最高裁、「下請け労働者の感電死」で韓電に「(元)請負人」の責任 2022年4月8日 韓国の労災・安全衛生
最高裁判所が、韓国電力公社(韓電)は、下請け業者の労働者の感電事故の責任に関し、安全措置義務が課せられた『請負人』だと判決した。韓電が産業安全保健法上の『請負事業主』であるにも拘わらず、安全保健措置義務を果たしていないと釘を刺した。
今回の判決によって、『請負人』ではなく『発注者』だという韓電の主張は力を失うものと予想される。韓電は昨年11月に起きた韓電の下請け会社の労働者・故キム・ダウンさんの感電事故に関しても『建設工事発注者』と主張している。
韓電に罰金700万ウォン、本部長に執行猶予が確定
最高裁は『請負事業主』に数回言及
7日、「毎日労働ニュース」の取材によると、最高裁判所二部は先月31日、下請け労働者の感電死に関連して、業務上過失致死と産業安全保健法違反で起訴された元・忠清北道本部長のパク・某被告に、懲役10月、執行猶予2年を言い渡した原審を確定した。両罰規定で一緒に裁判に付された法人の韓電にも、罰金700万ウォンが確定した。
最高裁は、韓電が直接工事を行わず、事業の進行過程を管理・監督しただけでも、旧産業安全保健法で定めた『請負事業主』に該当すると判示した。昨年1月16日に全面改正される前の産業安全保健法(29条1項)は、同じ場所で行われる事業で、専門分野の工事として施工される場合、各専門分野に属する工事の全部を請け負っていれば、事業主に労災予防措置の義務がある、と定めている。
最高裁は判決で『請負事業主』に数回言及した。先ず、当該条項の解釈を具体的に判示した。『専門分野の工事』については、建設産業基本法上の『専門工事』に限定するのではなく、専門性が求められる分野の工事を意味すると、幅広く解釈した。
『事業の場所』も時間的な同一性までは必要ないと判断した。裁判所は、事業主が工事の全てを分野別に分けて下請け会社に請け負わせ、自らは直接工事を行わず、事業全体の進行過程を総括して調整していたとすれば、『同じ場所で行われた事業』と判示した。
これを前提に「韓電を産業安全保健法で定めた請負事業主に該当するとみて、被告人の産業安全保健法違反をすべて有罪と判断したのは正当だ」と強調した。裁判所は、韓電の元・忠北本部長のパク被告が、事前に感電事故予防のための防護官の配置が正しく行われているかどうかを点検しないなど、災害予防措置を執らなかったと説明した。作業計画書の不作成と、現場に職員を配置しないなど、安全保健措置義務を果たしていないとした原審の判決に、誤りはないと判断した。韓電も安全保健総括責任者を指定せず、安全管理義務を果たしていなかったと指摘した。
支障鉄塔の移設工事を分離しても請負人に該当
『うり二つ』なキム・ダウンさん事件が影響を与える見通し
今回の事件は、全面改正産業安全保健法が施行される以前に発生したもので、韓電の刑事責任に関心が集まった。産業安全保健法第2条は、『建設工事の発注者』は請負人から除外する、と定めているからだ。発注者は1000万ウォン以下の罰金を除いて懲役刑の処罰規定はない。
韓電の下請け会社のA社に所属する労働者Bさんは、2017年11月28日、電流が流れている電線の近くの約14メートルの高さで作業中に高圧電流に感電し、1時間後にショックで死亡した。当時、韓電の忠北地域本部は『支障鉄塔の移設工事』をA社に任せていた。調査の結果、Bさんは絶縁用保護具と装備を支給されないままで作業をしていたことが分かった。また、『接近限界距離』も守られず、22.9キロボルトの電流が流れる配電線路の付近で作業をしていて感電した。
下級審はいずれも、韓電が支障鉄塔の移設工事を分離して請け負わせた『請負事業主』に当たると判断した。特に、韓電が請負事業主の地位にあると考えず、別途に安全保健総括責任者を選定しなかったために安全措置を執らなかった点に、『未必の故意』があるとみている。
今回の事件は、全面改正産業安全保健法の施行前でも、請負人の地位を認めたことに意味があるというのが、法曹界の大方の観方だ。クォン・ヨングク弁護士は、「専門公社、請負事業主、同じ場所に関する解釈で、実質的に作業を支配・管理する請負事業主に安全措置義務を認めた判決」と話した。パク・ダヘ弁護士は、「最高裁は、請負人の責任範囲が拡大する前の旧産業安全保健法でも、韓電が請負人の地位で責任を負担すると判断した」とし、「請負人の責任が拡大・強化された改正法が適用された事件には、韓電に請負人として安全措置義務があると判断される余地が大きい」と説明した。
今回の判決は、安全措置なしで一人で電気の連結作業をしていて、高圧電流に感電して死亡したキム・ダウンさんの事件にも、影響を与えるものとみられる。雇用労働部は、韓電が請負人に当たる可能性があるとみて、産業安全保健法違反の疑いで立件し、捜査を進めている状態だ。労働部の関係者は、「未だ起訴するかどうかは決まっていない」と話した。
2022年4月8日 毎日労働ニュース ホン・ジュンピョ記者
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