【情報公開】2021年3月30日付け基補発0330第1号「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」
2022年1月19日に東京新聞は、「過労死の『見かけ上の減少を優先』労働時間の過小認定が続出 厚労省の基準厳格化で弁護団が指摘」、「仮眠や持ち帰り残業が『労働時間』に加算されない? 厚労省が基準厳格化、労災の認定後退の恐れ」と報じた。
情報開示請求によって入手した、問題を指摘されている2021年3月30日付け基補発0330第1号「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」を紹介する。
10年保存/機密性2 令和3年3月30日から令和13年3月31日まで
基補発0330第1号
令和3年3月30日
都道府県労働局労働基準部
労災補償課長殿
厚生労働省労働基準局補償課長
労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について
過労死等に係る労災請求件数が過去最多を更新する中、過労死等をめぐる国民の関心は高く、とりわけ過労死等の発生の防止強化に対する社会的要請が強まっている。こうした中、労災補償行政においては、過労死等の労災請求事案に引き続き迅速・適切に対応していく必要がある。
過労死等事案については、複雑で調査が困難なものが多いことから、その処理に当たっては、基本的な事項を踏まえ、様々な事案に応じて、所要の調査を的確かつ効率的に行っていく必要があるが、その際、脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定基準における業務による負荷要因である労働時間について、基本的な考え方等を正しく理解した上で、これを適切に把握することが特に重要である。
また、労働時間の把握に当たっては、監督担当部署と必要な連携をしつつ、労災認定基準に基づき被災労働者及びその遺族への早期救済を的確に行うという労災補償制度の目的の下、労災担当部署として、業務負荷の最も重要な要因である労働時間を適切に認定する必要がある。
このため、今般、別添のとおり、「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」を作成したので、脳・心臓疾患及び精神障害事案の労災認定に活用し、今後、一層適切な労働時間の認定に努められたい。
なお、本件については、労働基準局監督課とあらかじめ協議済みであることを申し添える。
別添
労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集
(令和3年3月 厚生労働省労働基準局補償課)
目次
- 1 労働時間の認定に係る質疑応答
- 問1 労働時間の調査・認定に当たっての留意点はあるか。
- 問2 所定始業時刻より前の時刻にタイムカードを打刻しているが、タイムカードを打刻した時刻から労働時間に該当するか。
- 問3 自己申告をした終業時刻からかい離した時刻に事業場を退社した記録があるが、どちらの時間を終業時刻と評価すればよいか。
- 問4 所定労働時間外に行われる研修や教育訓練は労働時間に該当するか。
- 問5 いわゆる手待時間は労働時間に該当するか。
- 問6 請求人が、休憩中も電話が鳴れば対応しなければならなかったと主張しているが、このような休憩の場合、労働時間に該当するか。
- 問7 警備員等の仮眠時間は労働時間に該当するか。
- 問8 裁量労働制(※1)や事業場外労働に関するみなし労働時間制(※2)を採用している場合、労災認定実務において(1)労働時間はどのように評価するのか。(2)給付基礎日額はどのように算定するのか。
- 問9 移動時間は労働時間に該当するか。
- 問10 出張先の宿泊施設で行った作業は労働時間に該当するか。
- 問11 いわゆる持ち帰り残業は労働時間に該当するか。
- 問12 自宅で行うテレワーク(※)は労働時間に該当するか。
- 問13 労働時間外に緊急事態が起きた時のために携帯電話を持ち、緊急時には対応を行う電話当番が決められているが、当該電話当番中の時間は労働時間に該当するか。
- 問14 所定の勤務が終了した後に行う宿直(※)勤務はどのように評価するのか。
- 参考事例集
- 事例1 トレーラー運転手【脳・心臓疾患事案:業務上】客観的記録がない時間の評価・休憩と手待時間
- 事例2 広域ルート営業【脳・心臓疾患事案:業務上】移動時間・持ち帰り残業・事業場外のみなし労働時間制
- 事例3 建設現場施工管理者【脳・心臓疾患事案:業務上】労働時間管理不適正・所定終業時刻後の労働・事業場作成労働時間集計表の活用
- 事例4 美容師【精神障害事案:業務上】休憩と手待時間・教育訓練等の時間
- 事例5 ウェブデザイナー【精神障害事案:業務上】朝礼の時間・休憩・休日労働・持ち帰り残業
- 事例6 医師【精神障害事案:業務上】労働時間管理不適正・所定労働時間を特定・所定始業時刻前の労働・所定終業時刻後の労働・休憩・休日労働・宿直勤務
- 事例7 IT技術者【精神障害事案:業務上】所定始業時刻前の労働・休憩・緊急時対応のための電話当番・移動時間・指定時刻に自宅で行う作業・テレワーク
- 参考資料
1 労働時間の認定に係る質疑応答
問1 労働時間の調査・認定に当たっての留意点はあるか。
(答)
(1)労働時間の認定に係る基本的対応について
労災認定における労働時間は労働基準法第32条で定める労働時間と同義であることを踏まえ、被災労働者の業務における過重性などの負荷の評価の観点から、労災部署において労働時間を適切に評価する必要がある。その上で、被災労働者の労働時間の具体的な認定に当たっては、使用者の指揮命令下にあると認められる時間を適切に把握することが重要である。
このため、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、請求人(被災労働者又はその遺族等労災保険給付等の請求を行っている者をいう。以下同じ。)及び使用者、上司、同僚、部下等の関係者(以下「事業場関係者」という。)からの聴取等を行い、これらを踏まえて事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に把握した上で、被災労働者が実際に労働していると合理的に認められる時間を適切に認定すること。
また、請求人への聴取等については、原則として事業場から収集した労働時間関係資料や就業規則等の労務関係資料の内容を事前に確認した上で実施すること。請求人への聴取等では、事業場における被災労働者の始業・終業時刻、所定労働時間、休憩、休日、適用される労働時間制度等を確認するほか、事業場が被災労働者の労働時間を適正に把握していたのかを確認すること。
なお、請求人への聴取等は、原則として実施することとするが、事案の内容に応じて、電話録取等による簡易な方法で行うことでも差し支えないこと。
(2)労働時間の認定の具体的運用(監督部署との連携した対応等)について
労働時間の認定においては、平成30年3月30日付け基監発0330第6号・基補発0330第5号(改正令和3年1月5日付け基監発0105第1号・基補発0105第1号)「過労死等事案に係る監督担当部署と労災担当部署間の連携について」により、監督担当部署(以下「監督部署」という。)と労災担当部署(以下「労災部署」という。)が密接に連携し、労働時間を特定することとなるが、脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定に際しては、業務による負荷の評価の観点から労働時間を適切に認定することが重要である。
このため、監督部署との連携に当たっては、次の事項に留意し、適切に対応すること。
① 監督部署が行う監督指導に同行する場合には、被災労働者に係る労働時間の把握状況、労働実態を疎明する資料の有無、賃金の支払い方法等について確認すること。
② 被災労働者の労働時間の把握に当たっては、監督部署が、事業場に対し、被災労働者に係る労働時間集計表の作成及び疎明資料の提出を指導することになっているため、労災部署は、監督部署からこれらの資料の提供を受けた場合、請求人からの聴取内容等と突き合わせ、被災労働者に係る労働時間が事業場で適正に把握されていたと判断できるか否かを確実に確認すること。
③ 労災部署における調査の結果、被災労働者の労働時間が事業場で適正に把握されており、請求人及び事業主の認識に齟齬がない場合には、事業場が労働時間を把握していた記録を収集し、当該記録に基づき被災労働者の労働時間を認定すること。
④ 事業場で労働時間の把握が適正に行われていたか疑義がある場合には、事業場が労働時間を把握していた記録以外に、被災労働者の労働実態を明らかにする手掛かりとなり得る記録が存在するのか確認し、それらの資料を収集すること。
その結果、請求人聴取の内容と収集した労働時間関係記録の内容にかい離が認められる場合には、事業場関係者に対し、各労働時間関係記録の内容、被災労働者の労働実態と各労働時間関係記録との関係性、被災労働者に対する使用者の具体的指示や命令の状況、被災労働者の労働実態に係る使用者の認識(業務量等により時間外労働をすることを余儀なくされていたか否か等)等について調査し、労働時間関係資料等客観的な記録が存在しない場合であっても、請求人及び事業場関係者からの聴取内容等から被災労働者が使用者の指揮命令下において実際に労働していたと合理的に推認される場合には、監督部署と協議の上、当該時間を労働時間として特定すること。
問2 所定始業時刻より前の時刻にタイムカードを打刻しているが、タイムカードを打刻した時刻から労働時間に該当するか。
(答)
タイムカード等に記録されている時刻は、そのものが必ずしも被災労働者が労働した時間であるとは限らないことから、所定始業時刻より前の時間帯に、被災労働者が使用者から労働することを義務付けられ、又は余儀なくされて労働していたのか検討し、労働時間に該当するか判断すること。
