

(1) 化学物質の譲渡・提供者が営業秘密の非開示事項を決定するに当たっては、行政機関への届出等を求める必要はないとすべきである。

(2) その代わり、営業秘密の非開示事項が適切に設定されているかの確認のため、労働基準監督機関から求められた場合に報告(非開示情報の開示等)等に応じる義務を化学物質の譲渡・提供者に課し、罰則を設けるべきである。

(3) (2)の報告により、営業秘密の非開示事項が適切に設定されていないことを把握した場合、4の(4)に記載されている化学物質の譲渡・提供者に対する法令上の義務(罰則を設ける)の履行確保を図るべきである。

(4) 営業秘密による成分名の非開示を行った化学物質の譲渡・提供を行い、3の(4)ウに従い当該情報の記録・保存をしている事業者が、当該事業を廃止しようとするときは、所轄労働基準監督署長に当該営業秘密情報の記録を提出することを義務付けるべきである。

[別表省略]

令和6年度化学物質管理に係る専門家検討会

「令和6年度化学物質管理に係る専門家検討会」の報告書を公表します(厚生労働省2025年3月18日※報告書PDF版へのリンクあり)

安全センター情報2025年6月号