ロッテルダム条約第11回締約国会議概要報告(抄)/2023 BRS COPs Summary Report, Earth Negotiation Bulletin, 2023.5.15
気候変動、生物多様性の損失、汚染という3つの地球規模の危機のなかで、化学物質と廃棄物の問題に対する行動の必要性はかつてないほど急務となっている。これらの危機は相互にからみあっている。気候変動が化学物質やその排出物の毒性を増幅させるという証拠が増えてきている。有害な廃棄物は壊れやすい生態系にさらなるストレスを与える。地球と同様に人間も脅かされている。化学物質と廃棄物の健全な管理は、少なくとも世界中で160万人の死亡を防ぐことができる。プラスチックや「永遠に残る化学物質」など、現代的な化学物質や廃棄物の問題が注目される一方で、持続性があり、備蓄品や廃棄物中に存在する古い化学物質に関連した長期的な問題も存在している。
このような状況のなかで、バーゼル・ロッテルダム・ストックホルム(BRS)条約の注目度は高まり続けている。2023年の3つの締約国会議(トリプルCOP)は、各条約が一体となって、また個別に、その使命の中核をなす問題に取り組み、幅広い層と相当数の参加者を集めた。COPsは、各国が直面する課題に見合った資金調達をめざす新たな資源動員戦略を含む、技術支援と資金調達に関する共同決定を採択した。COPsはまた、有害な化学物質と廃棄物の違法な取引・貿易に関する取り組みも前進させた。
バーゼル条約はいくつかの決定を採択したが、なかでも重要なのがプラスチック廃棄物に関する技術的手引きである。この文書は、これらの廃棄物を環境に配慮したやり方で管理する方法を定めたもので、プラスチック汚染に関する新しい条約の交渉が進行中であることを考えれば、タイムリーなものである。
ロッテルダム条約は、その科学的補助機関によって勧告された7つの化学物質のうち、1つしかリスト搭載できなかった。この長期にわたる化学物質のリスト掲載不能に鑑み、条約の有効性に関する広範な議論が行われた。締約国は、リスト掲載の潜在的な直接的及び間接的効果を含め、リスト掲載決定に関する課題について、締約国から情報を収集するための会期間プロセスを設置することに合意した。代表団は、締約国が全会一致に到達できなかった化学物質をリスト掲載する、新たな附属書を追加する提案を検討した。新たな附属書を批准した国に対して、リスト掲載された化学物質は、条約の事前の情報提供に基づく同意(PIC)手続の対象となる。投票の結果、この提案は、僅差で、条約改正に必要な4分の3以上の賛成を集めることができなかった。
ストックホルム条約のグローバルモニタリング報告書は、同条約が観察されている人々と地球の残留性有機汚染物質(POPs)の濃度の減少に貢献しているを見出した。締約国は、農薬のメトキシクロル、難燃剤のデクロランプラス、及びプラスチックに使用される紫外線フィルターのUV-328の生産と使用を廃止することに合意した。デクロランプラスとUV-328については、医療機器については2041年まで、その他の適用除外用途については2044年まで、製造・使用を認めるという一部の機器に特化した除外規定が設けられた。おそらくさらに重要なことは、COP1以来、締約国が避けてきた-遵守メカニズムをCOPが採択したことである。
2023年5月1~12日、スイス・ジュネーブにおいてBRS[バーゼル・ロッテルダム・ストックホルム条約]COPS[締約国会議]が開催された。175の締約国と、77の非政府組織、5の政府間組織、16の地域センター、18の国連機関を含む143のオブザーバー組織を代表して、合計1,206人が出席した。
[※デイリーレポート等も提供されている。]
化学物質及び廃棄物に関する条約の簡単な歴史
バーゼル条約、ロッテルダム条約及びストックホルム条約の締約国会議は、2013年以降合同で開催されている。各条約は独自の使命をもち、独自の決定を下している。これらの条約の間にはつながりがある。例えば、バーゼル条約は、ストックホルム条約によってリスト掲載された残留性有機汚染物質(POPs)に汚染及び含有する廃棄物の環境的に健全な管理を扱っている。ロッテルダム条約は、近年、ストックホルム条約が対象とするPOPsをリスト掲載している。
