新型コロナウイルス感染症の労災補償5類移行を踏まえた取り扱いの変更等実績公表/メリット制特例/労災認定実務要領

新型コロナウイルス感染症が2023年5月8日に感染症法上の5類感染症へ位置づけが変更された後の取り扱いの変化を整理しておきたい。

労災請求件数等の公表

厚生労働省は、毎月、業種別の「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」(2023年6月号の表3参照)及び「新型コロナウイルス感染症に係る月別労災請求・決定件数」(2023年6月号の表2参照、ともに2023年3月31日現在)を公表してきたが、2023年6月1日に公表したのは同年4月30日現在の「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等(累計)」だけで、内容も医療従事者等及び医療従事者等以外別の累計請求・決定・支給件数と過去1年間分の月別累計件数の推移のみとなった。その後は、5月31日現在分が6月21日に、7月31日現在分が8月後半に公表されている。
月別件数は、直近12か月分のみが示されるように変わったが、公表されるたびに修正されており、過去に公表された月別件数を合算した数字と累計件数も微妙に異なっている。極端な例では、4月30日現在の累計支給件数が188,524件だったのに、5月31日現在では188,448件に減ってしまっており、4月30日現在で月別支給件数が2023年4月に14,879件とされていたものが、5月31日現在では2023年4月に7,880件、5月に6,980件、合わせて14,860件に減ってしまっていた。

7月31日現在のデータを紹介しておくと、累計請求件数210,491件(医療従事者等160,033件+医療従事者等以外50,458件、月別件数合算では210,574件-以下同じ)、累計支給件数199,021件(148,602件+50,419件、199,121件)、累計不支給件数543件(320件+223件、543件)である。
いずれにせよ、2023年4月以降、請求・認定件数とも以前と比較して減ってきているようだが、業務外認定が増えたり、認定率が下がったりする傾向は見受けられていない。
地方公務員災害補償基金は、2023年3月31日現在の職種別の「新型コロナウイルス感染症に関する認定請求件数、認定件数について」(同前8頁の表5参照)公表後は、6月16日に5月31日現在の状況が公表された後、8月15日に7月31日現在分が公表されている。こちらは、公表内容のフォーマットは変わっていない(図2参照)。
7月31日現在のデータを紹介しておくと、累計請求件数3,313件(医療従事者等2,734件+医療従事者等以外579件-以下同じ)、累計認定件数3,207件(2,666件+541件)、累計不支給件数7件(4件+3件)である。
人事院はウエブサイトの「新型コロナウイルス感染症関連」ページでの「一般職の国家公務員に係る新型コロナウイルス感染症に関する報告件数及び認定件数」を、2022年3月31日現在の状況を同年4月19日に公表して以来、更新をやめている。

メリット制特例措置の終了

2023年6月号で報告したように、2023年3月24日に厚生労働省ウエブサイト上の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」で、「5類感染症に変更された後に労働者が発病した場合の労災保険給付については、メリット制による労災保険料への影響がありえます」とされた。この内容は9月5日現在も変わっていない。
しかし、4月28日付けの労災管理課事務連絡では、「新型コロナウイルス感染症の流行に伴う労災保険給付等のメリット制特例措置への対応について」、「5類変更以降、本特例措置は自動的に終了することになる」としている。

「労災認定実務要領」の改正

2022年11月号で紹介しているように、2021年5月11日付け補償課職業病認定対策室長事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災認定実務要領について」が策定された。これは、全国安全センターのウエブサイトで全文紹介している(https://joshrc.net/archives/9379)。この認定実務要領は、2022年2月8日、2023年3月17日及び同年5月24日付けの職業病認定対策室長事務連絡によって改正されている。最後の改正は5類変更を踏まえたもので、主な改正点は以下のとおりとされている。

① 感染症法上の位置付けの変遷を追加
② 調査手法等の変更(医学情報、感染状況等の調査)
③ 質疑応答集の変更(問16、問17)
④ 関係通達の変更(新型コロナウイルス感染症に係る労災保険請求における臨時的な取扱いの廃止)
⑤ その他、所要の改正を行った

