ABAN2023バンコク会議:太平洋島嶼国禁止いよいよ-カンボジア禁止の意向表明、タイのネットワーク再活性化にも期待
古谷杉郎(全国安全センター事務局長/ABANコーディネーター)
2023年5月7日、タイ・バンコクでアジア・アスベスト禁止ネットワーク(ABAN)の会議が開催された。2021年9月はオンライン開催だったので、リアル開催は2019年10月の韓国・ソウル開催以来4年ぶりとなる。ケーダー玩具工場火災惨事30周年に合わせて8~10日に開催されたANROEV会議の前日に設定したもので、海外17か国から64人に加えて、地元タイ47人、合計111人の参加だった。
会議は大きく分けて(必ずしも順序どおりではないが)、①開会、②タイ・セッション、③特別報告、④国別報告、⑤戦略討議、⑥トレーニング、⑦オンラインメッセージ、で構成された。
目次
開会:タイのアスベスト禁止の旅
開会あいさつは、コミュニティ・ファーマシー財団会長のDr. Witthaya Kulsomboonにお願いした。
2004年11月の世界アスベスト会議の東京開催後の最初のアジア・アスベスト会議を2006年にバンコクで開催したように、タイとのつながりはあったが、政府や大学の専門家が中心だった。筆者は、2009年12月にバンコクで開催された第2回アジア・アスベスト・イニシアティブ(AAI)国際セミナーで、「タイもようやく『活動家』を獲得できた」と、彼を紹介されたのが最初だった。チュラロンコン大学薬学部教授で、消費者団体との強い関わりをもち、ヘルス・コンシューマー・プロテクションというプログラム(HCPP)を開始して具体的にアスベスト問題に対する取り組みを開始したところだったが、2010年12月の第3回全国保健総会(NHA)が決議「タイ社会をアスベストフリーにするための措置」を採択し、翌年4月に閣議がそれを承認する決定を行う等の進展を、労働公衆衛生専門家とともにリードした。
2011年12月にマレーシア労働組合会議(MTUC)が政府、使用者団体等を招いて「アスベスト関連疾患根絶国家計画(NPEAD)」に関する会議を開催したときに、BWI(国際建設林業労連)から「タイでアスベスト禁止に取り組む人を呼べないか」と聞かれて彼を紹介した。
この場で労働組合、消費者団体、専門家らがアスベスト禁止ネットワーク設立について議論しているのに刺激されて、彼は2012年7月にバンコクで同様の会議を開催して、HCPP、消費者財団、消費者団体連合、労働安全衛生環境連合(専門家グループ)、タイ労働環境関連患者ネットワーク(WEPT、筆者はANROEVを通じて旧知)、タイ労働者連帯委員会(TLSC)等によるタイ・アスベスト禁止ネットワーク(TBAN)の設立を実現した。
以降、とりわけ政府が一定の決定を下すとみられた2014年末に向けて、アスベスト禁止の実行をめぐる激しい攻防が繰り広げられ、筆者もABAN会議の2012年9月バンコク開催や2014年11月バンコクでの国際会議開催などを通じて全面的に支援した。禁止に抵抗する国内アスベスト業界の力も強かったことに加えて、2014年5月のクーデターに対する国際的な経済制裁のなかでロシアの影響力が高まったことが大きな原因と考えているが、政府は「決定の先送りを決定」するにとどまった。
TBAN関係者らはあきらめずに取り組みを継続したものの、とくにDr. Witthayaが退官後にTBANとして行動することが難しくなってから、筆者らは機能しなくなっていると認識していた。しかし、2019年12月に第12回NHAが再び改訂決議「タイのアスベスト禁止措置」を採択したことから、タイの関係者の不屈の粘り強さを再認識した。2019年10月ソウル開催のABAN2019にはDr. Witthayaが参加し、2021年9月のオンラインABAN2021ではNHA14改訂決議のフォローアップに当たる全国保健委員会事務所(NHCO)タスクフォースの委員長を務めるProf. Pornchaiに報告してもらった。
Dr. Witthayaは「アスベスト禁止に向けた旅」と題してABAN2023の開会あいさつを行い、今日のスピーカーの一人のProf. Narongponのような若い世代も加わっていることに未来を託し、また、ベトナム、ラオス、カンボジア等に運動が広がっていることを踏まえてASEANレベルでの進展にも期待したい等と話した。ついでに、筆者は「90歳まで活動を続けろ」と励まされた(?)。