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ロッテルダム条約
ロッテルダム条約(RC)は、1998年9月に採択されて2004年2月に発効し、潜在的危害から人間の健康及び環境をまもるために、特定の有害な化学物質の国際貿易における締約国の責任分担と協力的努力を促進するものである。RCは、有害な化学物質の特性に関する情報交換の促進、それらの輸入・輸出に関する国の意思決定過程のための提供及びそれらの決定の締約国に対する周知によって、有害な化学物質の環境的に健全な利用に寄与する。条約採択時には27の化学物質がリスト掲載されていた。2006年に、義務的なPICリストは、リスト掲載された化学物質の数を39に拡大した。
現在、条約締約国は165か国であり、35の駆除剤、18の工業用化学品、及び駆除剤と工業用化学品の両方のカテゴリーに属する1つの化学物質を含め、54の化学物質が付属書Ⅲにリスト掲載され、PIC手続の対象になっている。
最近のハイライト:全会一致に至っていない長年の課題には、カルボスルファン、フェンチオンと二塩化パラコート製剤、及びクリソタイルアスベストなど、化学物質審査委員会(CRC)によって付属書Ⅲへの包含が勧告された化学物質のリスト掲載がある。COPは、それらの化学物質が各々リスト掲載のためのすべての基準を満たしていることに合意したものの、それらを附属書Ⅲに含めるという全会一致に達していない。COP7(2015年5月4~15日)において、会議、調査、及びCOP9(2019年4月29日~5月10日)に対して報告を行うワーキンググループを含めた、会期間プロセスが設置された。
COP9において、締約国は、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)及びホレートを附属書Ⅲに含めることに合意するとともに、締約国の条約の実施を促進する遵守メカニズムを採択することによって、2つ目の長年の問題を解決した。
COP10(2022年6月6~17日)において、締約国は、デカブロモジフェニルエーテルとペルフルオロオクタン酸(PFOA)、その塩及び関連化合物を附属書Ⅲにリスト掲載することに合意した。どちらも以前はストックホルム条約にリスト掲載されていたものである。締約国は、農薬のアセトクロル、フェンチオン微量製剤、二塩化パラコート製剤、及びカルボスルファンについてはまたもリスト掲載することができなかった。クリソタイルアスベストも、全会一致が得られなかったため、リスト掲載されなかった。
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ロッテルダム条約COP11
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条約附属書Ⅲへの科博物質のリスト掲載:
条約附属書Ⅲへの化学物質のリスト掲載は、当該駆除剤または工業用化学品を条約のPIC手続の対象にする。5月8日及び9日の全体会議で化学物質が取り上げられた。イプロジオン及びカルボスルファンは、Marit Randall(ノルウェー)とCaroline Theka(マラウイ)を共同議長とするコンタクトグループに付託され、2夜にわたって会合が開かれた。
アセトクロル:…多数の国がリスト掲載に対する支持を表明し、5か国[グアテマラ、イラン、アルゼンチン、ベネズエラ、パラグアイ]が反対を表明した。COPは、アセトクロルをRCリスト掲載コンタクトグループの付託事項に追加したが、合意に達することはできなかった。5月11日にRC COPは、アセトクロルをCOP12の議題に追加することに同意した。
カルボスルファン:…多数の国がリスト掲載に対する支持を表明し、2か国[インド、インドネシア]が反対を表明した。COPは、カルボスルファンをRCリスト掲載コンタクトグループの付託事項に追加したが、合意に達することはできなかった。5月11日にRC COPは、カルボスルファンをCOP12の議題に追加することに同意した。
パラコート:…多数の国がリスト掲載に対する支持を表明し、7か国[アルゼンチン、エクアドル、シリア、グアテマラ、パラグアイ、インドネシア、ベネズエラ]が反対を表明した。全会一致に達しなかったことから、RC COPのBerejiani議長は、そのリスト掲載は次のCOPの暫定議題に含めることを提案し、各国は同意した。
