労災保険特別加入の対象を拡大-芸能従事者、アニメーション制作従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者(2021年4月1日施行)

厚生労働省は、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において労災保険の特別加入制度の見直しについて検討してきたが、2021年1月26日及び2月26日付けで「労災保険法施行規則及び労働保険料徴収則を改正する省令」を公布、4月1日付けで施行されることとなった。

労災保険法は、労働者以外の方のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている(法第33条)。特別加入できる者の範囲は、(1)中小事業主等、(2)一人親方等、(3)特定作業従事者、(4)海外派遣者の4種に大別されている。

今回の改正は、以下を特別加入制度の対象に追加した。

  • 一人親方等として柔道整復師
  • 一人親方等として創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者
  • 特定作業従事者として芸能従事者
  • 特定作業従事者としてアニメーション制作従事者

改正省令の施行通達が示されたので、以下に紹介したい。

中小事業主等と一人親方等(第2種としてくくられる)については、個人では加入できず、特別加入団体を通じて諸手続きをすることとされているが、今回、特別加入団体が事務処理を行う区域についての要件が緩和された。

今回の改正は、現行の特別加入制度の枠組みは変更することなく、特別加入できる者の範囲の拡大にとどまった。一方で、それが偽装請負等の拡大につながらないよう監視することはもちろんだが、他方で、労災保険の対象にならない働き方をしているものの災害補償のあり方の抜本的見直しも検討する必要があると考える。

令和3年3月9日付け基発0309第1号/都道府県労働局長宛て厚生労働省労働基準局長通達

目次

労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令及び労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について

労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第11号)が、令和3年1月26日付けで公布され、令和3年4月1日付けで施行されることとなった。
また、労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第44号)が、令和3年2月26日付けで公布、令和3年4月1日付けで施行されることとなった。
ついては、下記事項に留意の上、事務処理に遺漏なきを期されたい。

1 基本事項

(1)改正の趣旨及び概要

労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)において、労働者以外の者については労災保険の強制加入の対象とはなっていないが、第83回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会建議(令和元年12月23日)において「…社会経済情勢の変化も踏まえ、特別加入の対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合った制度運用となるよう見直しを行う必要がある。」とされ、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号。以下「令和2年改正法」という。)に係る衆議院附帯決議において「特別加入制度について、…社会経済情勢の変化を踏まえ、その対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な見直しを行うこと。」とされ、また、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)において「フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する」とされた。

また、令和2年改正法により改正された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)(以下「改正高年齢者雇用安定法」という。)において、創業支援等措置が新設され、当該措置に係る規定については令和3年4月1日付け施行されることとなっている。創業支援等措置については、令和2年改正法に係る参議院附帯決議において、「特別加入制度について…社会経済情勢の変化を踏まえ、その対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な見直しを行うこと。その際、今回の創業支援等措置により就業する者のうち、常態として労働者を使用しないで作業を行う者を特別加入制度の対象とすることについて検討すること。」とされた。

これらを踏まえ、国民に対する意見募集を実施し、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において関係団体からのヒアリング及び当該ヒアリングを踏まえた議論が行われたことを踏まえ、特別加入制度の対象として、下記の事業及び作業を新設することとした。

  • 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第2条に規定する柔道整復師が行う事業
  • 改正高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業
  • 放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業
  • アニメーションの制作の作業

なお、令和3年3月31日以前に発生した負傷、疾病、傷害又は死亡に起因する業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関する保険給付については、なお従前の例によるものとする。

(2)実施時期

新設に関する省令改正は、令和3年4月1日から施行される。

2 柔道整復師に係る特別加入の新設(労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号。以下「労災則」という。)第46条の17第8号関係)

(1)加入対象事業

柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業。

(2)加入対象者

ア 労働者以外の者で、(1)の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者。
イ 労働者以外の者で、上記アが行う事業に常態として従事する者。

(3)保険料率及び特定業種区分

第2種特別加入保険料率は1000分の3、事業の種類の番号は特8とされた(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号。以下「徴収則」という。)第23条及び別表第5)。

(4)特別加入の手続

特別加入の手続は、一人親方その他の自営業者とその事業に従事する者(以下「一人親方等」という。)及び特定作業従事者に係る特別加入の手続と同様とする(昭和40年11月1日付け基発第1454号(以下「基本通達」という。)の記の第2の4、6(2)、7及び8参照)ほか、後記6、7によること。

