ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に係る規定方法の変更等~政令・省令案を立案し直してパブリックコメント手続やり直し~2023年6月21日 厚生労働省

本誌2023年7月号の総特集記事「新たな化学物質規制令和5(2023)年度分施行」で、「義務対象物質の規定方法の変更」として、以下のように書いた。

「なお、法第57条のラベル表示対象物質は令第18条、第57条の2のSDS交付対象物質は、令第18条の2に基づき、特定化学物質第1類物質(令別表第3第1号)のほか、令別表第9に個々の物質名を列挙するかたちで規定されている。この規定方法を、『対象物質の性質や基準を包括的に示し、規制対象の外枠を規定する方法へと変更する』等の令及び則改正案に関するパブリックコメント手続が行なわれ、2023年6月上旬交付予定、2025年4月1日施行予定である。パブリックコメントでは、令改正によって追加される予定の約700物質(2025年4月1日施行予定)及び約850物質(2026年4月1日施行予定)のリストも参考資料として示されている」。

このパブリックコメントは、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案及び労働安全衛生規則及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について」として、2023年4月14日に公示され、5月13日が受付締切とされていた。
6月21日に、「御意見の募集についてに対して寄せられた御意見等について」が公表されたが、以下のような内容であった。

「計41件の御意見をいただき、うち37件は本件に関する御意見、残り4件は本件とは関係の無い御意見でした。厚生労働省では、本件について改めて検討を行った結果、新たに『労働安全衛生法施行令の一部を改正する政案』、『労働安全衛生規則及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案』及び『労働安全衛生規則の一部を改正する省令案』を立案し、本日から意見募集を開始したことに伴い、標記政令案及び省令案を制定しないこととしました。御協力ありがとうございました」。

6月21日に、前回と同じ標題で新たな意見募集(パブリックコメント)が開始され、7月20日が新たな受付締切とされた。
「改正の趣旨」「根拠法令」は基本的に変わっていない。「公布日」は4月14日のものでは「6月下旬(予定)」とされていた。以下、6月21日の新しい案を示した上で、「(主な)変更点」を指摘しておく。


政令案概要

1. 改正の趣旨

○現在、化学物質規制の1つとして、労働安全衛生法第57条第1項の規定に基づき、労働安全衛生法施行令第18条に定める化学物質については、譲渡又は提供に当たって容器等に名称等を表示(以下「ラベル表示」という。)しなければならないとされている。また、法第57条の2第1項の規定に基づき、令第18条の2に定める化学物質については、譲渡又は提供に当たって名称等を文書の交付等(以下「SDS交付等」という。)により相手方に通知しなければならないとされている。
○今般、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)において取りまとめられた報告書(令和3年7月19日公表)を踏まえ、上記規制に関して、ラベル表示及びSDS交付等をしなければならない化学物質(以下「ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質」という。)の範囲を、これまで行政判断により令別表第9に個々の物質名を列挙する形で規定していたところ、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の性質や基準を包括的に示し、規制対象の外枠を規定した上で、当該性質や基準に基づき個々の物質名を厚生労働省令に列挙する方法へと変更することとする。

2. 改正の概要

(1) ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に係る規定方法の変更

以下に該当する物質をラベル表示・SDS交付等の義務対象物質とする。なお、これまで令別表第9に個々の物質名を列挙する形で規定していたラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の範囲を、原則としてイに該当するものとしつつ、イに該当しないが、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質とする必要がある物質については、例外的にアとしてラベル表示・SDS交付等の義務対象物質とする。
ア 元素及び当該元素から構成される化合物であって、包括的にラベル表示・SDS交付等の義務対象物質とする必要がある物として別表1に掲げる物[33物質]
イ 国が行う化学品の分類(産業標準化法に基づく日本産業規格Z7252(GHSに基づく化学品の分類方法)に定める方法による化学物質の危険性及び有害性の分類をいう。以下同じ。)の結果、危険性又は有害性があるものと令和3年3月31日までに区分された物のうち、次に掲げる物以外のもので厚生労働省令で定めるもの
(ア) 令別表第3第1号1から7までに掲げる物
(イ) アに掲げる物
(ウ) 危険性があるものと区分されていない物であって、粉じんの吸入によりじん肺その他の呼吸器の健康障害を生ずる有害性のみがあるものと区分されたもの
ウ ア及びイに掲げる物を含有する製剤その他の物(ア及びイに掲げる物の含有量が厚生労働大臣の定める基準未満であるものを除く。)
エ 令別表第3第1号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの
[主な変更点] 「厚生労働大臣は、イに掲げる物を官報で告示する」としていたのが「厚生労働省令に列挙する」に変更。エを新たに追加。

(2) ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質の削除

(1)の改正を行うことにより、現在のラベル表示・SDS交付等の義務対象物質から除外される7物質(別表2参照)について、(1)の改正に先立ってラベル表示・SDS交付等の義務対象物質から削除する。[→変更なし]

(3) その他所要の改正を行う。

3. 根拠法令

法第57条第1項、第57条の2第1項及び第113条

4. 施行期日等

公布日:令和5年8月下旬(予定)
施行期日:令和7年4月1日(一部規定は公布の日)[→変更なし]

5. 経過措置[→変更なし]