フェンチオン:…多数の国がフェンチオオンのリスト掲載に対する支持を表明したが、2か国[エチオピア、ケニア]が反対を表明した。RC COPのBerejiani議長は、締約国が協議することを提案した。5月11日にRC COPは、フェンチオンをCOP12の議題に追加することに同意した。
クリソタイルアスベスト:…多数の国がクリソタイルアスベストのリスト掲載に対する支持を表明したが、6か国[ロシア連邦、カザフスタン、ジンバブエ、インド、キリギスタン、パキスタン]が反対を表明した。全会一致に達しなかったことから、RC COPのBerejiani議長は、そのリスト掲載は次のCOPの暫定議題に含めることを提案し、各国は同意した。
[オブザーバーとして、ILO、APHEDA、ACTU、BWI、ESDO、Solidar Suisse、IPENが賛成、国際労働組合連合「クリソタイル」、国際クリソタイル協会、カザフスタン使用者連盟が反対を表明した。]
イプロジオン:…多数の国がクリソタイルアスベストのリスト掲載に対する支持を表明し、6か国[インドネシア、アルゼンチン、イラン、グアテマラ、エクアドル、ロシア連邦]が反対を表明した。RCリスト掲載コンタクトグループがこの問題に対処したが、合意を見出すことはできなかった。反対の国は、最終規制措置の通知がリスト掲載の基準を満たすかどうかに疑問を呈した。CRCの活動を直接疑問視する声もあった。5月11日にRC COPは、イプロジオンをCOP12の議題に追加することに同意した。
テルブホス:幅広い支持を得て、RC COPは、テルブホスの駆除剤として附属書Ⅲへリスト掲載することに合意した。
最終決定:その決定(RC/COP.11/12)においてRC COPは、テルブホスを附属書Ⅲにリスト掲載し、この改正が2023年10月22日にすべての締約国に対して発効することを決定し、決定手引文書を承認した。
条約の有効性の強化:
条約の有効性を強化する方法に関する2つの提案があった。条約に新たな附属書を追加する提案と、会期間作業に関する提案である。議論はCOP全体を通じて賛否が分かれた。
条約に新たな附属書Ⅷを追加する提案:この議題は5月3日に最初に提案され、この問題が全体会議で投票に付された5月12日まで、COP全体で議論された。この議題は、附属書Ⅲへのリスト掲載について、CRCによって承認されたものの、COPではされなかった化学物質をリスト掲載する新たな附属書の導入に焦点をあてたものだった。この議題をめぐる議論は、批准した締約国間における決定が、附属書Ⅲのリスト掲載プロセスで必要とされる全会一致に基づくアプローチではなく、4分の3の多数決で承認され得ることを提案するものであることから、非常に紛糾した。
5月3日にRC COPのBerejiani議長は、スイスに、14の共同提案国[オーストラリア、ブルキナファソ、コロンビア、コスタリカ、ジョージア、ガーナ、ナイジェリア、ノルウェー、ペルー、モルドバ共和国、南アフリカ、スイス、トーゴ、イギリス]を代表して提案(CRP.4)を紹介するよう求めた。スイスは、CRP.4は、締約国から受け取ったコメントを考慮して、COPの6か月前に提出された提案を改定するものであると説明した。彼は、以下を含む、主な変更点の概要を説明した。
- ある化学物質が新たに提案される附属書Ⅷにリスト掲載され、その後附属書Ⅲに掲載された場合には、附属書Ⅲのリスト掲載が優先される。
- 輸出する締約国に直接提供された、輸入国の指定された当局による輸入に対する明示的な同意は、輸出が許可されるのに十分である。
- 化学物質を附属書Ⅷにリスト掲載するかどうか決定する際、締約国は決定手引文書も承認することができる。
- 附属書Ⅷの決定は全会一致によって行われるが、それが達成できない場合には、4分の3の多数決が適用される。
多数の国が、CRCによってリスト掲載することが勧告されながら、COPではリスト掲載されない化学物質の数が増えていることにふれて、条約の行き詰まりに対処するために、提案を歓迎した。数か国は、化学物質を附属書Ⅲにリスト掲載するための全会一致による決定のほうを好むことを示唆した。