(5)災害の認定基準

ア 業務災害の認定
(ア)業務遂行性は次の行為を行う場合に認めるものとする。
a 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う施術及びこれに直接附帯する行為(「直接附帯する行為」とは、生理的行為、反射的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいう。以下同じ。)
b 作業のための準備・後始末、機械等の保管、事務作業等を通常行っている場所における作業及びこれに直接附帯する行為
(注)自宅等で行う場合については、特に私的行為、恣意的行為ではないことを十分に確認できた場合に業務遂行性を認めるものとする。
c 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
(イ)業務起因性は、労働者の場合に準ずること。

イ 通勤災害の認定
柔道整復師の住居と就業の場所との間の往復の実状等から、通勤災害についても労災保険の対象とし、通勤災害の認定については、労働者の場合に準ずること。

(6)中小事業主等の特別加入との関係

労働者を使用して事業を行う柔道整復師が特別加入する場合は、労災則第46条の17第8号に基づく特別加入はできないため、労災保険法第33条第1号に基づく中小事業主として特別加入すること。

3 創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者に係る特別加入の新設(労災則第46条の17第9号関係)

(1)加入対象事業

改正高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業(ただし、労災則第46条の17第1号から第8号までにおいて規定する事業及び労災則第46条の18各号において規定する作業に該当する事業を除く。)。

(2)加入対象者

ア 労働者以外の者であって、改正高年齢者雇用安定法に基づき(1)の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者。
イ 労働者以外の者で、上記アが行う事業に常態として従事する者。

(3)保険料率及び特定業種区分

第2種特別加入保険料率は1000分の3、作業の種類の番号は特9とされた(徴収則第23条及び別表第5)。

(4)特別加入の手続

ア 特別加入の手続は、一人親方等及び特定作業従事者に係る特別加入の手続と同様とする(基本通達の記の第2の4、6(2)、7及び8参照)ほか、後記6、7によること。
イ 加入申請者たる団体における災害防止措置については、当該団体が講ずべき措置及び当該団体の構成員が守るべき事項を定め、これを記載した書類を特別加入申請書に添えて提出することとしているが(労災則第46条の23第3項第2号)、今般新たに特別加入の対象となった創業支援等措置に基づく事業については、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年基安発0316第1号)及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(昭和46年労働省令第24号)第4条の5に基づき事業主が創業支援等措置を講ずる場合に作成する計画の安全・衛生に係る項目に基づいた内容の災害防止規定を定めることとすること。

(5)災害の認定基準

ア 業務災害の認定
(ア)業務遂行性は次の行為を行う場合に認めるものとする。
a (1)に規定する事業の遂行に係る作業及びこれに直接附帯する行為
b 作業のための準備・後始末、事務作業等を通常行っている場所における作業及びこれに直接附帯する行為
(注)自宅等で行う場合については、特に私的行為、恣意的行為ではないことを十分に確認できた場合に業務遂行性を認めるものとする。
c 突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
(イ)業務起因性は、労働者の場合に準ずること。

イ 通勤災害の認定
創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者の住居と就業の場所との間の往復を想定し、通勤災害についても原則として労災保険の対象とし、通勤災害の認定については、労働者の場合に準ずること。
なお、通勤に該当するかどうかについては、実態をみて判断すること。

(6)中小事業主等の特別加入との関係

労働者を使用して創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者が特別加入する場合は、労災則第46条の17第9号に基づく特別加入はできないため、労災保険法第33条第1号に基づく中小事業主として特別加入すること。

(7)一人親方等及び特定作業従事者との関係

(1)ただし書きのとおり、労災則第46条の17第1号から第8号まで及び労災則第46条の18各号において規定される事業又は作業に該当する事業については、創業支援等措置に基づく事業としては、業務遂行性が認められない。
従って、創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者であっても、労災則第46条の17第1号から第8号までにおいて規定する事業及び労災則第46条の18各号において規定する作業のいずれかに従事する者に該当する場合には、当該事業又は作業に係る特別加入者として申請をすることになる。
また、業務遂行性の範囲については、重複加入する際にも留意が必要である。例えば創業支援等措置に基づき農業を行う場合、労災則第46条の18第1号において規定される特定農作業及び指定農業機械作業については、創業支援等措置に係る特別加入において業務遂行性は認められないが、特定農作業従事者又は指定農業機械作業従事者として重複加入をすることにより業務遂行性が認められることとなる。

4 芸能関係作業従事者に係る特別加入の新設(労災則第46条の18第6号関係)

