脆弱労働者に不利な労災保険、先保障を導入すべき 2023年2月28日 韓国の労災・安全衛生
現行の労災保険制度が労働者に不利で、隠蔽の可能性も大きく、改善が必要だという主張だ。主治医が来訪患者の職業歴の義務調査を実施し、労災を認知すれば労災申請を開始するようにする、先保障制度の導入が必要だという指摘だ。
民主労総法律院付設の労働者権利研究所は『被災労働者の観点から見た労災保険の問題点と先保障制度導入の必要性』イシューブリーフを発刊し、このように主張した。
制度を知らなかったり、申請意志の不足で労災が隠蔽され
当事者申請を前提とする制度の骨組み上、労災隠蔽の憂慮が依然として存在するという指摘だ。労働者が会社に通えないほど大きな病気に罹っても、不利益が心配で労災申請ができない事情があるということだ。実際、2021年のある研究によると、労災隠蔽率が66.6%に達した。
それだけではない。労災補償制度を正しく知らなかったり、労災申請の意志がなければ申請が難しかった。報告書を作成した労働者権利研究所のイ・ジョンラン常任研究委員は、「半導体工場で使用する洗浄剤など、化学物質を製造する下請け業者の労働者が白血病に罹ったが、被災者が労災申請を敬遠した」とし、「業者の社長が優しくしてくれて、病院の費用を少し足してくれたことに感謝の気持ちを抱いて、ついに労災を申請しなかった」と話した。
また別の研究でも、当事者申請を前提とした労災保険の限界を指摘した。昨年、勤労福祉公団のキム・ヨンミ勤労福祉研究員は論文で、「申請主義に基づいており、被災労働者の保護に限界がある。」「労災申請をしなかった被災勤労者に対する保護の死角地帯を解消して補償を提供するために、職権主義的な要素を反映する必要がある」と指摘した。
現行の産災補償制度は労働者に不利な構造だという説明だ。イ・ジョンラン常任研究委員は、「職業病を立証するのは容易ではないので、法律代理人を選任し、試験を通過するように審議、判定を経て、労災が認められる。」「このように、立証能力によって労災認定の可否を決めるのは、社会的弱者をより一層排除する」と批判した。移住労働者や非正規職のような脆弱階層の労働者により一層苛酷だということだ。
特に立証責任を労働者に課している問題が大きい。最高裁は労災補償制度で、業務と災害の相当因果関係の証明責任を原則として労働者に課している。憲法裁判所も、保険財政の健全性維持のために、労災の立証責任を労働者に課すのが合理的だと判断した。その後、最高裁の判決は多少緩和する傾向はあるが、依然として労働者に立証責任を負わせる原則には変化がない。
健康保険の先保障制度、制度の弱点を解消できず
この他にも、労災処理に歳月がかかる点も問題だ。イ・ジョンラン常任研究委員は、「業務上の事故は平均15~18日なのに対し、業務上の疾病(職業病)は2021年基準で、平均113~334.5日」とし、「迅速な処理は、労災補償保険法1条の目的事項で定義するほど基本的で重要な原則であるにも拘わらず、実際の所要時間は迅速性とはほど遠い」と批判した。
代案は労災保険の優先適用制度だ。既に2000年代の序盤から、労働界は労災保険の「先保障後承認」制度の導入を要求してきた。労災の承認前に優先治療をし、以後に保障する方式だ。2006年から、健康保険によって先に治療し、承認後に労災保険に求償する方式で運用されている。しかし、このような方式では、依然として処理の遅延と労働者の立証責任、申請主義に伴う労災隠蔽といった問題を改善できていない。
これに対して、最近では労働者が医療機関を訪問して、主治医が業務上災害を認識すれば、自動的に労災保険給付制度を開始できるようにする方式も提案された。
イ・ジョンラン常任研究委員は、「但し、このような場合でも、業務上の疾病を主治医が迅速に認識することは容易ではないので、患者の職業歴の義務調査を実施し、必要であれば、職業環境医学科と協力して先保障が可能だろう」と付け加えた。
2023年2月28日 毎日労働ニュース イ・ジェ記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=213712