続いて、どの国がコンタクトグループの共同議長を努めるべきか、議論が行われた。一部の国は異議を唱え、イラン、パキスタンとエクアドルは、両共同議長が提案の推進者であることの適切性に疑問を呈した。RC COPのBerejiani議長を含む、その他は、共同議長が公平であることを強調した。
議論は5月4日も続き、RC COPのBerejiani議長は、ANGELA Rivera(コロンビア)とGlenn Wigley(ニュージーランド)が、RCの有効性の強化に関するコンタクトグループの共同議長を務めることを提案した。一部の締約国が反対し、共同議長の選定は全体会議で2日間議論されたが、コロンビアからの共同議長を中国から指名された共同議長に代えるという提案もあった。議長は、要請に応えるために3人の共同議長を提案したが、共同議長の公平性の原則にふれて、多くの締約国は同意しなかった。その後、ニュージーランドとコロンビアは候補者を取り下げた。RC COPのBerejiani議長は、共同議長にLinroy Christian(アンティグア・バーブーダ)と Martin Lacroix(カナダ)を提案し、締約国も承認した。
コンタクトグループは5月7、8、9、10日に会合を開き、ロッテルダム条約の第7、10、11、13、14、15及び22城を改正し、新たな附属書Ⅷを追加するCRP.4を検討した。議論は非常に両極端だった。改正に反対する者は、その正当性に疑問を呈し、手続上の問題を提起した。彼らはまた、2つの附属書は、並行するプロセスにつながり、実施を混乱させすぎるだろうと述べた。提案者及び事務局の法律助言者が質問に答えた。5月10日に、建設的な進展がないことを理由に、コンタクトグループを閉じることが提案された。
5月11日にRC COPのBerejiani議長は、スイスに、CRP.11を紹介するよう求めた。共同提案国を代表して、スイスは、新しいCRPは、CRP.4に対して寄せられたコメントを考慮した、改定提案であることを説明した。多数がこの提案を支持する発言を行い、各国が合意に達することができない化学物質の数が増えている行き詰まりを打破する必要性を強調した。その他は、様々な法的及び手続的懸念を挙げて、反対した。
意見の一致がないことを指摘して、RC COPのBerejiani議長は、CRP.11の審議を中断することを提案した。この提案にコロンビアが反対し、ロシア連邦とサウジアラビアが支持した。
5月12日に全体会議で審議が再開された。RC COPのBerejiani議長は、意見の一致がないことを踏まえて、この提案の審議を次のCOPに延期することを提案した。
ナイジェリアは、締約国が行き詰っていることは「明白」だと指摘した。第21.3条(条約の改正)にしたがって、彼は、条約を改正する提案について投票を求めた。これは、サモア、スイス、EU、コロンビア、オーストラリア、チリ、マラウィ、コスタリカ、モルディブ、ヨルダン、ペルー、エスワティニ、イギリス、パナマ、クック諸島、ザンビア、メキシコ、ホンジュラス及びドミニ共和国によって支持され、全会一致を達成するためのすべての努力は尽くされたと指摘された。多数の国がRCの有効性に関する議論はかなり前からはじまっていたと指摘し、EUは「前に進むためにの選択肢はもうほとんどない」と指摘した。
ロシア連邦とサウジアラビアは、提案は当初提出されたものとは実質的に異なっており、それゆえ手続規則に則ってCOPの6か月前に再提出されなければならないだろうと述べた。中国は、この提案は附属書Ⅲを改正するものであり、第22条(附属書の採択及び改正)に則って全会一致が必要であることを意味しており、それゆえ第21条(条約の改正)は適用されないから、投票は適切でないと、彼女は強調した。アルゼンチン、インドネシアとブラジルも、改正提案に対する投票は手続上不健全であるとみなした。
カタール、カザフスタン、ギニア、バーレーン、パキスタン、インド、ニカラグア、グアテマラ、イラク、シリア、キリギスタン、ジンバブエ、インドネシア、アルゼンチン、ベネズエラ、チャド、アラブ首長国連邦、レソト、マレーシア、オマーン、パラグアイ、ケニヤ、日本、エチオピア、ブラジル、ボリビア、クウェート、イラン、キューバと中国は、この問題をCOP12に延期することを支持した。これらの国の多くは、全会一致を達成するためのすべての努力が尽くされたことに異議を唱え、この提案はこのCOPに持ち出されただけであると指摘した。