(1)加入対象作業

放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業(ただし、労災則第46条の17第2号に規定する土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(以下「建設の事業」という。)に該当する作業及び労災則第46条の18第7号に規定するアニメーションの制作の作業を除く。)

(2)加入対象者

労働者以外の者であって、(1)に係る作業を行う者を加入対象者とすること。具体的には以下の職種が想定されるが、当該特別加入者の承認に当たっては、職種を限定するものではないため、業務内容等の実態をみて判断すること。

ア 芸能実演関係
俳優(舞台俳優、映画及びテレビ等映像メディア俳優、声優等)、舞踊家(日本舞踊、ダンサー、バレリーナ等)、音楽家(歌手、謡い手、演奏家、作詞家、作曲家等)、演芸家(落語家、漫才師、奇術師、司会、DJ、大道芸人等)、スタント、その他類似の芸能実演に係る作業に従事する者

イ 芸能製作関係
監督(舞台演出、映像演出)、撮影、照明、音響・効果、録音、大道具、美術装飾、衣装、メイク、結髪、スクリプター、アシスタント、マネージャー、その他類似の芸能製作に係る作業に従事する者

(3)保険料率及び特定業種区分

第2種特別加入保険料率は1000分の3、作業の種類の番号は特21とされた(徴収則第23条及び別表第5)。

(4)特別加入の手続

ア 特別加入の手続は、一人親方等及び特定作業従事者に係る特別加入の手続と同様とする(基本通達の記の第2の5、6(2)、7及び8参照)ほか、後記6、7によること。
イ 加入申請者たる団体における災害防止措置については、当該団体が講ずべき措置及び当該団体の構成員が守るべき事項を定め、これを記載した書類を特別加入申請書に添えて提出することとしているが(労災則第46条の23第3項第2号)、今般新たに特別加入の対象となった芸能関係作業従事者の団体については、「テレビ番組等の制作の作業における労働災害の防止について」(平成元年3月13日付け基発第117号)及び「映画、テレビ番組等の撮影現場等における労働災害防止について」(平成10年11月18日付け事務連絡)に基づいた内容の災害防止規定を定めることとすること。

(5)災害の認定基準

ア 業務災害の認定
(ア)業務遂行性は、次の行為を行う場合に認めるものとする。
a 契約に基づき報酬が支払われる作業(以下「契約による作業」という。)のうち(1)に規定する作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
(注1)「音楽、演芸その他芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業」とは、芸能に関し依頼を受け契約を締結してから最終的な成果物の提供(演出及び企画を含む。)に至るまでに必要となる作業をいう。ただし、自宅等で行う場合については、特に私的行為、恣意的行為ではないことを十分に確認できた場合に業務遂行性を認めるものとする。
例)俳優・声優における打ち合わせ、稽古、リハーサル、公演、撮影、宣伝活動等
  プロデューサーにおける会議、撮影場所・ロケ撮影現場の下見、撮影指示等
(注2)大規模な舞台や大道具を製作するに当たり、建設の事業の様態を伴って行う作業については、加入対象作業から除外されているため業務遂行性は認められないが、舞台上に設置できる程度の大道具、背景等を製作する作業及びその製作物を建設の様態を伴わずに設置する作業については、業務遂行性が認められる。
(注3)スタント等の危険を伴う作業については、故意に安全装置を無効化させる等の積極的行為が無ければ、支給制限の対象とならない。
b 契約による作業に必要な移動行為を行う場合(通勤災害の場合を除く)
例)テレビ局からロケ撮影現場への移動、映画撮影における撮影場所の移動等
(イ)業務起因性は、労働者の場合に準ずること。

イ 通勤災害の認定
芸能関係作業従事者の住居と就業の場所との間の往復の実状等から、通勤災害についても労災保険の対象とし、通勤災害の認定については、労働者の場合に準ずること。

(6)中小事業主等の特別加入との関係等

ア 中小事業主等の特別加入との関係
芸能の事業における中小事業主等の特別加入と今般新設する芸能関係作業従事者に係る特別加入とは、それぞれの加入要件を満たせば、本人の選択によりいずれにも特別加入できることとなるが、重複加入は認められない。したがって、芸能の事業に関し中小事業主等として特別加入している者が、芸能関係作業従事者として特別加入する場合(あるいは逆の場合)は、委託解除届を確認する等、重複期間が生じないように留意すること。
なお、誤って重複加入した場合は、先に加入した特別加入が優先し、後から手続した特別加入に係る保険関係は無効となることに十分留意し、芸能関係作業従事者に係る特別加入の申請を受け付ける際には、特別加入予定者が中小事業主等として特別加入していないか確認の上、中小事業主等として特別加入している者がある場合は、必ずその脱退の申請又は届出を同時に提出するよう指導すること。

