メンタル労災・ハラスメント全国一斉ほっとライン2026-7/3~7/4ー全国一斉無料ー0120-631-202

精神障害の労災申請、各種ハラスメント対策、労使交渉のポイントなどについて、労働安全衛生団体、労働組合の専門スタッフらが相談対応、支援します。

昨年は全国で 54件の相談がありました。まだまだ問題を抱えている方は大勢いることと思われます。是非ご相談ください。

主催:全国労働安全衛生センター メンタルヘルス・ハラスメント対策局

協力: コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク、札幌地域労組、下町ユニオン、よこはまシティユニオン、女のユニオン・かながわ、山梨ユニオン、名古屋ふれあいユニオン、名古屋シティユニオン、愛知健康センター、ユニオンみえ、きょうとユニオン、なにわユニオン、ひょうごユニオン、ひょうご働く人の相談室、ユニオンおかやま、スクラムユニオン・ひろしまなど

1.はじめに

 元大塚製薬社員の男性が、過重労働等によるストレスが原因で自死したことに関して、労災が不支給になったのは不当であるとして起こされていた裁判の判決が、2026年4月15日に出ました。判決は、災害は業務との相当因果関係があり、不支給処分を取り消すというものでした。裁判所は、男性が、発症前6カ月の月80時間以上、発症前4ヶ月の86時間以上の時間外労働や、発症前5ヶ月と4ヶ月の間と、3ヶ月と2ヶ月の間に20時間以上の時間外労働の増加があり仕事内容・量の大きな変化があったこと、12日以上の連続勤務が発症前6カ月の間に近い間隔で3回以上あったことなどを認め、それらそれぞれが心理的負荷「中」であり、総合的にみて心理的負荷が「強」であるので、業務との相当因果関係が認められるとしました。そして会社側は、そんな男性に対し、残業代はみなし残業として支払われており、彼の業務時間を把握していなかったとのことです。

 この件での問題は2点あります。1点目は、会社側が事業場外労働みなし残業という制度を盾に、心身を壊すほど働いている従業員の労働時間の把握を放棄していること。2点目は、労災請求の認定調査や基準の限界です。今回、監督署の調査段階では、業務時間について、実際の労働時間を証明するものがないとして被災者の訴えを退け、会社の報告(午前9時~午後5時30分)を適用して長時間労働とせず、また、ハラスメントについても評価されませんでした。長時間労働もハラスメントも、被災者がよっぽど証拠をかき集めて証明しないと、何もなかったことになってしまいますし、証明しても高く評価されることがなかなかありません。

 2026年4月に判決が出た東京ガス職員パワハラ自死事件や3月に判決が出た大学病院医師過労死事件など、近年、裁判で労災不支給決定が取り消されるニュースをよく見ます。自分一人で悩まずに、専門知識のある人間に相談しましょう。

 時の総理大臣は、裁量労働制という、過重労働を助長する制度を拡充しようとしています。また、様々なハラスメントのニュースが日々飛び交っています。全国にはまだまだ辛い思いをしている労働者が数多くいることでしょう。そのような人達の相談を受けるべく、今年も全国一斉に、精神疾患の労災に関する電話相談を行います。

 精神疾患での労災補償請求の件数は、右肩上がりで増えています。そして、私達への職場のハラスメント相談も現状ひっきりなしにあります。その中には、被害者が会社の相談窓口に相談しても問題が全く改善しなかった、あるいは相談できずに退職を余儀なくされたといった事例も数多くあります。そのような事例は、本人だけの行動で解決できる問題ではない場合がほとんどで、労働組合に加入して、会社の責任での対応、再発防止を要求していく必要があります。労災請求するにしても、労働時間やハラスメントの事実関係の認定については、労働基準監督署に任せるのではなく、職場の同僚などの協力が非常に重要です。

今回のホットラインでは、長時間労働や職場のハラスメントに苦しむ労働者に、労災申請の方法やハラスメント問題への対応策など、具体的なポイントにお答えいたします。

2.精神疾患の労災の請求数、決定数と、認定に関する問題について

 2年9カ月前の2023年9月1日に、精神疾患の労災について、新しい認定基準が施行されました。これは、時代に合わせることを目的とした変更で、パワハラ、セクハラ、カスハラなどの項目が認定基準の心理的負荷表に明記されるなど、どちらかと言えば労働災害の認定率が上がる方向の変化が多くありました。さて、その後の認定率の推移はどうでしょうか。

 下に、厚生労働省が毎年発表している「業務災害に係る精神障害の労災補償状況」に掲載されていた2017年~2024年の、精神疾患労災の請求数、決定数、認定率をグラフにして示します。

 2023年度のデータは、後半の半年分が新基準での判定となっているのですが、グラフを見てみると、認定率は上がらず、むしろ、2022年度よりも下がりました。さらに、1年全て新基準で判定されているはずの2024年度の認定率は、2017年度から今までで、最低値を記録しました。