RC COPのBerejiani議長は、第21.3条にしたがって、条約を改正する提案は、最後の手段として、出席し投票する締約国の4分の3以上の賛成によって採択されるものとすると発表した。
サウジアラビアは、COPの少なくとも6か月前に通知されていなかったと述べて、提案の有効性を疑問視した議事手続上の問題を提起した。ロシア連邦は、RC COP議長の提案を不服とし、その不服に対する無記名投票による投票を要求した。
投票用紙配布のための休憩の後、Berejianiは次の質問を提示した。会議が、第1、10、11、13、14、15及び22条条の改正及び新たな附属書Ⅷの追加に関するCRP.11の採択に対して投票するというナイジェリアの動議を進めるという私の裁定に同意するか?事務局は、信任状が順当に受理された締約国のみに投票権が与えられ、締約国は賛成、反対、または棄権に投票することができることを明確にした。
投票が行われている間に、サウジアラビアが議事手続上の問題を提起した。Berejianiは、各国が投票中に議場に立つことができるのは、投票の実施に疑問を呈する場合だけであると述べた。サウジあら日は、投票に関する議事手続上の問題であると言ってから、CRPの提出時期に関する先にふれた議事手続上の問題を提起した。Berejianiは、現時点では、ロシア連邦による不服申し立てが唯一の議題であると述べ、投票が続いた。
投票の集計後、結果が発表された。141の締約国が出席して投票し、議長の提案に賛成が90だった。Berejianiはあらためて、締約国がCRP.11に対して投票する提案を行った。
ロシア連邦は、CRP.11がすべての国連言語に翻訳されていないと述べて、この提案を不服とした。Berejianiは、公式の、会期前の会議文書のみが翻訳されなければならず、会議中になされた提案は翻訳されないと説明した。ロシア連邦がその不服申し立てに対する無記名投票を求めた後、もうひとつの投票が行われた。結果は、141が出席して投票し、95の締約国がRC COP議長の提案に賛成した。
Berejianiは再度、CRP.11に対する投票を提案した。ロシア連邦は、無記名投票を要求した。中国は反対し、実質的な問題に対しては投票すべきではなく、少数派を多数派に従わせることはすべての締約国に害を与えると言って、審議を終了させるノーアクション動議を要求した。
Berejianiは事務局に、無記名投票を進めるよう要求した。
投票後、Berejianiは、出席して投票した132の締約国のうち、92が改正を支持したが、必要な75%の賛成には至らなかったと発表した。
ナイジェリアは、今回下された決定を歓迎した。スイスは、70%の締約国が提案を支持したことに「恐縮」した。EUとともに、彼は、締約国間の分裂が顕著であることを嘆いた。オーストラリアとEUは、少数が化学物質のリスト掲載を阻止できないようにPIC手続を改善する決意を表明した。ペルーは、投票は大多数の国が条約の有効性の改善を求めていることを示すものだと強調し、いま大多数は不満をかかえたままであると述べた。
インドは、40か国が改正に反対し、彼らは合わせて世界の人口の半分以上を代表することに言及した。インドネシアとともに、彼は、全会一致の精神を支持した。インドネシアは、一部の締約国から提起された手続上の問題が無視されたと述べ、これを前例とすることはできないと強調した。
RC COPのBerejiani議長は、この議題を終了した。
会期間作業の提案:5月3日にブラジルがCRP.3を提案し、アルゼンチン、キューバ、ベネズエラ、イラン、パキスタン、エチオピアなどによって支持された。このCRPは、新たな物質を附属書Ⅲまたはその他の附属書に含めることによって生じる、望ましくない間接的な経済及び貿易上の影響に対処するための会期間ワーキンググループの設置を提案するものである。ブラジルの提案はまた、この会期間ワーキンググループに、RC COP12に提出されるべき行動計画を策定することを課すものである。これらの国のいくつかは、全会一致の必要性を強調するとともに、2つのリストが引き起こす潜在的な混乱に関する懸念を表明した。
