COVID-19:医療労働者の労働安全衛生-労働安全衛生の主要考慮事項を含めた医療労働者の権利、役割及び責任(暫定ガイダンス 2021年2月2日 国際労働機関(ILO)/世界保健機関(WHO))

キーポイント
・COVID-19[新型コロナウイルス感染症]の状況下においても、医療労働者は、人間らしく、健康的で安全な労働条件に対する権利を享受できなければならない。
・医療労働者のCOVID-19の一次予防は、リスクアセスメントと適切な諸措置の導入に基づかなければならない。
・暴力、ハラスメント、汚名、差別、重い作業負荷及び個人保護機器(PPE)の長期使用を含め、CO
VID-19パンデミックによって増幅された、その他の職業リスクが対処されなければならない。
・すべての医療労働者に対して、労働衛生サービス、メンタルヘルス・心理社会的支援、適切な清潔、衛生及び休憩設備が提供されなければならない。
・医療施設は、感染予防・管理のためのプログラムと連動した労働衛生プログラムをもっていなければならない。
・使用者には、医療労働者に対する職業リスクを最小限にするために、あらゆる必要な予防・保護措置がとられていることを確保する全体的責任がある。
・医療労働者には、労働安全衛生保護のための確立されたルールにしたがう責任がある。

はじめに

この文書は、2020年3月18日の世界保健機関(WHO)の暫定ガイダンス「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アウトブレイク:労働安全衛生のための主要考慮事項を含めた医療労働者の権利、役割及び責任」[2020年4月号参照]のアップデートである。新たな及び現出しつつある証拠に基づいたこのバージョンは、COVID-19パンデミック下における医療労働者及び労働衛生サービスのための労働安全衛生対策に関するガイダンスを提供するものである。また、国際労働機関(ILO)の基準にしたがって、医療労働者のための労働安全衛生に関する権利と責任についても情報を更新する。

この文書は、以下のWHO暫定ガイダンスを補足し、また、それらと組み合わせて活用されるべきである-医療労働者の曝露後リスクアセスメント及び感染管理のための勧告を提供した、2020年10月30日の「COVID-19下における医療労働者の感染の予防、把握及び管理」、医療労働者の計画、支援及び、能力構築のための戦略的方針勧告を含んだ、2020年12月3日の「COVID-19下における医療労働力方針及び管理」。

このガイダンスは、既存のWHOとILOのガイダンス文書のレビュー、COVID-19パンデミックによって増幅されている職業リスクに関する迅速なレビュー及び専門家の独立した国際的なグループの専門的意見に基づいて策定された。国及び地方レベルの公共・民間医療施設の使用者と医療施設管理者、医療労働者とその代表、労働安全衛生専門家、感染予防・管理専門家、及び政策決定者を対象にしている。

背 景

医療労働者は、COVID-19に対応する状況下において、疾病、傷害、また死亡さえものリスクに自らをさらす職業ハザーズに曝露しているかもしれない。こうした職業リスクには、(a)COVID-19への職業感染、(b)PPE(個人保護機器)の長期使用による皮膚障害や熱ストレス、(c)消毒液の使用増による毒素への曝露、(d)心理的苦痛、(e)慢性疲労、並びに(f)汚名、差別、身体的・心理的暴力及びハラスメントが含まれる。

ⅰ 医療労働者とは、その主な目的が健康の改善である労働活動に従事するすべての人々である。これには、医師、看護士、助産師、公衆衛生専門家、検査・保健及び医療・非医療技術者、介護労働者、地域保健労働者、治療者及びいくらかの伝統医学実践者が含まれる。また、清掃者、運転手、病院管理者、地区保健管理者やソーシャルワーカー、及び健康に関連した活動分野のその他の職業グループも含まれる。医療労働者には、緊急ケア施設で働く者だけでなく、長期ケア、公衆衛生、地域密着型ケア、ソーシャルケアやホームケア及び、「全経済活動に関する国際標準産業分類(ISIC)第4次改訂版」セクションQ「保健衛生及び社会事業」によって定義された保健・社会事業部門におけるその他の職業も含まれる。

こうしたハザーズを緩和して、医療労働者の健康、安全とウエルビーイングを守るには、感染予防・管理、労働安全衛生、医療労働力管理及び心理社会的支援の、よく調整された包括的な諸措置を必要とする。不十分な労働安全衛生対策は、医療労働者の労働関連疾患率の増加、高い率の欠勤、生産性の低減や医療の質の低下につながる可能性がある。

職業感染

SARS-CoV-2への職業曝露

WHOの2020年12月1日の暫定ガイダンス「COVID-19下におけるマスクの使用」は、COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2の感染に関する入手可能な証拠をまとめている。この証拠によれば、SARS-CoV-2は主として、感染者が他者と密接に接触した場合に人々の間でひろがる。ウイルスは、感染者が咳、くしゃみ、歌唱、大きく呼吸または会話をするときに、相対的に大きな「呼吸器飛沫」から相対的に小さな「エアロゾル」までの範囲の小さな液体粒子で、感染者の口または鼻からひろがる可能性がある。緊密な距離の接触は、口、鼻または眼を通じて、ウイルスの吸入または接種につながる可能性がある。

エアロゾル感染は、エアロゾルを生成させる医療措置が行われる特別な状況のなかで生じる可能性がある。エアロゾルを生成させる措置が行われていない医療環境におけるエアロゾル感染については、証拠は結論が出ていない。

感染者の身近な環境における媒介物(用具、調度品、聴診器または体温計など、生存ウイルスに汚染された可能性のある対象または物)経由の感染についての限定的な証拠がある。そのような感染は、媒介物に触れた後に、口、鼻または眼に触れることを通じて生じる可能性がある。