新型コロナウイルス感染症とは

「第1 新型コロナウイルス感染症とは」の内容は、改正後の全文を紹介しておこう。

1 定義
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症を「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)(以下「本感染症」という。)という。
2 感染経路
感染者(無症状病原体保有者を含む)から咳、くしゃみ、会話などの際に排出されるウイルスを含んだ飛沫・エアロゾル(飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)の吸入が主要感染経路と考えられる。
3 潜伏期間
従来株では、潜伏期は1~14日間であり、ばく露から5日程度で発症することが多いとされているが、令和5年3月現在主流となっているオミクロン株では、潜伏期は2~3日、ばく露から7日以内に発症する者が大部分であるとの報告がある。このように潜伏期間には幅があるため、感染した日から症状が出現するまでの間には個人差が生じることから、必ずしも発症した順に感染したものとは限らない。
4 感染可能期間
発症から間もない時期の感染性(感染力)が高いことが新型コロナウイルスの特徴であり、感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日程度と考えられている。
重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にあり、発症から3~4週間は病原体遺伝子が検出されることはまれではないとされている。ただし、この時期まで感染性があるということではない。
5 症状の経過
初期症状は、インフルエンザや感冒に似ている。頻度が高い症状としては発熱、呼吸器症状、倦怠感等があり、味覚障害や嗅覚障害も確認されている。多くの患者は発症から1週間程度で治ゆに向かうが、一部の患者では感染は下気道まで進展すると考えられる。特定の属性や基礎疾患があると、医療上の入院、酸素投与、集中治療が必要となるリスク(重症化リスク)が大きくなる。軽症の患者は特別な医療によらなくても、経過観察のみで自然に軽快することが多く、中等症以上の患者は入院して加療を行うことが原則である。
また、ワクチンの普及やオミクロンの感染拡大に伴い、成人では典型的なウイルス性肺炎を呈する患者が大幅に減少した。
6 病原体診断
核酸検出検査(PCR法、LAMP法)又は抗原検査で陽性と判定されれば、症状の有無に関わらず本感染症と確定診断される。同居家族などの濃厚接触者が有症状となった場合に、医師の判断により検査を行わずに臨床診断で診断した患者も確定例に含まれる。
7 感染症法上の位置付けの変遷
令和2年1月以降国内で感染が拡大した本感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)の「新型インフルエンザ等感染症」として、患者等は就業や外出制限、入院措置等行動制限がされるほか、治療に当たっては発熱外来等特定の医療機関での対応がなされてきたところ、令和5年5月8日から、感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザ等と同様の5類感染症とされた。これにより、感染症法に基づき、行政が患者等に対し、就業や外出制限等を要請することはなくなったほか、診療体制については幅広い医療機関による自立的な通常の対応に移行していくこととなった。
8 罹患後症状
新型コロナウイルス感染症罹患後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般(呼吸器や循環器、神経、精神等の症状)をいう。罹患後症状に関しては、まだ不明な点は多いものの、時間の経過とともにその大半は改善すると考えられる。

認定の判断基準は変更なし

2020年4月28日付け基補発0428第1号として示された通達「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」は、同年基補発1201第1号、2021年基補発0624第1号、2023年基補発0217第2号によって改正されているが、変わったのは最後の請求等の本省への報告等の仕方についてだけである。
したがって、「第2 通達の解説」の内容に大きな変更はない。