イ 建設の事業に係る特別加入との関係
労災則第46条の17第2号に規定する建設の事業に該当する作業と、芸能関係作業従事者に係る作業については、それぞれ別の作業であり、その業務遂行性が認められる範囲が異なることから、労災保険法第35条第2項に規定される重複加入の制限はされない。したがって、建設の事業の様態を伴って大規模な舞台や大道具の製作を行う作業と、建設の様態を伴わずに舞台上に設置できる程度の大道具、背景等を製作・設置する作業の両方を行う者について、それぞれの作業で労災保険の適用を受けるためには、それぞれで特別加入をしていることが必要となる。
よって、新たに特別加入申請書を提出する特別加入団体に対しては、当該事項について積極的に周知すること。

ウ アニメーション制作作業従事者に係る特別加入との関係
下記5において後述する今回新設のアニメーション制作作業従事者に係る特別加入(労災則第46条の18第7号)と、芸能関係作業従事者に係る特別加入についてはそれぞれ別の作業であり、その業務遂行性が認められる範囲が異なることから、労災保険法第35条第2項に規定される重複加入の制限はされない。
なお、芸能関係作業又はアニメーション制作作業のいずれに該当するかの判断及び業務遂行性の判断に際しては、従事する作業の成果物によって判断すること。
成果物に関する実例は以下のとおり。
(ア)芸能関係作業に該当する成果物
実写映画及び放送番組(広告放送を含む。)の製作、舞台公演等を目的としたものであって、芸能実演関係の作業を行う者が関係するもの。
(イ)アニメーション制作作業に該当する成果物
アニメーション映画及びアニメーションを主に使用した放送番組(広告放送を含む。)等

エ 芸能関係作業とアニメーション制作作業のどちらも行う者に係る対応
上記ウのとおり、芸能関係作業従事者とアニメーション制作作業従事者については、その業務遂行性が認められる範囲が異なるため、芸能関係作業とアニメーション制作作業のどちらも行う場合において、それぞれの作業で労災保険の適用を受けるためには、それぞれで特別加入をしていることが必要となる。
よって、新たに特別加入申請書を提出する特別加入団体に対しては、当該事項について積極的に周知すること。

5 アニメーション制作作業従事者に係る特別加入の新設(労災則第46条の18第7号関係)

(1)加入対象作業

アニメーションの制作の作業(ただし、労災則第46条の18第6号に規定する芸能関係の作業を除く。)

(2)加入対象者

労働者以外の者であって、(1)に係る作業を行う者を加入対象者とすること。具体的には以下の者が想定されるが、当該特別加入者の承認に当たっては、職種を限定するものではないため、業務内容等の実態をみて判断すること。
ア アニメーション制作関係
キャラクターデザイナー、作画、絵コンテ、原画、動画、背景、その他類似する作業を行う者
イ アニメーション演出関係
監督(アニメ映画監督、作画監督、美術監督等)、演出家、脚本家、編集(音響、編集等)、その他類似する作業を行う者

(3)保険料率及び特定業種区分

第2種特別加入保険料率は1000分の3、作業の種類の番号は特22とされた(徴収則第23条及び別表第5)。

(4)特別加入の手続

特別加入の手続は、一人親方等及び特定作業従事者に係る特別加入の手続と同様とする(基本通達の記の第2の5、6(2)、7及び8参照)ほか、後記6、7によること。

(5)災害の認定基準

ア 業務災害の認定
(ア)業務遂行性は、契約による作業のうち(1)に規定する作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合に認めるものとする。
(注)「アニメーションの制作の作業」とは、アニメーションの制作に関し、依頼を受け契約を締結してから最終的な成果物の提供に至るまでに必要となる作業をいう。ただし、自宅等で行う場合については、特に私的行為、恣意的行為ではないことを十分に確認できた場合に業務遂行性を認めるものとする。
(イ)業務起因性は、労働者の場合に準ずること。

イ 通勤災害の認定
アニメーション制作作業従事者の住居と就業の場所との間の往復の実状等から、通勤災害についても労災保険の対象とし、通勤災害の認定については、労働者の場合に準ずること。

