茨城労働局・日立労基署に要請/茨城●なくせじん肺全国キャラバン茨城行動

昨年末12月9日午前、茨城県水戸市内で、「なくせじん肺全国キャラバン茨城行動」として、茨城労働局に対する要請交渉に取り組んだ。
交渉には実行委員会を構成する全国じん肺患者同盟常磐炭田北茨城支部から郡司徳治さん、堀越清さん、東京労働安全衛生センターからは平野代表、飯田、仲尾、西郷、地元の全建総連茨城県建築連合会から渡遁裕太労働対策部長、野上洋一書記、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会関東支部の湊万里子さんが参加。茨城労働局は、監督課長、健康安全課長、労災補償課長が応対した。
茨城労働局からは文書による回答を得た。昨年度の粉じん障害妨止のための監督指導実施件数は103件。内訳は保護具の着用に関する指導がもっとも多く、じん肺管理区分、粉じん測定、局所排気装置、特別教育等に隠するものだった。
じん肺管理区分の決定状況は、管理1が11、管理2が21、管理3イが3、管理3ロが4、管理4が1で、じん肺による新規療養決定者は1名。合併肺がんの認定はなかった。
石綿による業務上疾病では、管内8署で、請求15件、支給13件、不支給2件、未決定6件。水戸労基署がもっとも多く、肺がんの請求が2件で支給l件、中皮腫の請求2件、支給l件、びまん性胸膜肥厚の請求1件、支給2件だった。
石綿健康被害救済法による特別遺族年金、特別遺族一持金の申請件数は5件(中皮腫4、肺がん1)、業務上2、業務外1、未決定3だった。
例年、じん肺管理区分決定にあたっては、主治医の意見を尊重すること、じん肺診査ハンドブックに基づくこと、必要のないCT検査、肺機能の二次検査及び喀痰細胞診を求めないよう要請。局は、従前からそのように心がけていると回答した。
昨年同様、石綿による肺がんの労災補償に関して、労災認定基準に即して、「胸膜プラーク所見がある+石綿曝露作業従事期間10年以上」による労災認定を徹底することを確認した。
また、建設アスベスト給付金制度に関し対象となる被災者、遺族に対して個別周知を行うこと、さらには、石綿際連疾患の認定調査において、被災者の石綿曝露作業従事期間すべてにわたり調査を行うよう要請した。労基署での調査が不十分で、建設アスベスト給付金を申請する際に労災支給決定等情報提供サービスを利用できないことがあるからだ。局の回答は、「重要な指摘であることを踏まえ、可能な限り詳細にすべての職歴をもれなく記載するようにしたい」とのことだった。
2023年10月から、建築物の事前調査を建築物石綿含有調査者等の専門資格者が行うことが義務付けられた。あらためて石綿作業主任者、石綿調査者の育成に努めるよう要請した。茨城局管内では、2023年度8回、2024年度は6回、石綿作業主任者技能講習が関かれ、6月末時点で3,348人の修了者が出ていると回答した。
午前中、茨城労働局との交渉を終え、午後は日立市に移動し、日立労基署との交渉を行った。署側は副署長、労災課長、方面主任他が応対した。
日ごろから北茨城支部のじん肺患者さんが日立労基署にお世話になっている。この間、とくに労災補償上の問題は起きていないが、北茨城支部の郡司徳治さんは、じん肺の療養が長期にわたっており、傷病補償年金への移行させるよう要請した。労基署は、傷病補償等級に該当する場合に年金移行となると回答。具体的な進展はなかった。
北茨城支部の患者さんは、38年前に支部を結成して以来、230名超の方々が亡くなっている。現在の支部員数は20名を下まわっており、平均年齢は88歳を超えている。かつては北茨城、高萩のじん肺患者同盟の皆さんがマイクロパスや乗用車に分乗して、30名以上が大挙して水戸に押しかけた。支部員が少なくなったとはいえ、いまだじん肺は根絶されていない。アスベスト関連疾患という新たな課題もある。今後も可能な限り、茨城での取り組みを続けていきたいと思う。

文・問い合わせ:東京労働安全衛生センター

安全センター情報2025年4月号