感染者が他者と一緒に長時間過ごす、屋内の混み合った換気の不十分な空間など、医療施設外の環境における感染についての証拠が現われつつある。これは、飛沫及び媒介物感染に加えて、エアロゾル感染の可能性を示唆している。

SARS-CoV-2への医療労働者の職業曝露は、医療施設や地域社会のなか、地域社会感染のある地域への労働に関連した旅行中、並びに職場へ及び職場からの通勤途中のいかなるときにも起こり得る。系統的レビューは、医療労働者の職業リスクが一定の臨床環境または最適でない手指衛生、長時間労働、若しくはPPEの不適切または最適でない使用またはPPEが利用できないことによって増加する可能性があることを示唆している。

SARS-CoV-2Pについての職場リスクアセスメント

SARS-CoV-2への医療労働者の職業曝露の可能性は、ウイルスに感染した者との直接、間接または緊密に接触する可能性によって決定される。これには、直接の身体的接触またはケア、汚染された表面・物との接触、適切な個人防護なしにCOVID-19患者にエアロゾルを生成させる措置を行うことを通じて、若しくは換気が不十分な屋内の混み合ったで感染者にかかわる作業を行うことが含まれる。職業曝露のリスクは、SARS-CoV-2の地域感染のレベルとともに上昇する。

使用者は、医療労働者及びその代表と協議のうえで、また感染予防・管理(IPC)及び労働衛生分野の専門家の支援を受けて、SARS-CoV-2についての職場リスクアセスメントを実施及び定期的に更新しなければならない。その目的は、様々な仕事、職務及び作業環境に関連した職業曝露の可能性のレベルを判定するとともに、リスクの予防・緩和並びに個々の医療労働者の作業への適合性及び作業への復帰の評価のための適切な諸措置を計画・実施することである。

様々な仕事または職務に対して、SARS-CoV-2への職業曝露の可能性について迅速なリスクアセスメントを実施する場合、使用者及び労働衛生サービスにとって、以下の職場リスクレベルの分類が役に立つかもしれない。

1. 低リスク-一般の人々または他者との頻繁緊密な接触がなく、SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる人々との接触の必要がない仕事または職務。

2. 中リスク-患者、訪問者、供給者及び同僚労働者と緊密頻繁な接触があるが、SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる人々との接触の必要がない仕事または職務。

3. 高リスク-SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる人々との緊密な接触若しくはウイルスに汚染された可能性のある表面または物との接触の可能性が高い仕事または職務。

4. 超高リスク-COVID-19罹患者にエアロゾルを生成させる措置が定期的に行われる環境、または、適切な換気なしの屋内の混みあった場所で感染した人々にかかわって働くなかで、SARS-CoV-2を含んだエアロゾルへの曝露のリスクのある仕事及び職務。

ⅱ これらのリスクレベルのなかで、「SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる」とした人々には、感染しているかもしれないが、発症前または明らかな兆候または症状のない無症候性の人々も含まれるかもしれない。

職場リスクのレベルは、たとえ同じ労働環境のなかであっても、医療労働者の職務及び役割によって異なっている可能性がある。したがって、職場リスクアセスメントは、各々の役割、職務や職務の組み合わせはもちろん、各々の具体的状況について実施されなければならない。

リスクアセスメントは、地域の疫学的状況、労働環境・職務の特異性、対策のヒエラルキー及びIPC対策の遵守レベルに注意しつつ、リスクのレベルに基づいた、曝露を回避するための予防・緩和措置につながらなければならない。上述の職場リスクレベルはまた、COVID-19ワクチンの配備が計画されていることから、優先グループを確認するうえでも有用であり得る。

表1は、COVID-19下におけるIPC及び労働衛生についてのWHOのガイダンス・勧告にしたがった、リスクレベルに応じた職務とSARS-CoV-2への医療労働者の曝露の予防・緩和のための諸措置の例を示している。

表1 職場リスクレベル、職務と対応する医療労働者の主なSARS-CoV-2職業曝露予防・緩和措置
リスクレベル
職務の例
予防・緩和措置の例

低レベル(注意)
[職務の例]
一般の人々または他者との頻繁緊密な接触がなく、SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる人々との接触の必要がない仕事または職務。例えば、テレヘルス[遠隔医療]サービス、疑われるまたは確認されたCOVID-19患者または接触者の電話インタビュー、個人または密度の低い事務所で働くこと。
[予防・緩和措置の例]
医療施設:
・可能かつ適当な場合には、リモート労働やテレサービスを導入する。
・再循環なしの自然または機械による換気を提供する。
・定期的な環境の清掃・消毒を行う。
・混雑・社会的混合を回避するための措置を導入するとともに、労働者に安全な物理的距離をとるよう促す。
・作業台や機器を共有しないようにする措置を導入する。
・柔軟な病気休暇方針を確立する。
労働者:
・調子が悪ければ家にとどまる。
・手指・呼吸器衛生を徹底する。
・共用区画や対面会議では布製マスクを着用する。