タイ:職業・環境病管理法の制定等
タイ・セッションは、以下の4報告で構成された。
- Prof. Pornchai Sithisarankul(チュラロンコン大学医学部)「全国保健委員会事務所(NHCO)に関する進展」
- Prof. Surasak Buranatrevedh(タマサート大学医学部)「職業病・環境病管理法に関する進展」
- Prof. Narongpon Dumavibhat(マヒドン大学医学部シリラート病院)「研究者に関する進展」
- Ms. Somboon Srikamdokcare(WEPT)「専門医による診断へのアクセスの欠如と職業病・環境病管理法法」
とくに注目されたのは、2019年に制定された、使用者/所有者に労働者/影響を受ける人々に対して職業病・環境病のサーベイランス・予防・管理に関する必要な情報の届出を義務づける職業病・環境病管理法についてである。同法の対象になる職業病は、①鉛中毒、②シリカ関連疾患、③閉鎖空間に置ける労働による健康影響、④アスベスト関連疾患、⑤農薬中毒、環境病は、①鉛中毒、②PM2.5の健康影響とされたとのこと(電離放射線による健康影響も?)。タイにおけるアスベスト関連疾患の報告と診断、さらには(労災補償法によることになるが)補償の進展・改善が期待されると報告された。
Prof. Narongponからは具体的に、69歳女性の石綿肺や68歳男性の悪性胸膜中皮腫の症例と、過去の胸部X線写真のレビューから、1件の胸膜プラークを伴う悪性胸膜中皮腫と他に4件の胸膜プラークが確認されていることも紹介された。
他方で、Ms. Somboonからは、職業病を訴えても使用者が送った民間病院で労働関連性を否定されている実例を紹介して、WEPTは、専門医の育成と被害者がその診断を受けられることを要求していると報告した。
NHA14改訂決議のNHCOによるフォローアップの進展としては、前述の労働・環境病管理法対象物質へのアスベスト関連疾患の指定のほか、内務省公共事業・都市農村計画局による建設管理法に基づくアスベストフリー省令案、中央会計局による調達時に特定すべき環境にやさしい材料の使用に関する省令、公衆衛生省による有害廃棄物に関する省令(アスベスト含有廃棄物を含む)、公害管理局による建設/改修/解体アスベスト含有廃棄物ガイドライン、基礎教育委員会によるカリキュラム/生徒活動への(アスベストを含む)ヘルスリテラシーの導入促進等があげられた。
今回、地元タイからは46名が参加。全体会議でのタイ・セッションとは別に、タイ参加者のみによる会議を別途もつ場を提供した。
禁止に向かう太平洋島嶼国
特別報告①「アスベスト禁止に向かう太平洋島嶼国」
Mr. Lance Richman(太平洋地域環境計画事務局(SPREP)PacWaSstePlusプログラム廃棄物プロジェクト技術専門官)
Mr. LanceにはABAN2021オンライン会議で初めて登場してもらい、PacWaSstePlusのアスベスト・プログラムを紹介してもらったのだが、今回はサモアからバンコクまで旅をしていただいた。
地域レベルでは、アスベスト含有物質(ACM)及びアスベスト含有廃棄物の輸入・再利用・再販売を禁止する法令及びACM管理のための行動規範(Code of Practice)の策定を支援するとともに、いくつかの国レベルで、アスベスト除去または評価プロジェクトを進めている。
前者についていえば、禁止のために使うことのできる既存の法令や選択肢を見極めたうえで、幅広い関係者の支持を得ることが重要である。具体的に、ツバルは、政府諮問機関の文書「アスベスト輸入禁止」の起草を完了。バヌアツは、ACMを禁止するための廃棄物管理法改正案を起草。パプアニューギニアは、ACM禁止規則改正のための調査委託。トンガは、同旨の調査を終え、政府関係機関及び事業主団体と協議中等と紹介された。Mr. Lanceは、遠くなくアスベスト禁止を導入する最初の国を報告することができると思うと結んだ。
並行開催のロッテルダム条約会議
特別報告②「ロッテルダム条約国際キャンペーン」
Mr. Ram Charitra Sah(ネパール:公衆衛生環境開発センター(CEPHED))
