国際金融公社投資プロジェクトからすべてのアスベスト固着材料の禁止を/BWI(Building.and.Wood.Workers’.International),.2025.11.10
IFCが致死性アスベスト問題に遅れを取っている現状は、もはや是正すべき時機を過ぎている。労働者、地域社会、そして銀行自身に課せられたリスク負荷に対して、早急な行動が求められている。
世界保健機関(WHO)は、アスベストの危険性について「クリソタイルを含むあらゆる形態のアスベストはヒトに対して発がん性がある」と明言している。解決策は単純明快である。「アスベスト関連疾患は予防可能であり、もっとも効率的な予防方法は曝露を防ぐためにあらゆる形態のアスベスト使用を停止することである」。
WHOの勧告に沿って、主要な多国間開発銀行は-数十か国の先例に倣って-銀行投資におけるアスベスト及びアスベスト含有材料の使用を一切禁止する重要な措置をすでに講じている。持続可能性フレームワークの見直しを進める国際金融公社(IFC)も、同様の措置を講じる時が来ている。
アスベストはすべての人にとって危険かつ致命的であり、とくに労働者や幼少期に建物や広範な環境で曝露した人々にとって深刻である。アスベストの使用と除去には許容できないコスト、ケア、是正上の影響があり、地域社会、政府、IFCクライアント、将来の予算に影響を及ぼす。
- 世界保健機関は、アスベストへの職業曝露による死亡が年間20万人以上と推定され、これは職業がんによる死亡の70%以上に相当すると結論づけている。
- 建設業や鉱業に従事する労働者だけでなく、土木工事、製造業、農業、自動車産業、船舶建造・解体業、災害復旧、廃棄物管理、公益事業など、幅広い分野の労働者がアスベストに曝露している。
- 2006年にILOの第95回国際労働会議(ILC)は、「アスベストの将来的な使用の廃止、及び既存アスベストの把握と適切な管理こそが、労働者をアスベスト曝露から保護し、将来のアスベスト関連疾患や死亡を防ぐもっとも効果的な手段である」、また、1986年の第162号条約は「アスベストの継続的使用を正当化したり支持したりするために利用されるべきではない」と決議した。
- 米国地質調査所(USGS)によると、2023年に世界で132万トンのアスベスト繊維が消費され、このうち106万5千トンが輸出された。輸出量の80%以上は主にアジア向けで、同地域では製造された建築資材に使用されている。アジアはアフリカ、欧州、ラテンアメリカのサプライチェーンに深く関与している地域である。多くの国で禁止されているにもかかわらず、アスベストは依然として世界的な問題である。
- 職場での曝露によりアスベスト関連疾患を発症した者に対する補償、保険、訴訟費用は、リスクが長年周知されているにもかかわらず、使用者と政府にとって年間数十億ドルに上る。アスベストを含有するすべての材料には安全な代替品が存在するため、これらの費用は完全に回避可能である。IFCが投資対象に結合アスベスト材料の使用を継続的に認めることによるリスク曝露は何か?
- アスベスト業界が種類による毒性の差異を主張し規制・禁止を遅らせようとする試みは、完全に誤りであり、非倫理的かつ無責任である。数十年にわたる科学的証拠に基づき、すべての種類のアスベストが同等のアスベスト関連疾患を引き起こす。
- 多くの発展途上国・移行期国では、製品中のアスベスト含有量の検査、劣化した固着アスベスト材料の安全な廃棄管理、アスベスト関連疾患の診断を行う技術や体制が整っていない。アスベスト曝露は多くの国で目に見えない時限爆弾であり、環境災害である。
IFCは、科学的根拠のない除外リストに存在する重大かつ危険な抜け穴を利用し、アスベスト関連プロジェクトへの融資を継続している。
- IFCが2007年に公表した除外リストには「固着されていないアスベスト繊維の生産または取引」への融資を行わないと明記されている。ただし、「アスベスト含有率が20%未満の固着されたアスベストセメント板の購入・使用」は適用除外となる。これは実質的に、アスベスト含有建材全般が許可されることを意味する。
- 世界銀行には同等の除外リストが存在しない。ただし、同銀行の環境社会枠組みで、借入国に対して、「国際的な禁止・制限・段階的廃止対象となる化学物質及び有害物質の製造、取引、使用を回避すること」及び「有害物質の放出と使用を最小化し管理すること」を求めている。公的部門と民間部門の基準調和を進める中、世界銀行が前進し後退しないことがきわめて重要である。
