人工石シリカによるじん肺問題

DUST TO DUST 珪肺症例が政府のひとりよがりを暴露Hazards Magazine, Number 165, Jan-Mar 202

それはいたるところにある。人工石のキッチンカウンターは見た目もよく、コストも抑えられる。しかし、Hazards誌の編集者ロリー・オニール氏によると、問題もあるという。それらを製造する労働者は、恐ろしい速さで肺を破壊する珪肺症に侵されている。イギリス政府は議会で「誰も」被害を受けていないと主張している。しかし、病院の肺専門医は別の話をしている。
珪肺症-花崗岩、砂岩、その他の岩石から生じるシリカ粉じんが肺組織を石のように変えてしまう致死性の病気-は、新しい問題ではない。イギリス政府がシリカ粉じんによって引き起こされる肺疾患を補償の対象として初めて検討したのは1907年のことだった。
1917年の内務省の報告書は、危険な業務に関する王立検査官のW・シドニー・スミスと王立工場医務監督官のエドガー・L・コリスが執筆したもので、炉用のシリカレンガを製造する労働者が、換気と粉じん収集、湿式作業、囲い込み、そして「適切な呼吸用保護具」によってシリカから保護されるべきであると勧告した。
これらの措置は、シリカ曝露労働者における「線維性肺結核」-結核をについての時代遅れの用語-の増加を懸念して講じられたものだった。しかし、これらの症例のほとんどは、おそらく細菌による病気ではまったくなく、じん肺症であることが後に判明した。
「珪肺症」という用語が一般的に受け入れられるようになったのは1930年になってからであり、それまでに米国産業医学誌の2015年の論文が、「20世紀におけるもっとも致死的かつ持続的な職業病の流行としての地位を確立しつつあった」と指摘した。
一度かかってしまうと、逃れるすべはない。 珪肺症は進行性なので、粉じんへの曝露が止まった後も、肺の炎症と硬化が進行し続ける。 珪肺症は不治の病である。
鉱業などの主要産業における症例が減少した時期を経て、珪肺症が再び増加している。

粉じんは十分?

政府が職業病であることを初めて認めてから1世紀以上が経過したいま、イギリスは珪肺症の認定と予防に関するベストプラクティスから大きく遅れをとっており、曝露基準と症例を特定するシステムの両方が危険なほど緩い可能性があるという証拠がある。
2023年1月の「呼吸器の健康に関する全政党議会グループ」の報告書は、「イギリスがシリカを扱う作業における WEL(職場曝露限界値)を0.05mg/m3に引き下げるために必要なデータと技術」を検討するよう、安全衛生庁(HSE)に強く求めた。
イギリスの0.1mg/m3という基準では十分な保護ができないかもしれないという認識が、遅ればせながら国会議員の間で広がった。HSEは、このレベルに固執すれば珪肺症例が6倍に増加することを認めているが、Hazards誌に対しては、基準を引き下げるつもりはないと繰り返し語っている。
これに対し、オーストラリアとアメリカは、数年にわたる協議を終え、より保護的な0.05mg/m3の基準を導入した。オーストラリアは3年以内に、世界的なベストプラクティスに従い、0.025mg/m3に変更する予定である。

