過労によるウィルス性脳炎で死亡した公務員、裁判所は『公務上災害』と判断、二審も勝訴。 2023年07月20日 韓国の労災・安全衛生
過労とストレスに苦しめられ、潜伏していた「エプスタインバーウイルス(EBV)」が再活性化し「ウイルス性脳炎」に罹った公務員が、亡くなって5年目に、最終的に「公務上災害」が認められた。
<毎日労働ニュース>の取材によると、ソウル高裁は、ソウル市の公務員A(死亡当時44歳)さんの配偶者が人事革新処に起こした、「殉職遺族手当不承認処分取り消し訴訟」で、人事処の控訴を棄却し、原告敗訴の判決を行った。人事処が上告せず、判決は確定した。
異動後に「庶務総括」、一審は過労を認定
約18年間勤めたAさんは、2018年1月に安全総括課から施設安全課に配置転換された。同年8月、家族と夏休みに行ったが、体調不良で一人で帰ってくる途中に意識を失って倒れ、病院で詳細不明の脳炎と診断された。脳手術を受けたが、結局、同年9月に死亡した。
原因は「ウイルス性脳炎」とされた。Aさんの配偶者は人事処に殉職遺族手当を要求したが、疾病と公務の間に相当因果関係がないという理由で不承認とされ、遺族は訴訟を起こした。
Aさんは配転以後に業務量が急増していたことが判った。課の職員44人の庶務を担当し、各種の報告資料と会議資料を作成した。昇進基準となる機関成果評価業務を担当し、人事評価も担当して勤務成績評定資料を作った。国家安全大診断の業務も担当し、施設物3万3千ヶ所の安全点検を行った。Aさんの同僚たちは、「課の庶務の担当者は、課長が退勤する前には退勤できない。」「課長を補佐するので、休暇もほとんど使えない」と陳述した。
一審は配転による過労とストレスを認めた。Aさんの免疫機能が低下した状態で、潜伏していた「EBV」が活性化し、ウイルス性脳炎を発症したということだ。裁判所は、Aさんが2018年7月に初めて発足した時間選択制の任期制公務員の「安全御史台(=臨時職)」採用で、災難危険施設白書の発刊などの業務を担当し、業務量が過重だったと判断した。
44歳で脳炎、裁判所「過労・ストレスが原因」
平均の勤務時間も慢性過労状態にあったと見た。Aさんの発病前の週当り平均勤務時間は12週間で50.22時間、4週間で54.89時間だと調査された。雇用労働部の告示は、発病前の12週間、1週間平均勤務時間が52時間を超過する場合、業務時間が長くなるほど疾病との関連性が増加すると見ている。
ストレスも脳炎に影響を与えたと推定した。裁判所は「故人は、過重な業務量と超過勤務で相当な圧迫感とストレスを受けた。」「普段の健康状態は良好で、業務の他には免疫力が低下する原因になるほどの事情は見当たらない」と判示した。二審も判断は同じだった。肉体的な過労やストレスがウイルスの活性化を起こしかねないという2007年4月の最高裁の判決によって裏付けられた。神経科の鑑定医も、二審で、業務上の要因が脳炎の原因になり得るという所見を出した。
遺族を代理したソン・イクチャン弁護士は「ヘルペスウイルスによる脳炎などの免疫性疾病の場合、最初の処分で労災を認められるケースは非常に珍しい」が、「裁判所で免疫性疾病を労災と認定した事例は可成りあるので、業務時間の算定と職場の同僚の協力などによって十分な資料を収集すれば、労災が認められる」と話した。
2023年7月20日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
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