妊娠中に有害物質にばく露して疾患・・・『胎児労災』初認定 2024年01月21日 韓国の労災・安全衛生
業務中に有害な化学物質などにばく露した妊娠中の労働者の子供が、先天性疾患を持って産まれれば労災と認定して補償する『胎児労災法』の施行以後、初めて胎児労災を承認した事例が出た。
勤労福祉公団は、先月15日に子供の先天性脳奇形疾患について労災申請をした看護師Aさんの事例を、業務上災害と認定し、労災を承認したと明らかにした。
Aさんの子供の病気と業務の関連性を把握するための疫学調査を担当した産業安全保健研究院の『疫学調査結果報告書』によれば、病院の人工透析室で看護師として働いていたAさんは、第二子を妊娠中の2013年3月から9月までの六ヶ月間、透析液を混合する業務を行った。当初は既製品の透析液を使っていたが、予算などの問題で、看護師が直接化学薬品などを混合して透析液を作る方式だった。Aさんは透析液を混ぜる度に『酢酸の臭いで息ができないほど苦しかった』と話した。同年12月に出産した次男は、脳の表面が損傷した「無脳イラン症」と診断され、2015年には脳病変1級障害の診断、2017年には四肢麻痺と診断された。該当の業務をする前の2012年に出産した第一子は健康だった。
産業安全保健研究院の疫学調査評価委員会は「勤労者は(第二の子女)を妊娠中に、反復的に肺損傷と低酸素症が発生したと推定」されるとし、「低酸素症は(胎児の)脳に関連する奇形を誘発する要因であることがよく知られており、勤労者は妊娠第1四半期に該当の業務を行ったが、妊娠第1四半期は脳の奇形発生に脆弱な時期」と指摘した。続けて「勤労者の子女の傷病の業務関連性に関する科学的な根拠は、相当なものと判断する」とした。この結果を土台に公団は先月15日、Aさんの子供に対する胎児労災を承認した。昨年の法施行後、胎児労災が認められた初めての事例だ。
胎児労災法は、妊娠中の労働者が健康に有害な労働環境にばく露したために、子供に先天性の疾病や障害が発生すれば、該当の子女(健康損傷子女)もまた労災を受けた労働者と見て、保険給付を支給するようにした労災保険法の改正だ。改正は2021年に国会を通過し、昨年から施行された。遡及適用条項があり、法施行以前に労災を申請した場合でも、胎児労災法が適用される。
胎児労災法の通過以後、6件の労災申請が受け付けられ、現在4件について疫学調査の結果が出ている。Aさんの他に、半導体工場で働いた労働者が提起した残り3件の胎児労災について、産業安全保健研究院は、「業務関連性に関する検討が更に必要だ」という意見を出している。3件に対する労災の有無の判断は、公団の業務上疾病判定委員会の審議を経て、来月には出てくるものと見られる。パノリムのチョ・スンギュ常任活動家(労務士)は「(半導体工場の事例に関しても)胎児の疾病と業務との関連性を完全に否定したわけではなく、間接的な要因は確認したという内容が(疫学調査報告書に)示されている。」「業務上疾病判定委員会が前進した判定結果を出すことを期待している」と話した。
2024年1月21日 ハンギョレ新聞 チャン・ヒョンウン記者