新たな脅威

注意すべき理由は他にもある。人工石[engi-neered stone]は-シリカ粉じんと樹脂・顔料を混合して作られ、天然石よりもはるかに高いシリカ含有量を持ち、キッチンカウンターなどに広く使用される人工の石[artificial stone]-が、アメリカ、オーストラリア、イスラエル、その他において急速に発生している新たな珪肺症と関連していることが明らかになっている。
曝露した労働者は、より若くして罹患し、発症も早く、中には20代で延命のための肺移植が必要になる者もいる。オーストラリアでは石工の4人に1人が珪肺症にかかっていることが判明している。これを受けて、オーストラリア政府は2023年12月に、すべての人工石の使用禁止を発表した(Hazards 164)。
アメリカでは、カリフォルニア州で珪肺症の発生が見られ、他の複数の州でも症例が現われたため、2023年9月に「強化された施行」プログラムが導入された。
2023年12月には、カリフォルニア州が独自の臨時緊急基準を導入し、シリカへの曝露管理と、使用者と医療提供者の双方による珪肺症例の報告要件を強化した。カリフォルニア州産業関係局の発表では、州当局は「2019年以降、珪肺症を発症した労働者95人の事例を確認しており、そのうち10人が同疾患により死亡している」と指摘している。さらに、「もっともリスクの高い労働者は人工石のカウンタートップを加工する人々である」と付け加えている。[「カリフォルニア州が緊急基準を採用」参照]。
イギリスは欧州最大の人工石工場の母国である。何千もの企業が人工石のワークトップを製造している。大手サプライヤーのひとつであるシーザーストーン[Caesarstone]は、イギリスのサプライヤー138社をリストアップしている。業界のデータによると、2020年の売上高は75%増加した。
ショールームでは人工石が好調な売れ行きをみせているが、労働者の肺に与える影響を懸念しているのは、ナタリー・ベネットとして以前緑の党の党首を務めていたベネット女性男爵である。
「推定によると、イギリスでは毎年1,000人が珪肺症を原因とする職業病で死亡しており、さらに多くの人々が衰弱するような症状に苦しんでいる-石工だけでなく、建設作業員、エンジニア、農業労働者もである」と、2024年1月15日の貴族院の討論で女性男爵は述べた。
「政府は少なくともこの問題についてさらに調査し、オーストラリアが重要かつ不可欠な対策が必要であると判断した問題について、より多くのデータを収集すべきである。オーストラリアは、われわれとほぼ同等の国である」。

誰もいない

イギリス政府の回答は明確だった。
労働年金省(DWP)の政務次官である保守党上院議員、ヤンガー子爵は貴族院で「健康安全庁(HSE)は現在、人工石の使用制限を検討していない。ベネット女性男爵の主張とは対照的に、われわれの情報では、珪肺症への長期間曝露に苦しんでいる者はいない」と述べた。。
しかし、ロンドンから3マイルほど離れたロイヤル・ブロンプトン病院では、医師の見解は異なっていた。
「2023年半ば以降、十分な保護や換気がされていない環境で人工石の調理台を切断する若い男性に主に影響を及ぼしているこの病気の患者をイギリスで診るようになった」と、同病院の名誉産業肺疾患呼吸器コンサルタントであるジョアンナ・フィアリー医師は述べた。
彼女はHazards誌に、彼女のチームは「これまでに少数の症例しか診ていない」と語ったが、オーストラリアの症例と同様に、若い労働者に発症しており、急速に悪化していると述べた。「10年未満の曝露期間で進行した症例が確かにある」と彼女は語り、数か月以内に調査結果の全容を発表する予定であると付け加えた。
これらの症例は、議会でヴィカウント・ヤンガーが「より安全な作業方法とより優れた規制システムにより、イギリスでは『誰も』人工石関連の珪肺症で被害を受けていない」と保証したことを否定するものである。なぜなら、イギリスには「ハイリスク活動に対する的を絞った監督活動、コミュニケーション活動、利害関係者との協力」を組み合わせた「成熟した規制モデル」があるからだ。
実際、この新しい攻撃的で急速に発症する珪肺症が現われたのは、イギリスでHSEの第一線監督官の数が大幅に減少したのと時を同じくしており、HSEが実施する監督や調査の数も、優先職場を含めて減少している(Hazards 162)。

