機械が余りに速く回り「非常スイッチ」、危険時の作業中止権行使に対して、会社が8980万損賠請求 2022年8月26日 韓国の労災・安全衛生

金属労組韓国タイヤ支会が先月1日、大田工場の前で記者会見を行い、6月の工場作業中止の背景を説明している。/韓国タイヤ支会提供

韓国タイヤが、工場設備の安全措置が不十分だとして機械の稼動を中止させた金属労組韓国タイヤ支会の支会長と幹部2人に、8980万ウォンの損害賠償請求訴訟を起こした。

ハンギョレの取材を総合すると、韓国タイヤのキム・ヨンソン支会長は、6月19日の朝5時40分頃、大田工場でトラック用のゴムタイヤを成形する回転体の機械2台の安全センサーが作動していないとして、機械の非常スイッチを押して生産ラインを停止させた。製品の生産ラインは約10時間後の午後3時30分頃に再開された。労組の説明によれば、2020年11月にも、同じ種類の機械のセンサー故障で、労働者の身体が巻き込まれて、結局死亡した事故があった。キム・ヨンソン支会長は「高速で回転する機械なので、人が近づくと自然に止まらなければならないのに、その機械は普段よりもっと速く回転し、防護機能も正しく作動しなかった」、「会社に安全措置を執って欲しいと思って非常スイッチを押したのに、1年の年俸を遙かに越える請求額が書かれた訴状を受け取って、当惑している」と話した。

韓国タイヤは、機械に特別な異常がなかったにも拘わらず、労組が無理に作業を中止させたという考えだ。会社の関係者は<ハンギョレ>の取材に、「労組が、センサー機能の故障でもないのに、『機械の回転速度が速い』という理由で非常スイッチを押したものと理解している」とし、「生産への打撃が大きいわけではなく、(損害は)今後の残業などで埋められることもあるが、不必要な費用を伴うこともあり、(損害賠償を)請求した」と説明した。会社は訴訟提起の以前には、3億ウォン台の損害を被ったと主張していた。

産業安全保健法により、労働者は労災が発生する急迫した危険がある時、作業を中止して待避できる『作業中止権』を持つ。しかし、会社が作業の中断による損害賠償訴訟を起こす可能性があり、事実上、使われていない。現代自動車は15年以降、労組に対して、作業中止による損害賠償訴訟を7件を起こしているが、そのうち5件(訴訟取り下げ2件、現在裁判中1件)は、現代車の勝訴が確定している。

会社側が労組を相手に起こす巨額の損害賠償訴訟は、それ自体が労働者を精神的に圧迫する道具だ。国と双龍自動車が、2009年の整理解雇に反対する玉砕ストライキを闘った金属労組・双龍自動車支部に対して起こした損害賠償訴訟は、13年が過ぎた今も決着がつかないまま最高裁に係留されている。双龍自動車支部の組合員たちは、近い内に、損害賠償訴訟による集団トラウマの診断記録を最高裁に提出する予定だ。

2022年8月26日 ハンギョレ新聞 シン・ダウン記者

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1056371.html