また、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(例えば、着用を義務付けられた所定の服装への着替え、清掃、朝礼等)を事業場内において行った時間は、労働時間に該当すること。(参照:平成29年1月20日付け基発0120第3号別添「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
(調査の留意点)
タイムカード、出勤簿、業務日報、自己申告記録、事業場への入退場記録、警備会社からの警備記録、開錠記録、パソコンの使用状況のログ、ファックス、メールの送信記録等の客観的な記録を収集すること。
また、請求人、事業場関係者からの聴取等により、所定始業時刻前に被災労働者が労働に従事した内容、被災労働者の状況・様子、在社状況、所定始業時刻より前の時間帯に被災労働者が労働することについての使用者からの指示や命令及び使用者の認識、使用者から労働することを義務付けられ、又は労働を余儀なくされていた状況の有無等を確認すること。
(参考)
1 裁判例
【平成12年3月9日付け最高裁判所第1小法廷判決/平成7年(オ)第2029号】
(争点:割増賃金請求)
所定始業時刻前、所定終業時刻後に行う作業の準備が労働時間に当たるか否か
(判決概要)
上告人(使用者)の事業場の就業規則は、(中略)、始終業基準として、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものと定め、さらに、始終業の勤怠把握基準として、始終業の勤怠は、更衣を済ませ始業時に体操をすべく所定の場所にいるか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた、(中略)被上告人ら(労働者)は、上告人から、実作業に当たり、作業服のほか所定の保護具、工具等(保護具等)の装着を義務付けられ、右装着を所定の更衣所又は控所等(更衣所等)において行うものとされており、これを怠ると、就業規則に定められた懲戒処分を受けたり就業を拒否されたりし、また、成績考課に反映されて賃金の減収にもつながる場合があった、(中略)上告人により、材料庫等からの副資材や消耗品等の受出しを午前ないし午後の始業時刻前に行うことを義務付けられており、また、被上告人らのうち鋳物関係の作業に従事していた者は、粉じんが立つのを防止するため、上長の指示により、午前の始業時刻前に月数回散水をすることを義務付けられていた、(中略)。
被上告人らは、上告人から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、また、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたというのであるから、右装着及び更衣所等から準備体操場までの移動は、上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができる。また、被上告人らの副資材等の受出し及び散水も同様である。さらに、被上告人らは、実作業の終了後も、更衣所等において作業服及び保護具等の脱離等を終えるまでは、いまだ上告人の指揮命令下に置かれているものと評価することができる。
【令和元年6月28日付け東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第2199号、平成29年(ワ)第38733号】
(争点:割増賃金請求)
所定始業時刻より前の時刻にパソコンのログの記録があるが、どちらを始業時刻と評価するか
(判決概要)
原告(労働者)は、被告(使用者)において本件業務に当たってきたものであるところ、その業務の性質上、パソコンを多く利用する業務であったことは前記認定のとおりである。
被告においては週初めの午前8時30分から朝礼が行われていたところ、ログ記録は、内容的にもこうした事実に多く沿っているとみることができるほか、グループウェアのタイムカード記録(出勤記録)との齟齬もほぼ認められず、むしろ、ごくごく断片的証拠ではあっても、被告の業務に係る画像データや動画データの更新日時との符合も認められる。なお、被告は、これらデータにつき、更新日時を変更することが可能で信用性がないなどとも主張しているが、そのように改変がなされたと見るべき形跡は認められない。
具体的に他の従業員による使用があったと認められる稼働日はともかく、そうでない限りは、ログ記録を手掛かりとして原告の労働時間を推知することに相応の合理的根拠はあるといえ、これを基礎に、出勤簿記載の労働時間を超えて業務に従事していた旨述べる原告本人の供述にも相応の信用性を認めることができるところであって、他に的確な反証のない限りは、ログ記録を手掛かりとして原告の労働時間を推知するのが相当である。
もっとも、始業に際しては、一般に、定時に間に合うよう早めに出勤し、始業時刻からの労務提供の準備に及ぶ場合も少なくないから、ログ記録に所定の始業時刻より前の記録が認められる場合であっても、定時前の具体的な労務提供を認定できる場合は格別、そうでない限りは、基本的に所定の始業時刻からの勤務があったものとして始業時刻を認定するのが相当である。
2 労働保険審査会裁決
【平成28年労第81号】
(争点:遺族補償給付等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(精神障害))
作業開始前に行う朝礼は労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
被災者が就労していた現場においては、作業開始前に朝礼が行われ、被災者もこれに立ち会っていたことが認められる。当該朝礼の開始時刻は必ずしも一致していないものの、実際に朝礼に参加していた下請業者の労働者が午前7時45分から朝礼が行われていた旨述べていることに加え、会社自らが同時刻から朝礼が行われ、被災者に対して当該朝礼への参加を命じていたことを認めていることからすれば、午前7時30分頃には出勤していた被災者は、遅くとも午前7時45分からは業務に就いていたものと判断するのが相当である。
【平成29年労第74号】
(争点:遺族補償給付等の不支給取消請求(脳・心臓疾患)
所定始業時刻と出勤簿の出勤時刻のどちらを始業時刻と判断するか
(裁決概要)
監督署長の認定した労働時間の推計方法は、決定書理由のとおり、始業時刻を所定始業時間の午前9時と認定しているが、請求人は、始業時間が午前9時との認定は間違いである旨主張している。
関係者は、「被災者は、席についてパソコンを立ち上げたら、雑談しながら準備をしていた。午前8時50分から55分くらいに朝礼があり、午前9時ちょうどくらいに終わる。」旨申述し、(中略)、「被災者は、出社後朝礼までの間、デスクにいた。出社後パソコンを立ち上げたら、書類を確認したり、メールを確認したり、作業を開始する。朝礼までの間、ぼんやりしたり、雑談することはない。」旨、「朝礼は、業務開始の5分前からで、遅刻しても欠勤控除されないが、全員参加が原則と思う。」旨申述していることから、被災者は、出社以降所定始業時間までの間、自席において、パソコンを立ち上げ、書類やメールを確認したりした後に朝礼に参加しており、いずれも業務に従事していたと認められることから、当審査会としては、始業時刻は所定始業時間ではなく、出勤簿の出勤時刻とするべきと判断する。
【平成29年労第344号】
(争点:休業補償給付の支給に関する給付基礎日額の取消請求(精神障害))
所定始業時刻と出勤時刻のどちらを始業時刻と判断するか
(裁決概要)
請求人はシフト表記載の始業時刻15分ないし20分前に出勤していたと推認し得るが、出勤直後から直ちに業務に従事せざるを得ない事情があった事実は確認することができない。午前9時出勤のシフトの場合、店舗の営業開始時刻は午前11時であり、開店準備を行う時間は2時間あったものと認められる。請求人は、早めに出勤し、着替えや清掃等をしていた旨主張するが、2時間の準備時間では間に合わない等、具体的な業務の必要性があったとは認められない。
【平成29年労第427号】
(争点:遺族補償給付等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(精神障害))
所定始業時刻とパソコンのログイン時刻のどちらを始業時刻と判断するか
(裁決概要)
当審査会では、当該乖離について慎重に検討するも、被災者が所定始業時刻である午前8時30分より前に出勤を命じられるか、若しくは業務の開始を余儀なくされる状況にあったとは確認できないものであり、労働を余儀なくされたために生じた時間差であるとは判断し得ないことから、平日勤務日の始業時刻は、所定始業時刻の午前8時30分とすることが妥当であると判断する。
3 参考事例
事例3、事例5、事例6、事例7参照
問3 自己申告をした終業時刻からかい離した時刻に事業場を退社した記録があるが、どちらの時間を終業時刻と評価すればよいか。
(答)
労働時間管理に自己申告制を採用し、実際に労働した時間よりも過少に労働時間を申告している場合やタイムカード等を打刻した後に継続して労働している場合、労働時間を全く把握していない場合等使用者が適正に労働時間を管理していなかったため、被災労働者の実際の労働時間が適正に把握されていない場合があるが、このような場合にも、被災労働者の労働時間を可能な限り適切に把握し、評価する必要がある。
また、使用者の指示により、業務終了後の業務により関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は、労働時間に該当すること。(参照:平成29年1月20日付け基発0120第3号別添「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
(調査の留意点)
労働時間が適正に把握されていないと認められる場合には、業務遂行上作成する書類や記録等(例えば、事業場への入退場記録、警備会社からの警備記録、施錠記録、最終退社記録、業務日報、営業日報、パソコンの使用状況のログ、社用車の運転記録、ファックス、メールの送信記録、会議室の使用状況等)、被災労働者の労働実態を明らかにする手掛かりとなり得る資料を入手し、これらの資料のうちの時間外労働に及んでいる時刻と事業場が把握している労働時間を比較する表を作成する等により突合し、そのかい離の実態把握を行うことが有効である。