目に見えない粉じん

考慮すべき可能性は3つある。第1に、イギリスには誰もいないという2024年1月の政府の保証は、ブロンプトン病院で確認された人工石に関連する珪肺症の症例があるため、否定できるというもの。
第2に、イギリスの粉じん対策は米国やオーストラリアなど他国よりも優れているため、同国は珪肺症の新たなきわめて強力な原因による最悪の影響を免れたというものである。
第3は、症例は存在するが、見逃されているというものである。
ベネット女性男爵が「驚くべきひとりよがり」と表現した政府側の態度が、職業上の健康被害という悲劇がほとんど注目されず、対策も講じられてこなかった理由である可能性は十分にある。
罹患者には「規定職業病」として国の労災補償が適用されるにもかかわらず、2022年にイギリスで認定された珪肺症の症例はわずか30件、2021年には25件にすぎない。しかし、症例が存在しないというわけではない。
オーストラリアで人工石に関連した珪肺症の最初の症例が確認されたのは2015年のことだった。それ以来、オーストラリアでは約5,000人の労働者がこの症状と診断されている。アメリカでは、人工石に関連した最初の症例が確認されるのに、2019年の病院の珪肺症退院記録の調査を要した。その労働者は2018年に38歳で亡くなっていた。
2024年3月、英国職業衛生学会(BOHS)は、「新しい厄介なかたちをした古い問題」に対処するための早急な行動を呼びかけ、診断の問題を強調した。 BOHS会長のアレックス・ウィルソン氏は次のように指摘した。「残念ながら、発見も報告もされていない症例が他にもある可能性は十分にある。 珪肺症の正確な診断は難しく、例えばより一般的な症状であるサルコイドーシスと間違えられやすい。
労働党のヘンディ卿は、貴族院の討論で次のように述べた。「珪肺症の問題のひとつは、必ずしも医師によって診断され、死亡診断書に記載されるわけではないということである。専門家以外にはあまり知られていない病気であることが原因である」。
これは、最近の数多くの研究で裏付けられている。2023年7月23日に医学誌「JAMA Internal Medicine」に発表された論文で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者らは、「この新たな健康危機に関するアメリカ最大の研究」について説明した。
オリーブビュー-UCLA医療センターの呼吸器専門医で、この研究の共同執筆者であるジェーン・ファジオ氏は、次のようにコメントしている。「過去10年間にわたる石工の珪肺症患者数の増加と、病気の進行の加速は、アメリカではほぼ忘れ去られていたこの病気のパラダイムを一変させる」。彼女はさらに、「われわれの研究は、とくに若い十分な保険に入っておらず、おそらくは不法滞在のラテン系移民労働者である、影響を受けやすいグループに深刻な罹患率と死亡率があることを示している」と付け加えた。
研究の共同執筆者であるシェイパリ・ガンディー氏は、「われわれの論文は警鐘を鳴らしている」と述べた。UCSFの呼吸器専門医はさらに、「いまこれを食い止めなければ、今後何百、何千という症例が出てくるだろう。たとえいま食い止めたとしても、発症には何年もかかるため、今後10年間はこうした症例が続くだろう」と付け加えた。
関連するJAMA Internal Medicineの社説は、全体的な証拠を検証して、人工石労働者における「致死性変異型」の珪肺症の症例が多数見逃されるようになった理由について考察している。
それは、珪肺症の診断がしばしば見落とされたり、遅れたりしていると結論づけた。その理由として、「多様な臨床症状」や、職業病に対する臨床医の認識不足が考えられるとしている。 社説は、さらに、アメリカでは人工石の労働者に対する体系的な医学的監視や、症例の報告義務がないことが問題であると付け加えている。
この両方の要因が、イギリスにおける発生の早期発見能力に影響を与えている可能性が高いと思われる。イギリスの使用者は、RIDDOR(傷害・疾病・危険事象報告)規則による珪肺症の症例を報告する義務はない。しかし、イギリスのシリカ基準値0.1mg/m3では保護できないことはわかっている。HSEは、労働者が生涯にわたってこのレベルのシリカ粉じんに曝露すると、天然石からシリカ粉じんに曝露した100人の労働者のうち30人が珪肺症を発症すると認めている。
しかし、これは天然石ではない。人工石から発生する粉じんは、肺への影響がより強く、空気中での危険性も高いようである。

https://www.hazards.org/HSEstopkillingus/dusttodust.htm

豪:人工石の使用禁止-オーストラリア政府雇用職場関係省(DEWR)

オーストラリアは、人工石[engineered stone]の使用、供給及び製造を禁止した。
禁止は2024年7月1日に開始し、人工石の調理台、スラブ及びパネルに適用される。お住まいの州または準州の規定については、お住まいの地域の労働安全衛生規制当局にお問い合わせいただきたい。
禁止は、磁器・焼結石製品(ベンチトップ、スラブ及びパネルを含む)には適用されない。また、ジュエリー、ガーデン装飾品、彫刻、及びキッチンシンクなど、加工または修正の必要のない完成品である人工石製品も禁止の対象には含まれない。

なぜ禁止措置が取られるのか?