中リスク
[職務の例]
患者、訪問者、供給者及び同僚労働者と緊密頻繁な接触があるが、SARS-CoV-2に感染していると知られているまたは疑われる人々との接触の必要がない仕事または職務。SARS-CoV-2の地域感染が知られているまたは疑われる環境では、このリスクレベルは、安全な物理的距離を維持するのが困難な医療施設または社会内で、他の人々と頻繁緊密な労働に関連した接触のある労働者に適用されるかもしれない。地域感染がない環境では、このシナリオには、地域感染が知られているまたは疑われる地域から来る人々との緊密頻繁な接触が含まれるかもしれない。
[予防・緩和措置の例]
医療施設:
・実行可能で適当な場合にはテレヘルス・サービスを使って対面による外来通院に代わる手段を検討する。
・くしゃみ対策スクリーン、バリア、職場の改良や再循環なしの自然または機械による換気を提供する。
・COVID-19が疑われる患者の早期確認のためのスクリーニング・トリアージ及び迅速な感染源管理措置を実施する。
・定期的な環境の清掃・消毒を行う。
・訪問者の制限や患者立入禁止区画の指定など、混雑・社会的混合を回避するための措置を導入する。
・PPEを着用していない場所(例えば休憩室やカフェテリアの中)では、労働者に安全な物理的距離をとるよう促す。
・IPC訓練及び十分な質と量の適切なPPEを提供する。
・柔軟な病気休暇方針を確立する。
労働者:
・調子が悪ければ家にとどまる。
・手指・呼吸器衛生を徹底する。
・職務に応じて医療用マスクやPPEを着用するとともに、患者のケアの提供にあたって標準手順を適用する。
患者、訪問者及び供給者:
・手指・呼吸器衛生を徹底する。
・地域感染またはクラスター感染のある環境では、医療用または布製マスクを着用する。

高リスク
[職務の例]
COVID-19の兆候・症状のある患者の対面インタビューによる臨床トリアージ、スクリーニング・隔離のための区画の清掃、COVID-19の知られているまたは疑われる患者が使用する部屋または隔離区画への立ち入り、COVID-19の知られているまたは疑われる患者に対するエアロゾルを生成させる措置を伴わない身体検査・直接ケアの実施、呼吸試料の取り扱い、COVID-19患者の呼吸分泌物、唾液または廃棄物の取り扱い、運転手と乗客の間の物理的分離なしでCOVID-19の知られているまたは疑われる患者の搬送、COVID-19の疑われる患者の搬送手段の清掃
[予防・緩和措置の例]
医療施設:
・IPCについて工学的、環境的及び管理的管理を実施するとともに、十分な量と質の適切なPPEを提供する。
・気流について「クリーンからレスクリーンへ」方向に設計された再循環なしの強力な換気を提供する。
・定期的な環境の清掃・消毒を行う。
・混雑・社会的混合を回避するための措置を導入するとともに、必須でない労働者・訪問者を制限する。
・PPEの使用を含めた、定期的なIPC訓練を提供する。
・柔軟な病気休暇方針を確立する。
労働者:
・感染の可能性に応じたPPE(医療用マスク、ガウン、手袋、保護メガネ)を使用するとともに、患者のケアの提供にあたって標準手順を適用する。
・調子が悪ければ家にとどまる。
・手指・呼吸器衛生を徹底する。
患者、訪問者及び供給者:
・医療用または布製マスクを着用する。
・手指・呼吸器衛生を徹底する。

超高リスク
[職務の例]

エアロゾルを生成させる措置(例えば気管挿管、非侵襲的換気、気管切開、心肺機能蘇生、挿管前手動換気、喀痰誘発、気管支鏡検査、剖検手技、スプレー生成機器を用いた歯科措置)が頻繁に行われるところでのCOVID-19患者にかかわる作業、適切な換気なしの屋内の込み合った場所での感染した人々にかかわる作業
[予防・緩和措置の例]
医療施設:
・IPCについて工学的、環境的及び管理的管理を実施するとともに、十分な量と質の適切なPPEを提供する。
・再循環なしの高効率粒子状空気(HEPA)フィルター付き機械式換気を提供する。
・混雑・社会的混合を回避するための措置を導入するとともに、必須でない労働者・訪問者を制限する。
・定期的なIPC訓練及びPPEの着脱についての訓練を提供する。
・柔軟な病気休暇方針を確立する。
労働者:
・調子が悪ければ家にとどまる。
・手指・呼吸器衛生を徹底する。
・PPE(呼吸器N95またはFFP2またはFFP3、ガウン、手袋、保護メガネ、エプロン)を使用するとともに、患者のケアの提供にあたって標準手順を適用する。

IPC:感染予防・緩和;PPE:個人保護機器
ⅲ 詳細については、以下のWHO暫定ガイダンス文書を参照-「COVID-19下における職場での公衆衛生及び社会的諸措置の検討」(2020年5月10日)、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が疑われまたは確認された場合のヘルスケア中の感染予防及び緩和」(2020年6月29日)、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する個人保護機器の合理的使用及び深刻な不足期間中の考慮」(2020年12月23日)、「COVID-19の臨床管理」(2020年5月27日)、「COVID-19:医療施設における暖房、換気及び空気調節についての勧告」(2020年5月21日)、「COVID-19下におけるマスクの使用」(2020年12月1日)。

医療施設と地域社会におけるSARS-CoV-2感染に関する情報の透明かつタイムリーな普及は、あらゆるリスク範疇において、一次予防の不可欠な部分でなければならない。

年齢、既往症または妊娠のために、一部の医療労働者は重症のCOVID-19感染症にかかるリスクが相対的に高いかもしれない。そのような労働者は、WHOの勧告にしたがって、高リスクまたは超高リスクレベルの職務を行うことを要求されてはならない。

とりわけ学生、インターン、新卒者または時間がたったのちの復職者など、一部の医療労働者は、IPC[感染予防・緩和]手順に慣れていない、または新たに習得した技能の発揮中にミスをすることから、相対的に大きなリスクにさらされているかもしれない。WHOとILOの勧告にしたがって、定期的な支援的監督を提供しながら、適切な職務委任と役割割当が考慮されなければならない。

すべての医療施設は、換気システムの有効性を評価するために、専門家と協議しなければならない。自然、ハイブリッド(混合モード)または機械式換気に関するいかなる決定も、一般的な風向き、フロアプランや換気システムの必要性と費用を考慮しなければならない。エアロゾルを生成させる措置は、適切な特別の空気交換の能力と対策のとられた室内で行われなければならない。