ただし、記録された時間とのかい離が確認された場合であっても、そのかい離の全てが被災労働者の労働時間であるとは限らないことから、請求人、事業場関係者からの聴取等により、そのかい離が生じている時間の被災労働者の労働実態、使用者からの指示や命令及び使用者の認識、被災労働者が労働することを余儀なくされた状況であったか否か、収集した記録の内容、労働実態と収集した記録の関連性等を確認すること。
なお、パソコンの使用状況のログやファックス、メールの送信記録は、一般的にその時間に労働が行われていたことを示す点の記録であるため、必要に応じ、その前後の操作記録や収集した他の記録とつなぎ合わせた時間的連続性にも注目し、労働時間と評価し得るか否か検討すること。
(参考)
1 裁判例
【平成25年3月13日付け神戸地方裁判所判決/平成22年(ワ)第614号】
(争点:安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求)
実際の出勤時刻より後に出勤の打刻をし、退勤打刻より後にも働いている場合、実際の出勤時刻、退勤時刻が労働時間と判断されるか
(判決概要)
ア 賃金不払い残業の方法
〇〇店における賃金不払い残業の方法として、主に以下の3つの方法があった。
(ア)退勤打刻後残業
所定終業時刻を経過した後に一旦9階に行って退勤打刻をし、その後再び担当フロアに戻るなどして仕事をする。(イ)休日出勤
シフト上の休日の朝早く出勤してタイムカードを打刻しないまま、その日の出勤予定者の多くが出勤してきて業務が本格化する午前9時30分ころまでの数時間の間仕事をする。
(ウ)早出残業
シフト上の所定始業時刻前の時間は労働時間管理システム上残業時間とはカウントされていなかったことを利用する方法として、その所定始業時刻の数時間前に出勤して仕事をする(出勤打刻は、通常、実際の出勤時には打刻せず所定始業時刻までの適当な時に打刻する。)。
イ 賃金不払い残業の状況
残業予算があるものの、残業予算の範囲内ではこなせない仕事量になっていたのが実情であり、さらに、コスト面から仕事量や責任の重い正社員の残業時間がアシスタントよりも少なく設定されていて、残業予算の設定そのものが不合理なものになっていたにもかかわらず、上司からは、残業予算の遵守を毎日のように執拗に指導されていたことから、残業予算の消化にはカウントされない賃金不払い残業が構造的に行われるようになっていた。
ウ 被災者の実始業時刻
被災者は、恒常的に早出残業を行っていて、出勤打刻時刻よりも相当前に実始業をしていた。具体的には、被災者は、シフトに関係なく、午前8時ころには出勤しており、遅くとも午前9時を過ぎることはなかった。被災者の実始業時刻は、出勤打刻の約1時間前には出勤していたと考えられるから、原則として、出勤打刻時刻と被災者が署名した鍵受け渡し表記載時刻との早い方とし、ただ出勤打刻時刻が9時以降となっている日については、その打刻時刻の1時間前とするべきである。
エ 被災者の実終業時刻
被災者は、〇月以前は、退勤打刻後に残業を出勤日の都度行っており、その実終業時刻は午後11時ころであった。〇月以降、庶務課のチェックが厳しくなり、退勤打刻後に残業がしにくくなったが、バックヤードなどの見回りのない場所で、少なくとも午後10時30分までは退勤打刻後に残業を行っていた。被災者の実終業時刻は、退勤打刻時刻が午後10時30分以前となっている日については、午後10時30分とするべきである。
【令和元年6月28日付け東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第2199号、平成29年(ワ)第38733号】
(争点:割増賃金請求)
自己申告をした終業時刻からかい離した時刻にパソコンのログの記録があるが、どちらを終業時刻と評価するか(判決概要)
原告(労働者)は、被告(使用者)において本件業務に当たってきたものであるところ、その業務の性質上、パソコンを多く利用する業務であったことは前記認定のとおりである。
被告においては週初めの午前8時30分から朝礼が行われていたところ、ログ記録は、内容的にもこうした事実に多く沿っているとみることができるほか、グループウェアのタイムカード記録(出勤記録)との齟齬もほぼ認められず、むしろ、ごくごく断片的証拠ではあっても、被告の業務に係る画像データや動画データの更新日時との符合も認められる。なお、被告は、これらデータにつき、更新日時を変更することが可能で信用性がないなどとも主張しているが、そのように改変がなされたと見るべき形跡は認められない。
具体的に他の従業員による使用があったと認められる稼働日はともかく、そうでない限りは、ログ記録を手掛かりとして原告の労働時間を推知することに相応の合理的根拠はあるといえ、これを基礎に、出勤簿記載の労働時間を超えて業務に従事していた旨述べる原告本人の供述にも相応の信用性を認めることができるところであって、他に的確な反証のない限りは、ログ記録を手掛かりとして原告の労働時間を推知するのが相当である。
原告申告の出勤簿の残業時間をみると、(中略)月当たり30時間未満とされている月も散見されるものの、どの月も30時間を超えることはなく、多くは寸分違わず30時間と申告されているところであって、このこと自体、原告が、実際の労働時間いかんにかかわらず、月30時間以内に残業時間をとどめようとしていたことを強く窺わせるものといえる。そして、証人〇や同〇も、業務の効率的遂行といった観点から、個々の従業員の月当たりの残業時間が30時間以内となるよう指導していたこと自体は否定をしていない。そうしてみると、原告がこうした指導故に出勤簿記載の残業時間を多くとも30時間にとどめることとしていたと推認するのが合理的というべきであって、(中略)。
原告本人は、営業担当者から店舗のスケジュールや商品が入るスケジュールに合わせて販促物作成を求められていた旨供述しているところ、その供述内容はごくごく自然で採用することができ、およそ残業をすべき必然性がなかったなどとも認め難い。
ログ記録がある日については、基本的にはこれを基礎に原告の労働時間を認めるのが相当であり、他方、ログ記録のない日については、出勤簿の記載時刻を超える残業時間があったことを裏付ける的確な証拠がないから、上記出勤簿記載の限度で残業時間があったものと認めるのが相当である(ただし、これらよりも早い終業時刻を原告が自認している場合に
は、その自認する時刻による終業時刻を認める。)。
【平成23年3月23日付け東京地方裁判所判決/平成21年(ワ)第25755号】
(争点:割増賃金請求)
業務終了後のメール送信時刻が終業時刻と判断されるか(判決概要)
メールが送信されていることのみでは、オペレーション業務後、当該メールの送信時刻まで、間断なく業務に従事していたと認めるには足りないと言わざるを得ず、メール送信時刻をもって終業時刻と認めることはできない。
2 労働保険審査会裁決
【平成29年労第427号】
(争点:遺族補償給付等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(精神障害))
自己申告の終業時刻とパソコンのログアウトの時刻のどちらが終業時刻か
(裁決概要)
平成○年○月○日以降○日までの間については、休日出勤や時間外労働が大幅に増加したとする会社関係者の申述には信憑性があり、適正な自己申告制度の運用が行われていなかったものと推認することが相当であると思料し、同期間に限って、自己申告終業時刻とパソコンのログアウト時刻とのかい離がある日には、ログアウト時刻までは業務をしていたものと判断する。
【平成26年労第543号】
(争点:遺族補償給付等の不支給取消請求(精神障害)
勤務月報を基に労働時間を算定したことが妥当か否か
(裁決概要)
会社では、出退勤の際、カードリーダーにカードをかざすことで、その時間が勤務月報の「出勤」、「退勤」等の欄に記載されることになっていたが、この点に関し同僚労働者は、「会社から指示された残業時間を超えることのないように、敢えてカードをカードリーダーにかざさず、手動で適宜の時刻を入力したり、カードリーダーにカードをかざした時刻を後から修正したりしていた。」と述べるほか、「事務所の扉は日中開けっ放しで、夜間も電気錠がかかっているが、インターフォンを鳴らして中にいる者に解錠してもらうシステムであり、事務所の扉の開閉と勤務月報の時間は全く関連性がない。」としている。
また、上司も、「被災者が勤務月報上の労働時間以外に労働している時間があるのはある程度分かっていた。勤務月報上、被災者が退社しているにもかかわらず、その後も残業していることが、ある程度あることは分かっていた。勤務月報の労働時間と私が見ている実際の労働時間との間に食い違いがあることも分かっていた。特に被災者が亡くなる1か月前は申告せずに残業していることを認識していたので、勤務月報上の時間だけをみて、同人の労働時間を把握することはできない。」と申述している。
これらの申述から、勤務月報のみに依拠して労働時間を認定することは妥当ではなく、他の資料も併せ考慮する必要があるものと判断する。
【平成30年労第156号】
(争点:遺族補償給付等の不支給取消請求(精神障害)
自己申告の労働時間と事業場への入退場情報、メールの記録、パソコンの記録にかい離があるが、これらの記録から労働時間をどのように評価するか
(裁決概要)
①入退館の行為自体が直ちに労働時間に算入されるべきものではないところ、実際の時間差は大きなかい離があるとまでは言えないこと、②メール記録には、帰宅時間に関すること以外の個人的な内容が、勤務時間も含めて認められるところ、そもそも、帰宅時間に関する内容が真正な終業時間を証するものとは確定できないこと、③請求人に支給されたパソコンのログオン・ログオフの記録時間が、当該記録時間中、継続して作業を行っていたことを示すものではなく、請求人の主張内容をみても被災者の作業内容やこれに要した作業時間を具体的に疎明するには至っておらず、成果物等の当該主張を証明する客観的な事実を確認することができないこと、また、会社からの具体的な業務指示が認められないこと等に鑑み、当審査会としてはこれらの主張を採用することはできない。
