労働者安全闘争の月を宣言した民主労総「作業中止権を保障せよ」 2022年4月5日 韓国の労災・安全衛生
民主労総は5日、職場で繰り返される死を防止するため、危険な作業を拒否できる労働者の作業中止権を実質的に保障しなければならないと追求した。
現行の産業安全保健法(産安法)は、「労働者は、産業災害が発生する緊急事態が発生した場合、作業を中止して避難できる」と規定しているが、実際の現場では、作業中止権の行使に大きな困難を強いられているという証言も出た。
民主労総は同日、大統領職引継ぎ委員会の事務室前で「4月労働者健康権争取闘争の月宣布記者会見」を行い、このように主張した。民主労総は、世界労災死亡労働者追悼の日(28日)がある毎年の4月を「労働者健康権争取闘争の月」と定め、関連する闘いを行っている。
民主労総の梁慶洙(ヤン・ギョンス)委員長は、「危険に直面した労働者は、直ちに生産設備を止め、作業を止めなければならない。そうしなければ、より大きな事故を、より大きな犠牲を防ぐことはできない」とし、「労働者に与えられた作業中止権は、労働者が自らの生命を守る武器になるだろう」と話した。
金属労組のキム・ドンソン副委員長は、重大災害が頻繁に発生する造船所と製鉄所の実態を話した。造船所と製鉄所では、今年1月に2件の重大災害が発生したのに続き、先月にも2件の重大災害が発生した。先週末も一人の労働者が重大災害で命を失った。
「このように、過去に発生した重大災害と同じタイプの重大災害が絶えず発生する理由は、労働者が働く作業環境が根本的に変わっていないため」で、「使用者は依然として産安法を守っておらず、随所に危険要素が潜んでいる現場での作業中止権は、労働者が自ら生命を守ることができる最後の手段にならざるを得ない」と話した。
「全面改正された産安法によって労働者の作業中止権が強化されたというが、労働者の作業中止権には、現実には、依然として高い壁が存在する」と指摘した。
産安法は2019年に全面改正され、労働者の作業中止権を以前よりも明確に保障した。しかし、作業中止の要件である「差し迫った危険」などの表現が曖昧で、事業主が労働者の作業中止を理由に不利益を与えた場合には処罰するという内容が含まれず、大きな限界を残していた。
キム・ドンソン副委員長は「労組に加入したという理由だけで、そして会社の過ちを雇用労働部に陳情したという理由だけで弾圧される非正規労働者に、作業中止権の行使はほとんど不可能に近い」とし、「早急に労働者の作業中止権を保障すべきだ」と主張した。
労働者たちは、△労働者が危険を感知したときは、誰でも、直ちに作業中止権を発動できるように、基準と手続きを作り、△使用者が、作業中止権を行使した労働者に不利益を与えた場合、使用者を処罰できる規定を作り、△作業中止による損失補填の責任は元請けにあることを明文化する方向での法改正を要求した。
同日の記者会見には、各産業別労組の代表者らが参加して労働現場の実態を知らせ、安全な職場を作るための対策を要求した。
労災死亡者の半分を占めるほど危険な環境に常時曝されている建設労働者たちは、「建設安全特別法の制定」と「産業団地の老朽設備の安全管理特別法の制定」を要求した。
建設産業連盟のカン・ハンス労働安全保健委員長は、コンクリートの下敷きになり、高い所で作業していて落ちた同僚の労働者について、「しっかりと費用を掛けて、安定して働けるように、無理な工事をするのではなく、きちんとした工事期間を保障するように、建設安全特別法を制定すべきだ」と話した。
また、「国家産業団地をはじめ、全国の数多くの産業団地で、落ちて、窒息して、多くの労働者が死んでいる」、「現場で爆発事故が一度起きると、まさに体の形すらまともに残らずに死んでいく。そのような事故を防ごうとすれば、『産業団地の老朽設備の安全管理特別法』を制定しなければならない」と主張した。統計的に、数十年経った老朽化した産業団地に重大災害が集中しているため、老朽化した設備に対する政府の管理・監督権を強化する内容の特別法を制定すべきだという要求だ。