ロッテルダム条約第11回締約国会議は、ABANと並行して5月1~12日(主に8~12日)にジュネーブで開催されたが、これに向けて早くから、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)やソリダー・スイスなどを中心に国際キャンペーンが取り組まれ、既報のとおり、オーストラリア・スイス・マリによって、審議を尽くしてもなお全会一致に至らなかった場合に多数決によって化学物質のリスト搭載を可能とする条約改正案が提出された。まずは、この改正案の共同提案国となる、及び/または、改正案に賛成するよう各国に働きかけが行われた(筆者も日本の外務省担当部署に働きかけ、当初は方針が決まり次第連絡するとしていたが、結局連絡はなかった)。
会議前に国連の人権専門家らが改正案の採択を要請する声明を発表し、会場ではABANを含め世界の40の労働組合・市民団体が署名した同趣旨の書簡が会議参加者に配布された。ABAN2023の最後のオンラインメッセージでは、ジュネーブにいるAPHEDAのMr. Phillip Hazeltonから中継で、翌日からの本格討議への意気込みを聞いた。
COP11では紆余曲折を経つつも改正案の採択まで進んだものの、わずか7票差で敗れた。
災害後地域社会トレーニング
特別報告③「災害後の地域社会アスベスト・トレーニング」
Mr. Darisman(インドネシア・アスベスト禁止ネットワーク(InaBAN))
2022年11月21日に大地震が襲ったウエストジャワ州チアンジュールにおける地域住民を対象にしたアスベスト・トレーニングの経験が報告された。
アスベストセメント屋根材が大量に使用されており、廃棄物にはアスベストが含有している。住民は、そのようながれきの中で暮らし、それを割ったり砕いたりして取り除こうとし、また、再利用しようとしていた。さらには、シェルターや建物の再建にアスベスト含有建材が使われようとしていた。
InaBANは、アスベストとは何か、その危険性、どのような建材等にアスベストが含まれていてどのようにするとリスクを高めるのか、また、がれきの除去や復旧においてリスクを低減する方法等について、住民に対するトレーニングを実施した。
このような事態が起こってからリスクを低減させることがいかに大変かつ高価であることを広く知らせることから、よりよい選択肢がアスベスト使用の禁止であることへの理解を広げていきたいと結んだ。
韓国の学校キャンペーン等
特別報告④「韓国における学校アスベストキャンペーン」
Mr. Noh Juhyung(韓国石綿追放運動ネットワーク(BANKO)釜山委員会)
韓国では、2004年以前は耐火のために学校はアスベストの使用が義務づけられていたために、大量に使用されている。2027年までにすべての学校からアスベストを除去する方針が策定され、夏及び冬休みごとに千以上の学校の除去が進められ、残っているのは45.7%の学校である(11,946校中5,454、高校53%、中学42.4%、小学44.6%、2022年3月時点)。除去作業はアスベスト曝露のリスクが高いから、監視グループが必要である。
特別報告⑤「台湾におけるアスベストフリー・キャンペーンと労災補償」
Ms. Cheng Chu-Ling(台湾OSHリンク)
台湾では、2018年1月1日からアスベストの段階的禁止が実施され、それ以前に許可を得ていた場合には期間終了まで使用可能とされた。実際には2023年に輸入量ゼロになった。2022年5月に既存の労働保険法における労災保険法と労災被害者保護法の規定を統合し、補償範囲を拡大した労働道者労災保険及び保護法が施行された。
アジア開発銀行の最新情報
特別報告⑥「アジア開発銀行最新情報」
Ms. Vilada Pomduangsy(APHEFAラオス)
ABAM2019直後の集中キャンペーンにより、アジア開発銀行(ADB)は、アスベスト関連案件への投資をやめる方針を表明した。その後、ADBは以下のような2段階アプローチをとっている。
① グッドプラクティス(アスベスト含有物質の使用の回避)実施に基づく暫定的予防アプローチ
② セーフガード・ポリシー・ステートメント(方針声明)を改訂する未来志向のアジェンダ
具体的には、2022年に「アスベスト管理のためのグッドプラクティス・ガイダンス:職場と地域社会をアスベスト曝露リスクから守る」が発表された。セーフガード方針声明の改訂は、当初2023年3月と言われたが、遅れていて2024年第1四半期に理事会で投票され、実施は2025年になる見込みである。
カンボジア:2025年禁止の意向
