現代重工業の皮膚発疹、産災承認 職業性皮膚疾患を公論化しなければ 2021年2月22日 韓国の労災・安全衛生
昨年、現代重工業・蔚山造船所で、船舶にペインティングをする労働者の間に集団皮膚発疹事件が発生した。これらの内の1人が17日に職業性皮膚疾患として産業災害を承認された。職業病という認識の不足によって、よくある疾病なのに明らかにされなかった造船所内の皮膚疾患の問題が、今回の事件を契機に公論化できるかが注目される。
親環境無溶剤塗料導入以後、20人余りに集団皮膚発疹
17日に産災を承認されたが「配置転換されずに更衣室で待機中」
現代重工業の先行塗装部で2003年から塗装作業者として働いたソク・ジフン(45)さんは、昨年7月に両側の手と腕に赤い斑点が出始めた。ソクさんは単純なアレルギーと考えて皮膚科で薬を処方された。しかし症状は治まらなかった。胸と首、脚など、全身に拡がっていった。ソクさんは原因も解らないまま、かゆみが激しくて夜も寝られない日々を耐えなければならなかった。
8月、会社と無溶剤塗料メーカー・KCCの関係者がソクさんを訪ねてきて症状を確認した。ソクさんはこの時から塗料に問題があるのではと考え、似たような症状がある同僚を探した。ソクさんより2ヶ月前の5月から皮膚発疹症状が現れた人もいた。現代重工業がKCCと共同開発した親環境無溶剤塗料を導入したのは、同年4月だ。
金属労組の現代重工業支部が把握した皮膚発疹症状になった労働者は、ソクさんを含んで23人だ。支部は釜山地方雇用労働庁の蔚山支庁に臨時健康診断を要請し、同年10月末から蔚山大病院で塗装作業者333人全員を検診した。ソクさんを含む5人が『職業病有所見者(D1)』と判定された。ソクさんはD1判定によって、有機化合物・金属粉塵・ガラス繊維の作業が禁止されたり制限されたのに、部署を移動できなかったと話した。彼は「出勤しても現場には行けず、12月中旬から現在まで、更衣室で待機している」と話した。
支部は一人ひとりが産災申請をするには、手続きが複雑な上に時間が永く掛かることを勘案して、雇用労働部に、一括産災承認をするか手続きを簡素化して欲しいと要請したが、受け容れられなかった。これによって、ソクさんが先ず昨年12月に産災を申請し、今月17日に療養承認が決定された。
職業性皮膚疾患、業務上疾病のうちの1%にもならず
下請け労働者、不利益を憂慮し産災申請を敬遠する雰囲気
現れていない皮膚疾患の発病者はもっと多いのではないかという主張も出ている。蔚山大病院が実施した臨時健康診断の対象者は塗装作業者に限られたが、先行塗装部で機械整備やブロックの入出庫業務を行う労働者が、間接的に曝露した可能性が排除できないためだ。同じ無溶剤塗料を使った現代三湖重工業でも、皮膚発疹症状者が27人発生したと伝えられた。
支部のパク・ジョンファン労働安全保健室長は「手続きが複雑な上に、皮膚病の場合、因果関係を明らかにしにくく、産災申請自体をしない傾向がある」とし、「協力業者は配置転換ができる部署がなく、産災申請を理由に不利益に遭う可能性を心配して、下請け労働者の皮膚疾患はより一層表に出て来ない」と説明した。
労働部の産業災害現況によれば、職業性皮膚疾患は全業務上疾病の中で1%にもならない。2014年16件(0.208%)、2015年18件(0.227%)、2016年・2017年15件(0.19%、0.16%)、2018年16件(0.139%)に過ぎない。
皮膚疾患はありふれた職業性疾患で、産災統計に現れていないが、少なくとも20%から多ければ60%を占めるというのが専門家たちの分析だ。複雑な手続きの割に得る利益が大きくないだけでなく、職業病だという認識が足りないことも原因とされる。
大宇造船でも、かつて皮膚疾患を産災と承認
監視体系が正しく運営されなければ
現代重工業だけではない。大宇造船海洋で30年近く溶接工として働くヤン(58)さんは、2019年にアレルギー接触皮膚炎で産災を承認された。彼は2018年7月から皮膚発疹が現れ、同年10月に症状が悪化して色々な病院を訪ね歩いた。彼の症状と発症以後の過程はソクさんと似ていた。ヤンさんは「当時、全身がかさぶただった」「できることは全部してみた。アロエも塗り、氷湿布もしたが、効果がなかった」と話した。色々な病院を訪ね歩いたが、これという原因を明らかにできなかった。そうするうちにヤンサン釜山大病院の職業環境医学専門医を訪ねて、「職業的な曝露によるアレルギー接触皮膚炎の可能性が高い」と診断された。
大宇造船の下請け労働者も皮膚疾患問題を抱えていることが分かった。巨済市非正規職労働者支援センターによれば、最近、大宇造船の下請け労働者2人から職業性皮膚疾患の問題で相談を受けた。センターのキム・ジュンヒ事務局長は「手袋をしてテープで縛って寝ても、無意識に手袋を外して血まみれになったり、皮膚の軟膏ステロイド剤の後遺症で大腿部が腐るなど、想像もできない苦痛を味わっていることが分かった」とし、「20年近く溶接工として働いた人たちなので、溶接の時に発生するガスに曝露して皮膚発疹が発生したと見られる」と話した。
韓国労働安全保健研究所のリュ・ヒョンチョル所長(職業環境医学専門医)は「接触性皮膚疾患は職業との関連性が高いのに、一般の病院では職業性について尋ねたり、産災の申請を案内することはない。」「特殊健康診断だけでなく、日常的な保健管理の領域で、職業との関連性を疑って、根源を明らかにできる監視体系がキチンと運営される必要がある」と指摘した。
2021年2月22日 毎日労働ニュース オ・コウン記者
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=201427