唯一韓国だけ、『職業がん』の発生が年間200人台?実際は9600人に迫る 2021年3月25日 韓国の労災・安全衛生
4%。WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)が、毎年発生する新規がん患者の内、『職業性がん』患者と推定する比率だ。しかし、唯一韓国はこの統計と大きく離れた数値が集計されている。2018年の一年で新しくがんの診断を受けた患者の内、職業性がんは0.08%に止まる。韓国の労働者の職業性がんの発病だけが少ない理由はないので、それだけ産業災害と認められるケースが少ないのではと疑われる。
専門家たちは24日、『我が国の職業性がんの実態と改善方案』討論会で、産災認定の現実と代案を議論した。市民団体の「職業性・環境性がん患者探し119」と、共に民主党のノ・ウンレ、チョン・チュンスク、正義党のカン・ウンミ議員室が主催した。
■『職業性がん』、韓国だけが少ない?
この日の討論会で提案した労働環境健康研究所のイ・ユングン所長は「WHOは毎年の新規発生がん患者の4%程度を職業性がんと推定していることを参考に、これを我が国の毎年の新規がん患者24万人に適用すると、職業性のがん患者の規模は9600人のレベル」と推定した。「それにも拘わらず、我が国で毎年職業性がんと認められる患者は200人ほど」と指摘した。職業性がんの産災承認件数を見ると、2015年は83件、2016年は113件、2017年は178件、2018年は205件と毎年増加する傾向だが、依然として新規がん患者の0.01%にも達しない。
イ所長は「産災死亡者の割合で集計しても、韓国で認められる職業性がんは極めて珍しいということが分かる」と話した。2017年のILOの報告書では、全世界で産業災害よって年間273万人が死亡するが、死亡者全体の26%が職業性のがんで亡くなっていると集計している。国際産業保健委員会のズッカ・タカラー会長が2014年に研究した結果を見ると、ヨーロッパでは産災死亡者のうち職業性がんが原因となったケースは53%に達した。一方、2019年の基準で、我が国の産災死亡者の内、職業性のがんと認定されたケースは6%(125人)に過ぎず、ヨーロッパと世界の統計に比べて極めて低いレベルだ。
■国内の職業性がん、どの職種に出ているか
韓国で職業性がんは様々な職種に出現している。「職業性がん119」の、昨年から今日までに職業性がんで産災を申請した21人の資料を見ると、製鉄所に30年余り働いて、肺がん、ルーゲリック病、肺線維症などを病んでいる者が13人だった。また、ソウルのある高等学校で3Dプリンタのプリンティング作業をした教師3人が肉腫がんと診断された。電気員として働いた労働者3人は、それぞれ肺がん・脳腫瘍・白血病を病んでいる。宝石の加工をしたある労働者は白血病の発病で、プラント建設業界で働いた労働者は細胞リンパ腫と診断され、それぞれ産災を申請をした。半導体など電子製品製造業の職業性がんの発病も広く知られている。「半導体労働者の健康と人権守り」(パノリム)の集計を見ると、現在まで白血病などの職業病で156人が産災申請をし、70人が産災を認められた。そこにはがんだけでなく、重症疾患と認められる事例まで含まれた。
2019年の勤労福祉公団・勤労福祉研究院の『職業性がんの療養決定事例と判例分析研究』を見ると、2015年から2018年まで、職業性がんの産災申請の比率は、製造業(42.7%、405件)と鉱業(27.4%、260件)が最も多かった。承認率は、鉱業が90.4%で最も高く、建設業(75.3%)、製造業(55.8%)、輸送倉庫および通信業(50.0%)の順だった。申請された件数を職種別に見ると、単純労務従事者(47.5%、452件)、技能員と関連技能従事者(17.6%、167件)、装置・機械操作および組み立て従事者(16.3%、155件)の順だった。
■国内で職業性がんの認定が少ない理由と対策は?
このように国内でも様々な分野で職業性がんの発病が確認されているのに、外国よりも申請と認定の事例が少ないのには、職業性がんの発病の特性が一役買った。職業性がんは有害物質に曝露した後、10~40年後に発症するケースが多い。こういった理由で産災認定が難しい面があったということだ。イ所長は「退職者と死亡者、非正規職の下請け労働者などは、職業性がんが発病しても産災申請などの死角地帯にいることが多い」と指摘した。
産災申請に不利益となる既存の企業文化があるところに、企業・雇用主ががんの発病の可能性について正しく教育をしていないことも背景に挙げられる。がんが発病しても、労働者が産災申請をする気にならなかったり、敬遠する結果に繫がったということだ。クォン・ドンヒ労務士は「国内で職業性がんの産災申請が少なかったのは、軍事的な労務管理文化が会社を支配し、今でも変わっていないため」と話した。続けて「韓国で労働者は、職業病を認識したり教育を受ける機会がなかった。例えば、製鉄所でも、具体的な発がん物質と職業病についての教育と案内は一度もなかった。3Dプリンタについても、政府はこの機器の使用と教育を奨励しながら、職業性がんが発症する可能性と有害性については、教師たちにどのような案内もしなかった」と指摘した。
24日、保健医療労組の生命ホールで『我が国の職業性がんの実態と改善方案』討論会が行われた。市民団体の「職業性・環境性がん患者探し119」と、共に民主党のノ・ウンレ、チョン・チュンスク、正義党のカン・ウンミ議員室が主催した。/パク・ジュンヨン記者
代案として職業性がんの認定基準を拡げて、医療機関の職業性がんの確認システムを構築する方法が挙げられた。イ所長は「発がん物質の対象を規定する有害因子の範囲を拡大し、病院が労働者を診療する時、職業性のがんなのかをチェックして申告するシステムを構築すべきだ」と話した。パノリムのチョ・スンギュ常任活動家(労務士)も「会社の営業秘密などの情報公開拒否のために、依然として職業病の立証は難しい作業で、特に認定事例のない産業・工程・業務・疾病などに関しては、立証の難易度が極めて厳しい。職業性がんに対する社会的な知識の限界を勘案すれば、職業性がんは『因果関係』ではなく、『可能性』を基準として判断する必要がある」と話した。クォン労務士も「一定の基準を充足すれば、疾病と業務の因果関係を認める『推定の原則』を具体化し、職業性がんが認められるように法律を作るべきだ」と指摘した。
ビッグデータを活用して職業性がんを先制的に捜し出すことも、代案として示された。例えば、自身の職業群を入力すれば、それと似た職業性がんの事例を見付けて、産災申請の内訳と承認の有無などを検索できるシステムを作ることができるということだ。以前に、産業安全保健研究院が国民健康保険公団の資料を利用して、業種別の職業性がんの発病を研究した結果も出している。研究に参加した延世大医大のユン・ジンハ教授は「がんに罹った勤労者が手を差し出すのを待つか、探しに出掛けるのかに悩む理由はない。データで職業性がんを探しに出て、管理すべきだ」と話した。
2021年3月24日 ハンギョレ新聞 パク・ジュンヨン記者