5月9日と10日に、このCRPをRCの有効性に関するコンタクトグループで議論するか、RCのリスト掲載に関するコンタクトグループで議論するかについて、長い議論が行われた。5月11日に、このCRPを議論するための新しいコンタクトグループが設置された。5月12日に、COPは決定を採択した。
最終決定:その最終決定(CRP.3)において、RC COPは:
- 締約国及びオブザーバーに対し、2024年6月30日までに、不作為のコストを含め、化学物質の附属書Ⅲへのリスト掲載することによって引き起こされる、または予測される、潜在的な直接的及び間接的貿易及び社会経済的影響、並びに金銭的影響に関する情報を事務局に提供するよう求める。
- 締約国及びオブザーバーに対し、2024年6月30日までに、附属書Ⅲにリスト掲載することが勧告された化学物質に対して代替品を導入することの利益と課題、及びそのような課題に対処するための行動に関する情報を事務局に提供するよう求める。
- さらに、締約国及びオブザーバーに対し、2024年6月30日までに、技術的及び科学的能力に関連した課題を含め、附属書Ⅲにリスト掲載することが勧告された化学物質及びそれらの代替品の健全な管理のための立法的または行政的措置の実施における課題に関する情報を事務局に提供するよう求める。
- 事務局に対し、資源の利用可能性を前提に、COP12までに、締約国からの情報をまとめ、検討及び今後の方向に関する議論のための報告書を準備するよう要請する。
- 事務局に対し、資源の利用可能性を前提に、事務局によってまとめられた情報を提示及び議論するため、COP12前にウエビナーを開催するよう要請する。
遵守:
5月2日に事務局は、遵守の手続及びメカニズム並びにRC遵守委員会のメンバーについて紹介した(RC/COP.11/14, INF/16)。RC遵守委員会の委員長のOsvaldo Álvarez-Perezが、委員会の1年目の活動について報告した。
最終決定:RC COPは、COP10以降遵守委員会によって行われた作業を承認した事務局の覚書(RC/COP.11/14)を歓迎した。COPはまた:
・ 最善の努力にもかかわらず、RCのもとでの一定の義務を遵守できない、または遵守できないだろうと考える締約国に対し、遵守委員会への提出を検討するよう要請する。
・ 事務局に対し、委員会及びその他のマンデートに関する締約国の間の理解を改善することを目的とした啓発活動を組織するよう要請する。
・ 締約国に対し、条約の実施及び執行のために採択した国内法令またはその他の措置の文章を事務局に提供するよう要請する。
報告書の採択
5月12日にRC COPは、その報告書(RC/COP.11/L.1/Add.1)を採択した。
会議の簡単な分析
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機能としての有効性
ロッテルダム条約(RC)では、代表団は「有効性とは何か」という問題に正面から取り組んだ。同条約は、その科学的補助機関である化学物質審査委員会によって勧告された化学物質をCOPがリスト掲載できないことに長い間悩まされてきた。今年は、勧告された7つの化学物質のうち、1つしかリスト掲載されなかった。現在、締約国が毎回の会合で検討している6つの物質があるが-一握りの締約国の反対のため-各国はその化学物質を附属書Ⅲにリスト掲載するという合意に達することができないでいる。そして、RCでは、姉妹条約とは異なり、全会一致が必要とされている。結果的に、これらの化学物質はRCの事前の情報提供に基づく同意(PIC)手続の対象外であり、多くの開発途上国がリスクや管理オプションに関する情報が得られないと訴えている。
増え続ける化学物質のリストを附属書Ⅲに追加することができないため、長年、多くの人がRCを有効でないとみなしてきた。一部の代表団は、RCをより有効とみられているバーゼル条約とストックホルム条約に沿わせるために、今回のCOPに照準を合わせていた。ある代表団は、RCをBRS条約の「貧しいいとこ」と呼び、何人かの代表団は、10年前にトリプルCOPsがはじまる前は、自国政府はRCにほとんど関心を示さなかったと述べている。その後まもなく、条約の有効性を改善することを明確に目的としたイニシアティブが生まれた。2回の会期中会合、イニシアティブ、そして(いまのところ失敗しているが)リスト掲載に対して投票を可能にする提案や財政上のメカニズムを追加する提案などが行われてきた。しかし、多くの人にとって、これらの努力は不十分である。