カンボジアは、カンボジア・アスベスト禁止ネットワーク(CamBAN)を代表して建設林業労働組合(BWTUC)書記長のMr. Thy Yannが報告。
2022年10月に労働職業訓練省(MOLVT)が、第2次ナショナル・アスベスト・プロファイル(NAP)を策定。第1次NAPに対しては、国際クリソタイル協会(ICA)が2019年10月に、APHEDAのアスベスト禁止キャンペーンによる情報にたぶらかされたものと非難する書簡を保健省に送ったが、MOLVTの姿勢は変わってないようだ。2023年に策定された2023~27年を対象期間とする第3次労働安全衛生マスタープランもたびたびアスベストに言及するとともに、戦略①「国際基準に沿った一貫した法的及び方針枠組みと効果的な施行」の11項目のひとつに、「すべての種類のアスベスト及びアスベスト含有製品の法的禁止、アスベスト代替品の使用の促進、アスベスト除去の安全な手順に関する義務的規則の策定、アスベスト関連疾患(ARD)のハイリスク労働者の健康サーベイランス、ARDの職業病リストへの追加」が含まれている。
ABAN2023後に、労働職業訓練大臣が2025年までにアスベスト禁止を実現したい意向を公式に表明したことが報じられている。ただし、2023年7月の総選挙後に大臣は変わることが予想されているため、この意思が引き継がれるかが焦点である。
CamBANは、2021年度719人、2022年度889人に教育トレーニングを実施するなど精力的である。
他の東南アジア諸国の報告
ラオスは、労働安全衛生促進協会(POSHA)に名称変更したLaoBANを代表してラオス労働組合連盟(LFTU)チームリーダーのMrs. Chongchit Vongsaが報告。
保健省が、アスベスト関連疾患根絶のための国家戦略(2018~30)及び国家行動計画(2018~22)を策定しており、それらのレビュー作業にOSH促進協会も積極的に参加している。教育トレーニングではメディア関係者にも働きかけているが、アスベスト禁止に対する抵抗もまだ強力である。
ベトナムは、ベトナム・アスベスト関連疾患根絶グループ(VEDRA)に名称変更したVNBANを代表して、バックカン女性同盟会長のMs. Ha Thi LieuとAPHEDAベトナムのMs. Hoang Thi Le Hangが報告。
ベトナムでは、建設省の「屋根材製造におけるクリソタイル使用中止に向けたロードマップ」における使用中止期限の表記等が焦点となってきたが、強力なアスベスト禁止反対圧力のなかで、2022年にはロードマップの名称が「製造におけるクリソタイル管理の改善」に変更されるなど、押され気味である。
これに対して、とりわけアスベスト使用料の多い遠隔地、少数民族地域や女性団体などに狙いを定めた認識喚起やメディア対策(賛否双方の立場からの報道は引き続き多い)に力が入れられている。
インドネシアは、InaBANのMr. Surya Feridianが報告。
特別報告してもらった災害後の地域社会トレーニングや、ABAN2023後の7月31日には50人以上の医師と100人以上の医学生を対象に3日間のアスベスト関連疾患に関する臨床トレーニングが開催されるなど、活動領域もパートナーも広がっている。
アスベスト使用大国のひとつで壁は厚いが、被害者の掘り起こしや地方自治体レベルでの禁止の追及等を継続するとともに、消費者保護法を活用できないかなど検討していると報告された。
マレーシアは、安全衛生助言委員会(HASAC)のDr. Jayabalan Thambyappaから報告。
残念ながら進展はみられていない。
フィリピンは、ALU-TUCP(フィリピン労働組合会議)のMr. Arturo Barritが報告を用意してくれたが、飛行機の欠航のため発表できなかった。
南アジア諸国の報告
バングラデシュは、バングラデシュ・アスベスト禁止ネットワーク(BBAN)のDr. S M Morshedが報告。
2021年に産業省がクリソタイル輸入にオープンな立場を確認したり、船舶解撤協会(BSBA)がいかなる使用制限にも反対する厳しい状況のなかで、アメリカ連邦地質調査所(USGS)のデータでアスベスト輸入量が増加していることが気がかりである。
BBANは、2022年12月にもシタクンダで船舶解撤労働者の被害者のネットワーキング会議を開催したり、政府に対する要求等を続けている。
