作業を中止すれば、日当が飛ぶ下請け労働者 2023年05月31日 韓国の労災・安全衛生

イ・ジョンシク雇用労働部長官が26日に現代重工業を訪問し、下請け労働者の作業前の安全点検会議を参観した。/雇用労働部資料写真

「勤労者は労働災害が発生する切迫した危険がある場合には、作業を中止し待避することができる。」

産業安全保健法52条1項は労働者の作業中止権を規定している。現場を一番よく知っている労働者が危険を判断して作業を中止、更には使用者に安全保健措置を要求できる権利だ。重大災害多発事業場として知られた現代重工業は、重大災害を防ぐために現場労働者に『安全作業要求権(作業中止権)』の行使を督励している。下請け労働者でも使えるが、作業中止期間には賃金が補填されず、絵に描いた餅だという批判が出ている。

今年だけで、安全作業要求が875件

現代重工業によると、今年、事業場内で行使された安全作業要求権は875件だ。現代重工業の労働者は、作業用の足場、安全手摺り、照明などが設置されず、作業中の災害が憂慮される場合、社内の非常電話で申告し、安全・保健措置を要求することができる。

社内の危険性評価を強化し、安全作業要求権を督励したお陰だろうか、現代重工業の災害は減少傾向にある。昨年4月、下請け労働者一人が溶接作業中に起こった爆発事故で亡くなった後、一年間は重大災害が発生しなかった。会社によると、今年第1四半期の労災は一年前より32%減少した。同じ期間、金属労組現代重工業支部が別途に集計する事故性・非事故性の災害も、2022年第1四半期の45件から今年の第1四半期の37件に、17%減少した。

しかし下請け労働者の安全死角地帯は依然として残っていると指摘される。現代重工業支部の関係者は「(元請けの労働者が)作業中止権を行使すれば、その工程で働く下請け労働者を家に帰す。」「作業中止期間に(労働者に)不利益を与えてはならないのに、そのような問題がある。作業中止権に対する認識は(下請け労働者には)良くない」と指摘した。金属労組現代重工業社内下請け支会のユン・ヨンジン事務長は、「安全作業要求権の行使で仕事が中止され、仕事ができない時間は有給で保障されるべきだが、下請け労働者は無給」で、「現場では(作業中止を)要求しにくい状況」と話した。

「不安定雇用の蔓延、危険性評価の限界」
新設された随時評価、定期・常時評価を代替するか「さて」

造船業の人材難で多段階下請けが増えている状況での危険性評価の死角地帯にも言及された。ユン・ヨンジン事務長は「物量チームや一次下請け業者ではなく、外注業者から派遣される労働者は、物量チーム長や一次下請け業者の管理者が作業を指揮するが、危険性評価の死角地帯にある」と指摘した。常時雇用されて働く労働者ではない上に、雇い主が不明確なわけで、労使が周期的に一緒にしなければならない危険性評価には参加できないという意味だ。

22日に改正施行された事業場危険性評価に関する指針(告示)については憂慮を示した。改正告示によれば、月間・週間・日単位で安全活動を日常化すれば、毎年施行しなければならない定期評価と設備・物質新規導入、労災発生時に実施しなければならない随時評価をしなくても良くなったためだ。常時評価の場合、毎日作業前の安全点検会議を行い、週単位では、元・下請け合同安全点検会議、月単位では、労使合同巡回点検・事故分析・提案制度の実施によって評価をしなければならない。

現場の労働者は実効性に疑問を提する。支部の関係者は「ツールボックスミーティングというが、現場では、立って体操やストレッチを一回して作業に行く。」「作業時間(午前8時)前にしばらく集まってツールボックスミーティングを行い、8時の鐘が鳴れば現場に行くので、実効性がない」と指摘した。

下請け支会の認識も似ていた。ユン・ヨンジン事務長は「ツールボックスミーティングの時(現場管理者が)『気をつけてください』『安全に仕事をしてください』というのは普段からやってきたことで、現場労働者の意見が収斂されるのは難しい。危険性評価をそのようにしても効果があるのか」と反問した。彼は「常時評価の場合、月単位の労使合同点検をすることになっているが、やはり現場の意見が反映されるのは難しいのではないかと憂慮される」と付け加えた。

2023年5月31日 毎日労働ニュース カン・イェスル記者

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=215353