【平成30年労第62号】
(争点:遺族補償給付等の不支給取消請求(脳・心臓疾患)
所定労働時間外に事業場関係者等と業務に関するやり取りをした時間は労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
SNS等の履歴のうち当該業務に関係するものをみるに、被災者が送信した各々のSNS等の記録はおおむね1、2行程度のものであり、被災者は、SNS等の送受信を、ほとんど数秒、長くても数十秒程度といった極めて短時間に行っていたものと考えられる。
また、SNS等の場合は必ずしも送受信を行っている当事者間に即時性、拘束性が求められるものではなく、被災者が就業した時間以外のプライベートな時間の合間にでも、適宜、SNS等を行うことは可能であることから、一連のSNS等の内容に関連性があるからといっても、必ずしもSNS等の送受信間における時間が事業主の指揮命令下にあったものとは認められない。
3 参考事例
事例3、事例4、事例6参照
問4 所定労働時間外に行われる研修や教育訓練は労働時間に該当するか。
(答)
参加することが業務上義務付けられている研修や教育訓練の受講や使用者の指示により業務に必要な学習等を行った時間は労働時間に該当する。
所定労働時間外に行われる研修や教育訓練が労働時間に該当するか判断するに当たっては、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育訓練、研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより被災労働者の業務に具体的な支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて参加の強制があるか否かを検討すること。
(調査の留意点)
教育訓練等の内容、規定、実施記録、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無等についての関係資料を収集すること。
また、請求人、事業場関係者への聴取等により、使用者からの指示や命令及び使用者の認識、使用者の関与の有無、当該教育訓練等の業務との関連性、参加しないことによる不利益取り扱いや支障の有無等について確認すること。
(参考)
1 裁判例
【平成19年11月30日付け名古屋地方裁判所判決/平成17年(行ウ)第34号】
(争点:遺族補償年金等の不支給取消請求(脳・心臓疾患)
所定労働時間外に行われる創意くふう等の改善提案(※1)、QCサークル活動(※2)、EX会(※3)の活動等は、使用者の生産活動に関わるものであり、全員参加とされ、賞金等が交付され、人事評価の対象となる等の点に照らし、業務と評価すべきであるか否か
(判決概要)
本件事業主は、従業員の人事考課において、創意くふう等の改善提案やQCサークルや小集団活動での活動状況を、組メンバーを巻き込んだ活動ができることを考慮要素としている。
創意くふう提案及びQCサークル活動が、本件事業主の自動車生産を支えてきたことは、本件事業主の取締役名誉会長や取締役社長が認めるところであり、本件事業主が発行した会社紹介のパンフレットでも、その活動を積極的に評価して取り上げている。これらの活動は、いずれも一定の頻度で行うものとされ、上司が審査し、その内容が業務に反映されることがあり、賞金や研修助成金、一部の時間の残業代が支払われる。
創意くふう提案及びQCサークル活動は、本件事業主の事業活動に直接役立つ性質のものであり、いずれも本件事業主が育成・支援するものと推認され、これにかかわる作業は、労災認定の業務起因性を判断する際には、使用者の支配下における業務であると判断する
のが相当である。
※1 創意くふう等の改善提案は、所定の用紙に、業務に関する改善策とその効果等を記入する活動のこと。
※2 QCサークル活動は、同じ職場のEX(工長、組長に次ぐ職制とされていた班長に相当する職制)以下の職制の従業員が3か月を単位に、職場の改善に関するテーマについて話し合い、決められた目標に向けた活動をすること。
※3 EX会は、EXの職制にある者によって組織される団体であり、EXに昇格すると自動的に会員となる。技術や知識の向上を図るための研修会、後援会、他社の見学会、各種懇親会、会員相互の慶弔扶助等の事業を行うもの。
【平成28年7月14日付け東京地方裁判所判決/平成25年(行ウ)第794号】
(争点:休業補償給付の不支給処分取消請求)
資格取得のための受験勉強時間が労働時間であるか否か
(判決概要)
検定試験を受けるよう指示され、(中略)合格していることが認められる。
しかしながら、原告は会社から勉強時間の具体的な指示を受けていたわけではなく、原告が試験勉強を行っていた時刻の記録も存在しないから、原告が試験勉強に費やした時間を正確に把握することは困難である。それのみならず、試験勉強の内容、方法及び時間は原告自身の選択により決められており、原告が労働から解放された自由な時間を利用して試験勉強を行うことも可能であったから、使用者が具体的に指示した講習の受講や検定試験の受験については、これを使用者の指揮命令下にある労務提供と評価することができたとしても、試験勉強それ自体を使用者の指揮命令下にある労務の提供と評価することは困難である。
2 労働保険審査会裁決
【平成28年労第485号(争点①、②)・平成30年労第278号(争点③)】
(争点:遺族補償年金等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(精神障害)
① 新入社員研修時の自主的な学習が労働時間であるか否か
② 研修日誌の作成に要した時間が労働時間であるか否か
③ 研修終了から再テスト開始までの間、再テストの内容を自己学習した時間が労働時間であるか否か
(裁決概要)
① 自主学習すべき内容やその時間数のほか、自主学習の場所や方法について、会社からは何らの指定も行われておらず、当審査会としても、被災者が自主学習を行っていた時間について、使用者の指揮監督下にある時間とは認め難く、労働時間であるとはいえないものと判断する。
② 被災者が1日の研修が終了した後に作成していた研修日誌については、会社において業務報告書と位置付けられ、内容、紙数、提出期限が指示されている事実が認められることから、(中略)。
研修日誌作成時間については、業務命令によって行うことを義務付けられたものであり、また、一定の時間を要するものであったことも明らかであることから、労働時間と認めることが相当である。
③ 再テスト直前の自己学習の実施についても、(中略)、会社の指揮監督下にある時間とは認め難く、時間外労働時間とはいえないものと判断する。また、再テストについては、再テストが不合格の場合は、研修が終了し各職場に配属された後に、再々テストをウェブ上で受けるという程度のものであったことに鑑みると、被災者が、会社から指示を受けて、再テスト直前に自己学習を行わざるを得なかったとみることは難しく、請求人の主張は採用することができない。
3 参考事例
事例4参照
問5 いわゆる手待時間は労働時間に該当するか。
(答)
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等をしている時間(いわゆる「手待時間」)は労働時間に該当する。
手待時間の例として、次のようなものがある。
① 休憩中の当番
休憩中に電話や来客があった場合にはこれに対応して適宜処理することが要求されているような場合には、労働から離れることを保障されているとはいえないことから、仮に電話や来客がなかったとしても労働時間に該当する。
② 施設等の警備員
休憩中であっても、十分な交代要員が確保されていない等により非常事態が発生した場合に即時に対応することが求められ、実際に休憩中に非常事態等に対応することがあるような労働から解放されているとはいえない時間については、労働時間に該当する。
③ トラック運転手の荷待ち時間等
荷積み、荷下ろし時間について、具体的な指示や連絡がいつ来るかわからないまま待機している場合や車列で順番待ちを行わなければならない場合等労働から解放されているといえない時間は労働時間に該当すること。
したがって、脳・心臓疾患事案においても、手待時間は労働時間であることを前提として、業務の過重性を適切に評価すること。ただし、その際、仮眠時間や宿直勤務中の時間など、業務による過重性がほとんどないような態様については、問7、問14を参照すること。
また、精神障害事案において、手待時間が多い等により労働密度が特に低い場合には、心理的負荷の評価に当たり考慮する必要があることに留意すること。なお、給付基礎日額の算定に当たっては、上記のような場合であっても、当該手待時間は労働時間から除外しないこと。
(調査の留意点)
休憩か手待時間かを判断するに当たっては、収集した資料や請求人、事業場関係者からの聴取等により、労働から離れることを保障されていた状態だったか否か、使用者からの指示や命令及び使用者の認識、使用者から労働することを義務付けられ、又は余儀なくされた状況であったか否か等を確認すること。
(参考)
1 裁判例
【令和2年9月17日付け判決:福岡高等裁判所判決/令和2年(行コ)第4号】
(争点:割増賃金請求)
バスの乗務員の待機時間(調整時間のうち、乗務員が遺留品の確認、車内清掃、車両の移動等に要する時間として一定の時間を「転回時間」として定め、調整時間のうち転回時間を除いた時間を「待機期間」という。)は労働時間に当たるか否か
本件については、本件訴訟を提起した乗務員とは別の乗務員が前件訴訟(平成27年5月20日付け判決:福岡地方裁判所判決/平成24年(行ウ)第52号)を提起していた経過がある。
前件訴訟の第一審において、待機時間が労働時間に該当するか争ったが、裁判所は、待機時間の全てが労基法上の労働時間に該当すると判決した。被控訴人(使用者)は、上記判決を不服として控訴したところ、控訴審で和解が成立し、これにより前件訴訟は終了した。
