「心の傷」同僚も、目撃者も痛い/韓国の労災・安全衛生2025年12月29日

▲ 資料写真チョン・ギフン記者

仕事場で発生する事故は労働者の体だけに傷を残すわけではない。彼らの心にも傷が残る。大型惨事や重大災害といった大きな事件でなくても、死に対する恐怖と脅威を経験した体は、心に傷を深く残すこともある。体の傷は災害当事者にのみ害を与えるが、心の傷は周辺に拡がる可能性が高い。同僚の死と負傷を目撃した別の労働者、そしてこれらの家族までが影響を受けるためだ。

イ・ジェミョン政府は出帆以後、『労災との戦争』を宣言したが、戦争の対象は労災死亡事故に限定されている。当初、国政企画委員会が大統領室に報告した国政課題には、「重大災害被害同僚のトラウマ治療の拡大と制度化方案作り」が含まれていたが、最終の国政課題からは抜け落ちていた。産業現場で、死んだり負傷する労働者が多いということは、それだけ「労災トラウマ」を体験することになる労働者も多いという意味だ。<毎日労働ニュース>は見過ごされやすい二次被害であり、二度目の労災である心的外傷後ストレス障害(PTSD)の記録を追った。事件の経緯だけでなく、被災者の陳述などが含まれたPTSD労災承認者の声が盛り込まれた、「業務上疾病判定書」を調べた。

労災承認の大部分が外傷性の事件「直接経験」に該当

26日<毎日労働ニュース>は、共に民主党のキム・ジュヨン議員によって勤労福祉公団から受け取った、2021~2025年(8月)PTSD労災業務上疾病判定書の295件を全数分析した。PTSD労災の承認率は80~90%の水準で、他の業務上疾病に比べて高い方なので、承認された判定書を分析対象とした。個人識別が可能な敏感情報などは、公団からは除いたままで提供された。

295件全部を診断基準(DSM-5)に基づき、△1番:外傷性事件(死や死に対する脅威、深刻な負傷または性暴力など)を直接経験、△2番:他人に起きた事件を直接目撃、△3番:近い家族または友人に事件が起きたことを知る(死亡またはこれに準ずる状況)、△4番:外傷性事件の嫌悪すべき細かい内容について、反復的または激しい程度のばく露を経験など、四つに分類した。

分類の結果、業務上疾病判定委員会の審議から除外された4件を除いて、291件の内の大部分の210件(72.2%)が、『直接経験』したことが判った。『直接目撃』したケースが60件(20.6%)で、残りの3番目・4番目の事例は少数であった。<グラフ参照>

『しまった、事故』もトラウマを残す

外傷性の事件を直接経験してPTSD労災と認定された210件を類型別に分類してみると『事故(交通事故含む)』が77件(36.7%)で最も多く、セクハラ・強姦などの『性暴行』が57件(27.1%)で後に続いた。その他に、労災承認者が経験した外傷性事件は、暴言・暴行、威嚇・脅迫、職場内いじめなどだった。

最も多いタイプの『事故』の具体的な事例を見れば、石油化学製品製造事業場で、荷役・積載関連の業務をしたA氏は、2020年に爆発事故が発生し、本人は辛うじて脱出したが、同僚たちの死亡・負傷の光景を見守らなければならなかった。同僚を失った悲しみと、工場が破壊された喪失感と憂鬱さ、恐怖などを感じた。事故後は、業務の途中に工場で誰かが自分の名前を大声で呼ぶと「腹が立って攻撃したいが、我慢する」という症状もあった。PTSDの診断を受けた彼は、疾病判定委で業務と相当な因果関係を認められた。

死亡あるいは多数の労働者が負傷する重大災害だけがPTSDに繋がる訳ではない。PTSD労災承認者の中で、人的・物的被害がないかまたは大きくない「しまった事故」を体験したケースも少なくなかった。金型の洗浄中に装備の作動で圧死事故に遭うところだったN氏は、死に対する恐怖と後遺症が残り、2021年に労災を認められた。鉄鋼製品生産職労働者のD氏は、1000度程度の高温の製品が足の傍を通る事故で生命の脅威を感じ、2022年に労災が承認された。

繰り返される事故も心の傷に繋がりかねない。50代の建設労働者のR氏は、昨年、アパート新築工事の現場で2回にわたって鉄筋壁が倒れる事故を目の前で見守った。不安・不眠・悪夢などの後遺症に苦しめられた彼は、PTSDの診断を受けて労災を承認された。

労災トラウマを研究してきて、職業トラウマセンターの設立にも寄与したヤン・ソンヒ職業環境医学専門医(ウィズ医院院長)は、「外傷性事件を直・間接的に経験した後、PTSDという病気に繋がらないためには、初期対処が何より重要だ。」「措置がきちんとなされなければ、事件の直後に受けた衝撃が緩和されずに持続することになる」と話した。ヤン・ソンヒ院長は、「特に、事業主が事故『認定』と『再発防止』計画を公式化する必要がある」と強調した。

問題提起後に「二次加害」、労災を呼ぶ

ヤン・ソンヒ院長が指摘した部分は、性暴力事件でも有効だ。当事者が事件を公論化した時、事業場で適切な措置を執らず、被害者が孤立したり、二次加害に苦しめられる場合、PTSD労災に繋がる傾向が確認された。

他の外傷性事件とは異なり、性暴行事件では、申請人の陳述の過程での「二次加害」に対する言及が目立った。各々個別的な事件で「問題提起した途端、退職勧誘と職場内いじめ、暴行を受けた。」「社内申告以後、退職勧奨、同僚職員の面責など、精神的に辛くて申請傷病が発病した。」「セクハラに遭って申告した途端に会社から業務排除、組織的な集団いじめなどの二次加害に苦しめられることになった。」「事業場内に苦情相談ができる制度がなかった」といった似たような陳述をした。

