大きな勝利:ジャカルタの裁判所はインドネシアにおけるアスベスト業界の脅迫を退けたが、闘いは続く可能性がある/APHEDA, 2025.2.19

ジャカルタ中央地方裁判所は、アスベスト産業団体(FICMA[繊維セメント製造業者協会])が消費者保護のためのYasa Nata Budi研究所(LPKSM[非政府消費者保護団体])の公衆衛生活動家に対して起こした訴訟を棄却した。
LPKSMコーディネーターのレオ・ヨガ・プラナタは、この勝利により、一般消費者が、健康リスクを独自に評価するために不可欠な-明確で完全かつ理解しやすい情報を得たうえで製品にアクセスできることが保証されると述べた。
「この判決に非常に満足している。この判決により、アスベストを原料とする屋根材には、これらの製品が健康に害を及ぼす可能性があることを警告するラベルを貼付することが義づけられることが確実になった。これは明らかに、アスベスト業界の利益に対する一般市民の勝利である」と彼は述べた。

企業による嫌がらせ戦術に対する勝利

この訴訟は、インドネシアのアスベスト含有屋根材に強制的なラベル表示と危険警告を義務づけることを求めた活動家による歴史的な勝利がインドネシア最高裁で得られた後に起こされた。この勝利を受けて、FICMAはLPKSM Yasa Nata Budiとその活動家らを相手取り、インドネシアのアスベスト産業に損害を与えたとして訴訟を起こした。
しかし、活動家らが再び勝利した。

裁判所の裁定:地方裁判所の管轄外の訴訟

マルパー・パンディアンガン判事はその理由のなかで、アスベスト製造業者協会が起こした訴訟は、ロッテルダム条約批准に関する2013年法律第10号に従っており、その権限内で決定することはできないと述べた。
同裁判所によると、このような訴訟は、以前の最高裁決定を覆すことを意味する。したがって、中央ジャカルタ地方裁判所の裁判官は、この裁判を審理する権限は裁判所にはないと判断した。裁判官の判決の抜粋によると、同裁判官は「法律や規則を審査する権限は最高裁判所の権限であるため、この裁判は地方裁判所で審理することはできない」と述べている。

アスベスト含有製品のラベル表示を徹底

インドネシアのアスベスト禁止運動のコーディネーターであるモハ・ダリスマンは、ジャカルタ中央地区裁判所の決定は、アスベストによる疾患から地域社会を守るというインドネシア政府の取り組みと見なすことができると説明した。
「(昨年の最高裁に対する)InaBAN[インドネシア・アスベスト禁止ネットワーク]のメンバーでもあるLPKSM Yasa Nata Budiの訴訟は、適切かつ妥当なものである。InaBANネットワークを構成する様々な団体や専門家とともに、今後もアスベスト関連疾患の脅威のない生活を送る市民の権利を守るために監視と努力を続けていく」と彼は述べた。
「これは、アスベストの危険から市民を守るために国が関心を持っていることを保証する法的調整である。商業省を含む誰もが、アスベスト屋根材すべてに危険表示を貼ることに従わない理由はない」と彼は述べた。
LION[労働安全衛生ネットワークのための地域イニシアティブ]インドネシアのエグゼクティブディレクター、スルヤ・フェルディアンは、LPKSM Yasa Nata Budisの勝利を受けて、「アスベストを使用した屋根材にラベルを貼るという動きは、雇用者と労働者の利益も考慮した穏健な措置である。危険な製品にラベルを貼り、健康保護の警告を発することは、憲法で義務づけられた企業の責任を再認識させるものだ」と述べた。
「Yasa Nata Budiが実際に行ったことは、すべての人が責任を取るべきだという憲法上の呼びかけである。アスベスト業界が利益を考えることは重要だが、それだけでなく、労働者や消費者の健康に対する責任も重要である」と彼は述べた。
「世界保健機関が明確に助言しているように、アスベスト繊維への曝露に安全なレベルはない。われわれは、すべての製造業者に対して、生産ラインをアスベストから切り替え、利用可能なより安全な代替品を使用するよう強く求めている」。
2010年よりアスベストの危険性を排除する運動を主導してきたLIONインドネシアは、インドネシアにおけるアスベスト使用による莫大な損失の罠から抜け出すよう、今後も同国を後押ししていく。
「アスベストが原因で多発する病気の多さから、最終的に自国民の健康保険をカバーせざるを得なくなった国の例を数多く見てきた。インドネシアが同じ経験をさせないでほしい」と彼は述べた。
LPKSM Yasa Nata Budiの会長であるディッチ・サンデワは、同団体がより広範な公益のために獲得した勝利を今後も監督していくと説明した。裁判所の勝利は、アスベスト関連疾患の危険から消費者を保護するためにLPKSM Yasa Nata Budiが準備してきた数多くの取り組みの一部にすぎない。
「この裁判所の勝利は、アスベスト関連疾患から消費者を保護するためにわれわれがとった数多くのステップのひとつにすぎない。LPKSM Yasa Nata Budiは、アスベスト屋根材の危険性に関する十分な情報を得ないまま使用した消費者を支援するために設立された。ゴングが鳴らされた。いま、われわれはただちに次のステップに進む」と彼は述べた。
LPKSM Yasa Nata Budiのキャンペーン及びアドボカシー部門の責任者、アジャット・スダラジャットは、同団体はすぐに商業省に書簡を送り、最高裁判所が命じたアスベスト屋根材への危険表示を厳格に義務付ける規制を早急に発令するよう求める、と述べた。
「この裁判所の決定は尊重され、遵守されなければならない。商業省がラベル表示の義務化に向けた改正規則の発効を遅らせる理由はない。判決に基づくいかなる遅延も、インドネシア共和国における法律への違反を意味する。断固とした対応が必要である」と彼は結論づけた。
FICMAには、上訴を追求するために15日間の猶予がある。
注:決定は、訴訟No.417/Pdt.G/2024/PN Jkt.Pstについて、2025年2月5日にジャカルタ中央地方裁判所で、パンディアンガン裁判長によって下された。

https://www.apheda.org.au/big-win-jakarta-court-throws-out-asbestos-industry-intimidation-attempt-in-indonesia-but-battle-may-continue/

安全センター情報2025年4月号