化学繊維食品産業の労働者たちもこの特別法の制定を要求している。化繊食品労組のシン・ファンソプ委員長は、「20年以上経った国家産業団地で226人の死傷者が出ており、40年以上の老朽化した産業団地では65人が出たということは、結局、老朽化した設備がどれほど我々に危険であるかを裏付けている」と指摘した。
鉄道労組のイ・ジョンミン機関士は、トイレすら思い通りに行けない非人間的な労働環境を告発し、関連する制度の改善を要求した。
「最近、韓国の機関士たちは『トイレに行く権利キャンペーン』を展開している」、「便意を我慢できず、停車時間の20秒、30秒の間に運転室の床に新聞紙を敷いて解消している状況だ。乗客が見ているかいないか、私たちには気にする余裕がない」と話した。
また「後ろから2分おきに列車が追いかけてきていて、管理者が早く行けと催促するからだ」、「なんとか生理現象は解決されても、自己嫌悪感が迫ってくる」と吐露した。
イ・ジョンミン機関士は「07年には運転室で用便をしている途中に墜落して死亡する事故まで発生した」、「鉄道・地下鉄従事者の疲労による危険を管理する義務を導入し、勤務時間を縮小し、十分な休養時間を保障すべきだ」と追求した。
「尹錫悦当選者、重大災害の根本的な対策を出さねば」
保健医療労組のパク・スボン首席副委員長は、コロナ19の陽性者の爆発によって過負荷となった医療現場の現実を伝えた。特に、三波のコロナ流行状況で、コロナ19の陽性が確認された医療スタッフのうち、無症状または軽症の場合、わずか三日間だけ隔離した後、現場に復帰するようにさせた政府の指針の改正を要求した。 「政府は防疫緩和措置だけ出し、医療人材に対する保護措置と増員措置は執っていない」、「医療人材のマヒ状態を防止するための支援対策が必要だ。陽性とされた医療スタッフもきちんと治療を受けられるように、指針を全面的に改正すべきだ」と話した。
配達労働者たちは、現行法の限界で産業災害を認められなかった労働者の立場と、これを悪用して最小限の安全にも責任を負わない配達プラットフォーム企業に対する規制の必要性を主張した。現行の労災保険は、月所得115万ウォン、月従事時間93時間以上という基準を満たさなければ労災保険の適用は難しいが、臨時や短時間勤務の配達労働者の特性と合わないという指摘が絶えず出ている。
サービス一般労組配達プラットフォーム支部のホン・ヒョンドク事務局長は、「プラットフォーム会社は、いつでも希望する時間に、そして必要な金のために配達ができると広報しているが、その中にはプラットフォーム企業の責任は存在しない。人は募集するが、安全には責任を負っていない」、「労災保険の専属性基準を廃止し、たった1件でも報酬をもらって働いたら、労災保険を適用すべきだ」と話した。
続けて「配達労働者を自営業者に分類する現行法を利用して、最小限の安全にも責任を負わない配達プラットフォーム会社を規制する政策をまとめて欲しい」と付け加えた。
民主労総は合わせて、来月から任期が始まる尹錫悦大統領当選者に、労災事故を防止するという明確な意志を示すべきだと注文した。
「新政府は、重大災害が絶えないにも拘わらず、安全保健管理体系の構築どころか、規制緩和を叫んでいる。大型法律事務所の支援で処罰を回避するための小細工対策ばかりに没頭する企業に対して、重大災害は企業の組織的な犯罪であり、責任者をきちんと処罰するという立場を明確にすべきだ」とし、「重大災害の根本的な対策作りを求める全社会的な要求に応えなければならない」と話した。
一方、民主労総は4月の一ヵ月間、労働者の健康権獲得の組織的な闘いを続ける予定だ。各地域と事業所で関連の教育と記者会見、討論会を続け、「世界労災死亡労働者追悼の日」の28日には、労働者健康権獲得闘争の月の集中集会を行う。
世界労災死亡労働者追悼の日は、1993年、世界的に有名なアニメーションキャラクター「シンプソン家族」の人形を生産するタイの工場で起きた火災で死亡した労働者を追悼するロウソクから始まった。当時、会社は労働者が人形を盗むかもしれないと、外から工場の扉を閉め、労働者たちは火災現場から逃げ出すことができなかった。この事故で、全世界の労組は先進国の子供のための玩具を作る過程に、発展途上国の労働者の死が埋まっていることに気付き、追悼の日を制定した
2022年4月5日 民衆の声 ナム・ソヨン記者