連邦、州及び準州の労働衛生安全担当[WHS]大臣は、人工石を扱う労働者の珪肺症診断数の増加を受けて、人工石の使用禁止を決定した。この決定は、セーフワーク・オーストラリアがその「決定規制影響報告:人工石の使用禁止」で示した勧告に基づいている。
シリカ粉じん(吸入性結晶質シリカ)への曝露が、労働者が珪肺症その他深刻な肺疾患を発症することにつながる可能性があることは、明白な証拠が示している。労働者は、人工石を扱う作業に従事する際に曝露のリスクがある。人工石の使用を禁止することは、オーストラリアの労働者をこの致命的な病気から保護するだろう。
シリカ粉じんと珪肺症に関するより詳しい情報は、セーフワーク・オーストラリアのウェブサイトでみることができる。
WHS大臣による人工石の使用禁止に関する決定についてのより詳しい情報については、2023年12月13日、2024年3月22日、2024年5月10日の会議で発表された声明を参照されたい。
これは私にとって何を意味しているのか?

●人工石の加工に従事している場合

オーストラリア政府は、すべてのオーストラリア人が安全な職場環境で働けるよう努めている。この禁止は、危険な製品を取り扱う作業からあなたを保護するだろう。
すでに設置済みの人工石の加工に従事するかもしれないが、適切な安全対策を講じる必要がある。
詳細は、お住まいの州または準州の労働安全衛生監督機関にお問い合わせいただきたい。また、セーフワーク・オーストラリアのウェブサイトでもより詳しい情報をご確認いただける。

●事業者である場合

あなたのお住いの州または準州で禁止が開始された場合、あなた及びあなたの労働者は、新しい人工石のスラブ、パネル及びベンチトップの作業を行うことはできない。これには、人工石製品の設置、製造、加工または供給が含まれる。
すでに設置されている人工石製品については、作業を行うことができるだろう。これには、人工石製品の除去、修理、軽微な改造及び廃棄が含まれる。ただし、適切な安全要件に従う必要がある。
禁止及び設置済み人工石製品の使用に関する詳細は、お住まいの州または準州の労働安全衛生当局にお問い合わせいただくか、セーフワーク・オーストラリアのウェブサイトをご覧いただきたい。
シリカ粉じんから労働者を保護する方法の詳細については、セーフワーク・オーストラリアのウェブサイトご覧いただきたい。

●消費者である場合

人工石は広くベンチトップに使用されている。人工石は、何もしなければ(つまり、取り外し、修理または変更する作業を行わない限り)安全である。
人工石は、何もしなければ健康リスクをもたらさないため、住宅や職場から撤去する必要はない。
人工石のベンチトップ、スラブ、パネルのDIY作業は行わないことが重要です。切断、研磨、トリミング、穴あけ、研磨、研磨などの作業は、吸入すると有害なシリカ粉じんを発生させる可能性がある。そのような作業が必要な場合は、資格のある専門業者にご依頼ください。
これは私の州/準州とって何を意味しているのか?
すべての州及び準州は、禁止を実施するために、労働安全衛生法に独自の変更をする。
州及び準州は、2023年12月31日以前に締結された契約については移行期間を設定することができる。これにより、人工石のベンチトップ、パネル及びスラブを使用した一定の作業は2024年12月31日までは継続することができる。この期間中の作業は、労働安全衛生要求事項に従う必要がある。
州または準州の労働安全衛生規制当局から、より詳しい情報を入手していただきたい。