判定委が相当因果関係を判断した根拠でも、このような点が確認される。判定委は、互いに異なる色々な事件で「事業場で適切な措置を執った事実が確認されない点。」「事件以後、加害者との分離措置が行われていない状態で業務を持続しなければならなかった点。」「事件以後に行われた微温的な懲戒と事件処理手続きが、二次加害と申請傷病の全般的な経過に否定的影響を与えたと判断」等を、認定根拠として提示した。

職場内いじめだけでなく、『暴行・脅し』偶発的な事件による苦痛

『職場内いじめ』によるPTSD労災事例も少なくなかった。但し、労災承認者が経験したいじめは、一回的な事件ではなく、持続・反復された時、暴行のような物理的な威嚇を伴ったり、いじめの程度が深刻だった時に現れた。

仕事場で出会う予期せぬ危険がPTSD労災につながることもある。 顧客・学生・患者などが労働者に乱暴を働いたり凶器を取り出して振り回すなど生命に「威嚇」を加える行為をした時、身体的傷害を負おうが、負わされまいがその経験が心の傷として残るということだ。 コールセンター相談士のㅁ氏は相談に不満を持った請願人が酒に酔った状態で事業場に訪問し恐怖感を造成し、乱暴を働いた事件以後、不眠、不安、焦燥、呼吸困難のような症状を体験しPTSD診断を受けた後、2022年に労災と認定された。

第3者の偶発的な「暴言・暴行」事件を体験した労働者たちもPTSDを訴えた。 実際の承認事例を見ると、△仕事中に面識のない男性から突然顔面を暴行された場合、△タクシー運行中に乗客の暴言・暴行を受けた場合、△訪問在家療養保護士が療養受給者から暴言・暴行を経験した場合などがあった。

目撃者の苦痛、生き残ったという「罪悪感」

外傷性事件の当事者でなくても心の傷は残ることができる。 他人の事故を目撃した場合がこれに該当する。 家族の死亡事故でも聞いたのではなく、直接目撃した時には3番ではなく2番に分類した。 マンションの新築工事現場で働いたㅂ氏は、2023年に一緒に働いていた弟が墜落して死亡したというニュースを聞き、事故現場で心肺蘇生法を受ける場面を目撃した。 疾病判定委は墜落事故以後、事故現場や病院移送、死亡宣告過程を目撃し、精神的衝撃発生が認められる点などを根拠に彼の労災を承認した。

昨年2月、廃水処理場の清掃過程で有毒ガスを吸入した労働者7人(1人は結局死亡)が意識を失う事故が発生した。 事故発生位置から約50メートル離れた同僚3人は現場に駆けつけ作業者を助けようとして倒れた。 彼らは不安・憂鬱・不眠・罪悪感などを経験し、PTSD診断を受けた。 疾病判定委員会は「ガス窒息事故の目撃と救助活動をする過程で死亡者が発生するなど精神的衝撃が大きかったと判断される」と明らかにした。

「目撃者の苦痛」は調査過程で拡大する可能性も大きい。 判定書に含まれた目撃者陳述などを見れば「反復的な警察調査、勤労監督官の調査、勤労福祉公団の質問などを受けながら事故当時の記憶を反復的に回想しなければならず、答えなければならなかった」「事故以後、重大災害事故による労働部と警察調査を6~7時間受けて事件を記憶しなければならず、同じ話を反復的に証言しなければならなかった」というような内容を確認することができる。 事故当時の記憶を絶えず記憶し証言する経験を通じて事件から回避する機会を逃し「2次労災」につながることになるわけだ。

当事者でない「間接」経験した人たちも傷

2022年10月、梨泰院惨事当日、事故現場近くの店舗で働いた労働者がPTSD労災と認定された事例もある。 ㅇ氏が働いた店舗は惨事が発生した路地に位置し、外部に出ることができなかった。 外に出なくても、店舗のCCTVを通じて状況を見るしかなかった。 道路の通行止めが解除されるまで店に留まらなければならなかった。 以後、不安・不眠・憂鬱などの症状を経験した。 疾病判定委員会は「直接的業務と関連がないという少数意見もあったが、業務時間中に外傷的事件に露出され、高い水準の業務上ストレスが確認される点、以後PTSD主要症状を経験した点および上司との相談内容、治療内容などを考慮すると、申請傷病と業務との相当因果関係が認められるというのが多数意見」と説明した。

4番は外傷性事件の細かい内容に繰り返し、またはひどい程度に露出を経験する場合だ。 その露出が職業と関連せず、媒体等を通じた場合は適用されない。 例えば、遺体を収拾する緊急救助隊員、児童虐待の詳細に繰り返し露出された警察官のPTSDがこれに該当する。 承認された事例を見ると、△サービス利用家庭に出勤してベッドの下に血を流して倒れている利用者を発見し、119に通報後に死亡した事実を確認△ホテルの部屋で自殺した遺体を目撃△勤務中に死亡者を目撃し、遺体を触るなど心理的外傷を経験などだ。

専門家たちは「2次労災」を予防するためには社会的認識転換と制度改善が必要だと指摘する。 ヤン・ソンヒ院長は「体にも傷ができれば小さな傷は相対的に回復しやすいが、大きな傷は障害が生じるように心の傷も同じだ」とし「PTSDを含む精神疾患が個人の弱さとみなされてはならない」と述べた。 ヤン院長は「誰でも仕事場で外傷性事件を体験した後、心の傷につながりかねない」として「事業主だけでなく社会全般の認識が変化する必要がある。 外傷性事件である重大災害そのものを減らそうとする政府の努力も重要だ」と強調した。

2025年12月29日 毎日労働ニュース オ・ゴウン記者

https://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=231984