○2(1)の改正を行うことにより、新たに約1,550物質がラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に追加されることとなるが、そのうち約850物質については令和8年4月1日からラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に追加することとする。
○また、新たにラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に追加される約1,550物質について、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に追加後1年間はラベル表示に係る法第57条第1項の規定を適用しないこととする。

省令案概要

1. 改正の趣旨

労働安全衛生法第57条第1項の規定により、危険・有害な化学物質を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装に、当該化学物質の名称等の表示(以下「ラベル表示」という。)をしなければならないこととされている。また、法第57条の2第1項の規定により、危険・有害な化学物質を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付等により、当該化学物質の名称等の通知(以下「SDS交付等」という。)をしなければならないこととされている。
これらの規定の対象となる化学物質(以下「ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質」という。)は、労働安全衛生法施行令第18条及び第18条の2において、令別表第9に掲げる物、令別表第9に掲げる物を含有する製剤その他の物で厚生労働省令で定めるもの等と規定されており、当該製剤等については、労働安全衛生規則第30条及び第34条の2において、その含有量が則別表第2に定める値(以下「裾切値」という。)のものを除くものとされている。
今般、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」(令和3年7月19日公表)の内容を踏まえ、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(以下「改正令」という。)により、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の範囲を、これまで行政判断により令別表第9に個々の物質名を列挙する形で規定していたところ、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の性質や基準を包括的に示し、規制対象の外枠を規定した上で、当該性質や基準に基づき個々の物質名を則に列挙する方法へと変更すること、また、裾切値を告示で規定する改正を行うことから、則についても所要の改正を行うこととする。

2. 改正の概要

(1) 名称等の表示又は通知すべき化学物質の削除に伴う裾切値の規定の削除

改正令の施行に伴い、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質から除外される物質について、則別表第2より削除することとする。

(2) ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の裾切値に係る規定方法の変更

改正令により、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質を含有する製剤その他の物に係る裾切値を告示で規定する改正を行うことに伴い、則における当該裾切値の規定を削除することとする。

(3) ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の個別列挙に係る規定の追加

改正令に示されたラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の包括的な性質や基準に基づいて、則においてラベル表示・SDS交付等の義務対象物質を個別列挙することとする(ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質は別表1及び別表2のとおり)。

(4) その他所要の改正を行う。

[変更点] 4月14日の内容は以下のとおりだった。
(1) ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質の裾切値に係る規定方法の変更
改正令により、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質を含有する製剤その他の物に係る裾切値を告示で規定する改正を行うことに伴い、則における当該裾切値の規定を削除することとする。
(2) 名称等の表示又は通知すべき化学物質の削除に伴う裾切値の規定の削除
改正令の施行に伴い、ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質から除外される物質について、則別表第2より削除することとする。
(3) その他所要の改正を行う。

3. 根拠法令

・ 改正令による改正後の令第18条及び第18条の2

4.  施行期日等

公布日:
2(1)、(4)の一部改正令の公布の日
2(2)、(3)、(4)の一部令和5年9月下
旬(予定)

施行期日:
2(1)、(4)の一部公布日
2(2)、(3)、(4)の一部令和7年4月1日

[変更点] 「施行期日:令和7年4月1日((2)及び(3)の一部規定は改正令の公布の日)」だった。

5. 経過措置[変更点] 6月21日に追加

2(3)の改正を行うことによりラベル表示・SDS交付等の義務対象物質として個別列挙する物質のうち別表2に掲げる物質については令和8年4月1日からラベル表示・SDS交付等の義務対象物質に追加することとする。

別表1「ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質(令和7年4月1日施行予定分)」[1,497物質]
別表2「ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質(令和8年4月1日施行予定分)」[779物質]

[変更点] 4月14日には、省令案概要の別表1・2としてではなく、政令案概要、政令案概要別表1・2、省令案概要とは別に「関連資料、その他」として、以下の参考資料が示されていた。
参考資料1「ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質に新たに追加する物質(令和7年4月1日施行予定)(ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質の関係の図⑥に該当する約700物質)」
参考資料2「ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質に新たに追加する物質(令和8年4月1日施行予定分)(ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質の関係の図⑦に該当する約850物質)」

ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質の関係

ここに言う「図」とは、政令案概要に添付された「ラベル表示・SDS等交付の義務対象物質の関係※令別表第3関係、粉じん関係の除外規定を除く」と題された図で、6月21日には政令案概要の一部ではなく、独立した資料として示されており、別添のとおりである。4月14日の表との「変更点」は、以下の3か所である。

旧 ⑥ 国が行う化学品の分類の結果、有害性が区分1と区分された物(②・⑤に該当する物を除く。令和7年4月1日施行、参考資料1の約700物質
新 ⑥ 国が行う化学品の分類の結果、有害性が区分1と区分された物(②・⑤に該当する物を除く。令和7年4月1日施行)

旧 国が行う化学品の分類の結果、危険性又は有害性があるものと区分された物のうち、有害性が区分1以外のもの(②・⑤に該当する物を除く。令和8年4月1日施行、参考資料2の約850物質
新 ⑦ 国が行う化学品の分類の結果、危険性又は有害性があるものと区分された物のうち、有害性が区分1以外のもの(②・⑤に該当する物を除く。令和8年4月1日施行)
新 ⑤⑥⑦の対象物は厚生労働省令で規定[変更点 6月21日に追加]

安全センター情報2023年8月号