本件訴訟は、被控訴人が本件通知(※)を発出した後(前件訴訟は、本件通知発出前の期間に係る待機時間の割増賃金の支払いを求めたもの)の期間おける待機時間分の時間外労働に対する割増賃金の支払いの支払いを求めた訴訟である。
(判決概要)
本件通知には、調整時間のうち転回時間を労働時間とし、その余の時間(待機時間)を休憩時間とした上で、休憩時間は各人が自由に使える時間とする旨や、突発的業務等で指示された休憩時間を取得することができなかった場合には、休憩時間を労働時間に変更するため所定の様式に記入して提出する必要がある旨が記載されていることからすれば、本件通知が、被控訴人において、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを内容とするものであることは明らかである。
交通局の乗務員は、被控訴人が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っており、待機時間には労働から解放されているとの認識を有していたものと認めるのが相当である。
ドライブレコーダーの記録によれば、複数の乗務員が、休憩施設の有無にかかわらず、転回場所において5分以上バスから離れることがあったことを認めることができ、その全てがトイレに行く目的であったということはできないから、バスから離れることが許容されていたというべきである。
本件通知以降も、乗務員に対して、バスを早めに始点バス停につけて乗客を乗せるように指示したことをもって、乗務員が待機時間中に乗客対応を行うことを義務付けられていたということができないことは、補正して引用した原判決(省略)が説示するとおりである。
バスのドアが開く際に「お待たせしました」との自動音声を流すことについても、乗務員は、トイレ以外の理由でも、バス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れているところ、被控訴人が、本件通知により、待機時間を休憩時間であると取り扱うことを乗務員に周知し、乗客からの問い合わせに対してもその旨を説明していたことに照らすならば、乗務員がバス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れることは被控訴人に許容されていたということがで
きる。
運行指示表又は発車順番表のとおり運行することができない場合があることから直ちに、乗務員が、本件待機時間中、周囲の状況に応じていつでもバスを移動することができるよう待機しておかなければならなかったということはできず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。
控訴人らは、乗務員は、車両に異常があれば、待機時間中であっても、点検、修理等のためにバスを移動させたりするよう指示されていると主張する。しかしながら、車両に異常が生じた場合の対応は、日常の業務ではなく、そのような業務を行った場合には遅れ時分等報告書によってこれらを労基法上の労働時間として申告すべきものであるから、上記対応をするよう指示されていることをもって、乗務員が、待機時間中に突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えておくことを労働契約上義務付けられていたと評価することはできない。
したがって、乗務員が、待機時間中に突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えておくことを労働契約上義務付けられていたと評価することはできない。
以上のとおりであるから、本件請求期間中、本件待機時間について、乗務員が労働契約上の役務の提供を義務付けられており、被控訴人の指揮命令下に置かれていたと認めることはできない。
※本件通知とは、被控訴人が乗務員に対して通知した「転回場所における労働時間の取り扱いについて(通知)」と題する文書のこと。本件通知には、以下の記載があった。(ア)転回場所における労働時間と休憩時間
・各バス停に到着後、次の発車までの時間の内、「遺留品の確認」・「車両の移動」・「接客時間(両替・案内等)」などにあたる時間を労働時間とし、残りは休憩時間とする。
・なお、休憩時間については、各自が自由に使える時間とするが、交通局職員としての自覚を持って行動すること。
(イ)延着等の取り扱い
多客、事故などの理由により到着バス停に延着した場合や突発的業務で指示された休憩時間を取得することができなかった場合は、休憩時間を労働時間に変更するため、必ず所定の用紙に記入して操車主任に提出してください。
2 労働保険審査会裁決
【平成26年労第53号】
(争点:遺族補償年金等の不支給取消請求(精神障害)
拘束時間から休憩及び手待ち時間を差し引いた実作業時間を基に労働時間と評価したことは妥当か否か
(裁決概要)
監督署長は、被災者には1日5時間から8時間程度の休憩及び手待ち時間があったとして、被災者の勤務状況確認表(月報)の拘束時間から休憩及び手待ち時間を差し引いた実作業時間を「通常その程度の労働時間を要するもの」であるとして、時間外労働時間数を認定していることが認められる。
しかしながら、労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間をいい、必ずしも現実に精神又は身体を活動させていることを要件としないことから、手待ち時間は労働時間であるとされている。
したがって、認定基準の「通常その程度の労働時間を要するもの」とは、手待ち時間を含めて同種の労働者が一般的に要する業務時間のことを指すと考えられることから、時間外労働時間数の算定に当たり、手待ち時間を休憩時間と同一に評価して、当初から一切の手待ち時間を含めないで算定した監督署長の取扱いは誤っている。
3 参考事例
事例1、事例4参照
問6 請求人が、休憩中も電話が鳴れば対応しなければならなかったと主張しているが、このような休憩の場合、労働時間に該当するか。
(答)
休憩時間とは、単に作業に従事しないいわゆる手待時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう。
休憩時間と手待時間との相違は、使用者の指揮命令の下にあるか否か、換言すれば、労働者の時間の自由利用が保障されているか否かにあるといえる。例えば、休憩中に電話や来客があった場合には適宜これに対応することが要求されているような場合には、労働から離れることを保障されているとはいえないことから、仮に電話や来客がなかったとしても、労働時間に該当する。同様に、顧客が途切れた時に適宜休憩しても良いというものは、現に顧客が来店した場合に即時に業務に従事しなければならないものであることから、労働から離れることを保障した休憩時間には該当しない。
一方で、休憩時間中に外出等を行うことが自由であり、電話や来客の対応を義務付けられていなかった場合には、当該時間は休憩時間に該当する。ただし、そのような休憩時間であったとしても、実際に顧客の対応を行うことを余儀なくされたような場合には、当該対応に要した時間は労働時間に該当する。
(調査の留意点)
請求人が休憩中に労働していたと申述している場合には、収集した資料や事業場関係者からの聴取等により、当該休憩時間中の被災労働者の行動が、労働から離れることを保障されていた状態だったか否か、使用者からの指示や命令及び認識、休憩中も使用者から労働することを義務付けられ、又は余儀なくされた状況であったか否か等を検討すること。
特に、休憩時間が明確に特定されていないような事案(例えば、始業時刻から終業時刻までの間10時間のうち、適宜2時間の休憩を取得することとされているような事案)については、休憩が取得されていたか、慎重に検討を行うこと。
(参考)
1 労働保険審査会裁決
【平成29年労第295号】
(争点:遺族補償年金等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(脳・心臓疾患)
取得できなかったとされる10分間の小休憩が労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
同僚労働者は、要旨、「被災者と近くで仕事をしていたので仕事ぶりはわかっている。小休憩は1日の勤務日につき、2回(各10分)あるが、被災者は、2回目の小休憩時間はほとんど取得できなかった。それは、私の食事休憩と被災者の小休憩の時間が重なるので、そ
の時間に被災者が休んでいれば顔を合わせるはずだが、この時間帯に顔を合わせたことはないからである。私も、小休憩の時間帯はずれるし、十分な休憩時間を取らずに仕事を続けることもある。」と述べている。(中略)当審査会としては、当該申述は具体的であり、信用性が高いと判断するものである。
この点、会社関係者によれば、会社が新製品を作ることとなったため、業務量が増え、人手不足もあって非常に多忙となったという状況があり、また、被災者は、始業時刻は午後9時のままであるが、週4日は午後7時から早出残業をしている上、算定期間において定時(翌日午前5時15分)で勤務を終了した日は1日もないなど、極めて忙しい状態にあったと推認されるところであり、被災者は2回目の小休憩を取得できない状況であったと考えることが相当である。
【平成26年労第636号】
(争点:遺族補償年金等の不支給取消請求(精神障害)
取得できなかったとされる昼休憩が労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
関係者は、「被災者は、昼食を摂ったり摂らなかったりしていた。最初の3か月間は、休憩はしっかり1時間取らせていた。4か月以降は、休憩を取らず食事も摂らないことがあったが、どの程度であったかは記憶にない。昼食休憩は、毎日しっかり取れる環境にあったと思う。」旨、「被災者は、基本的には、1時間の昼食休憩を取っていた。」旨、「被災者は昼食休憩を取らないことが頻繁にあったという印象はない。しっかり休憩が取れる環境であったと思う。」旨、「被災者は昼食は食べないのかなと思った。多分、食べに行っていないことの方が多かったと思う。○係では、昼食休憩が取りづらい雰囲気はない。」旨、「被災者は、昼食が摂れないことはあったと思う。窓口が開いている時間帯は、なかなか昼食を摂ることはできないと思う。」旨、「被災者は、入社当初から昼食を摂っていなかった。しかし、仕事が途中でも食事休憩は取れるので、あえて自分から休憩を取らなかったと思う。」旨を述べている。