臨時的な取扱いの廃止等

むしろ、「第7 関係通達」に、前記通達以外に以下のみが収録され、また、当初は「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」、新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」、「宿泊・自宅療養証明書」を収録していた「第8 参考資料」が省かれていることが、変更を反映していると思われる。
・ 2022年5月12日付け基補発0512第1号「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」(2022年11月号参照
・ 2023年5月24日付け基補発0524第2号「新型コロナウイルス感染症に係る労災保険請求における臨時的な取扱いの廃止について」。
「本感染症の感染症法上の位置付け変更前(令和5年5月7日以前)に陽性が確認された者であって、医療機関を受診せず自宅療養を行った者等からの休業補償給付支給請求書における診療担当者の証明については、PCR・抗原検査や薬事承認された抗原検査キットで陽性結果を確認できる書類(陽性結果通知書等)を添付することとして差し支えないこととする。また、My HER-SYSにより電磁的に発行された証明書等を有する者の場合は、それらを添付することとしても差し支えない。
令和5年5月8日以降に陽性が確認された者については、発熱外来に限られていたコロナ患者受け入れ医療機関の制限がなくなり、幅広く一般の医療機関で外来・入院措置を受けることができることから、原則として医師による診療担当者の証明が必要になること」。
・ 2022年9月22日付け職業病認定対策室長事務連絡「新型コロナウイルス感染症の労災補償のための保健所への情報提供等の協力依頼の差し控えについて」(当初収録されていた2020年7月7日付け健感発0707第1号/基補発0707第2号「新型コロナウイルス感染症の労災補償のための保健所における情報提供等の協力依頼について」からの方針変更)
「今般、『Withコロナに向けた政策の考え方』(令和4年9月8日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)において、改めて発生届の対象外の者に係る療養証明書は発行せず、届出対象者については、証明が必要な場合には、My HER-SYSの証明、医療機関で実施されたPCR検査等の結果がわかる書類、診療明細書等で対応する方針が示された。こうした状況にかんがみ保健所の負担軽減が求められていることから、保健所への情報提供等の協力依頼は差し控えるよう重ねてお願いする。」
「第3 調査事項等」について、基本的な調査事項が、①感染の有無、②発症日、③感染経路の特定の有無、④当該労働者の職種、⑤発症前おおむね7日間[オミクロン株の潜伏期間を踏まえたもので、従来株では潜伏期間は最大14日間とされており、従来株からオミクロン株への置き換わりは令和3年末から令和4年3月にかけて生じているため、発病時期を考慮すること/無症状の場合は、陽性と判定されたPCR検査等の検査日(検体採取日)が調査の起点となり、また、発病日となる]の行動履歴(業務従事状況及び一般生活状況)であることや、フロー図[36頁参照]で示された「決定の流れ」の基本に変更はなく、後述する「第6 質疑応答集」の変更箇所が変更の具体的内容になる。
「第4 取りまとめ様式」は、かなり整理・修正されて、①調査復命書、②請求人申立書、③使用者報告書、④主治医意見依頼事項に、⑤主治医意見依頼事項(罹患後の精神障害用)が追加されるとともに、〇保健所情報提供依頼書が省かれた。「本感染症の認定に当たっての確認事項が、請求書の記載内容や簡易な電話録取(内容は請求書余白等に記載)から把握でき業務上と認定する場合は、調査復命書の作成は不要である」とされている。また、「第5 調査復命書記入例」は「第5 決定参考例」と変更されて、6事例から12事例に増えている。

追加傷病・罹患後症状等も調査

「第3 調査事項等」で、当初と比較して大きな違いは、「追加傷病」及び「罹患後症状」に関する調査が明記されていることだろう。
「追加傷病」については、「本感染症後にレセプト等で追加された傷病名が、以下の理由によるものについては、保険給付の対象として差し支えない」とされている。

① 本感染症の合併症と認められる傷病名である場合
② 除外診断目的による検査傷病名である場合
③ 本感染症に伴う一過性と認められる症状に対して行った治療による傷病名である場合

「罹患後症状」についても、「本感染症については、感染性が消失した後であっても、呼吸器や循環器、神経、精神等に係る症状がみられる場合があるため、本感染症後にこれらの症状があり療養が必要な場合には給付の対象となる」とされている。
一般的な確認事項は、以下のとおりで、主治医が本感染症との関係性を否定している場合等は、主治医意見書及び診療録等を提示して、専門医から医学的意見を求めることとされている。

① 症状出現の経過
② 本感染症以外の原因疾患が特定されているか否か
③ 「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント」に示された症状であるか否か
④ 上記の症状以外でも本件感染症により発症した傷病であるか否か(精神障害は後述)
「精神障害」については、別掲記事の「本感染症後の精神障害事案の取扱い」が示され、調査事項が示されている。
「その他」として、「感染リスクの評価が困難な事案、通勤災害に関する事案、追加傷病名が合併症又は罹患後症状として明らかでない事案など、決定に際し疑義が生じた場合は専門医に意見依頼する前に本省補償課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に相談すること」とされている。

