職場内いじめ禁止法3年、依然として半分は「傘の外」にいる 2022年7月15日 韓国の労災・安全衛生

tvNドラマ「未生」のワンシーン。上司が職員たちを苦しめている。/ドラマ画面キャプチャー

「おい、○○○。お前、おかしくなったのか?」

平凡な6月のある休日だった。会社員のA氏に、上司がいきなり罵声を浴びせ始めた。上司の業務に関するメッセージに、A氏が「業務指示は業務時間内に送って欲しい」と要請すると、返ってきた反応だ。10分近く続いた罵声にA氏は大きな衝撃を受け、出勤できずにいる。明らかな『職場内いじめ』だが、A氏は申告できなかった。A氏の職場が勤労基準法の適用を受けない『5人未満の事業場』だからだ。「これ以上一緒に働けそうにないけど・・・・。申告さえできないんですか。」

『職場内いじめ禁止法(勤労基準法第76の2、3)』が16日で施行3年を迎える。法が広く知らされ、現場ではいじめが減り、通報も活発に行われているという。しかし勤労基準法の適用除外対象である5人未満の事業場の労働者、プラットフォーム・特殊雇用・フリーランサーの労働者にとって、この法は依然として『別の世界の話』だ。それらは賃金労働者全体の半分近い比率を占める。勤労基準法は雨宿りの『傘』とよく比喩されるが、仕事をする人の半分ほどは、未だ傘の外で雨にそのまま当たっているということだ。

「いじめはダメです。『不法』ですから」の認識が最大の成果

雇用労働部の『職場内いじめ申告事件現況』によれば、職場内いじめ禁止法施行の3年間で地方雇用労働官署に届けられるいじめの申告は毎年増加している。申告件数は先月は1万8906件だが、法が施行された2019年(7月16日から)は2130件、2020年は5823件、2021年は7745件、2022年(6月30日まで)は3208件と増加傾向にある。業種別では、製造業(18.0%)と保健社会福祉サービス業(15.9%)からの申告が多かった。いじめの類型は暴言(34.6%)と不当人事(14.6%)が多かった。

申告が増えたのはいじめが増えたからではなく、『いじめは不法』という認識が定着した結果だと専門家たちは見ている。2019年から職場のパワハラの四半期別の定期調査をしてきた市民団体『職場の甲質119』のパク・ジョムギュ運営委員は、「法制化されたということは非常に重要な意味がある。法が制定される前は、不当な目にあっても申告さえできなかったが、今はいじめが不当だと考え、申告に繋がる」と話した。

京郷新聞イラスト

職場の甲質119がこの日発表した調査結果によれば、法が施行されているという事実を『知っている』という応答は、2019年の33.4%から2022年の71.9%に、2倍以上に増えた。雇用労働部の今年の『職場内いじめ禁止制度実態調査』でも、会社員は、法の施行で最高経営者の意志と関心が向上(73.8%)、社内関連制度の強化(64.5%)等の効果があったと答えた。  法が知らされて、現場でのいじめが減ったという反応も出ている。職場の甲質119の調査の結果、『職場内いじめを経験した』という応答は、2019年の44.5%から2022年の29.6%に、14.9%減った。『職場内いじめが減った』という応答は、2019年の31.9%から2022年の60.4%に増えた。予防教育を受けたという回答も、2019年の31.2%から2022年の54.3%に向上した。

『みんなの傘』になるには・・・・

申告者の保護などの措置がきちんとされていないことは課題だ。職場の甲質119に情報提供した会社員のB氏は、職場内いじめを申告して認められ、加害者は譴責処分を受けたが、B氏は却って悪意のうわさといじめなどの二次被害に苦しめられた。成果評価も「0点」だった。B氏は労働庁に不利な処遇を申告したが、労働庁からは真相調査どころか、6ヵ月以上、何の連絡もなかったと話した。

勤労基準法上、申告後の放置は最高500万ウォンの過怠金に、申告を理由にした不利な措置は最高で懲役3年または3000万ウォンの罰金に処せられる。しかし職場の甲質119が、身元が確認された職場内いじめの情報提供の内、80.6%が申告後に放置(調査・措置義務違反)を経験したと明らかにした。42.3%は申告を理由に不利な処遇などで報復されたと調査された。職場の甲質119は「法は遠く、拳は近いのに、政府は対岸の火事として見物している」と話した。

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何よりもA氏のような『傘の外の労働者』たちが、依然として死角地帯に留まっているということが最も大きな問題に挙げられる。統計庁・雇用労働部の統計などを総合して見ると、5人未満の事業場の労働者は約380万人、プラットフォーム・特殊雇用・フリーランサーの労働者は約700万人だ。非正規職と派遣、移住労働者まで含めると、賃金労働者全体の半分近くが勤労基準法上の労働者ではないという理由で、職場内いじめ禁止法の適用対象ではない。『予防教育を受けたことがある』という応答も、非正規職は24.3%、5人未満事業場の労働者は19.1%に止まった。

職場の甲質119代表のクォン・トゥソプ弁護士は「5人未満の事業場という理由で、いじめに遭いながら仕事をしても大丈夫なわけはないだろう」、「法律の規定には、その適用自体が持つ予防効果がある。死角地帯を解消するための法改正に、国会と政府が積極的に取り組むべきだ」と話した。

認識の改善もまだまだ先は長い。雇用労働部は「制度の導入以後、使用者と社会的に、根絶の雰囲気が次第に拡がってはいるが、具体的には、会社構成員の間での認識差がもう少し減って、共感が形成される必要がある」とし、「職場内いじめで物議をかもした事業場に対しては、職権調査や監督など、法と原則によって厳重に対処する計画」と明らかにした。

2022年7月15日 京郷新聞 チョ・ヘラム記者

https://www.khan.co.kr/national/labor/article/202207151337001