「危ないのでちょっと止めます」サムソン物産、『作業中止権』を2年間に5万件使用 2023年05月14日 韓国の労災・安全衛生

京畿道のあるサムソン物産の建設現場で、土木協力会社で働いていたA(63)さんは、地上で作業をしているときに、クレーンが大型建築資材を持ち上げる様子を見て、『作業中止権』を行使した。資材の落下による事故の危険があると判断したのだ。

Aさんが作業中止権を行使すると、管理者は直ちにAさんの作業場所を安全なところに移した。Aさんは「現場の作業者が大事にされているという感じがした。」「作業中止権は、万が一の事故の危険から自分自身を守る権利だという信頼を持つようになった」と話した。

作業中止権の利用を促す垂れ幕。 サムソン物産提供

サムソン物産は2021年3月、現場労働者の『作業中止権』を保障した後、2年間に113の現場で、合計5万2977件の作業中止権が行使されたと明らかにした。一日平均70件の水準だ。

産業安全保健法に規定された作業中止権は、急迫した危険があったり、重大災害が発生した時に、労働者が作業を中止させる権利だ。サムソン物産は3月からこれを拡大し、急迫した危険がなくても、勤労者が安全でない状況だと判断すれば、作業中止権を積極的に使えるように保障した。

サムソン物産がこの二年間の作業中止権の発動・措置事例を分析した結果によれば、衝突を心配した安全措置要求が全体の23.1%で、最も多かった。作業者の墜落や資材落下・挟まれに関する安全措置要求は、全体の40%と集計された。

サムソン物産の関係者は、「墜落・落下・挟まれは、建設現場の重大災害事故の主要な類型」とし、「勤労者の作業中止権の行使が、安全事故の事前防止に重要な役割をしていると思われる」と話した。

サムソン物産の危険タイプ別作業中止権の使用状況。/サムソン物産提供

サムソン物産は先月、現場労働者969人を対象に、作業中止権に関するアンケート調査も行った。これによれば、勤労者の半分以上(500人・52%)に作業中止権を使った経験があった。

作業中止権が現場の安全に役立つという回答は90%(871人)、作業中止権の使用を同僚に積極的に勧めるという回答は95%(921人)と、いずれも高かった。

サムソン物産は法に規定された産業安全保健管理費とは別に、現場所長に与える安全強化費を追加で編成し、2年間で約500億ウォンを執行した。また、安全で優秀な協力会社には入札参加機会を優先的に付与し、協力会社の安全管理費を100%先払いして、工事の初期から使えるようにした。

サムソン物産のアン・ビョンチョル安全保健室長(CSO=最高安全保健責任者)は「勤労者と協力会社の自律的な安全管理の力量改善活動が、建設業界全般に拡がるように、専門要員と技術を継続的に支援していく計画」と話した。

2023年5月14日 京郷新聞 シム・ユンジ記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202305141045001