質疑応答集の変更箇所

「第6 質疑応答集」の変更箇所を、以下に示す。

Ⅰ 発病日の考え方
問1~4と(答)に基本的に変更はない。問5の(答)は、「抗原検査は、ウイルスの抗原を検知し、診断に導く検査であり、PCR検査と同様に用いられていることから、読み替えて判断して差し支えない」だけになり、当初あった「医療行為とならない場合は当該検査日を発病日とすることはできない」や、2022年改正の「当該検査が自主検査であって、自治体が健康観察の対象とする場合においては、健康観察開始日を発病日とすることで差し支えない」は削除された。

Ⅱ 通達の考え方
問6~8と(答)に基本的に変更はない。
当初の問9「通達記の2(1)イの『感染経路が特定されたもの』とは、保健所の『積極的疫学調査』で感染源が特定されていることが必要か」は、「行動履歴調査を行う期間は、オミクロン株の潜伏期間を踏まえ、発症日を起点として遡ったおおむね7日間としているが、株の特定が必要となるのか」に変更され、(答)は、「株の特定の必要はない。従来株からオミクロン株への置き換わりは令和3年末から令和4年3月にかけて生じているため、発症時期が置き換わり前であれば発症前14日間の行動履歴調査を行い、置き換わり後であれば発症前7日間の行動履歴調査を行うこと」とされている。
問10~12と(答)に基本的に変更はない。
問13「通達の記の2(1)ウについて、市中感染が蔓延[当初は「拡大」]した中で、業務により感染した蓋然性が高いか否かの判断はどのように行うべきか。また、業務と一般生活の感染リスクを比較する上で、どのようなことを調査すべきか」の(答)が一部変更されて、「日常生活上で必要不可欠な行為(日用品等の買い物、通院、通学、公共交通機関利用による移動など)は、訪問先に感染者がいたことが明らかである等の特段の事情がなければ、感染リスクが高い行動とまでは評価しない」に続けて、「が、マスク着用状況など感染防止対策が十分になされていたかどうかについても考慮し、これらも含めオミクロン株の置き換わりにより一般生活上の感染リスクが上昇している状況も踏まえつつ、感染リスクの比較を行うこと」とされている。
「海外出張者」、「国内出張者」の取り扱いに関する問14、問15は削除された。

Ⅲ 調査事項等・取りまとめ様式について
問16~20からなるこの項目全体が削除された。集団感染事案については使用者報告書を必ずしも請求人ごとに求める必要はない、保健所に対する情報提供依頼、主治医意見書の省略、調査復命書は適宜修正して使用可能等の取り扱いは、5類移行を踏まえて記載する必要なしと判断されたのであろう。

Ⅳ 休業期間の考え方
最初の2つの問の(答)に変更はないが、5類移行を踏まえて、問16の問と(答)が変更されるとともに、問17が追加された。
問16 PCR検査や抗原検査で陽性だったが、症状が軽く、医療機関も逼迫していたため、受診できず自宅等において療養を行った。この場合、休業補償給付請求書の医師の証明の取扱い如何。
(答) 本感染症の感染症法上の位置付け変更前(令和5年5月7日以前)に陽性が確認された者であって、医療機関を受診せず自宅療養を行った者からの休業補償給付支給請求書における診療担当者の証明については、当該検査の陽性結果通知書や、My HER-SYSにより電磁的に発行された証明書等の陽性結果を確認できる書類を休業補償給付請求書に添付することで、診療担当者の証明に代用して差し支えない。
陽性結果を確認できる書類を紛失等で得られない場合は、感染や休業の状況等に関して事業主に対して調査を行う等により、個別に感染の有無を判断すること。
なお、判定に使用した検査キットは、薬事承認されたもの(国が承認した[体外診断用医薬品]または[第1類医薬品]と表示されたもの)であること。
令和5年5月8日以降に陽性が確認された者については、医療提供体制が、原則としてインフルエンザなど他の疾病と同様になることから、原則として医師の証明を求めること。
[当初の(答)は、「保健所の証明による『宿泊・自宅療養証明書』や『就業制限通知書』、『就業制限解除通知書』を休業補償給付請求書に添付することで、診療担当者の証明に代用して差し支えない」だった。]
問17 問16の場合、休業補償給付の対象となる期間はいつまでか。
(答) 本感染症の感染症法上の位置付け変更前(令和5年5月7日以前)に陽性が確認された者であって、医療機関を受診せず自宅療養を行った者についての休業補償給付請求については、位置付け変更前の新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第9.0版)を参考(有症状者は発症から10日間、無症状者は検体採取日から7日間が経過するまでは、感染リスクが残存し、健康状態の確認などを行う)に給付を行うこと。
有症状者であって10日以上経過しても症状が継続している場合は、症状の経過や軽快した日、その後の受診状況など個別の事情を確認の上、必要に応じて専門医から医学的意見を徴するなどして、その症状に対しての療養及び休業の必要性について判断すること。

