労働者が労災予防の『主体』、労働界の実効性に『疑問符』/韓国の労災・安全衛生2025年9月15日

『労災との戦争』を宣言し、重大災害の縮小を連日強調している新政府の基調を、政策的に具体化する汎省庁総合対策が出た。関係部署合同で作られた労働安全総合対策には『労使政が一緒に作っていく安全な仕事場』という修飾語が付いた。雇用労働部の金英勲(キム・ヨンフン)長官は就任以後、労働者を保護の『対象』ではなく、予防の『主体』として見なければならないと強調してきた。これを反映して、作業中止権の行使要件緩和や名誉産業安全監督官委嘱の義務化といった内容が総合対策に盛り込まれたが、労働界から、は実効性に疑問を投げかける声が小さくない。
長官は15日、政府ソウル庁舎で、関係部署合同で作った労働安全総合対策を発表した。これに先立って、李在明大統領は7月の国務会議で、総合的な産業安全対策をまとめるよう指示している。これに対し、政府は労使団体と専門家懇談会、タウンホールミーティング、労働安全関係長官会議などを通じて意見を取りまとめ、細部履行課題を樹立した。
「急迫した危険を憂慮する時」作業を中止し「賃金を補填しなければならない」
名誉産業安全監督官の義務化、「現行タイムオフ論の限界」
労災予防の過程における労働者の権利保障は核心的な内容の一つだ。大きく、△知る権利、△参加する権利、△避ける権利の「三権」を保障するということだ。具体的には、現在は有名無実な『作業中止権』を実質的に行使できるように制度を改善し、労災予防活動に労働者の参加を活性化させるために導入した名誉産業安全監督官制度も改編するという内容だ。
産業安全保健法52条によれば、労災が発生する『急迫した危険がある場合』、労働者は作業を中止し、待避することができる。政府は法改正によって、行使の要件を『緊迫した危険の憂慮』に緩和する計画だ。また、正当な作業中止権を行使したのに、懲戒や解雇など不利な処遇を受ければ、刑事処罰ができるとする規定を新設する。産業安全保健法上、名誉産業安全監督官制度を義務化し、作業中止と是正措置要求権も付与する予定だ。
ところが労働界は、このような対策の実効性に疑問を提起する。『緊迫した危険の憂慮』がどんな状況なのかに関する基準が準備されなければならず、作業中止で仕事が中断された時は『無給』に耐えなければならないために、権利行使に支障が生じないような補完策が必要だという指摘だ。民主労総のチェ・ミョンソン労働安全保健室長は「予防的な作業中止が実質的に作動するには、要件に安全保健措置の不備、猛暑・暴雨などの悪天候、顧客の暴言・暴行などを明示する必要がある」とし、「下請け労働者の作業中止権が保障されるには、その期間の賃金補填と、下請け業者の損失補填にも、対策が準備されなければならない」と話した。
名誉産業安全監督官制度も、実質的な活動を保障するための努力が不十分だと思われる。韓国労総のキム・グァンイル産業安全保健本部長は「名誉産業安全監督官制度は、委嘱をしたかしなかったかが重要なのではなく、安全保健活動を遂行できるように保障することが必要だ。」「現行のタイムオフ制度に規定された勤労時間免除限度だけでは、限界がある」と指摘した。

年間に多数が死亡時は『営業利益の5%』の課徴金
営業停止後、再発すれば登録抹消まで
総合対策のもう一つの核心内容は、重大災害を繰り返した企業に経済的制裁を課すことだ。重大災害処罰などに関する法律(重大災害処罰法)違反事件にはほとんどに執行猶予の判決が出て、労災発生なしに監督の過程で摘発した義務違反に対しては罰金刑に止まるために、企業の安全不感症が消えていないという判断からだ。
年間3人以上の死亡事故発生企業には課徴金を賦課する。「営業利益の5%以内、下限額30億ウォン」を適用するやり方だ。死亡者数・発生回数によって差別して賦課し、課徴金は労災予防に再投資されるように、労災予防補償保険基金に編入する。
金栄勲長官は、「営業利益を(基準として例示した)理由は、売上高対比にした場合、課徴金の金額が、企業が耐えられる範囲を超えかねないと判断したため」で、「下限額の規定は、営業利益が発生しない公共部門の場合に備えて、定額を含めた」と説明した。
建設会社の営業停止要請要件も緩和する。現行の「同時2人以上死亡」から「年間多数死亡」に拡大する。今年、労働者4人が次々に亡くなったポスコE&Cの場合、『同時に』2人の労働者が死亡した事故は起きなかったが、『年間』に多数の労働者が死亡したので、制裁対象になり得る。営業停止後に再び死亡事故が再発すれば、登録抹消までできるように規定を新設する。11部署が所管する33の法律を全数調査し、建設業外の業種でも、「重大災害発生」を許・認可の取り消しや、営業停止の理由に含ませる予定だ。
重大災害が繰り返し発生した時は、公共事業の入札も制限される。現行は同時に2人以上が死亡する事故が発生すれば、二年間は公共入札への参加が制限されるが、これを「年間に3人以上、三年間制限」への法改正を推進する。
財界は、厳しい経済制裁を含む総合対策に反発した。経総はこの日、見解を出し「企業経営を根本的に制約し、ひいては企業の存廃を決定する全方位的な内容を含んでいる」として、「今後、対策が法制化される場合、個別企業はもちろん、関連企業と協力業者の経営に及ぼす波及力が大きく、これは国家経済にも深刻な悪影響を及ぼすものと憂慮される」と主張した。
長官、ワンポイント社会的対話を提案
キム・ヨンフン長官はこの日、安全な仕事場のための労使政代表者会議、すなわちワンポイント社会的対話を提案した。長官は「対策発表は終わりではなく、以後、具体的な制裁方案、予防・措置方案を労使が一緒に作っていこうと提案するもの」で、「経済的制裁方案に対して、法・制度化されるまで、労使政代表者会議を通じて現場の熟議性を高める方向で、深く議論して決める」と明らかにした。
2025年9月15日 毎日労働ニュース オ・コウン 記者
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