人工石禁止ステークホルダーキット

すべての州及び準州が、人工石の使用を禁止する。禁止は2024年7月1日にすべての管轄区域で施行されるが、お住まいの州または準州でどのような具体的な措置が取られるかについては、各自でご確認いただきたい。
禁止は、人工石のスラブ、パネル及びベンチトップに適用される。
この決定は、人工石労働者における珪肺症診断の増加を受けて、セーフワーク・オーストラリアが勧告した内容に基づいている。人工石の使用を禁止することは、オーストラリアの労働者をこの致死的な疾病から保護するだろう。
このステークホルダーキットは、禁止に関する認識を広め、労働者、事業者及び消費者にとってどのような意味を持つのかを理解するのに役立つ内容を提供している。
より詳しい情報については以下を参照していただきたい。

・ 雇用職場関係省(DEWR):
https://www.dewr.gov.au/engineeredstone

・ セーフワーク・オーストラリア:
https://www.safeworkaustralia.gov.au/esban

ニュースレターの内容等[省略]

https://www.dewr.gov.au/engineeredstone

英:キッチン改装に関する新たな規則/inews.co.uk, 2024.10.10

イギリスの労働安全衛生監視機関は、キッチンカウンターの切断作業による致死性肺疾患の症例が増加していることを受け、職人の保護を目的とした新たな規則の草案を作成した。
これは、高シリカ人工石の切断作業で有毒粉じんを吸引した若い石工におけるイギリス初の珪肺の症例が2023年に報告されていたことを、inewsが暴露したことを受けたものである。
過去8か月間にわたる一連の報道で問題を明らかにしたinewsを称賛して、イギリスの職場健康保護のための公認機関の長は、安全衛生庁(HSE)によるアップデートは「間違いなく命を救うだろう」と述べた。
草案は、珪肺を引き起こす可能性のある、吸入性結晶質シリカ(RCS)粉じんを抑えるための水抑制ツールを使用しない、乾式切断などの慣行の危険性を強調している。
新しい規則のもとでは、使用者は、労働者に安全に石を切断するためのツールとPPE[個人保護具]を提供しなければならないだろう。
クオーツのワークトップ[調理台]は、キッチンのリフォームで人気が高まっているが、その成長は、適切な安全対策なしに切断作業を行う労働者に壊滅的打撃を与える、治療不可能な肺疾患の症例が世界中で急増していることと関連している。
イギリスでは、2023年以降、少なくとも11件の症例が報告されており、その大半は劣悪な労働環境で働く移民労働者におけるもので、他の国々で見られるパターンとも一致している。
死亡した男性1名を含む男性たちの平均年齢は34歳で、2名は肺移植の適応判定を受けることになり、医師は今後数年間で患者数が大幅に増加する可能性が高いと警告している。
7月には、何百人もの労働者が珪肺を発症し、ある報告はそのほとんどが35歳未満であることを見出し、医師らがこれを「流行」と表現したことを受けて、オーストラリアが世界で初めて人工石の使用を禁止した。
HSEの専門家は、適切なリスク管理の必要性を強調する新たな安全ガイドラインの草案について話し合うため、業界団体であるWorktop Fabri-cators Federation(WFF)と会合を持った。
HSEはまた、どのような追加の管理または行動が必要かを検討するために、人工石の使用及び世界的な証拠をレビューするとともに、今後の介入に役立てるために職業性肺疾患の臨床医と症例の診断方法について話し合うことも検討しているようである。