(6)中小事業主等の特別加入等との関係

ア 中小事業主等の特別加入との関係
アニメ-ション制作の事業における中小事業主等の特別加入と今回新設のアニメーション制作作業従事者に係る特別加入とは、それぞれの加入要件を満たせば、本人の選択によりいずれにも特別加入できることとなるが、重複加入は認められない。したがって、アニメーション制作の事業に関し中小事業主等として特別加入している者が、アニメーション制作作業従事者として特別加入する場合(あるいは逆の場合)は、委託解除届を確認する等、重複期間が生じないように留意すること。
なお、誤って重複加入した場合は、先に加入した特別加入が優先し、後から手続した特別加入に係る保険関係は無効となることに十分留意し、アニメーション制作作業従事者に係る特別加入の申請を受け付ける際には、特別加入予定者が中小事業主等として特別加入していないか確認の上、中小事業主等として特別加入している者がある場合は、必ずその脱退の申請又は届出を同時に提出するよう指導すること。

イ 芸能関係作業従事者に係る特別加入との関係
上記4において前述した今回新設の芸能関係作業従事者に係る特別加入(労災則第46条の18第6号)と、アニメーション制作作業従事者に係る特別加入についてはそれぞれ別の作業であり、その業務遂行性が認められる範囲が異なることから、労災保険法第35条第2項に規定される重複加入の制限はされない。
なお、芸能関係作業従事者又はアニメーション制作作業従事者のいずれに該当するかの判断及び業務遂行性の判断については、上記4(6)ウ記載のとおり。
また、芸能関係作業とアニメーション制作作業のどちらも行う者における対応については、上記4(6)エ記載のとおり。

6 新設した事業・作業に係る共通事項及び当面の事務処理について

(1)共通事項

ア 保険給付の請求
保険給付に関する事務は、当該特別加入団体の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署長が行うこと(労災則第1条第3項)。
イ 保険給付の支給制限
保険給付の支給制限については、昭和40年12月6日付け基発第1591号通達の記の第2によること。
ウ 特別加入団体及び特別加入者の申請受理の特例
令和2年度中に特別加入申請書(「加入を希望する日」が令和3年4月1日以降とされているものに限る。)及び当該団体に係る関係書類の提出があった場合は、これを受理することとし、令和3年4月1日以降で特別加入団体が設立したものについては、当該設立日以降に特別加入者の承認を行うこと。

(2)当面の事務処理

ア 労働者性に係る周知
特別加入申請書の提出があった場合は、特別加入団体に対し、形式上は「請負」や「委任」の契約形態であったとしても、実態として労働者と同様の働き方をする場合には、労働者として保護される旨を積極的に周知すること。
イ 特別加入団体における被災状況等の把握に係る周知
団体の構成員たる特別加入者が被災した場合は、特別加入団体において、特別加入者から聞き取りを行う等により災害発生状況の把握に努め、実態を踏まえた災害防止措置を行うよう積極的に周知すること。
ウ 特別加入システム等における機械処理
特別加入システム及び労災サブシステムにおける機械処理については別途通知する。

7 特別加入団体が事務処理を行う区域について

基本通達第2の6(2)ホの特別加入団体が事務処理を行うことができる区域(以下「区域」という。)については、平成31年3月28日付け基発0328第1号等において定めているところ。今般、当該区域を超えるブロック(別紙)において、当該団体を通じた特別加入者がいる場合、当該ブロックにおいて、少なくとも年に一回以上、当該団体が災害防止等に関する研修会等(双方向の質疑応答を含むオンライン形式を含む。)に参加する機会を当該特別加入者に提供することを申し出た場合に限り、令和3年4月1日以降は当該団体が区域を超えて事務処理を行うことができるよう改正する。
なお、既存の団体でも、申し出があれば区域を超えて事務処理を行うこととして差し支えない。
詳細については、別途通知する。

8 関係通達の改正[別添1~3省略]

(1)昭和40年11月1日付け基発第1454号通達の改正
別添1のとおり。
(2)昭和40年12月6日付け基発第1591号通達の改正
別添2のとおり。
(3)平成21年12月28日付け基発1228第4号通達の改正
別添3のとおり。

別紙

ブロック-都道府県
北海道-北海道
東北-青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東-東京都、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、山梨県
北陸-新潟県、富山県、石川県、福井県
中部-長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
関西-滋賀県、和歌山県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県
中国-鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国-徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州-福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県