  次の表1にて、2024年度に決定件数が90件以上だった都道府県の認定率のデータを示します。

表1 決定件数が100件以上だった都道府県の認定率データ

 ここで、東京と大阪に注目しましょう。この2つの地域は、3年間決定件数ベスト1と2であり、2024年度の決定件数90件以上の都道府県中で認定率ワースト1と2でもあります。また、共通して言えることとして、2022年度から2024年度にかけて急激に決定件数が増加し(東京352件、大阪200件)、それに伴って認定率が下がっています。何があったのでしょうか。

 

 労災保険の調査は、本来、災害が起こった事業場の管轄の労働基準監督署が行います。しかし、精神疾患の労災に関しては、調査の高速化と精密化を目的として、2019年から、東京では東京労働局の労災補償課が、大阪では大阪労働局内の「高度労災補償調査センター(ARC)」という部署が一括して行っていました。

 しかし、急激に増える請求に対して、東京では2025年度以降の新規請求、大阪では2023年10月以降の新規案件に加えてARCが担当していた案件も、担当を管轄の労働基準監督署に戻すことを決定しました。

 それによって、表1の通り、2022年度から2024年度にかけて、東京でも大阪でも決定件数が1.8倍以上に急増しているのですが、認定率は10%以上低下しています。

東京労働局に対し、この認定率の急落の原因を質問したところ、「事案処理が滞留していたため決定を急がせたのは事実であるが、局としてなぜ変動したのかについての分析はしていない」「たまたま認定率が低下したものと思われる。今も申請数が増加している状況で日々対応に追われており、分析を行う人的余裕はない。」との回答でした。

急増する請求に対応するために決定件数を増やそうとするあまり、調査が綿密に行われず、紋切り型に認定基準マニュアルに当てはめることが多くなって、不支給が増え、認定率が急落している恐れがあります。実際に、精神疾患で労災補償請求をした際に、聞き取り調査をされなかったという相談者もおられます。

 精神疾患における心理的負荷は、なによりも被災労働者の訴えに耳を傾ける真摯な調査により判断されるべきです。決定までにかかる時間が少なくなるのはよいことですが、そのために調査がおざなりになり、被災労働者の訴えが切り捨てられることがあってはなりません。

 それに加えて、色々問題が見えてきています。以下に、よくあるケースを2点ほど紹介いたします。

  • 出来事が、パワハラではなく、上司とのトラブルに分類される

精神障害が労災として認定されるためには、業務中にあった出来事が、監督署の調査において精神的負荷「強」であると認定されなければなりません。そして、パワーハラスメントの項目は、基本的な精神的負荷が「強」とされており、上司とのトラブルは、基本的な負荷が「中」とされています。そして、パワハラと思って挙げた出来事が、上司とのトラブルに分類されて、精神的負荷「中」や、時には「弱」とされてしまうケースがあります。

監督署が、パワーハラスメントに該当するかどうかをあまりに狭く判断するため、多くのパワーハラスメント事案が上司とのトラブルに過ぎないとされて、不当に労災不支給とされている現実があるのです。例えば、上司による暴言があったと監督署に訴えても、「業務指導の範囲内」「人格否定の言葉がない」などと切り捨てられて、上司とのトラブルであると判断され、労災が認められないケースが続発しています。

  • 発症日が適切に設定されず、発症日から6カ月前までの出来事だけで評価される

精神障害の労災の認定は、基本的に発症日から6カ月前までの出来事で判定されてしまいます。しかし、この発症日というのが曲者で、具合が悪くなっても頑張って働き続ける人は少なくありません。すぐに病院にかからずに、いよいよ症状が悪化してから、医師にかかり休業に至ることはよくあります。そんなケースでは、発症日を症状が出始めた時とするのか、初めて医師にかかった時とするのかは難しい問題です。

私達が相談を受けたケースでも、発症日を初診日とされた場合、症状の出始めとされた場合の両方で、本人の受けたエピソードで一番心理的負荷が大きそうな出来事が、発症日前半年の期間に入っていないという理由で無視されている(調査復命書には“評価しない”と書かれる)ということがままあります。

監督署は、請求者の言うことをよく聞いて、今のこの人の症状は何が原因になったのかをちゃんと見極め、適切に発症日を設定してほしいと思います。

 精神障害の労災の請求数は年々増加しています。それに伴い、相談件数も増えています。納得できない判定を少しでも減らし、請求人が適切な調査、補償を受けられるよう協力いたします。

 職場のハラスメント相談が高止まり状態です。厚生労働省の「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、厚生労働省が行っている総合労働相談で、「民事上の個別労働紛争」の267,755件のうち、「いじめ・嫌がらせ」が54,987件(20%)と、13年間続けて第1位とのことです。また、「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況」によると、当局へのパワハラに関する相談件数は、2023年度で60,053件(2024年度の件数は2025年7月現在未発表)と、上記の相談件数をさらに上回る数です。確かに、安全センターやユニオンの相談でも、同じような傾向が続いています。

