シックハウス症候群で公務災害認定-宝塚市立病院 検査技師(2020.07.22)/「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」労災事例まとめ

ホルマリン、キシレンなどにばく露

神戸新聞の報道によれば、宝塚市立病院の検査技師が病理検査室で検査に使用されるホルマリン、キシレンなどの化学物質にばく露したことが原因で、いわゆる「シックハウス症候群」を発症したため、昨年秋に地方公務員災害補償基金兵庫県支部に公務災害を申請し、2020年7月17日付で認定された。

宝塚市立病院で「シックハウス」発症 女性技師の公務災害認定

宝塚市立病院(兵庫県宝塚市小浜4)の有毒な化学物質を扱う病理検査室で、排気装置の不調が放置された状態で働かされた女性技師が「シックハウス症候群」を発症した問題で、技師が民間の労災に当たる「公務災害」に認定されていたことが21日、分かった。技師は昨年8月、地方公務員災害補償基金兵庫県支部に請求し、認定は7月17日付。現在も目の痛みなどの症状があるという。

検査室では病理検査などでホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)やキシレンなど有毒な化学物質を使用する。技師は昨年8月、シックハウス症候群と診断され休職。西宮労働基準監督署が同年9月、検査室の排気設備が不十分として是正勧告を出すなどしていた。

公務災害の認定について、同病院は「個人情報なので答えられない」としている。一方、同病院は昨年11月、排気設備の不備が続いた原因などを調べる第三者委員会を設置する方針を示したが、現時点で第三者委は立ち上げられていない。

技師は「調査で真実が明らかになり、環境改善だけでなく、被害者への謝罪や補償がなされることを願う」としている。(大盛周平)

神戸新聞 2020年7月22日
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202007/0013532545.shtml

「シックハウス症候群」「化学物質過敏症」事例まとめ

シックハウス症候群とは、「有害化学物質などの室内汚染物質による倦怠感、めまい、頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患などの症状としてあらわれる体調不良の呼び名」(ウィキペディア「シックハウス症候群」)と説明されるように、労働現場のみならず建築物一般などを含めた問題である。

厚生労働省は「 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 」を設置して、原因物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンなどについての室内濃度指針を示すなどしている。ただし、下記にも述べるように十分とはいえない。

労働現場で直接作業に有害化学物質を使用した場合は比較的わかりやすい問題といえるが、そのような場合でも、環境測定が実施されていないケースはざらだ。職場環境が建築物由来あるいは間接的なばく露を含めた複数の化学物質へのばく露が原因となる場合は、さらに被災労働者にとってはむずかしい状況となる。

そのため、これまで労災申請、認定事例はあるものの、実際のばく露時のばく露濃度が測定できていない場合などは、被災労働者にとって不利な状況になることが多い。そこをなんとかするいことを、現在の労働基準監督署に期待することはほとんどの場合残念ながらできないだろう。

さらに、こうした有害化学物質へのばく露によって、いわゆる「化学物質過敏症」といった困難な症状として進行、遷延するケースがあり、診断や治療の困難性とあいまってより深刻な問題となる。

労災申請に対して調査・決定を行う厚生労働省姿勢は、基本的に、原因物質の特定とその物質によるばく露が症状の原因となっているかで業務上外の判断を行うという限定的なところにとどまっているために、現状としては、実際に患者が陥っている困難な状況に対応できていないことが多いとみるべきだろう。

しかしながら、職場で発生したシックハウス症候群や化学物質過敏症についての労災認定や職場の取組事例はあり、当センターの把握している範囲の事例を紹介するので参考にしていただきたい。
相談や問合せは、それぞれの事例に取り組んだ各地域安全衛生センターや全国労働安全衛生センター連絡会議へ。

「シックハウス症候群」事例

本サイトの労災職業病 事例検索データベースで「シックハウス症候群」での検索結果は以下の通り。

内 容安全センター情報掲載号問合せ先
各地の便り シックハウス症候群労災申請-神奈川●(財)地球環境戦略研究機関(神奈川労災職業病センター)<安情>2004/11神奈
各地の便り 深刻なシックハウス集団発症-神奈川●(財)地球環境戦略機関(神奈川労災職業病センター)<安情>2003/12神奈
シックハウス症候群労災認定、ホルムアルデヒド5例 遅れている職場での認識と対策<安情>2002/07全国
シックハウス症候群労災認定、ホルムアルデヒド5例 ホルムアルデヒド中毒の労災認定基準<安情>2002/07全国
シックハウス症候群労災認定、ホルムアルデヒド5例 ホルムアルデヒドの室内濃度指針値<安情>2002/07全国
シックハウス症候群労災認定、ホルムアルデヒド5例 平成12年度認定要件設定のための調査研究-化学物質過敏症と他の類似疾患との関連<安情>2002/07全国
シックハウス症候群労災認定、ホルムアルデヒド5例 職域における屋内空気中のホルムアルデヒド濃度低減のためのガイドライン<安情>2002/07全国

「化学物質過敏症」事例

本サイトの労災職業病 事例検索データベースなどから「化学物質過敏症」事例は以下の通り。

化学物質過敏症等をめぐって-労災請求、損害賠償裁判、労災認定基準/運用の改正に向けた政治的運動も 2018年12月11日 神奈川労災職業病HP 神奈
厚生労働省は、Oさんの有機溶剤中毒・化学物質過敏症を労災として認めよ! 2018年12月11日 神奈川労災職業病HP 神奈
花王化学物質過敏症裁判を終えて(裁判原告本人) 2018年12月11日 神奈川労災職業病HP 神奈
化学物質過敏症の労災の救済を阻む「個別症例検討会」 2010年5月15日 (神奈川労災職業病センターHP東京
化学物質過敏症で初の後遺障害認定! 2010年3月15日 眼球運動障害で11級(神奈川労災職業病センターHP神奈
各地の便り 化学物質過敏症の病名登録-東京●今後の課題めぐりシンポジウム開催(化学物質問題市民研究会)<安情>2010/03全国
各地の便り ネイルアートにご用心!-東京●刺激臭で化学物質過敏症発症(東京労働安全衛生センター)<安情>2009/11東京
各地の便り 10月1日から標準病名マスターに-MEDIS-DC●化学物質過敏症が登録(化学物質問題市民研究会)<安情>2009/09全国
各地の便り 同一時期に多発しても業務外-東京●「化学物質過敏症」の労災認定(東京労働安全衛生センター)<安情>2008/11東京
各地の便り 「化学物質過敏症」を労災認定-愛媛●トルエン、キシレン曝露が原因(愛媛労働者安全センター)<安情>2003/07愛媛
世界から 化学物質過敏症を労災認定-海外短信●Workers’ Health International Newsletter<安情>1997/07全国

※問合せ先:神奈=神奈川労災職業病センター 東京=東京労働安全衛生センター 愛媛=愛媛労働安全衛生センター 全国=全国労働安全衛生センター連絡会議(当サイト)