上記の各申述を総合して考察すれば、(中略)、被災者は、昼食休憩をおおむね取得できる状況にあったものの、ときには被災者自身の意思で昼食休憩を取得しなかったものと認められる。
2 参考事例
事例1、事例4、事例5、事例6、事例7参照
問7 警備員等の仮眠時間は労働時間に該当するか。
(答)
仮眠時間であっても、仮眠中に使用者の指示により即時に業務に従事することが求められており、労働から離れることが保障されていなければ、使用者の指揮命令下に置かれているものとして労働時間に該当する。
例えば、施設警備員について、仮眠時間中に十分な交代要員が確保されておらず、仮眠を取っている間に非常事態が発生した場合には即時に対応することが求められており、実際に仮眠中であっても即時に対応しなければならず、また、警備員室で仮眠をとることが義務付けられ、仮眠中も警備員の制服を着用することを義務付けられているような場合には、労働から解放されているとはいえないと考えられることから、労働時間として評価すること。
一方、仮眠時間中に交代要員が十分に確保され、仮眠時間中に仮眠を中断してまで業務に従事しなければならない必要性が皆無に等しいような場合には、実態として労働から離れることが保障されていたと解され、労働時間に該当しない場合もあること。
なお、仮眠時間が労働時間に該当したとしても、脳・心臓疾患事案において、例えば、睡眠設備が設けられ、現に睡眠を取ることができるような場合など実態として業務による過重性がほとんどない態様の仮眠時間は、業務の過重性を評価する労働時間からは除外して評価し、労働時間以外の負荷要因に該当するかを含め別途検討すること。ただし、仮眠時間といってもその態様は様々であることから、実際に仮眠をとることができる実態にあるか否かを慎重に検討すること。
また、精神障害事案において、手待時間が多い等労働密度が特に低い場合には、心理的負荷の評価に当たり考慮する必要があることに留意すること(問5参照)。
(調査の留意点)
警備日誌、警備記録、出勤簿、勤務割、警備規定等の客観的な記録を収集すること。
また、請求人、事業場関係者への聴取等により、警備規定の内容、仮眠中の労働要員の確保状況、仮眠中の業務への従事状況・頻度、仮眠場所の指定、仮眠時間中の外出や更衣の可否等自由利用の状況、使用者からの指示や命令及び使用者の認識等について確認すること。
(参考)
1 裁判例
【平成14年2月28日付け最高裁判所第1小法廷判決/平成9年(オ)第608号、平成9年(オ)第609号】
(争点:割増賃金請求)
施設警備員の仮眠時間が労働時間であるか否か
(判決概要)
本件仮眠時間中、各ビルの仮眠室において、監視又は故障対応が義務付けられており、警報が鳴る等した場合は直ちに所定の作業を行うこととされているが、そのような事態が生じない限り、睡眠をとってもよいことになっている。配属先のビルからの外出を原則として禁止され、仮眠室における在室や、電話の接受、警報に対応した必要な措置を執ること等が義務付けられ、飲酒も禁止されている。
もともと仮眠時間中も、必要に応じて、突発作業、継続作業、予定作業に従事することが想定され、警報を聞き漏らすことは許されず、警報があったときには何らかの対応をしなければならないものであるから、何事もなければ眠っていることができる時間帯といっても、労働からの解放が保障された休憩時間であるということは到底できず、(中略)。
不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。
本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり、実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから、本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。
したがって、上告人ら(労働者)は、本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被上告人(使用者)の指揮命令下に置かれているものであり、本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。
【平成25年2月13日付け仙台高等裁判所判決/平成24年(ネ)第92号】
(争点:割増賃金請求)
施設警備員の仮眠時間が労働時間であるか否か
(判決概要)
最低4名以上の警備員が配置され、仮眠・休憩時間帯においても、そのうち1名が守衛室で監視警備等業務に当たり、1名が巡回警備業務に当たる傍らまたは守衛室に待機して、突発的な業務が生じた場合にこれに対応する態勢がとられていたということができる。仮眠時間は守衛室と区画された仮眠室において制服を脱いでパジャマ等に着替えて就寝しており、(中略)警備員が仮眠時間中に実作業に従事した件数は、1人当たり平均にすると1年に1件にも満たず、(中略)。
本件において、仮眠・休憩時間中に実作業に従事することが制度上義務付けられていたとまではいえないし、少なくとも仮眠・休憩時間中に実作業に従事しなければならない必要性が皆無に等しいなど、実質的に仮眠・休憩時間中の役務提供の義務付けがなされていないと
認めることができる事情があったというべきである。
【平成31年3月11日付け大阪地方裁判所判決/平成29年(ウ)第39号】
(争点:療養補償給付の不支給処分取消等請求(脳・心臓疾患)
駅で切符等を販売している労働者の仮眠時間が労働時間であるか否か
(判決概要)
①(中略)一昼夜勤務(※)における仮眠については、○○駅から徒歩5分程度のところにある宿舎が用意されており、1人部屋又は2人部屋があり(中略)、シングルベッドが各自に1つ設置され、空調設備及び風呂も備え付けられていることが認められ、同宿舎の状況からすると、従業員が仮眠を取るのに特段の不備・不足があるとは認められないこと、②原告を含む従業員は、同仮眠時間を同宿舎の部屋で過ごしており、その時間内は、緊急の連絡が入ることはなく、業務から完全に解放されていたと認められること、③(中略)一昼夜勤務については、「早起き」及び「遅起き」の各シフトが設けられており、(中略)それぞれのシフトにおける業務内容等に照らしても、特段、所定の仮眠時間が確保できない状況にあったとは認められないこと、以上の点に鑑みれば、一昼夜勤務において、原告(労働者)が十分に仮眠時間を確保できていなかったとは認められない。したがって、仮眠時間を労働時間として把握すべきであるとの原告の上記主張は採用できない。
本件疾病発症前6か月間における原告の勤務は、一昼夜勤務と日勤勤務が混在するシフト制勤務であり、そのうち、勤務時間が深夜に及び拘束時間が24時間を超える一昼夜勤務の割合の方が日勤勤務よりも多かったことが認められる。しかしながら、(中略)、①原告の勤務時間は1か月毎のシフト表によって予め決められており、前月20日頃に作成され、同シフト表完成後に変更や組替えが行われることはほとんどなかったこと、②一昼夜勤務はおおむね週に2回、多くとも週3回までであり、一昼夜勤務明けの日は非番又は休日が設定されて、次の勤務までの休息時間が一定程度確保されていたこと、以上の点に鑑みると、原告の指摘する、深夜時間帯の不規則勤務が招く人間の生物的なリズムの乱れやそのことによる影響の点を踏まえたとしても、客観的にみて、上記の業務形態によりもたらされる負荷が、本件疾病を発症させる程度に重いものであったとまでは認められない。
※勤務時間午前9時30分から翌日午前9時45分まで休憩及び仮眠時間合計8時間15分(休憩時間合計3時間30分、仮眠時間4時間45分)なお、一昼夜勤務には、仮眠時間が午後11時30分から翌日午前4時15分までの「早起き」と、午前0時45分から翌日午前5時30分までの「遅起き」の2種類があった。
問8 裁量労働制(※1)や事業場外労働に関するみなし労働時間制(※2)を採用している場合、労災認定実務において
(1)労働時間はどのように評価するのか。
(2)給付基礎日額はどのように算定するのか。
(答)
(1)脳・心臓疾患、精神障害の労災認定における労働時間の評価は、実労働時間を対象とするものであることから、みなし労働時間制を採用している場合であっても被災労働者の労働時間の把握を行い、その労働時間による業務の負荷の評価を行うこととなる。
しかしながら、みなし労働時間制が採用され、かつ、被災労働者の労働時間が把握できない場合は、みなし労働時間制によりみなした労働時間により推計すること。なお、事業場外での移動時間については、問9を参照とすること。
(2)被災労働者の給付基礎日額の算定に当たっては、みなし労働時間制が適法に運用されている場合には、みなした労働時間に基づき賃金額を算定すること。ただし、事業場外に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務であることから、当該制度が適法に運用されていたか慎重に検討すること。
※1 裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制がある。
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度である。
(参照:労働基準法第38条の3)
企画業務型裁量労働制とは、対象業務の存在する事業場において、企画、立案、調査及び分析の対象業務を行なう労働者について、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定し、使用者が具体的な指示をしない制度であり、労使委員会の設置、労使委員会における裁量労働に関する決議及びその届出が必要で、当該業務、業務に必要な時間等を決議した場合、その業務に従事した労働者は決議で定めた時間労働したものとみなすこととなる。(参照:労働基準法第38条の4)