医療労働者は、適切な防護なしにCOVI-19に職業または非職業曝露した場合には、報告するよう促されなければならない。そのような曝露は、WHOの勧告するプロトコルを使って、ケースバイケースに調査、評価及び管理されなければならない。感染を管理するフォローアップ措置と復職は、医療労働者の感染の予防、確認及び管理のためのWHOの勧告にしたがって決定されなければならない。

その他の職業感染

COVI-19患者にケアの提供中や必須の保健サービスの提供中に医療労働者は、血液感染性病原体や結核などの他の感染ハザーズに曝露するかもしれない。それゆえ、医療労働者の職業感染の予防と管理は、対策のヒエラルキー及び訓練された専門家が配置された労働衛生サービスとIPCプログラムの間の緊密な連携に留意しつつ、包括的なアプローチを必要とする。囲み①は、職業感染を予防するためのハザード対策のヒエラルキーを示している。

囲み① 職業感染を予防するためのハザード対策のヒエラルキー

職業感染の予防のための対策は、職業ハザーズへの曝露を予防するために一般に用いられる対策のヒエラルキーに合致することをめざさなければならない。対策のヒエラルキーは、個人防護の順守など、個人の行動に依存する対策だけに頼るのではなく、工学的対策や管理的管対策通じたすべての労働者の保護など、効果の高い対策に優先順位を与えるものである。

a)ハザードの根絶:労働環境における感染ハザードへの曝露を根絶することが、もっとも効果的な対策である。これは、リモートで働くこと、個人事務所からのテレヘルス・サービスの提供、またはテレビ会議を行うことを通じてかもしれない。

b)工学的/環境的対策:職場からハザードを根絶できない場合には、感染源の拡大及び労働環境におけるその濃度を回避または低減するための措置をとらなければならない。例えば、患者の流れや空間的分離が患者を隔離することにつながる構造設計の採用や病棟の設計・転用を通じて。適切な換気、衛生慣行とインフラ、「ふれなくてよい」技術、くしゃみ対策ガード・バリア、より安全な針装置や安全な医療廃棄物管理は、他の重要な要素である。

c)管理的対策:防護のための特別の訓練・技能のある必須の労働者だけに職場へのアクセスを制限する、適切な労働時間を確保する、勤務当番制にする、可能な場合には、労働者が感染の高い環境から低い環境にシフトするのを避けるなど、人々の働く方法を変える措置をとる必要があるかもしれない。
他の役立つ対策には、作業要求を満たすための人員増、休息、シフト間の休暇、適切な職務の割り当て、支援的監督、IPC慣行に関する「ジャストインタイム」訓練及びリフレッシュ訓練、パフォーマンス監視手順とフィードバックの提供、有給病気・休日休暇、並びに、収入を損なうことなく、労働者に調子が悪いときは家にとどまらせる方針、または自己検疫や自己隔離が含まれる。

d)PPEの最適な使用:リスクアセスメント、行われる手順と手順中の感染リスクの種類に基づいた適切かつ適切にフィットしたPPEの提供を含め、個々の医療労働者を防護するための諸措置がとられなければならない。PPEの適切な使用と廃棄に関する適切な訓練と監視も重要である。職業感染に対する保護のために使用されるPPEは、標準的技術仕様に従っていなければならない。

患者をケアするすべての状況において、WHOの勧告にしたがって、認識された感染源と認識されていない感染源双方からの血液感染性その他の病原体感染のリスクを低減するための標準的な注意事項が適用されなければならない。

COVID-19パンデミックの間、医療労働者は、国の予防接種プログラムとWHOの勧告で指定されているように、推奨されるワクチン接種を受け続けられなければならない。WHOはまた、医療労働者は季節性インフルエンザワクチンを摂取するよう促されるべきであると勧告している。

PPEの長期使用

原則的にPPE[個人保護機器]は、ハザードへの曝露が回避できないか、またはそうしないと管理できない場合に、短期間使用することを目的にしている。COVID-19下では、重い作業負荷、患者フローやPPE不足が、医療労働者にPPEを長期間着用することを要求するかもしれない。

研究結果は、手袋の長期使用と頻繁な手指衛生が、手湿疹を引き起こし、または既往の手湿疹を悪化させることを示唆している。医療労働者にラテックス・アレルギーがあれば、ラテックスではないまたはニトリルの手袋の使用が助言される。保湿クリームの頻繁な使用は、手の炎症を低減するよい慣行である。石油を含有する製品はラテックス手袋の機能を損なう可能性があり、皮膚のケアには避けなければならない。発疹または炎症性の皮膚症状が持続している医療労働者は、医療に照会する必要がある。

呼吸器や眼の保護のためのPPE(マスク、呼吸器やゴーグル)の長期使用は、皮膚損傷-かゆみ、発疹、にきび、圧力によるけが、接触性皮膚炎、じんましんや既往の皮膚疾患の増悪-も引き起こす可能性があるという証拠がある。皮膚損傷のリスクを低減するため、医療労働者に適切にフィットしたPPEを提供する、同じ部位に摩擦または圧力が持続するのを避ける、皮膚とマスクまたはゴーグルの間をすべりやすくし、また摩擦を低減するために、顔面保護機器を着用する前に保湿剤を使う、皮膚を傷つけ曇りを生じさせる可能性のあるきつすぎるゴーグルの使用を避ける、ことはよい慣行である。

PPEのフルセット(ガウン、マスク、ヘッドカバー、カバーオール)の長期使用は、熱と汗を閉じ込めるとともに、身体の蒸発冷却を制限し、熱ストレスにつながる可能性がある(あせも、筋けいれん、失神、疲弊、骨格筋の破壊や熱中症)。フィロウイルス病のアウトブレイク(例えばエボラウイルス)下で使用されるような、カバーロール、二重のガウン、靴の保護または頭と首を覆うフードは、COVID-19患者をケアする場合には必要ではない。

