亀尾・フッ化水素漏出事故から8年、『安全を脅かす老朽設備』 事故原因の40%は『施設の管理不足』 2020年9月28日 韓国の労災・安全衛生

◇チェ・ナヨン記者

9月27日は、慶北・亀尾(クミ)の国家産業団地のヒューブグローバル工場で、フッ化水素ガスの漏出事故が起きて8年目になる日だ。当時、労働者5人が亡くなり、消防署員18人が負傷した。工場附近の住民3千人以上が病院の診療を受け、212ヘクタールの農作物と4千頭余りの動物も犠牲になった。住民の補償額だけで380億ウォンに達した。我が国の歴史上に未曾有の化学物質事故だった2012年の事故以後、我が社会は化学事故から安全になったのだろうか。

当時、事故を契機に、化学物質の登録と評価などに関する法律(化学物質登録評価法)と、化学物質管理法が制定され、2015年から施行された。それぞれ、化学物質に対して、有害性審査の義務化と有害化学物質の取り扱い基準の強化を骨子とするものだ。その後、年間の化学事故の発生件数は減少傾向にあるが、恐怖感は依然としてなくなっていない。

瑞山(ソサン)のロッテケミカル大山(テサン)工場の爆発事故、SHエネルギー化学群山(クンサン)工場の爆発事故、慶北・亀尾工団のKEC工場化学物質の漏出事故・・・・。間違いなく今年も、化学物質の爆発・漏出事故が続き、負傷者が発生した。環境部の化学物質安全院によれば、今年の化学事故の発生件数は、上半期(1~6月)だけで35件に達する。

施設は古いのに修繕費は減少、規制強化は効果があるのに再び緩和

労働・市民団体は絶えない化学事故の主な原因として設備の老朽化を挙げている。化学物質安全院の資料によれば、2014年から今年6月までに発生した化学物質事故の40.3%(218件)は『施設管理の不十分』が原因だった。化学繊維連盟は「事業場の老朽化した設備をキチンと管理できないのが主な原因」と分析した。それ以外の事故の原因は、作業者の不注意が37.2%(201件)、運搬車輌の事故が21.2%(114件)だった。同期間の化学物質事故の発生件数は、541件。『全北健康と生命を守る人々』の趙成玉(チヨソンオク)代表は、「産業団地は、国が重化学部門を政策的に支援・育成し始めた1970~80年代に主に稼動し始めた。」「短くて20年、永ければ50年以上運営され、装備の老朽化による危険性がある」と説明した。

問題は施設の老朽化に伴う事故は、時間が過ぎるほど積極的に予防しなければならないのに、装備の修繕はむしろ減っているということだ。連盟のヒョン・ジェスン労働安全保健室長は、「韓国銀行の資料によれば、2001年から、我が国の製造業の修繕費は、製造原価から減らされる傾向にある」と話した。

政府も、日本の輸出規制対応とコロナ19対策の一環として、化学物質関連の規制を緩和している。政府は4月に、コロナ19拡散の余波などを理由として、化学物質取り扱い施設の定期検査を6ヶ月猶予したのに続き、9月17日には再び3ヶ月猶予するとした。ヒョン・ジェスン室長は、「化学物質管理法が2015年から施行された以後、化学事故が少しずつ減っている」「難しくした法が実効性のある結果を挙げているのに、再び規制を緩和すれば事故は増えることになる」と指摘した。化学物質安全院によれば、化学事故の件数は2014年に105件、2015年に113件、2016年に78件、2017年に87件、2018年に66件、2019年には57件と、次第に減っている。

政府が施設を点検・監督する、特別法制定の国民請願運動を

労働界は、老朽設備安全管理特別法を制定して、老朽化した設備を管理しなければならないという立場だ。現行の化学物質管理法26条(取り扱い施設などの自主点検)によれば、有害化学物質の取り扱い施設を設置・運営する者は、週1回以上、該当施設・装備を定期的に点検しなければならない。しかし、政府・地方自治体にはこれを管理・監督できる権限がない。

ヒョン・ジェスン室長は、「老朽設備に対する責任を事業主だけに任せておくのではなく、政府・地方自治体に管理・監督権限を与えて、中小規模事業場には管理費用を支援する特別法を制定すべきだ」とし、「橋梁・トンネル・港湾・ダムなどを対象にする、施設の安全および維持管理に関する特別法(施設安全法)があるように、もっと危険で、頻繁な事故の危険がある産業団地の設備に関する特別法を作ろう」と主張した。

チョ・ソンオク代表も、「私的な所有空間を国が統制してもかまわないのか、という指摘もあるだろうが、すでに我が国にはそんな事例がある。」「バスやタクシーは事業者の所有だが、一定の期間が過ぎれば廃棄処分して、公共の安全を保障している」と指摘した。

労働・市民団体は、産業団地の老朽設備安全管理特別法に同意する全国の化学事業場の労働者・地域住民1万人の署名を、25日に大統領府に伝達した。これらは10月に、一ヶ月間の『20万の大統領府国民請願運動』によって、特別法の制定運動につなげて行く計画だ。

http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=166799

2020年9月28日 毎日労働ニュース チェ・ナヨン記者