※2 事業場外労働に関するみなし労働時間制とは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の直接的な指揮命令が及ばないため労働時間を算定することが困難な業務に従事した場合に、あらかじめ決められた労働時間を労働したものとみなす制度である。
(参照:労働基準法第38条の2)
事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用される事業場外の業務に従事した場合における労働時間の算定には、①所定労働時間労働したものとみなす場合と、②事業場外の業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要である場合に、その業務の遂行に通常必要とされる時間(以下「業務の遂行に通常必要な時間」という。)労働したものとみなす場合がある。
②の場合において、「業務の遂行に通常必要な時間」とは、通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間であり、業務の遂行に通常必要な時間労働したものとみなす場合には、事業場外労働に必要とされる1日の時間数について、業務の実態を最もよく分かっている労使間で、その実態を踏まえて協議した上で決めることが適当であるため、労使協定を締結することを要件にしている。
①の所定労働時間労働したものとみなす場合は、労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合に、事業場内での労働時間を含めて、所定労働時間労働したものとみなすこととなる。一方で、②の業務の遂行に通常必要な時間労働したものとみなす場合は、労働時間の一部を事業場内で労働した場合には、その時間について別途把握しなければならず、事業場内で労働した時間を含めてみなすことはできない。
また、事業場外労働に関するみなし労働時間制を採用していても、実態として使用者の具体的な指揮命令を受けていると認められる場合には、事業場外労働に関するみなし労働時間制が適法に運用されているとは判断できないことから、原則的な労働時間制度に基づき労働時間を算定することとなる。
(調査の留意点)
就業規則、労使協定、出勤簿、業務日報、事業場への入退場記録、パソコンの使用状況のログ、メールの送信記録、裁量労働制対象者の健康及び福祉を確保するための措置として把握している勤務状況、ETCの入場出場記録、旅券や領収書等の出張の清算に係る書類等の客観的な記録を収集すること。
また、請求人、事業場関係者からの聴取等により、労働の実態、実労働時間の把握の可否、収集した記録の評価等を確認し、被災労働者の実労働時間について検討すること。
(参考)
1 労働保険審査会裁決
【平成27年労第304号】
(争点:遺族補償年金等の支給に関する給付基礎日額の取消請求(脳・心臓疾患)
事業場外のみなし労働時間制を適用することは妥当か否か
(裁決概要)
会社においては、業務日報を用いて、業務内容のほか訪問先やその時刻等を報告させているほか、顧客や上司等との連絡をするために使用する目的で携帯電話を貸与していたことからすると、たとえ、業務日報が毎日作成されておらず、時間や訪問先に記載漏れがあるなど不完全なものであり、また、携帯電話の貸与が勤務実態を把握することを意図したものではなかったとしても、これらの手段により、上司等が具体的な指示を行っていたことをうかがわせる事項も認められるところであり、被災者の労働時間が算定し難い場合に該当するものとして、直ちに事業場外みなし労働時間制が適用されるとするには疑問が残る。
2 参考事例
事例2参照
問9 移動時間は労働時間に該当するか。
(答)
移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。
この基本的な考え方により、所定労働時間内に業務上必要な移動を行った時間については、一般的には、労働時間に該当すると考えられるが、所定労働時間外であっても、自ら乗用車を運転して移動する場合、移動時間中にパソコンで資料作成を行う場合、車中の物品の監視を命じられた出張(※)の場合、物品を運搬すること自体を目的とした出張の場合等であって、これらの労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたものであれば、労働時間として取り扱うことが妥当であり、労働時間に該当するか否かを、実態に応じて個別に適切に判断すること。
また、休日の出張の取扱いは、昭和23年3月17日付け基発第461号・昭和33年2月13日付け基発第90号を参考にすること。
なお、出張や事業場外の移動時間が労働時間に該当しない場合であっても、脳・心臓疾患の請求事案に当たっては、移動時間及び移動時間中の状況の観点等から、労働時間以外の負荷要因である「出張の多い業務」としての評価を十分に検討すること。
※出張とは、一般的に、使用者の指揮命令により、特定の用務を果たすために通常の勤務地を離れて用務地へ赴き、用務を果たして戻るまでの一連の過程をいう。
(調査の留意点)
移動時間についても、出張先や事業場外での労働実態を明らかにするため、業務日報、パソコンのログ、メールの送信記録、ETC等の入場出場記録、旅券や領収書等の清算に係る書類等の客観的な記録を可能な限り収集すること。
また、請求人、事業場関係者への聴取等により、出張や事業場外における移動手段、移動手段の指示・指定の有無、携行物や運搬物、移動時間中の業務の従事状況、移動中の自由利用が保障されているか否か、使用者からの指示や命令及び使用者の認識等を確認すること。
(参考)
1 労働保険審査会裁決
【平成29年労第118号】
(争点:休業補償給付等の支給に関する給付基礎日額の取消請求)
会社に集合し、一定の作業を行った後に建設現場に移動する場合、どこから労働時間に該当するか
(裁決概要)
会社事務所に出勤した際及び現場作業終了後会社事務所に戻った際に一定の作業を行うことが常態であったものとみるのが相当である。
そうすると、請求人は、使用者の明示または黙示の指示により会社事務所に出勤し、準備作業に従事した後、現場へ移動しているものであって、会社事務所に出勤し準備作業を開始した時点をもって始業時刻とされるべきであり、同様に、現場から会社事務所に戻って後始末作業を終了した時点をもって終業時刻とされるべきものとなる。したがって、会社事務所と現場を会社所有の自動車で往復する時間については、引き続き業務に従事していたものとみなすことが相当であり、その移動中自動車の運転を行っていたか否かにかかわらず、当該所要時間については、労働時間と判断すべきものとなる。
2 参考事例
事例2、事例7参照
問10 出張先の宿泊施設で行った作業は労働時間に該当するか。
(答)
労働時間は、使用者の指揮命令の下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたか否かを確認し、労働時間に該当するか個別具体的に検討すること。(参照:平成29年1月20日付け基発0120第3号別添「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
出張宿泊先において、その日の活動を日報にまとめて報告する必要がある場合や翌日の活動のための資料を出張先で作成する必要がある場合等労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたと認められる場合には労働時間に該当すると考えられること。
(調査の留意点)
業務日報、作成された成果物、パソコンの使用状況のログ、社内システムへの外部パソコン等からのアクセスログ、メールの送信記録、ファイルの更新記録等を収集すること。
また、請求人、事業場関係者への聴取等により、出張先の宿泊施設で行わなければならない作業の有無、使用者の指示や、出張先の宿泊施設で作業を行うことに係る使用者の認識等について確認すること。
1 参考事例
事例2参照
問11 いわゆる持ち帰り残業は労働時間に該当するか。
(答)
いわゆる持ち帰り残業は、必ずしも使用者の指揮命令の下に置かれているとはいえないものもあり、直ちに業務による負荷として評価することが必ずしも適切ではない場合があるが、事実認定の結果、使用者の指揮命令の下に置かれたものと判断される場合には、労働時間と評価すること。具体的には、自宅等に仕事を持ち帰って行うことを使用者に義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたことが確認された場合であって、かつ、客観的な資料により持ち帰り残業の成果が特定できるようなときには、労働時間に該当すると考えられることから、個別事案ごとに労働時間として評価するか否か十分に検討すること。
(調査の留意点)
持ち帰り残業が労働時間に該当するか評価するに当たっては、持ち帰り残業を行った時間が使用者の指揮命令の下に置かれていたか否かを検討するため、請求人、事業場関係者への聴取等により、使用者からの指示や命令及び使用者の認識、自宅に仕事を持ち帰って行うことを使用者に義務付けられ、又は余儀なくされたものであったかを確認すること。
また、パソコンの使用状況のログ、社内システムへの外部パソコン等からのアクセスログ、メールの送信記録、ファイルの更新記録、持ち帰り残業によって作成された成果物等を収集すること。
なお、持ち帰り残業は、自宅等での作業であるため、労働時間に該当するかは適切に判断すること。
(参考)
1 裁判例
【平成16年6月10日付け神戸地方裁判所判決/平成14年(行ウ)第32号】
(争点:休業補償給付等の不支給取消請求(脳・心臓疾患)
自宅で行った全社発表(※1)及び専門職発表(※2)の各準備作業が労働時間に該当するか否か
(判決概要)