WHOとILOは、熱ストレスのリスクにさらされる医療労働者は、尿の色と量の監視を含め、熱関連疾患の症状を監視するよう助言されなければならないと勧告している。フルセットのPPEを着用して過ごす時間は制限されなければならず、涼しい区画での休憩が、アレンジされなければならない。すべての医療労働者に、十分な安全で冷たい飲料水が提供されなければならない。

消毒剤の使用

医療施設や公共の場所における消毒剤の使用の増加は、医療労働者や清掃・衛生労働者に有毒な影響を引き起こすかもしれない。鼻・眼の炎症、胸の圧迫感、喘鳴、呼吸困難や皮膚の炎症が結果かもしれない。異なる消毒剤の混合を回避するために、消毒剤は、換気の行き届いた区画内で、製造業者の勧告にしたがって準備・使用されなければならない。

消毒剤の準備・適用にかかわる医療労働者は、医学的禁忌について評価され、消毒剤の安全な使用について訓練を受け、適切なPPEを提供されるとともに、その適切な使用について指示を受けていなければならない。WHOは、いかなる状況下でも個々人に消毒剤をスプレーすることは勧告していない(トンネル、キャビネットまたはチャンバー)。

労働負荷、労働時間及び労働編成

COVID-19パンデミックの間、医療労働者はより重い労働負荷と不十分な休息・回復時間で長時間働いているかもしれない。こうした要求は、注意力、協調や能率の低下、反応時間の遅れ、認知障害や感情鈍化または情緒変化をともなった、慢性疲労とエネルギー不足につながる可能性がある。

WHOの2020年12月3日の暫定ガイダンス「COVID-19パンデミック対応下における医療労働力方針及び管理」にしたがって、安全な人員配置水準、公正な労働負荷の割り当て、及び労働時間と労働組織の管理を確保するために、戦略的な医療労働力計画、支援及び能力構築が必要である。

COVID-19パンデミックのような公共の緊急事態が宣言される場合、ILOの勧告にしたがって、通常の労働時間に関する規定に対する例外が正当化されるのは一時的にのみでなければならない。地元の状況に基づいて、現実に可能である限り、労働時間、シフト及び休憩の最適な編成のための諸措置がとられなければならない(囲み②)。

囲み② 緊急事態中の疲労の予防のためのWHO・ILOの勧告

シフトの長さ:1週間に5回の8時間シフトまたは4回の10時間シフトは通常耐えられる。より長いシフトは疲労のリスク要因である。労働負荷によっては、1日12時間労働する場合には、より多くの休息日を配置する必要があるかもしれない。夕方と夜間には、長いシフトよりも相対的に短いシフトのほうが認容性が高い。夜間の眠気と不十分な日中の睡眠のゆえに、疲労は夜間労働によって増強される。労働者の好みと地域の状況に留意しながら、前向き方向(午前→午後→夜間)のシフト・ローテーションに優先順位が与えられるべきである。

労働負荷:軽い職務と重い職務とのバランスをとる。シフトの長さに関して労働負荷を検討する。12時間シフトは「軽い」職務(例えばデスクワーク)についてより認容性が高い。相対的に短い労働シフトは、きわめて集中した労働、身体の行使または他の安全衛生ハザーズへの曝露による疲労を和らげるのに役立つ。

休憩と回復:労働時間の長さと休憩に関する方針を確立する(例えば、7~8時間の睡眠を確保するための、少なくとも1日10時間継続した保護された勤務間隔、及び14日間継続勤務の後の48時間の勤務間隔)。要求の高い労働時間中の頻回の短時間休憩(例えば1~2時間ごと)は、わずかな回数の相対的に長い休憩よりも、疲労に対して効果がある。食事のために相対的に長い休憩を認める。8時間シフトを5回または10時間シフトを4回継続した後の、1日または2日の全日休日を計画する。3回12時間シフトを継続した後の、2日間の休憩を検討する。

必要に応じて、また可能な場合には、緊急事態対応の間は、COVID-19を予防するための物理的距離置きその他の公衆衛生措置をとる一方で、食事サービスまたはすぐに食べられる食事、衛生設備やレクリエーションの機会をつけて、宿泊施設を医療労働者に提供する。

暴力、ハラスメント、差別及び汚名

COVID-19パンデミックの間に医療労働者に対する暴力やハラスメントの事象が増加している。医療部門における職場暴力についてのもっともひろまったリスク要因には、ストレスと疲労、長い患者の待ち時間、混雑、否定的な予想を伝達する負担、COVID-19特有の予防・管理措置(検疫所や隔離施設への個人の収容など)、濃厚接触者の追跡または亡くなった愛する者の身体にアクセスできないことが含まれる。これらはすべて追加的な緊張や暴力につながる可能性がある。

ⅳ 「2019年暴力・ハラスメント条約(第190号)」(日本語訳)は、仕事の世界における「暴力・ハラスメント」を、「1回限りのものであるか反復するものであるかを問わず、身体的、心理的、性的又は経済的損害を目的とし、またはこれらの損害をもたらし、若しくはもたらすおそれのある一定の容認することができない行動及び慣行またはこれらの脅威」と定義している。同条約はまた、国の機関及び使用者の責任を各々規定している。

感染した人々に近いことから、医療労働者はまた地域社会のなかで感染の脅威とみられ、またそれゆえ汚名や差別に直面する。医療労働者は、職場への通勤途中や地域社会ではもちろん、職場でも暴力・ハラスメントのリスクにさらされる。作業服を着用すること、または医療労働者を容易に確認させるその他のサインが、一般の人々による汚名、差別または暴力・ハラスメントを経験するリスクを高めるかもしれない。

