韓国印刷業の洗浄剤の調査の結果・任祥赫(イム・サンヒョク)/胆管がんシンポジウム-報告4 2012年12月16日大阪

韓国印刷業の洗浄剤の調査の結果・任祥赫(イム・サンヒョク)

韓国:グリーン病院労働環境健康研究所・滋賀医科大学衛生学部門

韓国のグリーン病院労働環境健康研究所で働いている任祥赫(イム・サンヒョク)と申します。この病院と研究所は、二硫化炭素中毒の被害者たちが建てたものです。いま私は滋賀医科大学衛生学部門に一年間留学しているところです。

私の発表は、韓国印刷業の洗浄剤の調査の結果です。最近、日本の印刷業の労働者に胆管がんが発生しており、インクの洗浄剤のジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパンがその原因物質と疑われていると聞きました。アメリカの化学工場でも同じ物質を使用した作業者で胆管がんなどで死亡しているという報告があります。

ソウルの聖水洞は、印刷および製靴業者などの零細事業者が密集している地域です。明洞の隣の乙支路4街にも、印刷業者が密集しています。そこで、韓国でも日本と同じ物質を使っているかを調査しました。

韓国印刷業の労働災害の状況ですが、2010年の統計によると、事業所数5,394、労働者数43,612で、被災者数374(千人率8.58)、死亡者数1(千人率0.02)、職業病者数27(千人率0.62)となっています。

印刷会社の80%が10人未満の会社、98%が50人未満の会社です。業務上の事故の50%は、はさまりによる事故でした。死亡1人は脳心臓疾患による死亡。職業病の81%は30人未満の事業場で発生しており、職業病の93%は筋骨格系疾患、7%は脳心臓疾患でした。化学物質による職業病は、最近5年間発生していません。

図1の左は、労働者が洗浄作業をしている写真です。右は、乙支路4街の「印刷村」です。目に見える看板が全部、印刷業者の看板です。

研究の方法ですが、印刷所で使用されている洗浄剤の分析を行いました。
2012年7月から11月にかけて現場の労働者が洗浄剤を収集し、11月から12月6日までにジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパン、ベンゼンの分析を行いました。ここまで進んだ段階で、今回発表するのが初めてです。いま洗浄剤の定性分析を進めているところです。

2013年に健康アンケート調査や検知管を用いた現場曝露レベルの評価なども行おうと計画しています。日本の調査結果も出たところで、日韓の結果の発表会が開催できればと考えています。
試料数は、印刷業では、聖水洞の17事業所から29個、乙支路4街の5事業所から14個、聖水洞の製靴業の1事業所から3個で、合計23事業所から46個の試料が採取されました。
試料の用途は、印刷業では、ブランケット洗浄28個、ローラー洗浄6個、洗浄剤、印刷添加剤、板現像液が各2個、印刷マッチング液と板洗浄剤が各1個、製靴業では、洗浄剤2個、接着シンナー1個でした。

分析方法は、前処理:溶媒抽出、装置:GC/FID、対象物質:ジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパン、ベンゼンで、時間的な制限があるので、今回はGC/MSを活用した定性分析はしていません。

結果ですが、今回の46個の試料では、ジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパンは、検出されませんでした。
しかし、46個の試料中71.7%(33個)でベンゼンが検出されました。韓国では、ベンゼンが0.1%以上含有されると発がん性物質とみなされ、ベンゼン含有量0.01%が管理基準として提案されています。石油精製産物であるナフサにベンゼンが不純物として含有されている可能性があります。運搬タンクや容器からの汚染の可能性もあると思います。

図2は、今回の印刷業の結果と、2010~2011年の金属加工業におけるベンゼンの検出にかかるデータを比較したものです。

また、現場の換気状態を点検した結果、局所排気装置が設置されているところは一箇所もなく、ほとんどは、窓や簡単な換気扇を使用していました(17個、73.9%)。換気設備がない現場は26%にもなりました(6個)。

さらに、製靴業界の接着シンナー「P8」で、様々な毒性物質を発見しました。トルエン、メチルメタアクリレート、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトンなどが検出されました。

結論です。

  • 韓国の印刷業で使用されている洗浄剤を分析した結果、胆管がん関連物質であるジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパンは検出されなかった。
  • 白血病の原因物質としてよく知られているベンゼンが、試料中71.7%で検出され、56.5%で管理基準0.01%を超えていた。
  • 現場の換気状態を調査した結果、ベンゼンに曝露される可能性が十分にある。

安全センター情報2013年4月号