今回の会議には、条約を改正して、新たな附属書Ⅷを追加するという大胆な提案が提出された。この附属書は、締約国が附属書Ⅲにリスト掲載することに全会一致を得られない化学物質のためのホームになるだろう。この新たな附属書に対しては投票が認められる。PIC手続は、それの締約国である国の間でのみ適用される。すべての地域の国々を代表する、14の提案国は、化学物質の安全な貿易のための共有責任を促進するための「追加的ツール」であると主張した。彼らにとっては、この動きは必要なことだった。リスト掲載できないことは、論理的に有効性がないということになる。
支持派と反対派の間に、素早く深く線が引かれた。その間にいる者は疑問をもっていた。新たな附属書を批准していない国にはどのような影響があるだろうか?附属書Ⅷの化学物質が後に附属書Ⅲにリスト掲載されることはあり得るのか?そして、もっとも多かったのが、他の方法はないのか?この最後の質問に対する答えは、「われわれは10年間、他のすべてを試してきた」であった。中心的な問題は、少数の国がリスト掲載の決定を妨害していることである。これは、その障害を克服するものである。
反対派は、繰り返し手続上の問題を提起し、提案の正当性に疑問を呈した。彼らは、条約は有効であると主張した。彼らは、附属書Ⅲにリスト掲載されている54の化学物質を引き合いに出した。この議論は、条約が27の化学物質がすでに附属書Ⅲに掲載されている状態で採択されたことを無視している(ある代表は意図的にそう示唆した)。2006年に暫定CRCによってさらに12物質が追加され、義務的PICリストが完成した。過去17年間にRCは15の化学物質をリスト掲載し、ほとんどは工業用化学品で、少数の駆除剤が含まれている。
反対派にとっては、RCは、たんに情報を提供するだけでない影響力をもつ、おそらくあまりに効果的すぎるものなのである。彼らは、化学物質が危険であり、管理すべきであることを示すサインとしてRCリストを挙げている、危険農薬分類やベターコットン・イニシアティブなどの、民間の分類制度に言及した。彼らはまた、RCリスト掲載が化学物質の価格を引き上げたり、入手可能性を低下させたりすることもほのめかした。EUは、価格または入手可能性に対する影響が限定的、またはまったくないことを示した研究を繰り返し引用したが、これはほとんど慰めにはならなかった。
提案は、ほとんどの人にとって意外なことではなかったが、投票にかけられた。シリア連邦は、他の国々に支持されて、投票の動議が手続上健全であるかどうか、不服を申し立てた。これらの不服はどちらも無記名投票に持ち込まれた。最終的に、改正案自体に対する投票が行われた。賛成派は、出席して投票した者の70%を占めたが、必要な75%の多数には達せず、7票差で敗れた。投票に負けたことで、改正案に対する反対派が勝利したことになる。あるNGOは、「知る権利」のバッジを着け、「産業界がこれほど恥知らずな応援をすることに嫌悪感抱いた」と怒って会場を後にした。6時間に及ぶ裁決のエピソードは、会議中の議論と同様に分裂的なものだった。
このため、RCは化学物質のリスト掲載の影響について、会期中にいくつかの情報収集と分析を行うが、多くの疑問が残っている。RCは、どうすれば閉塞感を乗り越え、化学物質をリスト掲載することができるのか?化学物質のリスト掲載が効果のすべてなのか?それとも最初の一歩にすぎないのか?化学物質がリスト掲載されたとしても、各国が輸出対応を怠ることがあり、そのような事例のデータベースは増え続けている。RCはどうすれば、輸入される化学物質を管理するために各国に情報を提供するという目標に応え、化学物質に関する新たな懸念を踏まえて適応し続けることができるだろうか。
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※https://enb.iisd.org/basel-rotterdam-stockholm-conventions-brs-cops-2023-summary
次回のトリプルCOPは2025年4月28日~5月9日にジュネーブで開催されることが決まった。