職場暴力・ハラスメントは、医療サービスの編成と従業員の確保、医療従事者の精神的・身体的ウエルビーイング及び医療提供の質に否定的な影響を与えることを示してきた。ある系統的レビューは、看護士、第一対応者、救急処置質のスタッフや医師、及び長時間または夜間働く者など、サービス提供の役割につく医療労働者が相対的に高いリスクにさらされることを明らかにしている。女性提供者がセクシャルハラスメントと性的暴力への曝露がより高い一方で、男性提供者は身体的暴力の被害者になる可能性がわずかに高い。少数民族または他のマイノリティグループに属する医療労働者は、とりわけリスクにさらされるかもしれない。

医療労働者に対する暴力、ハラスメント、差別及び汚名は可能な限り予防・根絶されなければならない。医療労働者に対する暴力・ハラスメントや報復を予防・根絶するために、例えば、そのような行為を犯罪として、医療労働者に法的保護を提供することによって、特別の法令を導入した国もある。国の政府と地方当局は、職場及び地域社会で医療労働者に汚名を着せることを予防し、またそれによって医療労働者の役割への公けの尊敬と理解を促進するために、地域社会の関与やコミュニケーションの取り組み、行動基準を採用することができる。囲み③は、この問題に対処するための国際的勧告を示している。

囲み③ 医療部門における職場暴力・ハラスメントに対処するための国際的勧告

・労働者及びその代表の参加を得て、暴力、ハラスメント、差別及び汚名を予防・対処するための職場方針を設計、実施及び監視するとともに、経営陣を含め、すべてのスタッフがそれを知っており、また遵守しているようにする。
・差別やハラスメントを禁止する手続を確立するとともに、労働者の公正な扱いを促進する。
・ハイリスク区域に保安対策の説明及び保安要員を提供する。
・注意を喚起するイニシアティブを実施するとともに、暴力・ハラスメントに関する訓練を提供する。
・不確実性や苦悩を低減するために、スタッフと患者にタイムリーかつ正確な情報を提供する。
・患者の流れを合理化するとともに、混雑や待ち時間を避ける。
・職場との往復の安全なアクセスとわかりやすい非常出口を確保する。
・リスクが予測される場所に警報システム(例えば非常ボタン、電話、ブザー、短波ラジオ)を提供する。
・非難のない環境のなかで、暴力、汚名及び差別の事件を報告、調査及び対応するためのプロトコルが実施されているようにする。
・申立人、被害者、証人及び内部通報者を迫害または報復から守るための措置を導入するとともに、秘密が守られることを保証する。
・暴力、ハラスメント及び汚名の被害者に対する秘密厳守の支援、カウンセリング及び支援を提供する。
・労働者及びその代表と協議のうえ、暴力・ハラスメントのリスクを定期的に評価する。
・通勤中及び仕事以外の理由で公共の場所、家庭または地域に出かけるときにはユニフォームまたは他の臨床服の着用を避ける。

メンタルヘルス及び心理社会的支援

上述したプレッシャーに加えて、ある系統的レビューは、医療労働者のメンタルヘルスとウエルビーイングがCOVID-19下で影響を受ける可能性があることを見出している。これは、影響を受けた患者との接触、彼らの仕事をすることへのによって知覚された障害、不十分な事業所の支援、よりリスクレベルの高い職務への強いられた配転、保護対策における秘保の不足や看護士として働くことによって、引き起こされ得る。

医療労働者のメンタルヘルスの個人的リスク要因には、相対的に低い教育レベル、不十分な訓練、少ない臨床経験、パートタイム従業員として働くこと、検疫時間の増加、社会的隔離、家に子どものいること、低い家庭収入、若い年齢、女性であること、併存している身体的健康問題及び個人のライフスタイルに対するパンデミックの影響が含まれる。
知覚された個人の自己効力感が低いことや心理的苦痛、メンタルヘルス障害または薬物乱用の経歴はさらなるリスク要因である。こうしたリスクは医療労働者を不安、落ち込みや不眠を含めた一般的なメンタルヘルス状態に対して脆弱にする。メンタルヘルス問題は、医療労働者と患者の安全の双方に脅威を生じさせるかもしれない、パフォーマンスの低減、欠勤、スタッフの退職または転職率の増加、能率の低下やヒューマンエラーの可能性の増大の原因になる可能性がある。

WHOの2020年12月3日の暫定ガイダンス「COVID-19対応下における医療労働力方針及び管理」は、個人レベルで医療労働者のメンタルヘルスを支援するための介入を特定している。WHOその他による国際的勧告にしたがって、職場でメンタルヘルスを保護するために、以下の追加的措置が検討されなければならない。

  • 緊急事態を発見するための調査措置を実施するとともに、医療労働者のメンタルヘルスに対するそれらの影響を緩和する。
  • すべての医療労働者に質の高いコミュニケーションと正確な情報の更新が提供されているようにするともに、ストレスの高い役割からストレスの低い役割へと労働者をローテーションする。
  • 経験の少ない労働者を経験のある同僚とパートナーにするとともに、アウトリーチ担当者はペアで地域に出かけるようにする。
  • リモートで提供されるまたは現場でのサービスを含め、医療労働者のための秘密厳守のメンタルヘルス・心理社会的支援サービスを利用できるようにするとともに、利用を促進する。
  • 不安、落ち込みやその他のメンタルヘルス状態の早期かつ秘密厳守の確認・管理のための仕組みを提供するとともに、心理社会的支援戦略及び一次介入を開始する。
  • 医療労働者と健康管理者の間でメンタルヘルス予防文化を促進する。
  • メンタルヘルス問題をかかえて援助を求める医療労働者が汚名または差別なしに仕事に復帰できるようにする。

