富山で4年ぶりに相談会と集い~富山●二人の中皮腫患者さんが講演

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会北陸支部は、6月11日に富山市内の富山県民共生センターサンフォルテで、2019年4月以来、富山県内では4年ぶりになるアスベスト被害相談会と患者・家族の集いを開催した。

午前中の相談会には、解体工事におけるアスベスト飛散や自宅屋根にアスベスト含有屋根材が使用されているらしいが撤去するにはどうしたらよいかという相談等があった。ホットラインも相談会と同時に行い、北日本新聞に相談電話番号が掲載され、NHK富山二ユースで報道されたことから、後日、かつて石油ストーブを製造する会社に勤務し、アスベストを取り扱っていた伯母が肺がんの確定診断を受けたという電話相談もあった。

午後は中皮腫サポートキャラパン隊の中島喜章さん石田孝雄さんの講演が行われ、中皮腫で父親を亡くした男性や飛騨市の腹膜中皮腫患者の青山和弘さんなどが参加した。

集会の冒頭、世話人の野村美雪さんは、「コロナでなかなか開催できず、皆様のお気持ちをお聞きすることがしばらくありませんでしたが、落ち着いて来ましたので、今回の開催を機に順次活動していきたい」と挨拶した。

2017年1月に腹膜中皮腫の確定診断を受けた医師の中島喜章さん(66歳)は、新潟県三条市にある介護老人保健施設の施設長として働きながら治療を受け続けている。中島さんは、中皮腫サポートキャラバン隊の運営委員も務めている。

中島さんは、新潟大学医歯学総合病院でアリムタとシスプラチンの抗がん剤を投与する治療を6回とアリムタ単剤の投与を受ける治療を62回受けた。その後、兵庫医科大病院で腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫患者へのオプジーボ投与による握療の縮小効果や安全性などを確かめる医師主導治験が始まったことを知り、この治験に参加する全国5か所の医療機関のひとつであった東京の国立がん研究センターで2021年6月1日から治験に参加した。いまのところ、腹膜中皮腫患者へのオプジーボ投与は保険適用されていない。

中島さんは、2週間に1回、国立がん研究センターに通い、今年2月9日までで44回のオプジーボ治療を受けた。しかし、2月21日に評価目的で撮影した造影CTの画像でリンパ節が大きくなっていることが確認され、進行しているとされたことから治験は終了となった。治験終了後は、4月から新潟大学医歯学総合病院でアリムタ単剤の投与を受ける治療を受けている。「今は多少腫瘍マーカーがあがっても参考値で、画像的にそれが確認できるかどうかで国立がん研究センターの先生は判断されていた」と話した。

再び、新潟大学医歯学総合病院でアリムタ単剤の治療を始めた中島さんだが、CA125(基準値は、35U/mL以下)の腫瘍マーカーが講演の直近の6月7日には、4月段階で1,458だったのが1,250まで若干下がり、このまま下がっていけば治療が効いていると言えるのではと話した。

中皮腫サポートキャラバン隊の代表理事で患者と家族の会運営委員の右田孝雄さん(58歳)は、2016年に悪性胸膜中皮腫を発症して以来治療を続けてきた。右田さんは、自身の治療体験のみならず、専門家や他の患者、日頃の活動の中から得た中皮腫治療に関する様々な知識や情報について網羅的に講演をした。

筆者が興味深いと思ったトピックは、右田さんが年明けから兵庫医科大学病院に毎日通って受けたIMRT治療(強度変調放射線治療)の体験についてだった。IMRT治療では、弱い放射線を色々な角度から腫瘍部にあてるそうで、放射線が交わる腫瘍部に強い放射線が当たるということだった。右田さんは、右脇腹の肋骨に出現し隆起していた腫瘍に放射線を当てる治療を受けたが、今回の富山での講演の3日、4目前のCT画像では、7cmあった腫瘍が5cmになっており、現在進行形で少しずつ減っていっているのではと話した。IMRT治療は、健康保険を使うことができ、今後期待される治療法ということだったが、放射線科の先生は、まだエビデンスが足りないと話しているということだった。

文:問合せ:名古屋労災職業病研究会

安全センター情報2023年11月号