inewsが新たな健康問題を明らかにした経緯

  • 今年初めにinewsは、人工石を切断する労働者におけるイギリス初の珪肺の症例が報告されていたこと暴露した。
  • われわれはその後、闇経済で働く移民労働者が致死性の肺疾患に罹患しており、約10人の職人が診断されていることを報告した。
  • 6月に英国職業衛生協会(BOHS)が、この問題を強調したinewsの記事を引用して、人工石を切断する労働者のための緊急の安全ガイダンスを発行した。
  • 人工石が禁止されたオーストラリアの、珪肺を患う石工たちがわれわれに、自分たちの生活に与えた影響について語ってくれた。また、ある有力な意思は、イギリスはさらに多くの症例の発生に対して準備をするべきだと警告した。
  • われわれはその後、貴族院の討論会で症例はみつかっていないと誤って発言した当時のある政府閣僚に、超党派議員グループの議員たちが書簡を送り、質問への回答に懸念を表明していたことを暴露した。
  • 7月にinewsは、珪肺で重病を患っているシリア難民のマリク・アル・ハリール氏にインタビューを行った。同氏は、珪肺を患っていることを公けにしたイギリス初の人工石加工労働者である。
  • ロイヤル・ブロンプトン病院のジョー・フィアリー医師が主導した、イギリス初の珪肺に罹患した人工石労働者に関する報告書は、その素材の使用禁止を「検討しなければならない」と述べた。

ロンドンのロイヤル・ブロンプトン病院でイギリス初の珪肺に罹患した人工石労働者を治療しているジョー・フィアリー医師は、政府に禁止の検討を求めている指導的医師の一人である。
6月にはイギリスの職場衛生保護の公認機関であり、科学分野をリードする団体である英国職業衛生協会(BOHS)が、石のワークトップを切断するあらゆる人々のための、安全かつ健康で合法的に作業を行うための緊急ガイダンスを発表した。
BOHSの最高責任者であるケビン・バンプトン氏はinewsに対して、「HSEが業界のリーダーやBOHSと提携し、懸念が高まりつつあるこの分野において、的を絞った適切なガイダンスを確保しようとしていることを、われわれは喜ばしく思っている」と述べた。
「これは、無知が最大の敵となる、重大かつ新たな問題である」。
「ジョー・フィアリー氏の優れた調査、inewsのような情報源からの質の高いジャーナリズム、職業衛生学分野からの科学的卓越性、そしてHSEによる協力的かつ迅速な対応の組み合わせは、間違いなく命を救うだろう」。
天然石-岩石、砂、粘土を含む-と比較して、人工石の板にははるかに高いレベルのシリカが含まれており、石英が最大95%含有している。
医師らは、人工石の板が原因の珪肺は、鉱業や建設業など他の産業で珪肺に罹患した労働者よりも、シリカへの曝露期間が短く、病気の進行が早く、死亡率が高いと言っている。
珪肺は通常、砂岩などの様々な種類の石や、レンガ、屋根瓦、コンクリートなどの建築資材に含まれる微細なシリカ粉じんへの何十年もの職場曝露によって引き起こされる。
シリカ粉じんの粒子は非常に細かいため、肺の奥深くに入り込み、排出することができないと、イスラエルのペタ・ティクヴァにあるラビン医療センターの呼吸器専門医モルデカイ・クレイマー教授は言う。「咳をしても、粉じんを排出することはできない」。
時が経つにつれて、粒子は炎症を引き起こし、これが徐々に肺組織を硬化させ、瘢痕化させる。初期症状には咳や息切れがあり、最終的には呼吸困難を起こさずに長距離を歩けなくなり、酸素吸入が必要になるまで進行する。
また、死に至る可能性もある。カリフォルニア州では、圧倒的にラテン系移民が多い人工カウンタートップ切断労働者13人が珪肺で死亡している。
さらに、シリカ曝露は、免疫システムが自身の組織を攻撃しはじめる自己免疫疾患や肺がんの原因となることもある。
この種のシリカへの長期的職場曝露が続くなか、より攻撃的で急速に進行する症状について警鐘が鳴らされるようになった。
この急速に進行する病気の症例はすべて、多くの国々でキッチンやバスルームのカウンタートップとして人気が高まっている人工石に関わる作業を行うことによって曝露していた。
今年初め、inewsは、ロンドンの工場で5年間キッチン用ワークトップを切断した後、珪肺の治療を受けているブロンプトン病院の病床で、シリア難民のマリク・アル・ハリール氏(31歳)にインタビューを行った。
彼が知る9人の人工石労働者-うち7人はシリアの彼の故郷の町の出身-が珪肺と診断され、そのうちの1人は死亡し、もう1人は移動用スクーターの使用を余儀なくされていると、彼は言う。
彼は、中国から輸入された板を切断し研磨した後に、頭から足まで粉じんだらけになったと説明し、その作業場では「湿式」切断などの安全対策や、粉じんを除去するための適切に機能する機器は使用されてなかったと述べた。
自力で歩くことができず、医師からは死の危険性があると告げられ、体重が11.5ストーン(73kg)からわずか7.5ストーン(48kg)に激減したため、肺移植には耐えられないと判断された。
クウォーツを切断するリスクに対する懸念から、一部の政治家や保健当局者はイギリス政府にこの石の使用禁止を求めている。
しかし、その会員企業が専門の工場設備で板を切断しているWFFのコンサルタントであるクリス・パトマン氏は、この素材を違法とする動きがイギリス議会にあるとは考えていない。
業界では、安全規制を無視する企業が、労働者の保護対策を講じている企業にとっての人工石市場を脅かすのではないかという懸念もあった。
「もしオーストラリアの業界がイギリスのような規制環境に置かれていたなら、おそらく最初から禁止措置は出なかっただろう」と彼は述べた。
「イギリスでは、これまで職業性珪肺に罹患した症例はすべて、非常に短期間で発症した若い男性ばかりである。なぜなら、彼らは日常的に職場曝露限界値の何倍も曝露していたからだ」。
「WFFとHSEは、この件について緊密に連携している。なぜなら、われわれは、グッドプラクティスが認められることを確保することを相互に望んでいるからだ」。
WFFの会員は、HSEが最終版をいつどのように公表するか決定する前に、ガイドライン草案を検討し、意見を述べるよう招かれていると、業界団体は述べた。
HSEの広報担当者は、「イギリスには、有害物質への曝露に関連した健康リスクから労働者を守るための、堅固で確立された規制枠組みがすでに存在しる」と述べた。
「われわれは、吸入性結晶質シリカへの曝露のリスクの管理に対する意識を高めるために、業界と協力し続ける」。
「この取り組みの一環として、業界とベストプラクティス・ガイドラインについて協議しており、2024年10月7日月曜日には石材製造業者と会合を持ち、この共通の問題に対処するための現実的な解決策について話し合った」。
「われわれはまた、不安全なレベルの労働者曝露の原因に対する協調的かつ協力的な影響を確保することを目的に、サプライチェーンの他の利害関係者とさらにワークショップを開催した」。