清潔、衛生及び休憩設備

指定されたPPEの着脱区画、トイレや個人・月経衛生用の部屋、及び医療廃棄物を取り扱う場所のなかなど、すべてのケアのポイントですべての医療労働者に対して、手指衛生設備が機能していなければならない。清潔な流水と手洗い用品(石鹸、使い捨ての手拭き)を備えた手洗い設備が利用できることを確保する。すべてのケアのポイントで、60~80%のアルコールを含んだ消毒液が利用できるようにしなければならない。

シフトの間に、休憩・休息室、安全な飲料水、トイレ、個人・月経衛生及び飲食・休憩機会が提供されているようにしなければならない。こうした区画は、安全な物理的距離置きと十分な換気が確保されていなければならない。

指定された部屋には、近くに医療労働者用のトイレと個人・月経衛生用のスペースが設置されていなければならず、それらは患者や訪問者が使用するものとは分けられていなければならない。そこには、廃棄製品を捨てるための容器と再利用できる物を洗うための区画、女性がプライバシーを保って身体を洗えるスペースがなければならない。

作業場所、作業台、機器や設備を清潔かつ整理された状態に保つための日常的な清掃プロトコル及びごみ箱の中味を捨て、ごみ箱を消毒するためのシステムが存在していなければならない。

状況によっては、休憩と衛生のために、シフト間に、一時的な宿泊施設(ホテル/モーテル、トレイラーまたはテント)が必要かもしれない。食料サービス、子どもの世話やレクリエーションの機会がスタッフの可用性を促進し、家族や地域社会での感染への曝露を低減し、ストレスや疲労を和らげる可能性がある。

医療労働者が通勤に作業服を着用する必要がないようにするために、着替えのための設備を職場に提供しなければならない。医療施設によって、患者または患者の環境と接触することになるベッドサイドで着用する作業服の専門業者による洗濯が確保されなければならない。

労働衛生サービス

WHO/ILOの医療労働者のための労働衛生プログラムの国際的枠組みで明確に述べられているように、すべての医療施設が労働衛生プログラムと、労働安全衛生のための指定された十分な訓練を受けたフォーカルポイントをもっていなければならない。大規模な医療施設は、労働安全衛生のための労使委員会と必要な予防機能を備えた労働衛生サービスをもっていなければならない。

COVID-19下において労働衛生サービス・フォーカルポイントは、WHOの2020年10月30日の暫定ガイダンス「COVID-19下における医療労働者の感染の予防、把握及び管理」にしたがって、IPC[感染予防・管理]方針・手順を設定するIPCプログラムと密接に連携しなければならない。加えて、フォーカルポイントと労働衛生サービスは、以下を行わなければならない。

  • COVID-19パンデミックによって増幅された他の労働安全衛生リスクへの曝露について定期的に職場リスクアセスメントを実施するとともに、予防措置の有効性を評価する。
  • 暴力・汚名の予防、消毒液の安全な使用、メンタルヘルスや心理的ウエルビーイングの保護を含め、健康的かつ安全なやり方で働く方法に関する指示・訓練を労働者に提供する。
  • リスクアセスメントに基づいて、他の物理的、科学的、人間工学的及び放射線的ハザーズの管理・緩和のための追加的措置を助言する。
  • 職場リスクアセスメントと医療状況に基づいて、COVID-19ワクチン接種その他の免疫付与について医療労働者の優先グループを確認する。
  • ワクチン接種キャンペーンを行うとともに、ワクチン接種状況を記録する。
  • SARS-CoV-2及び他の職業ハザーズに曝露するリスクの高い職務に従事する労働者の健康調査を行う。
  • SARS-CoV-2への曝露及び他の病原体、針その他鋭利なもの、事故及び暴力・ハラスメント事象への曝露の事例調査への報告・参加を監視するとともに、予防のための諸措置を策定する。
  • より安全な技術装置や適切なPPEの入手について助言する。
  • COVID-19症状、検査及び曝露と健康に関連した諸問題に関する医療労働者への専門的助言の提供について、医療労働者の監視を行う。
  • 経営陣と労働者の間の協力を強化するために、労働に関連した労働安全衛生のすべての側面について、労働者の代表の参加を確保する。
  • 感染予防・管理や患者安全のための施設のフォーカルポイント、人事部門との協力する。
  • シャワー及び作業服から私服への着替えのための適切な設備の提供について助言する。

医療労働者は、一定の職務を行う義務についての適応性、及び職場での曝露による病気または傷害のリスクの増大を引き起こすかもしれない何らかの障害について、医療専門家により秘密厳守で評価されなければならない。COVID-19下において一定の労働者は特別の配慮を必要としている。それには以下が含まれる。

  • 高年齢の医療労働者及び既往の病状があるまたは妊娠中で重症の病気を発症するリスクが高いかもしれない者
  • 多数の重症な病気や亡くなる患者と接する傾向が高いなど、追加的な苦悩によって悪化する可能性のあるメンタルヘルス状況の労働者
  • 労働負荷が増加し、労働時間が長くなり、または自らまたは家族の健康への懸念が高まった労働者

労働衛生サービスは、上述のいずれかに該当すると本人が認めたすべての労働者について、健康アセスメントを行わなければならない。以下の場合にもアセスメントが行われなければならない。仕事、職務または労働環境の変更、COVID-19患者に関わる役割を割り当てられる前、及び健康上の理由による長期休業後に復職する場合。すべてのスタッフに対する、とりわけ皮膚・メンタルヘルス障害や他の労働関連健康問題の発症についての、定期的なアセスメントが助言される。