スリランカは、環境正義センター(CEJ)のMs. Chalani Harshani Rubasingheから報告。
CEJは具体的にアスベスト禁止キャンペーンに取り組んだ経験はあるものの、ABANへの参加は2019年のオンライン会議が初めてで、今回引き続き参加してもらえたが、2017年にロシアによる露骨な恫喝によって禁止撤回を余儀なくされたスリランカで、もう一度反撃の動きが起こることを期待したい。
ネパールは、公衆衛生環境開発センター(CEOHED)のMr. Ram Charitra Sahから報告。
2015年の原則禁止導入後も、税関による施行確保-分析能力の向上、CEOHEDによる禁止から除外されたブレーキ製品等をめぐる実態調査等が続けられている。
インドは、予定していたMr. Nadim Ahmed(インド・アスベスト禁止ネットワーク(IBAN/Environics Trust)が参加できず、Mr. Jagdesh Patel(IBAN/民衆訓練研究センター(PTRC))から簡単に報告してもらったが、各地に一定取り組む団体と被害者団体があるにもかかわらず、IBANのネットワークとしての機能が必ずしもうまくいっていない状況だ。
パキスタンは、オンライン報告してもらう予定だったが、通信状況が悪いため断念した。
ABAN会議の隔月定期開催
オープニングセッションで開会あいさつの後に筆者から、ABANコーディネーターとしての簡単な報告と問題提起を行った。とくにABAN2019オンライン会議で出された諸提案のうち、支持が多かった独自ウエブサイトについては、開設は簡単でもネットワークとして豊富な更新を確保する自信がないことからペンディングにして、代わりにABANオンライン会議の隔月定期開催を提案した。
戦略討議においてこれは確認され、7月から実施されているところである。
戦略討議では様々な提案が出されたが、とくにANROEVのスポンサー/支援者であるソリダリティ・センターのアジア各国事務所のスタッフも多数初めてABAN会議に参加して、質問を含めて発言したので、今後各国で取り組みを支援してくれることを期待したい。
また、別室で討議をしていたタイからの参加者も戦略討議の全体会議に戻ってきて、彼らの討議内容も紹介してくれた。関係者各々の努力が続くことは疑っていないが、可能であればTBANネットワークとしての再活性化も望みたいところである。
アスベスト繊維確認トレーニング
トレーニングは、日本の建築物石綿含有建材調査者協会(ASA)の外山尚紀副代表理事による「容易に利用できるツールによるアスベスト繊維の確認方法」に関するトレーニング(写真)。
2018年9月にベトナム・ハノイで開催したABAN第2回東南アジア地域会議で行ってもらった内容をかなり時間を短縮して再現してもらったが、予想どおり好評だった。合わせて、日本のアスベスト含有建材調査者制度についても紹介してもらった。
エリックとオンラインでつながる
オンラインメッセージの一人はすでにふれたように、翌日から本格的に始まるロッテルダム条約第11回締約国会議に参加するためにジュネーブにいたAPHEDAのPhillip Hazelton。
もう一人は、ベルギー・アスベスト被害者協会のEric Jonckheereだった。
彼は、ABANが設立された2009年香港でのアジア・アスベスト会議をはじめ、何回かABAN会議や日本でのイベントにも参加している。エタニットのアスベストセメント工場で働いた父親とその作業服を選択した母親に加えて、同工場近くに住んでいたために、5人の兄弟のうちの2人も中皮腫でなくし、母親の件でベルギー初のアスベスト裁判を最高裁まで闘った。
その彼が自身も中皮腫と診断されたと知らされたのは2022年春のこと。闘病を続けるかたわら、著書『アスベスト-悪魔の粉じんとの私の闘い』の英語版が出版され、YouTubeに英語字幕付きビデオも公開されている。
「私たちはいつも一緒にいる」と伝えたい思いで、オンラインメッセージ登場を依頼した。こころよく応じてくれた彼は、近況及び自分自身の件で再びアスベスト訴訟を提起する準備を進めていること、またABAN参加者への連帯と再会の希望を表明した。彼と付き合いのもっとも長い筆者、韓国のChoi YeYong、Sanjiv Panditaで6月にベルギー訪問を考えたが日程調整がつかず、かえってEricのほうがアジアに行きたいとも言っているので、近く再会できるかもしれない。