サムソンの手動工程の職員、79%に『筋骨格系疾患』/韓国の労災・安全衛生2024年09月6日
サムソン電子器興事業場で働くA氏は、最近「手首が焼ける痛み」を伴う手根管症候群の悪化で手術を受けた。20年近く、約3キロのウェハーの束(ロット)を、手で一日に400回ほど運んで罹った病気だ。A氏は二ヶ月の病気休暇を取ったが、労災は申請できなかった。彼は「管理者に労災申請を問い合わせたところ、『会社が支援した医療費を返却しなければならず、申請手続きも複雑だ』という話を聞いた。」「ひょっとして人事評価の時に不利益を受けるのではないか、と心配にもなった」と話した。
A氏のように、サムソン電子の半導体生産ラインの中で最も老朽化した器興事業場の8インチ生産ライン(6~8ライン)で働く労働者のほとんどが、筋骨格系疾患などを病んでいることが判った。ここの労働者たちは、老朽設備のために手作業を多くして罹った指の変形など、各種疾患を病んでいるという事実が、全国サムソン電子労働組合(全サム労)のストライキ中に注目されたという経緯がある。
全サム労が7月24日~8月12日、器興事業場の製造職群の労働者を対象に、オンラインアンケート調査した結果によれば、回答者136人の内107人(78.7%)が「筋骨格系疾患と診断された」と答えた。回答者の内の91.2%の124人は、8インチラインの労働者だった。全サム労の関係者は、「手動工程製造職群の労働者は1200人余り」で、「老朽工程で働く労働者の10%が調査に応じた」と話した。彼らが経験した疾患としては、手根管症候群(複数回答・38.2%)が最も多く、椎間板ヘルニア(29.4%)、指関節炎(16.9%)などが続いた。
それでも労災申請はほとんどなかった。サムソン電子は「2010年以後、8インチ半導体生産ラインで、筋骨格系疾患を理由にした労災申請は1件」と説明する。三日を超える療養が必要な業務上の事故・疾病は労災申請が可能だ。
「労災保険で治療を受けなかった理由」について、回答者の95人(複数回答・69.9%)は、「労災保険で治療を受けられるという事実を知らなかった」と答えた。入社5年目のN氏は「仕事中に事故で負傷をすれば労災申請すると思っていたし、椎間板ヘルニアのような病気が労災になるとは知らなかった」と話した。次の理由としては「手続きが難しくて」(36.8%)、「不利益の憂慮」(36.0%)などが挙げられた。
サムソン電子の関係者は「入社時に労災申請の手続きなどを教育することはもちろん、以後にも、オンライン産業安全保健教育で教育している」とし、「イントラネットと社内病院、筋骨格系疾患センターなどには案内資料も備えている」と話した。また「労災関連の問い合わせをいつでもできる受付チャンネルも運営中」と明らかにした。
しかし24時間交代勤務をする労働者たちは知らないケースがあった。A氏は「勤務時間中に別途の教育時間がなく、勤務時間中は忙しくて、じっと座って教育を受けるのは難しい」とし、「家では(会社網に接続できず)教育を受けることができない」と話した。不利益への懸念も影響を及ぼした。15年目のC氏は「仕事中に事故が起きれば、経緯を報告しなければならず、私の過ちではないのに責任を追及される」とし、「管理者たちも、報告や今後の人事評価への負担のためか、事故や労災申請に対して敏感になっている」と話した。
サムソン電子が健康保険の非給与項目を含め、職員の医療費を支援しているということも、労災申請をためらう理由になる。煩わしい労災申請より、手軽な医療費支援を選ぶということだ。しかし長期的に労災承認を受けることが、労働者に有利になり得る。勤労福祉公団の関係者は「今後、該当疾患が再発する場合、労災承認履歴があれば、退社以後にも再療養(給与)の申請・承認を受けることができる」と話した。クォン・ドンヒ労務士は「公傷処理(会社が医療費支給)をすると、該当疾病が業務上疾病なのか個人疾患なのか判らなくなる」とし、「会社が作業環境を改善し、労災を予防する契機が消えることになる」と話した。
2024年9月6日 ハンギョレ新聞 キム・ヘジョン記者