労働安全衛生についての義務、権利及び責任

使用者の責任

国際労働基準にしたがって、使用者には、職業リスクを最小限にするために、あらゆる必要な予防・保護措置がとられていることを確保する全体的責任がある。このことを念頭に置きながら、COVID-19下において医療労働者の使用者は、以下を行わなければならない。

  • 医療労働者の労働の労働安全衛生諸側面及び曝露リスクについて医療労働者及びその代表と協議するとともに、新たなリスク源を生み出さないようにしながら、適切な予防・緩和諸措置を採用する。
  • 医療労働者をリスクにさらす職場状況はもちろん、臨床プロトコル、ガイドライン、効果的な実施を確保するための措置・決定に関する最新情報を共有することを含め、タイムリーな情報へのアクセス及び医療労働者と使用者との間の透明な対話を確保する。
  • IPC及びPPEの正しい使用・着脱・廃棄についてのリフレッシュ訓練を含め、労働安全衛生に関する情報、指示及び訓練を提供する。
  • PPE供給のサプライチェーン管理を維持する。
  • スタッフにCOVID-19及び患者を評価、トリアージ、検査及び対処するための適切なツールに関するタイムリーな技術情報を提供するとともに、患者や一般の人々とIPC情報を共有する。
  • 個人の安全のために必要な適切な安全措置を提供する。
  • 医療労働者が危険、汚名及び暴力に関わる事象を報告できる非難を受けることのない環境を確保するとともに、被害者に対する支援を含め、迅速なフォローアップ措置を採用する。
  • 医療労働者に、健康自己評価、症状の報告及び調子が悪いまたは検疫中の場合には家にとどまる方針について助言する。
  • 国の法律にしたがって、休憩・休息時間をともなった適切な労働時間を維持する。
  • 医療労働者が、自らの生命と健康に差し迫った深刻な危険が存在すると信じる合理的な正当性がある場合には労働から離れる権利を行使することを認めるとともに、この権利を行使したことによっていかなる不当な結果も受けることのないよう保護する。
  • 国の法律にしたがって、労働災害・職業病の事例を所轄する当局に届け出る。
  • メンタルヘルス支援及びカウンセリングサービスへのアクセスの提供を検討する。
  • 経営陣と医療労働者及びその代表との協力を促進する。
  • 国の法律にしたがって、医療労働者が労働災害給付の対象となるよう確保する。

ひとつの労働状況に複数の使用者または事業体が同時に活動に従事する場合には常に、その労働者に対する各々の安全衛生責任を損なうことなく、彼らは労働安全衛生について協力しなければならない。

医療労働者の権利と責任

医療労働者にはディーセントワークの権利があり、それには尊厳、平等、公正な収入と安全な労働条件を必要とする。COVID-19下において、安全な職場に対する権利とともに、医療労働者には、国際労働基準のもとで労働安全衛生の保護に関する、及び、患者安全のためにWHOの勧告にしたがう、義務と責任がある。それには、以下が含まれる。

  • 確立された労働安全衛生手順に従い、自ら及び他者が安全衛生リスクに曝露するのを回避するとともに、使用者が提供する労働安全衛生訓練に参加する。
  • 患者を評価、トリアージ及び対処するのに提供されたプロトコルを使う。
  • 疑われるまたは確認された症例について、確立された公衆衛生報告手順に迅速にしたがう。
  • 敬意と思いやりをもって患者に対処するとともに、尊厳を授け、患者の秘密を守る。
  • 患者と一般の人々に正確なIPC・公衆衛生情報を提供または強化する。
  • PPEを正しく着脱、使用及び廃棄する。
  • COVID-19の兆候・症状を自己監視するとともに、SARS-CoV-2への保護なしでの職業・非職業曝露はすべて労働衛生フォーカルポイントまたは労働衛生サービスに報告し、自己検疫する。
  • 支援的介入を必要とするかもしれない過度のストレスまたはメンタルヘルス事象の兆候を経験している場合には、労働衛生サービスに助言する。
  • 生命と健康にに差し迫った深刻な危険が存在すると信じる合理的な正当性がある状況を直属の管理者に報告する。

国の諸機関の責任

公的に提供される衛生サービスにおける使用者としての義務・責任に加えて、国の諸機関は、その雇用上の地位や熟練の程度にかかわらず、COVID-19対応に従事するすべての医療労働者が、COVID-19の検査・治療、国の法律にしたがった検疫・隔離を含め、医療・病気給付の対象となるよう確保しなければならない。

国の諸機関は、医療労働者、とりわけ感染の中・高・超高リスクにある者が、熟練の程度にかかわらず、COVID-19ワクチン接種プログラムに早期にアクセスできるよう確保しなければならない。彼らはまた、すべての医療労働者が、国の規則にしたがって、労働災害給付制度の対象となるよう確保しなければならない。国の諸機関は、COVID-19に感染した医療労働者の治療へのアクセスを確保・促進しなければならない。

労働の結果として感染した場合には、COVID-19は労働災害または雇用災害とみなされ得る。そのような事例は、国の規則にしたがって、調査され、雇用災害給付管理に責任を有する公的機関に報告されなければならない。各国は、COVID-19との関連で、自国の職業病リスト、曝露基準及び報告を最新化することを検討しなければならない。

自らの労働の結果としてCOVID-19に感染した医療労働者-また、国の法律にてらして感染が職業病または労働災害とみなされる場合には-治療を受ける権利、並びに、彼らが働くことができない範囲内において現金給付または補償を受ける権利がなければならない。労働関連活動において罹患したCOVID-19のために亡くなった医療労働者の扶養家族は、葬祭助成金または給付はもちろん、現金給付または補償を受ける権利がなければならない。

参考文献(省略)

https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-HCW_advice-2021.1

安全センター情報2021年4月号