- IFCが、固着されたアスベストセメント板に対して設けた抜け穴は、業界のロビー活動の結果であり、科学的根拠も人体への健康影響との関連性もまったくない。WHOはこの問題についてあらためて明確に述べている。
「クリソタイルを含めアスベストの発がん効果の閾値についての証拠は存在せず、きわめて低濃度に曝露した集団でもがんリスクの増加が確認されていることを踏まえ、アスベスト関連疾患を根絶するもっとも効果的な方法は、すべての種類のアスベストの使用を停止することである。建設業界におけるアスベストセメントの継続使用はとりわけ懸念される。労働者数が多く、曝露管理が困難である上、既存建材は劣化の可能性があり、改修・保守・解体作業従事者にリスクをもたらすためである。」 - しかし、この抜け穴が存在する限り、IFCプロジェクトに従事する労働者-実際はプロジェクトに関わるあらゆる地域住民-は致死性のアスベストに曝露される危険にさらされる。とくに製造、設置、除去、あるいはこれらの製品の一般的な撹乱作業において顕著である。
幸いなことに、近年では他の多国間開発銀行がアスベスト禁止に向けて大きな進展を遂げている。IFCはこれらに追いつかねばならない。
- 2024年にアジア開発銀行(ADB)は新たな環境社会枠組みを承認し、「アスベスト繊維の生産、取引、使用」を完全に禁止した。
- 欧州復興開発銀行(EBRD)の2024年環境社会政策も同様に、欧州委員会の関連規制を引用して、同銀行は、「アスベスト繊維、及び意図的に添加されたこれらの繊維を含有する物品・混合物の製造、上市及び使用を…知りながら融資することはない」と明記した。
- これらの銀行は、2021年に「固着されているか否かにかかわらず、アスベスト繊維の製造、取引、または使用…を伴うプロジェクトに知りながら融資することはない」と表明したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に追随したものである。
気候リスクによる紛争や自然災害の脅威が高まり、多国間開発銀行が災害支援への取り組みを強化する中、その緊急性はますます高まっている。
- 一部の地域では、アスベストの使用が蔓延している。例えば、地震の多いジャカルタの住宅の50%はアスベスト製の屋根で覆われており、地震の際にその危険性がさらに高まると推定されている。洪水や暴風雨もこの致死性物質を損傷または剥離させる。
- インドネシア国家開発庁は、災害後の緊急住宅建設にアスベスト不使用を義務付ける要件を導入し、マレーシアやカンボジアなどの国々はアスベスト使用の完全廃止に向けた動きを発表している。多国間開発銀行がこの進展を損なわないことがきわめて重要である。
- トルコでは、世界銀行グループが壊滅的な地震後の復興支援に新たなかたちで介入した。これが将来の支援活動の青写真となるなら、IFCと世界銀行が他機関と同様の厳格なアスベスト禁止措置を採用し、支援活動ががんリスクを増大させないことがきわめて重要である。
結論:行動の時
- アスベストの壊滅的な健康被害と世界が闘う中、各国や機関はこの危険な物質を根絶し命を救うために目覚ましい進展を遂げてきた。しかし、まだやるべきことは多く、この段階では多国間開発銀行が極めて重要な役割を担っている。IFCのような機関がアスベスト関連プロジェクトへの融資を続ける限り、人々は有害な影響にさらされ続ける。アスベストが現場に残存する限り、少なくとも1世代、おそらく2世代にわたる労働者が、回避可能な公衆衛生上の大惨事のリスクに直面することになる。
- 近年、AIIB、ADB、EBRDを含む主要な多国間開発銀行は、ついに行動を起こし、アスベスト産業が繁栄することを可能にしていた有害な抜け穴を排除した。これらの抜け穴は科学的根拠に立脚していない。アスベスト曝露が安全である閾値を示す証拠は存在せず、WHOはアスベスト関連疾患を根絶する唯一の方法は根絶であると明確に述べている。
IFCは、待望の「サステナビリティ・フレームワーク」見直しに着手した。同公社がこの機会を捉え、他機関に追いつき、アスベスト関連投資を全面禁止するとともに、固着アスベスト材料の例外規定を撤廃することがきわめて重要である。
安全センター情報2026年1・2月号