 加害者に責任があることは言うまでもありません。さらに、それを放置、時には助長するような職場環境、労働条件そのものを原因があることも少なくありません。ハラスメントについては、現状、相談体制の整備しか法的な義務がありませんし、それが十分に機能していないからこそ、行政機関等への相談件数が減らないのです。

 特に問題なのが、ハラスメントかどうかグレーな事だったり、一般的にはハラスメントと言えないような事です。そういった事案の解決や職場改善には、労使間の認識合わせが重要であり、きちんとした労使交渉が必要です。そのためには、ユニオンとの連携が有効です。そういった相談も手助けいたします。

 2026年3月に、人事院から、2025年度に懲戒処分を受けた国家公務員は249名で、その内、セクハラが絡んだ処分が15名、パワハラが12名だと報告されました。2024年度と比較して、セクハラは31件、パワハラは6件減っています。件数が減少しているのは良いことですが、これだけ日々ニュースで騒がれてもまだセクハラ、パワハラとして処分されるほどの行為をする人がいるのは驚きです。

 さらに民間について業種別で見てみます。「業務災害に係る精神障害の労災補償状況」で報告された、2024年度の、業種別の精神障害の労災補償請求件数によると、1位が福祉介護事業で589件、2位が医療業で389件と、医療福祉分野の2大事業が、3位以下に2倍以上の差をつけて1位2位となっています。また、2022年度のデータと比較すると、1位2位の業種は変わらず、しかし、この2年で請求件数が福祉介護事業は1.8倍、医療業は1.3倍という、非常な勢いで増加しています。

 上記の例に寄らず、どのような方でも、追いつめられる前に、とにかく相談していただきたいと思います。3人寄れば文殊の知恵という言葉もありますし、また、1人では重たい荷物も、複数人で担げば気が楽になります。とにかく、話をしましょう。重すぎる荷物は一緒に運びましょう。

4 事例紹介

ある病院で働いていた看護師のAさんは、ある日、看護部長から、主任になるように言われました。Aさんは、当時主任だった人が同僚3名からたびたび悪口や叱責をうけており、それに耐える自信がなかったため断ろうとしたのですが、看護部長に「断ることはできない。何かあったらフォローするから」と言われ主任になりました。そして、予想通りAさんは同僚3名からことあるごとに主任の器じゃない、認知症かなどの悪口や叱責をうけ、しかし、看護部長はAさんが主任になった1か月後に定年再雇用で異動となりフォローはありませんでした。Aさんは適応障害を発症し、休業、退職となりました。そこで安全センターに電話相談があり、現在、他の同僚の聞き取りなど、労災請求のための準備中です。

  ある広告代理店で働いていたBさんが、コロナ禍を理由に自宅待機を命じられました。同じ部署の人も同様に自宅待機になったのですが、しかし、時がたち、他の人は続々と職場復帰する中、Bさんだけが1年半以上自宅待機させられ続けました。そしてその間、雇用調整助成金の教育訓練加算を受けるため、初歩的なWEBビジネス講座を一日中受けさせられました。出社して仕事したい旨を会社に相談すると、外部の会社への移籍出向のために産業雇用安定センターを紹介されました。本人は今の会社の業務をしたかったのですが、それは拒否され、精神的に耐え難い自宅待機の継続と移籍出向、どちらか一方の選択を迫られ、やむを得ず移籍出向のための求職活動を行いました。しかし、うまく行かず、結局再び自宅待機を命じられました。そのような生活の中でうつ症状を発症し、最終的に自死されました。

  ここで遺族が弁護士に相談しました。そして、会社相手に損害賠償の裁判を起こすとともに、業務が原因なので、労災補償も請求しました。事件は当初管轄の監督署ではなく大阪労働局内の専門部署が担当していましたが、途中で管轄の監督署に移管され、不支給決定となりました。しかし、審査請求において、同じ部署で彼だけが特別に長期間にわたり自宅待機させられていた客観証拠などを追加提出したところ、彼が会社組織から切り離されており、その状況を本人も知っていて、なおかつ会社側のフォローもなかったことが丁寧に認定され、心理的負荷「強」に該当するとされ、不支給という原処分は取り消しとなりました。現在は、上述の通り、会社と損害賠償裁判で係争中です。

  配送会社のオペレーターのCさんは、もともと職場での言動に問題のあった先輩の運転手から、配送連絡をめぐってたびたび長時間のクレームを受けるようになりました。一緒に対応していた上司は心労から退職、Cさんも適応障害を発症し、休職に追い込まれました。労働組合と安全センターが支援に入り、労災申請しましたが、不支給決定。監督署は、「Cさんが少なくとも4回にわたり、大声で怒鳴られたこと」や「とことんまで追い詰めてやると言われたこと」を事実認定したにもかかわらず、それらは人格や人間性を否定する言動ではないとして、パワーハラスメントやいじめと認めず、「同僚のトラブル」にすぎないと判断して、心理的負荷「中」と判断していました。現在、審査請求で闘っています。