https://inews.co.uk/news/rules-save-lives-kitchen-revamp-workers-lung-disease-3316203?ito=email_share_article-top

人工石に関するIKEAオーストラリアの声明/2023年11月14日

IKEAオーストラリアはサプライヤーと協力して、人工石のワークトップの供給と設置を行っている。 環境や労働条件に関する最高の安全基準が守られるよう、サプライヤーと緊密に連携している。
人工石製品に関連したリスクに関するSafe Work Australiaの最近の分析と提言を含め、この問題を監視してきた。
IKEAオーストラリアは、政府の対策に先駆けて、人工石製品を現地の製品ラインナップから段階的に廃止するプロセスを開始する。人工石のワークトップはIKEAの製品ラインナップの一部にすぎず、代替となる素材は数多くある。
われわれは、明確な情報を提供するための政府による全国的に足並みを揃えたアプローチを強く支持するとともに、全国的に協調のとれた行動を確保する。

https://www.ikea.com/au/en/newsroom/corporate-news/ikea-australia-engineered-stone-pubbfbddf10

参考

結晶質シリカの物性と毒性の関係について—けい肺の発症予防に向けた取り組み—(2022)(労働安全衛生総合研究所)

高純度結晶性シリカの取扱作業に伴う留意点(基安発0927第2号平成30年9月27日) /高純度結晶性シリカの微小粒子にばく露して発症したけい肺症について(労安研2019年5月)

ILO:労働における有害な化学物質への曝露と結果としての健康影響:グローバルレビュー(2021.5.7) 知見の概要:シリカ

安全センター情報2024年12月号