2021年アジア・アスベスト禁止ネットワーク会議共同決議 2021年9月28~30日
世界中のほぼすべての国に影響を及ぼしているCOVID-19パンデミックは、世界秩序の構造に複数の弱点があることを明らかにした。突然のパンデミックの猛威は、すべての大陸の諸国のガバナンスを揺るがし、経済、社会、人道政策の断層を露呈している。
地政学的な結果として常態化していた不平等、不公正、搾取が、世界的な対応に支障をきたした。このような緊急事態に直面して、市民の命か既得権益の繫栄か、政策決定者らは選択を迫られた。
アジア・アスベスト禁止ネットワーク(ABAN)のメンバー、サポーターである労働組合、団体、個人、被害者ネットワーク、医師や科学者として、われわれは、人の命を救うことこそが人類の最優先課題であると考える。それは、どの大陸のどの国であっても、まさに目的でなければならない。
アスベストハザードとCOVID-19
いまなお多くの国で消費され続けているアスベストは、いつか致死的な結果をもって破裂する可能性のある時限爆弾である。アスベスト関連疾患に罹患した人々がコロナウイルスから回復する能力は、彼らの置かれた状況によって深刻な危険にさらされている。あまりに多くの国が被害者の命を優先せず、あるいはこれ以上の有害な曝露を止めるための行動をとらないなかで、何もせずに黙って待っていることはできない。パンデミックは、アスベスト被害者を置き去りにしたり、アスベストの採掘・製造が生活の手段として残されている地域社会全体への恐ろしい影響を放置することを含め、多くの残酷な不正義を露呈している。生じているアスベストによる死は完全に回避可能であり、有害なアスベスト技術の段階的禁止は労働者だけでなく、一般の人々も守ることができる。すべての命が尊い。
行動の呼びかけ
ABANのすべてのメンバーの目的は、すべての国ですべての人々をアスベストの危険性から守ることである。この目的を達成するために、われわれは国際社会に対して、アスベストの取引をやめさせるために一致協力することを呼びかける。アジアの政府・企業は、パンデミック後の世界には、既知の発がん物質、アスベストに基づいた技術に居場所はないことを受け入れなければならない。
世界中で毎年何十万もの人々がアスベストによって死亡していることを深く悲しみつつ、われわれは、その悲しみと、全人類のためにアスベストのない未来を創る決意によって団結する。
われわれ、アジア・アスベスト禁止ネットワークのメンバー、サポーターは、ここに以下を宣言する。
・すべての種類のアスベストは人命にかかわる危険なものである。この理由からわれわれは、各国政府がアスベストの使用を禁止することによって生命を守るようになるために精力的に尽力する。
・アスベストの取引を速やかにやめさせなければならない。われわれは、国連ロッテルダム条約の事前の情報提供に基づく同意手続の対象物質のリストにアスベストを追加することの重要性を強調し続ける。これを実現するためには、アスベスト産業関係者によって強いられている現在の行き詰まりを解決する、世界的ネットワークの協力が必要である。
・アジア・太平洋全体でアスベストの国家的禁止が緊急の課題である。アスベスト産業の短期的な利益のために、大きな経済的・環境的費用もともなった、大規模な人々の悲劇と損失が続くことを許してはならない。アスベストは、ここにも、どこにも、あってはならない。
・アスベスト製造部門はアスベスト繊維を持続可能で安全な代替品に速やかに置き換えなければならない。すでにアスベストを禁止している諸国で示されてきたように、アスベストフリー製品は存在している。国の経済の重要な推進力である企業は、株主だけではなく、労働者、消費者、社会に対する責任も認識しなければならない。
・アスベスト関連疾患の経済的負担は個々人や社会に転嫁されてはならず、過失のある使用者とそれに加担した政府が負担しなければならない。アスベスト関連疾患の被害者は鉱業から製造業まで、さまざまな産業部門で働き、また、アスベスト作業を行ったことはないが、鉱山・工業や建設現場から飛散したアスベストに環境曝露した多くの被害者もいる。
・既存の基本的権利である、結社の自由、団体交渉、差別、強制労働や児童労働からの保護とならんで、労働安全衛生が国際労働機関(ILO)によって、基本的権利として認められなければならない。われわれは、これに関する決定が2022年6月のILO総会でなされるものと信じている。
・国連のビジネスと人権に関する指導原則のもとで、インクルーシブで持続可能なビジネス実施モデルは、誰も置き去りにせず、社会の恵まれない人々の人権に特別の配慮をしている。国の行動計画は、すべての関係者が安全でインクルーシブな労働条件の確保に責任を負わせている。われわれは、倫理的なビジネスを促進するための措置を講じることによって、すべての国がこのモデルに従うことを支持する。
・アジア・アスベスト禁止ネットワークのメンバーは、連帯と国際協力を通じてよりよい世界を構築するというコミットメントを再確認する。アスベスト使用の中止が優先事項ではあるが、国のインフラと環境の有害なアスベスト汚染を根絶させることが長期的な課題として残っている。それも成し遂げたときにはじめて、未来の世代がアスベストの危険性から安全になることができる。
過去アスベスト関連疾患の犠牲となった何百万もの人々を偲び、また、アジア太平洋及び世界でアスベストのない未来のために活動するすべての人々を代表して、われわれは、勝利するまで、世界的なアスベスト禁止を達成する努力を続けることを誓うものである。
日本・石綿対策全国連絡会議(BANJAN)
韓国・全国石綿追放運動ネットワーク(BANKO)
インドネシア・アスベスト禁止ネットワーク(InaBAN)
ベトナム・アスベスト関連疾患根絶グループ(BEDRA)
ラオス・アスベスト禁止ネットワーク(Lao-BAN)
カンボジア・アスベスト禁止ネットワーク(CamBAN)
バングラデシュ・アスベスト禁止ネットワーク(BBAN)
インド・アスベスト禁止ネットワーク(IBAN)
香港・工業傷亡権益会(ARIAV)
台湾・OSHリンク
フィリピン・ALU-TUCP
マレーシア・安全衛生助言センター(HASAC)
ネパール・公衆衛生環境開発センター(CEPHED)
アスベスト禁止国際書記局(IBAS)
アジア・モニター・リソースセンター(AMRC)
オーストラリア・ユニオンエイドアブロード(APHEDA)
国際建設林業労連(BWI)
オーストラリア労働組合評議会(ACTU)
ソリダー・スイス
(安全センター情報2022年4月号)