Ⅴ その他
「PCR検査結果は陰性だったものの、新型コロナウイルス感染症に罹患していた蓋然性が高いと判断される場合(検査陰性事案)は、支給対象となる」とする問が削除された(参考として示されていた「新型コロナウイルス感染症疑い(検査陰性)事案の当面の取扱いについて」も削除されている)。ただし、問4の以下の(答)は維持されている。
「本感染症に係るPCR検査については、感度(陽性者を正しく陽性と判定する率)には限界があるため、濃厚接触者であり、かつ発熱や呼吸器症状を有している者であっても、陰性判定がなされる場合がある。
したがって、濃厚接触者であり、かつ発熱や呼吸器症状を有している者であった場合、1回目のPCR検査結果が陰性であっても、2回目以降のPCR検査結果で陽性であれば、1回目のPCR検査時点で新型コロナウイルスに感染していたものと判断して差し支えない。
なお、1回目のPCR検査時点では無症状であった場合や、検査間隔、行動履歴、自覚・他覚症状の経過等から疑義が生じる場合は、調査の上、主治医や専門医の意見を踏まえて決定すること」。
「通勤途上で、新型コロナウイルスに感染したとの申立により労災請求があった場合、通達により判断することとなるのか」という問18の(答)として、個別判断という基本は変わらないものの、「そのため、通勤途上で新型コロナウイルス感染者と接触したことにより感染したことが明らかである場合は、通勤に内在する危険が現実化したものといえるが、通勤途上で感染したことが明らかでない場合にあっては、通勤における感染リスクが一般生活における感染リスクよりも明らかに高いと判断できる場合はまれであると考えられる。なお、このような場合については、必要に応じ請求人に請求内容の補正を求め、業務により感染した蓋然性の判断を行うこと」という内容が追加された。
「管轄について」は変更なく、「追加傷病名について」の問がなくなり、代わって以下が追加されている。
(検査費用)
問20 業務により感染が確認された事案で、抗原検査の検査キットを自費で購入した場合やPCR検査を自費や事業主負担で受けた場合、療養補償給付の対象となるか。
(答) 業務上となる事案であっても、本人等の希望により自己(事業主含む。)負担で実施する検査料や自己調達した抗原定性検査キットの購入代は対象とならない。ただし、医師が診療を行った上で医療機関が行うPCR検査料、抗原定量検査料や抗原定性検査キットを用いた検査料は対象となる。
(症状固定)
問21 本感染症の罹患後症状における症状固定の取扱い如何。
(答) 「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント」によると、本感染症の罹患後症状については、いまだ不明な点が多いものの、時間経過とともに症状の改善が見込まれることから、医師がリハビリテーションを含め、対症療法や経過観察を必要とする状態にあっては、症状固定の状態と判断することはできない。
なお、症状固定の状態でなく療養継続と判断される場合であっても、休業の必要性については別途判断すること。
(他の感染症の考え方)
問22 新型コロナウイルスと季節性インフルエンザは、両者ともに飛沫感染が主体であり、市中感染の蔓延状況も同様である。このように本感染症と同様な感染経路を持つウイルス感染症についても本感染症と同様の考え方か。
(答) 新型コロナウイルス以外の感染症についても、業務起因性を判断する考え方は同様である。
季節性インフルエンザに代表されるような飛沫感染を主体とするウイルス感染症についても、感染経路が業務によるものと特定できる場合や、業務により感染した蓋然性が高いといえる場合もあり得ると考えられることから、個別の状況により判断すること。
なお、通達は、本感染症について、感染状況等を踏まえて業務により感染した蓋然性の判断を具体的に示したものである。

安全センター情報2023年10月号