原告(労働者)は、全社発表及び専門職発表の各準備作業を並行して進めることを余儀なくされ、特に全社発表の準備に関しては、いかに分かりやすい発表にするかが指導のテーマとされ、それに沿って、アニメーションや図表の作成、改変についての具体的な指示、指導が繰り返しなされ、〇部長から次回の指導期日を告げられては、次回までにレベルアップするようにと指示され、自宅での準備作業を当然の前提としたパワーポイントのデータの改善や発表における説明の工夫が求められていたこと、○○工場では三六協定が厳格に守られており、原告は、工場内で遅くまで準備作業をすることができず、自宅のパソコンで修正作業を行わざるを得なかったこと、〇部長から指示された事項について自宅で改善作業が行われ、また、分かりやすい発表にするための練習行為が自宅においてなされていることなどが明らかであるところ、全社発表及び専門職発表の準備については、その作業の膨大さ及びそれに見合う勤務時間が労働時間内に確保されていなかったことをも考慮すると、自宅作業によって補完することにつき、事業主による黙示の業務命令があったものと認められる。他方、○○工場の発表準備(各工場での発表会の準備)については、直前のころ、午前3時ころまで原告が自宅で作業をしていたことが認められるものの、上司からの明確な指示は何もなされておらず、この期間の自宅での作業は業務とは解しがたい。
※1 全社発表は、生産の効率化や商品の品質の向上、生産ラインのトラブルの低減等を実現するための研究、実践を行うグループ改善活動の成果について、各工場で発表会を行い、各工場の最優秀賞を受賞したチームが、工場代表として全社レベルでの発表会にてさらに発表を行うもの。
※2 専門職発表は、会社の事業本部内で組織される「専門職委員会」が統括、主催する発表会で、各工場の部署や研究所から発表者が選抜され、発表者が一技術者として取り組んでいるテーマについて発表を行うもの。
2 労働保険審査会裁決
【平成25年労第223号】
(争点:療養補償給付等の不支給取消請求(脳・心臓疾患)
自宅に持ち帰って行った仕事は労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
請求人は、持ち帰り残業によって作成したとする資料項目とその作成日を記載した書面を提出しているものの、その具体的な内容や勤務時間外に作成されたことを裏付けるパソコンの更新日時などの客観的な資料は全く提出しておらず、また、明確な業務命令に基づいて行われたことを裏付ける資料も見当たらないことから、請求人の主張は採用できない。
3 参照事例
事例2、事例5参照
問12 自宅で行うテレワーク(※)は労働時間に該当するか。
(答)
労働者が自宅でテレワークを行う時間についても、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる場合は、労働時間に該当する。
※「テレワーク」は、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務であり、業務を行う場所に応じて、労働者の自宅で業務を行う在宅勤務、労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うモバイル勤務といった分類がある。(参照:令和3年3月25日付け「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)
(調査の留意点)
業務日報、自己申告記録、パソコンの使用状況のログ、社内システムへの外部パソコン等からのアクセスログ、メールの送信記録、サテライトオフィスの使用状況等の客観的な記録を収集し、必要に応じて、請求人、事業場関係者からの聴取により労働時間に該当するか確認すること。
1 参考事例
事例7
問13 労働時間外に緊急事態が起きた時のために携帯電話を持ち、緊急時には対応を行う電話当番が決められているが、当該電話当番中の時間は労働時間に該当するか。
(答)
労働時間は、使用者の指揮命令の下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたか否かを確認し、労働時間に該当するか個別具体的に検討すること。
電話当番を行っている時に実際に電話がかかってきて、緊急対応を行った場合には、その対応を行った時間は労働時間に該当すると考えられること。
電話当番日に電話がかかってくるか待機している時間が労働時間に該当するか否かについては、電話当番の頻度、電話当番中の制約の程度(行動の制約の有無や拘束の度合い等)、電話に出られなかった場合の制裁の有無、緊急時の電話対応を行う頻度・対応に要する時間等を検討し、実態として使用者の指揮命令下に置かれていると判断される場合には、労働時間に該当する。
一方、例えば、週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決められているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間は労働時間には該当しないと考えられること。
また、労働時間外に自宅等で電話やメールの対応を行った時間が労働時間に該当するか否かについては、労働時間外であっても当該電話やメール対応を行うことを使用者から義務付けられ、又は対応することを余儀なくされていたような場合には労働時間に該当すること。
(調査の留意点)
電話当番表、電話やメールの内容、緊急対応記録、電話当番に係る規則等の客観的な記録を収集すること。
また、請求人、事業場関係者からの聴取等により電話当番の頻度、電話当番時の制約の程度、必要性の有無、緊急対応した内容・頻度、電話に出なかった場合の不利益の有無、電話に出なかった場合に誰が対応するのか、使用者からの指示や命令及び使用者の認識等を確認すること。
(参考)
1 労働保険審査会裁決
【平成30年労第194号】
(争点:遺族補償給付等の不支給取消請求(精神障害)
緊急待機当番の自宅待機の時間が労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
緊急待機当番は、平日の勤務終了後から翌日の勤務開始まで及び休日に2人1組で割り振られ、通信設備の故障等の緊急連絡があった場合に現場に赴き修理等の対応を行うものであり、緊急待機当番中は飲酒や遠方への移動はできないものの、外出を含め行動に制限はなく自由となっている。また、被災者は、この緊急待機当番を、○年○月○日から同年○月
○日までの間に30回割り振られているが、緊急連絡はまれであって、実際に故障対応等に出動しているのは4回であり、当該出動時間は時間外労働として算定している。そうすると、当審査会としても、緊急待機当番中に被災者が使用者の指揮命令下に置かれていたとはいい難く、緊急待機当番中の時間を全て労働時間とみることはできない。
【平成29年労第177号】
(争点:療養補償給付等の不支給取消請求(精神障害)
モバイル当番の日の待機は労働時間に当たるか否か
(裁決概要)
(請求人は、)労働時間について、モバイル当番の日の待機時間も全て労働時間に算入すべきであると主張するが、自宅においてときどきメールをチェックするものであり、障害が発生して対応する場合でも、実際に作業に要した時間はせいぜい1時間30分程度であると認められることから、自宅での待機時間全てを労働時間とみることは適当ではなく、請求人の主張は採用できない。
2 参考事例
事例7参照
問14 所定の勤務が終了した後に行う宿直(※)勤務はどのように評価するのか。
(答)
宿直勤務であっても、突発的に通常業務を行った場合、通常業務を行った時間は通常の労働時間に該当する。
また、宿直勤務中、夜間に十分な睡眠時間が確保できず、常態として昼間と同様の勤務に従事する等宿直の許可基準を満たさないような態様の宿直勤務は、通常の労働時間に該当する。
脳・心臓疾患事案であって、例えば、睡眠設備が設けられ、現に睡眠を取ることができるような場合など実態として業務の過重性がほとんどない態様の宿直勤務中の時間は、業務の過重性を評価する労働時間からは除外して評価し、労働時間以外の負荷要因に該当するかを含め、宿直勤務に係る負荷について別途検討すること。
精神障害事案においては、手待時間が多い等により労働密度が特に低い場合には、心理的負荷の評価に当たり考慮する必要があることに留意すること(問5参照)。
(調査の留意点)
宿直日誌、宿直勤務割等の客観的な記録を収集すること。また、請求人、事業場関係者への聴取等により、宿直の勤務態様(常態としてほとんど労働する必要のない勤務か)について確認すること。
※宿直とは、一般的には、昼間通常勤務をした労働者が当該事業場の所定終業時刻から翌日の所定始業時刻まで、事業場内の定時的巡回、緊急の文書又は電話の収受、非常事態の発生等に備えて勤務することをいい、常態としてほとんど労働する必要がない勤務のことをいう。
宿直勤務については、労働基準法第41条第3号により、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合には、労働時間、休憩、休日に関する規定は適用されないこととなっている。所定労働時間の前後に密着して本来の業務の延長として行われる業務や短時間の郵便又は電話の収受、非常事態の発生等に備える待機等は宿直勤務には該当しない。
【参照:労働基準法第41条第3号・労働基準法施行規則第23条・労働基準法施行規則第34条】
1 参考事例
事例6参照
参考事例集
事例1 トレーラー運転手【脳・心臓疾患事案:業務上】客観的記録がない時間の評価・休憩と手待時間
PDF Embedder requires a url attribute事例2 広域ルート営業【脳・心臓疾患事案:業務上】移動時間・持ち帰り残業・事業場外のみなし労働時間制
事例3 建設現場施工管理者【脳・心臓疾患事案:業務上】労働時間管理不適正・所定終業時刻後の労働・事業場作成労働時間集計表の活用
事例4 美容師【精神障害事案:業務上】休憩と手待時間・教育訓練等の時間
事例5 ウェブデザイナー【精神障害事案:業務上】朝礼の時間・休憩・休日労働・持ち帰り残業
事例6 医師【精神障害事案:業務上】労働時間管理不適正・所定労働時間を特定・所定始業時刻前の労働・所定終業時刻後の労働・休憩・休日労働・宿直勤務
事例7 IT技術者【精神障害事案:業務上】所定始業時刻前の労働・休憩・緊急時対応のための電話当番・移動時間・指定時刻に自宅で行う作業・テレワーク
※参考事例集は、実際の認定例を踏まえ、一部に改変を加えて作成したものであり、事業場名、人名等は全て架空のものである。