労働における生物学的リスクに関する世界推計(抄録)/Jukka Takala, et. al, Safety and Health at Work (OSHRI), 2023.10.5【特集】労働関連疾病負荷推計の進展

はじめに

生物学的リスクは、職場における世界的な大問題である。最近のCOVID-19パンデミックは、労働における生物学的リスクをより包括的に理解する必要性を浮き彫りにした。本研究は、2021年の伝染性生物学的因子と非伝染性因子の両方について、死亡と障害につながるデータを示す。

方法

国際労働機関(ILO)が過去に行った労働災害及び労働関連疾病に関する世界推計で確立された方法論に従った。有害物質に関するILO推計と、文献から得られた関連する人口寄与割合を使用し、それを世界保健機関の死亡率データに適用した。推計の対象とした伝染性疾患は、結核、肺炎球菌性疾患、マラリア、下痢性疾患、その他の伝染病、顧みられない熱帯病、インフルエンザ関連呼吸器疾患及びCOVID-19である。考慮した非伝染性疾患と傷害は、有機粉じんによる慢性閉塞性疾患(COPD)、喘息、アレルギー反応、動物との接触に関連したリスクである。労働における生物学的リスクに起因する死亡及び障害調整生存年(DALY)による障害を推計した。

結果

2022年に、生物学的リスク要因が原因で550,819人が死亡し、そのうち476,000人が伝染性感染症、74,000人が非伝染性要因が原因であると推計された。このうち、労働におけるCOVID-19に起因する死亡は223,650人であった。労働者10万人当たり584DALYという率が計算され、DALYによって測定される労働関連障害の世界的負担の前回推定値から11%増加した。

結論

これは2007年のILO推計値以来の更新であり、現在では74%増加し、ほとんどの生物学的リスク要因をカバーしている。しかし、データから漏れている疾病や死亡が他にもあるかもしれないことに注意することが重要であり、新たな情報が入手可能になれば、それを含める必要がある。また、COVID-19を含む主な伝染性疾患による死亡は労働人口では比較的まれであるが、これらの疾患による欠勤は現役労働者では非常に多いと思われることも特筆に値する。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S209379112300063X?via%3Dihub

安全センター情報2024年4月号